【書評】『老けたくないなら「AGE」を減らしなさい』(牧田善二)
お薦めの本の紹介です。
牧田善二先生の『老けたくないなら「AGE」を減らしなさい カラダが糖化しない賢い生活術 』です。
牧田善二(まきた・ぜんじ)先生は、糖尿病などの生活習慣病の治療がご専門の医師です。
AGEは「老化を招く人類最大の敵」
アンチエイジングで、最近、注目を集めているのが、「AGE」と呼ばれる物質です。
AGEとは、「Advanced Glycation End-products」の英文の頭文字です。
日本語では、「終末糖化産物」と訳されます。
牧野先生は、このAGEを「老化を招く人類最大の敵」
だと言い切ります。
心臓病や脳卒中を招く動脈硬化、がん、骨粗しょう症、認知症。
老化のあらゆる局面で、AGEが重要な役割を果たしています。
牧田先生は、「日常生活におけるいくつかの注意点を守ることだけでAGEの害は防げる」と強調します。
本書は、AGEと老化の結びつきを説明し、その害を抑える方法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「AGE」が血管を老化させる
皮膚、髪の毛、筋肉、骨、血液、臓器など。
水分と脂肪分を除くと、人体のほとんどはタンパク質からできています。
そのタンパク質が、糖質が結びつく反応で劣化することを、「糖化」と呼びます。
糖化されたタンパク質からは、大量のAGEが作られます。
タンパク質は、最大20種類のアミノ酸で構成されています。
DNA(デオキシリボ核酸)に収められている、膨大な遺伝子の情報。
それらを基に、アミノ酸を組み合わせて、設計図通りにタンパク質を合成することを「翻訳(トランスレーション)」といいます。
翻訳されたタンパク質は、それぞれの現場で必要に応じてカスタマイズされます。
これを「修飾(モディフィケーション)」といいます。
AGEは、タンパク質に悪い修飾を施し、タンパク質本来の働きを阻害します。
それが積み重なることによって、人間のカラダは老化します。
AGEが、血管の老化現象である「動脈硬化」を引き起こすメカニズムは以下の通りです。
動脈硬化の多くは、「アテローム(粥状)硬化」と呼ばれるタイプ。厚くなった動脈の内部に、アテロームという固まりが生じるのが特徴です。
AGEは二つの仕組みで、アテロームによる動脈硬化を進行させます。
動脈硬化の最初の引き金になるのは、血液中に増えすぎた悪玉コレステロールの血管への蓄積です。
血管に蓄積した悪玉コレステロールは、AGEによる悪玉修飾を受けます。その際、悪玉コレステロールには酸化も起こります。
悪玉修飾を受けた悪玉コレステロールは、処理をするために出動したマクロファージに摂り込まれて「泡沫(ほうまつ)細胞」となります。
この泡沫細胞がアテロームをつくったり、動脈の内側を厚くしたりするのです。これが第一の仕組みです。
もう一つ、AGEには血管に対する直接的な悪影響もあります。
血管の内側にある「血管内皮細胞」には、AGEをキャッチするアンテナ(受容体)があります。この受容体にAGEが結合すると、血管の内側が厚くなり、動脈硬化を進めるのです。『老けたくないなら「AGE」を減らしなさい』 第1章 より 牧田善二:著 ソフトバンククリエイティブ:刊
動脈硬化が進行し、成長したアテロームが破裂すると、血管内に血の固まり(血栓)が生じます。
すると、血管が詰まって血流がストップしてしまいます。
脳の血管が詰まると「脳梗塞」、心臓の冠動脈が詰まると「心筋梗塞」を引き起こします。
AGEを増やさない調理法
アミノ酸と糖質を一緒に過熱すると褐色になる。
この反応を「メイラード反応」と呼びます。
パンケーキ、食パン、焼きおにぎり。
加熱すると褐色になるのは、すべてメイラード反応です。
メイラード反応からは、AGEは大量に発生します。
牧田先生は、食品中のAGEを増やさないためには、火を通さずにそのまま生で食べるのがいちばん
だと強調します。
火を通す必要のある、肉類などの食材。
それらに関しては、焼く、炒める、揚げるといった高温調理を避けること。
「茹でる」「煮る」「蒸す」といった低温調理をすることでAGEの発生を抑える
ことができます。
電子レンジを活用するのも賢い方法です。
さらに、牧田先生は、使用する調味料によってもAGEが増える
と指摘します。
しょう油や味噌は日本食に欠かせない調味料ですが、褐色の色合いからもわかるように、どちらも大豆のタンパク質が糖化したもので、AGEを含みます。照り焼きのように、砂糖としょう油を加えて高温で焼く調理法は避けたほうが無難です。
せっかく野菜を生で食べても、そこにAGEが多いシーザーサラダドレッシングやマヨネーズなどをたっぷりかけてしまってはなんにもなりません。フレッシュな野菜なら、エキストラバージン・オリーブオイル、レモン汁、塩とコショウなどで美味しく食べられます。
ファミリーレストランなどの外食、コンビニエンスストアのお弁当や総菜などは、衛生面からも焼く、揚げるといった高温調理をしたメニューを数多くラインナップしています。味つけも全体的に濃いめで、しょう油や砂糖などの調味料が増える傾向にあります。ですから、ファミレスやコンビニの商品で食事をするときは、AGEに配慮する必要があります。
