本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『短時間で「完全集中」するメソッド』(佐々木正悟)

 お薦めの本の紹介です。
 佐々木正悟さんの『短時間で「完全集中」するメソッド』です。

 佐々木正悟(ささき・しょうご)さんは、心理学ジャーナリストです。

面倒なことを「後まわし」にしないための方法とは?

 私たちは、面倒なことを「後まわし」にし、なかなか目の前のことに集中することができません。
 佐々木さんは、その理由を他人ではなく自分自身、つまり「自分の声」で集中を乱しているからだと指摘します。

 そう、実はみんな集中したくなくて仕方がないのです。
 まずはこうした習慣を断ち切る必要があります。
 そのためには、「人間は、簡単に集中できないようにできている」ということを知ることです。なぜなら、みんな勘違いをしているからです。

  • 集中力がないからできない
  • 意思が弱いからできない
  • やる気がでないからできない
  • 気が散りやすいからできない

 多くの人は、こういうふうに考えてしまいます。
 しかし、私たちの「脳」は常に周囲に気を配ります。
 音がすればその方向を見る。何かが動けばそれを確認する。
 つまり、思考はずっと一定ではなく、常に移り変わっているのです。
 その結果、先ほどのように、あれこれとたくさんの時間を費やしたあげく、まったく何の結果も出せていないということが起こるのです。

  • 勉強をしようとしていたのに掃除を始める
  • 掃除をしなくちゃいけないのに目についた本を読みだす
  • ネットで調べ物を始めたのに気づいたら動画に夢中になっている

 こうしたことに覚えがありませんか?
 そう、「やろうとした自分の気持ち」をあなた自身があっという間に裏切ってしまうのです。
 そしてさらに、
 “未来の「集中する自分」が助けてくれる
 と、思ってしまっているのも問題です。
 確かに、〆切で追いつめられたときに、火事場のバカ力が出たということがあると思います。
 しかし、それは自分でコントロールしなくてはいけません。これができると人生に大きな差がつきます。

 『短時間で「完全集中」するメソッド』 はじめに より 佐々木正悟:著 大和書房:刊

 本書は、心理学や脳科学の研究を元に、「集中力をコントロールできる方法」をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「心の声」を消す

 集中が難しいのは、自分自身の邪魔が頻繁(ひんぱん)に入るからです。
 自分に邪魔されないようにするための方法のひとつが、「瞑想」です。

 これについて、「瞑想」という昔ながらの方法を研究し、それを心理学によって解き明かしたのが、ジョン・カバット=ジンです。
 ジョン博士の研究と臨床実験は膨大で、すでに日本語訳の書籍も数冊紹介されています。「マインドフルネス瞑想法」という言葉を聞いたことのある人もいるでしょう。
 ただ、カバット=ジンの方法論は、言葉で聞いてもあまりありがたみを感じにくいものです。実際に彼のカウンセリングを受けた人ですら、最初の1〜2回は、「こんなことやって、何か意味があるの?」と思ってしまうそうです。それでも数カ月、カバット=ジンの瞑想法の訓練を受けた人は、ほぼ例外なく「病気でずっとつらかったストレスが劇的(げきてき)に緩和された」などというのです。
 本書の文脈に即して、1つ重要なメッセージがあります。カバット=ジンによると、私たちは常に「心の中でいろんな言葉を聞いている」のです。その言葉には、自分に対して否定的なものもあれば、また別のものもあるでしょうが、いずれにせよ、自然と沸き上がってくるような気がします。
 非常によく紹介される事例として、自分自身へのネガティブな暴言を心の中で「お前なんかに何ができる」などと反芻(はんすう)してしまうというものがあります。
 ただ、「お前なんかに何ができる」という声が「本当に聞こえる」のと、「そういう暴言を言われているような気がする」というのは違うかもしれませんが。
(中略)
 もちろん、「言われている気がする」のだとしても、ストレスであることに違いはないでしょう。
 ただ、「本当に声が聞こえる」にせよ、「言われている気がする」にせよ、それが間違いなく「自分の内なる心の中で発されている」ものであるならば、つまり「絶対に他人には聞こえていないということが明らか」ならば、その声を停止させることはできます。
 それのみならず、自己批判的な声だろうと、自分に無関係な声だろうと、「自分の心が発していることが明らか」なら、制御できます。真剣に望むなら、止めることができるはずです。
 自己批判的な人というのは、多少とも、自分への暴言に一種の心地よさを感じるところがあるものです。
「お前なんかに何ができる」と自分に向かって心の中で叫ぶことにどういう快楽があるのかは、よく考えてみてもわかりません。そういう親に育てられたとか、マゾヒスティックとか、単なる習慣とか、いろいろな説明がすでになされていますが、本当のところはよくわからないことが多いのです。
 ですが、1つだけ言えることがあります。こういう習癖(しゅうへき)は、集中の妨げになります。少なくとも集中を助けてはくれません。
 ですから、その声を止めましょう。止めることはできるのです。代わりにポジティブな声を発する必要もありません。
 心の中にネガティブな声がしたら、それを止めることを習慣にしましょう。ただ、「声」をやめればいいだけです。すると集中力が確実に増します。