そう考えると、ハンバーガーとフライドポテトを組み合わせたファストフード店のセットメニューは、AGEが極めて多いです。チキンナゲット、フライドチキンも高AGE食品ですから、ファストフード店には近づかないようにしたほうが無難だと私は思います。『老けたくないなら「AGE」を減らしなさい』 第2章 より 牧田善二:著 ソフトバンククリエイティブ:刊
こうしてみると、食卓には、AGEを多く含んだ食材や調味料があふれていますね。
これらの食材や調味料をすべて避けるわけにはいきません。
ただ、意識して極力摂取する量を減らすよう、心がけたいですね。
「ビタミンB群」でAGEからカラダを守る
AGEの害から身を守るために摂るべき栄養素の一つに、「ビタミンB1」があります。
ビタミンB1は、摂取した糖質や脂質の代謝を助ける働きがあります。ビタミンB1が不足すると、エネルギー不足による疲れや肩こりなどの不快な症状が現れることがあります。
B1は筋肉や神経が正常に働くために欠かせない栄養素です。不足すると神経障害から「脚気(かっけ)」が起こります。B1は玄米の糠の部分に豊富ですが、江戸時代に玄米を精製して白米を食べる習慣が広がり、白米を好んだ裕福な江戸の住民たちに多発したことから当時は、「江戸患い」と呼ばれていました。
B1は体内での糖化を抑制したり、AGEによるカラダへの害を防いだりする働きがあるとされています。B1からつくられた「ベンフォチアミン」という医薬品を、糖尿病を誘発させたラットに投与した実験では、神経中のAGEが有意に低下したという結果が出ています。
B1を含む食品には豚肉、きな粉、大豆食品、ウナギ、ゴマなどがあります。また、ニンニク、ニラ、長ネギ、タマネギなどに含まれる「アリシン」という成分は、B1が持続的に働く過程を助けてくれます。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、ビタミンB1の一日当たりの摂取推奨量は成人男子1.4mg、成人女子1.1mgです。しかし、この推奨量以上を摂取することによって、AGEができるのを防げると考えられています。『老けたくないなら「AGE」を減らしなさい』 第3章 より 牧田善二:著 ソフトバンククリエイティブ:刊
牛肉、鶏肉、カツオ、サツマイモ、クルミなどに多く含まれているビタミンB6。
それらも、AGEができるのを防ぐ働きがあります。
ビタミンB群は、水に溶けやすく、体内にストックされることがありません。
毎日、コツコツと摂取し続けることが大切です。
甘い「単純糖質」を極力避ける
AGEは、タンパク質と糖質の異常なカップリングによって生じます。
とはいっても、人体の重要な構成要素であるタンパク質の摂取を極端に減らせません。
減らすべきは「糖質」ということになります。
その中でも、強力に制限すべきは、「ブドウ糖、砂糖、果糖などの甘い単純糖質」です。
これらの糖質は、消化の必要がほとんどありません。
すぐに体内に吸収されて、血糖値を急激に上げ、AGEをつくり出します。
制限すべき単純糖質は、チョコレートやアイスクリームなどの菓子類、大福やまんじゅうといった和菓子、ケーキやクッキーなどの洋菓子、清涼飲料水に含まれています。
なかでも危険なのは清涼飲料水です。その多くには、10%程度の濃度で単純糖質が溶けています。500mlのペットボトル一本に約50g、角砂糖10個分もの単純糖質が入っています。これだけ甘いと飲めない気がしますが、冷たくして炭酸を加えると、甘さをあまり感じなくなり、それこそゴクゴクと飲めてしまうのです。
コーヒーや紅茶を飲むときは、砂糖を入れずにブラックかストレートで本来の風味を味わうようにしましょう。
果糖はバナナ、リンゴ、オレンジといった果物にたくさん含まれています。果物はビタミンが豊富で健康的な食材ですが、食べすぎはAGEのもととなります。
果糖は、体内での代謝のされ方が他の単純糖質とは異なります。小腸で吸収された果糖は、他の単純糖質のようにブドウ糖に分解されることなく、肝臓で脂肪に転換されます。また果糖は、タンパク質を糖化してAGEを生じさせる作用が、ブドウ糖よりも数倍高いことが知られています。
生の果物を適量摂るのは問題ないのですが、濃縮還元されたフルーツジュースはいくらでも飲めて一度に大量の果糖が体内に入ります。これはAGEを増やすだけではなく、肝臓に脂肪を蓄積させて「脂肪肝」の原因にもなります。野菜ジュースにも、果汁がミックスされているタイプが多いので要注意です。『老けたくないなら「AGE」を減らしなさい』 第4章 より 牧田善二:著 ソフトバンククリエイティブ:刊
500mlのペットボトルに、角砂糖10個分の単純糖質。
想像以上の量の糖質が入っていることに驚きますね。
清涼飲料水や濃縮還元ジュースなどをがぶ飲みはしない。
夏場の暑い時期には、とくに心がけたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
AGEは、毎日の生活でちょっとずつ体内にたまっていくものです。
AGEをためないように意識すると、5年後、10年後に大きな差となって現れます。
お肉は、焼かずに茹(ゆで)でる。
食後には、ウォーキングをする。
デザートはアイスクリームやケーキではなく、新鮮なフルーツにする。
チョコレートは、カカオが多めのものを選ぶ。
などなど、日々の習慣が大切になりますね。
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