 『短時間で「完全集中」するメソッド』 第0章 より 佐々木正悟:著 大和書房:刊

「心の声」は、起きている間じゅう、つねに頭の中に流れているものです。
 あまりに身近なので、気づいていない人がほとんどでしょう。
 集中できるかは、この「心の声」を止められるかどうかにかかっています。

「心の声」を自覚し、それを一つひとつ止めていく。
 庭の雑草を一本一本むしっていくような、根気のいる作業です。
 しかし、集中力を身につけるためには欠かせません。

いつも同じ「音」を聞く

 佐々木さんは、集中力を高めるには、いつもまったく同じものを聞くようにすべきだと述べています。

 この方法は、実は音楽でなくてもOKです。ただ、いつもまったく同じものを聞くようにすべきです。
 いつも同じなら音楽でもいいし、音楽でなくても、ときどき話題になる「カフェの騒音」などを人工的に用意してみてもいいでしょう。
 あるいは、聞き慣れたゲームミュージックなどでもいいと思います。それに関連して「ギズモード・ジャパン」の記事を少し紹介します。
          *
 リモートオフィスや在宅勤務など、オフィス以外でも仕事ができる環境が揃ってきた昨今。立ち寄ったカフェでちょっとお仕事、という方も多いのではないでしょうか。完全な無音より、ちょっと騒がしいくらいのほうが集中できたりしますし。
          *
 ここでも「集中」というキーワードが出てきます。
 ですが、私が言いたいのは「少し騒がしいくらいが無音より集中しやすい」ということではありません。「いつも同じ音声を聞く」のには、集中力を高めるうえで、少なくとも2つの意味があります。

  • 他の騒音をシャットアウトしてしまう
  • 集中が途切れたことに気づくバロメーターになる

 1つ目は、いつも耳なれた音に意識を回すことによって、他の騒音に邪魔されることを、あらかじめシャットアウトしてしまうという意味です。
 家で仕事をしているならばともかく、外で仕事をしている場合、どんな音に邪魔されるかコントロールできません。せっかく時間を確保してカフェでじっくりアイデアを検討していても、隣で雑談が始まるかもしれません。それに文句を言うわけにはいかないのです。
 そういう場合でも、普段から耳なれている「土砂降りの音」などで防御しておけば、意外と邪魔されにくくなります。この効果は、普段から同じ音でシャットアウトしておかないと、あまり効果が期待できませんから、普段から同じ音で防御しておきましょう。
(中略)
 もう一つは、音が耳に入ってきたら、集中力が途切れてきたと気づくためのバロメーターにできることです。
 これは少し高度なテクニックになりますが、調子のいいときならば、音楽を聴きながら仕事をすると、すぐに聴いている音楽のことを完全に忘れてしまうことがあります。
 なぜそんなことがわかるのかといえば、集中力が途切れてきたときに「急に音楽のことを思い出してハッとする」という経験があるからです。
 認知心理学でくり返し指摘されていることですが、人間の注意の幅というものは、妙に狭いものです。集中すると一般的にその幅は、ますます狭まります。だから、集中的に考えごとをしている人というのは、頭をフル回転させていても、滑稽(こっけい)なくらい何も考えていないように見えたりすることがあります。
 そして、逆に音楽が耳に入ってくるということは、集中が途切れているということになります。そうなったら、そこでいったん休憩するほうが合理的でしょう。

 『短時間で「完全集中」するメソッド』 第1章 より 佐々木正悟:著 大和書房:刊

 ポイントは、普段から同じ音を使ってシャットアウトすることです。

 作業の邪魔にならず、意識を仕事モードに切り替えてくれる音。
 いろいろ試してみて、一番効果的なものを選びたいですね。

「チェックリスト」を使う

 集中しているときに限って、「何か忘れていないか」という不安がつきまとう。
 そのような経験、誰もがしたことがあるのではないでしょうか。

 佐々木さんが、そんな不安を解消するために利用しているのが、「チェックリスト」です。

 朝起きて、バスタオルをもつ。着替えを用意する。シャワーを浴びる。風呂場の窓を開ける。換気扇をつける。散歩前に、電灯を消す。可燃ゴミをまとめる。昨日、不満に思ったことをチェックする。朝食時には、娘をトイレに連れて行く。娘に水を飲ませる。皿を出す。スプーンセットを用意する。水筒に麦茶を入れる。
 私は別に、この程度のことをすべて忘れてしまっているというわけではありません。チェックリストがなくたって、このうちの大半をこなすことは、もちろんできます。
 しかし、チェックリストがあったほうが、はるかに安心して、作業に集中できるのです。これは生活、仕事、あらゆることについて言えます。
 私自身こんなことをセミナーや書籍で何度口にしたかしれません。
 人は忘れる。忘れてないと思っていて、忘れている。忘れていることに、気づいてない。そのくせ、心の奥底では、何か忘れていないかと、不安に思っている。その不安が集中の妨げになるのです。
(中略)
「はいはい、チェックリストね。いつか作りますよ」という反応をこれまで何度見てきたことでしょう。これまででもっとも効果があったのは、次の本の事例を引用したときでした。少し長くなりますが、これを読んだらさすがに考え方を変えてくれると思います。
        *
 すべてが順調だった。
 肝臓を持ち上げ、下にゆで卵の黄身のような色の腫瘍を見つけ、大静脈からそれを引きはがしにかかった。
 とても手間はかかるが、格別難しくはない。
 だが、一通り剥がし終わったときに、初めてのミスを犯してしまった。

 大静脈を傷つけてしまったのだ。
 大惨事だった。
 彼の心臓に穴を開けたのと大差ない。
 恐ろしいほどの量の血が出てきた。
 60秒足らずで体内の血液が腹部に流れ出て、心臓が停止してしまった。
 もう終わりだ、ハガーマン氏を私が殺してしまった、と思った。

 だが、私たちは手術開始前にチェックリストを通していた。
 どれほどの出血量に備えておくべきかというチェック項目があり、そのときに私はこう言った「腫瘍は大静脈にくっついている。大量出血の可能性もいちおうある」
 それを聞いた看護師は4ユニット分の血液が用意されているかを輸血部に確認した。
        *
 わかりきったことが書かれているチェックリストのおかげで、ガワンデ医師は、牢屋(ろうや)に入れられたり、医者をやめさせられたりせずに済んだのです。こうしたものがあってこそ、安心して仕事に集中できるというものです。

 『短時間で「完全集中」するメソッド』 第2章 より 佐々木正悟:著 大和書房:刊

 人は忘れるもの、間違いを犯すもの。
 何ごとも、その前提に立って考える必要があります。

 チェックリストは、“万が一”のうっかりミスの可能性をなくしてくれるツール。
 その安心感が、集中力を高めてくれるのですね。
 ぜひ、活用したいです。

メールチェックのクセは、「根本的」に直せ

 脳は、「社会的批判」に対してとても敏感に反応します。
 つまり、他人がどう言っているかを、私たちはもっとも気にして生きているということです。

 メールチェックというのは、その象徴なのです。
 だからこそ私は、それを最優先にするのをやめてほしいといつも願っています。私自身が、そう心がけてもいるのです。
 仕事でメールをするということになれば、それは依頼であることが多いでしょう。
 依頼する側にしてみれば、相手はそれを最優先でやってくれて当然だ、くらいに考えがちです。
 しかし、メールで簡単に仕事を依頼できる今、誰の受信トレイにも、メールからの仕事の依頼が連日たくさん入っているわけで、そのすべてに一斉に対処できるわけがありません。頭ではみんなそのことを知っているのです。
 メールや電話での依頼だろうと、職場の連絡ツールからの依頼だろうと、基本的に私たちは、依頼された順に仕事を片づけるべきです。おそらく会社に行って最初に手がけるべき、もっとも差し迫った用事は、新着メールの中にはないはずです。
 言うまでもありませんが、そもそも新着メールをチェックすること自体が仕事であるという人のケースは、ここでは除外しています。
(中略)
 わたしが「メールチェックしない」で言いたいことは、他人の評価や評判のウワサを、頭の中でもっとも気にするクセを改めるべきだ、ということでした。どうしても、メールチェックから仕事を始めなければならない人もいるでしょう。
 しかし、とにかく惰性(だせい)で、オフィスに着くなりメールチェックしてしまっている人のほうが多いくらいだと思うのです。そして、毎日仕事を始めるなりメールチェックしていれば、心理的にはどうしてもそういう習慣がついてしまいます。他人のちょっとした要求に応(こた)えることが仕事としてもっとも大事だと思ってしまうのです。
 そういうクセは、本当に大事な仕事に没頭するためには、妨げになるとしか思えないのです。
 なるべく、自分が関心を向けるべきことがらに、主体的に関心を向けるというクセをつけたいものです。集中するとは、そういうことなのです。
 仕事でなくても同じです。朝起きるなり、プライベートのメールや、FacebookやTwitterをチェックするというのはよくありません。朝起きるなり、他人との関わりを真っ先にチェックするというのでは、自分自身が本当に考えるべきことを疎(おろそ)かにしている言っているようなものです。
 集中するには、集中するべきことを、まず自分で選ぶ必要があります。メールチェックしない。Facebookをチェックしない。Twitterをチェックしない。メッセージをチェックしない。留守番電話をチェックしない。そしてテレビや新聞やニュースをチェックしない。
 これらは、自分が関わるべきことを主体的に選択するためにも、象徴的に「やるべきではないこと」なのです。

 『短時間で「完全集中」するメソッド』 第3章 より 佐々木正悟:著 大和書房:刊

 習慣というのは、恐ろしいものです。
 自分にとって大事なことではないのに、無意識に手を付けてしまっている。
 メールチェックやFacebookのチェックなどは、まさにその代表です。

 誰もが簡単に情報を共有し、相手とコンタクトを取れる時代。
 だからこそ、「やるべきでないこと」を決めなければなりません。

 自分が関わるべきことがらに、主体的に関心を向ける。
 どんなときも、意識して行動したいですね。

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 佐々木さんは、集中とは、注意するための資源を使うことだとおっしゃっています。
 集中ができないのは、その資源がないか、出し惜しみしているかのどちらかです。

 余計なことに邪魔されず、どれだけ本当にやるべきことに注意を向けられるか。
 集中すべきときに、心の声をシャットアウトして、どれだけ目の前のことに専心できるか。
 このふたつを追求するが、「完全集中」するためのコツです。

 一日に使える「注意するための資源」は限られています。
 できるかぎり有効に使って、作業の生産性を高めていきたいですね。

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