本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『ミッション』(岩田松雄)

 お薦めの本の紹介です。
 岩田松雄さんの『ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由』です。

 岩田松雄(いわた・まつお)さんは、日本を代表する経営者のお一人です。
 複数の会社のCEO(最高経営責任者)を歴任、51歳の若さでコーヒーチェーン大手のスターバックスのCEOに就任されました。

一流ブランドとそれ以外を区別する「ミッション」

 世界を変えてきた人たちは、何かに「突き動かされるように」生きています。
 その原動力は、「ミッション(使命感)」です。

 岩田さんは、使命感こそが、人々の期待を大きく超え、感動を呼び、社会を好転させる源泉になると指摘します。

 重視すべきは、「働くスタイル」ではなく、「いかに人を喜ばせるか」
 つまり、ミッションを掲げ、社会を変える一翼を担うことです。

 岩田さんは、何のために働くのか? どこに向かってビジネスをしているのか? その持続的な問いかけが、従業員ひとりひとりに深く染み渡り、終わりのない努力を続けているからこそ、他社との「違い」を生み出し、一流に見えると強調します。

 本書は、「ミッション」とはどのようなもので、それを構築するのに必要なことをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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なぜスターバックスは長居する客を追い出さないのか

 スターバックスは、基本的に、長居するお客様を追い出すことはありません。
 席の専有時間に制限を設けて回転効率を高めたほうが、売上げも上がるにもかかわらず、です。

 その理由は、スターバックスのミッションは、コーヒーを売ることではないからです。

 スターバックスは、BHAG(ビーハグ、Big Hairy Audacious Goalの略。「社運を賭けた大胆な目標」の意味)として、以下のような言葉を掲げています。

「人々の心に活力と栄養を与えるブランドとして世界でもっとも知られ、尊敬される企業になること」

 ここには、「コーヒーを売る」とか、「売り上げや利益を追求する」といった言葉は出てきません。
 学生でも、ビジネスパーソンでも、スターバックスに来たお客様が、リラックスできたり(活力を得る)、賢くなったり(栄養をとる)すれば、それでいい。
 それは確実に世の中のためになっていることだから。
 人々のために、おいしいコーヒーと居心地のよい環境を提供することを通じて、「人々の心に活力と栄養を与える」ことが、スターバックスのこの社会における使命なのです。
(中略)
 スターバックス躍進の立役者のひとりで、私の大好きなハワード・ビーハーは、こう述べています。

 「私たちは人々のお腹を満たしているのではない。心を満たしているのだ」

コーヒー・ビジネスではなく、「ピープル・ビジネス」を追求する。すると、お客様の心を満たしていたつもりなのに、やがて、お客様からも心を満たされるようにさえなる。
 こうしてミッションを通じて、両者の間には本質的な結びつきが生まれます。
 中には仲間に加わる人も出てくる。
 結果として、企業には十分なリターンが長期的に得られるようになる。

 『ミッション』 第1章 より 岩田松雄:著 アスコム:刊

 しっかりとしたミッションや理念を打ち立てて、それに基づいた経営をする。
 すると、短期的には、不利益を被らないとならない状況に遭遇することもあります。

 どんな状況でも、妥協せず、自ら定めたミッションに忠実に従う。
 それが、その会社のブランド力を高めることにつながります。

「スターバックス・エクスペリエンス」とは?

 スターバックスが、初めて日本に出店したのは1996年。
 日本に初めて「シアトルスタイル」を普及させたコーヒーチェーン店との評価が一般的です。

 岩田さんは、そういった評価は、「事実ではあるけれど本質ではない」と指摘します。

 噂を聞きつけて初めてスターバックスにやって来たお客様は、それまで日本ではめったに味わうことができなかったコーヒーに満足したかもしれない。しかし、2回、3回と通ううちに、コーヒーの味だけではなく、接客や全体のおしゃれな雰囲気、スターバックスを包んでいる空気に価値を感じるようになってきます。そこにパートナーが、笑顔で声をかけてくれたり、コーヒーをこぼしてしまったときにいやな顔ひとつせず対応してくれたりといった経験をすると、いよいよその人の中では、スターバックスでのできごと、そしてスターバックスに行くことそのものが価値になってくる。
 これこそが、スターバックス・エクスペリエンス。スターバックスでしか味わえない経験なのです。
 ドリップコーヒーのショートサイズは、今300円。しかし、お客様が300円出して買い求めているものは、コーヒーだけでなく、スターバックス・エクスペリエンスなのです。そこに価値を見いだしたお客様にとって、スターバックスはもはやライフスタイル化します。そしてこれまで紹介したようなさまざまなレジェンドをわがことのように誇りに思い、スターバックスのファンでいること、そしてスターバックスのロゴマークが入ったカップやタンブラー、バッグを持っていることそのものに、かっこよさ、自分らしさを投影してくださるようになるのです。
 ミッションがあるから、エクスペリエンスが生まれる。すぐれた商品にエクスペリエンスがセットされているから、ブランドになる。ものがあふれた成熟社会では、お客様はそこにこそ価値を見いだします。

 『ミッション』 第3章 より 岩田松雄:著 アスコム:刊

「また来たい」と感じるような、雰囲気や居心地の良さを体験できる。
 それが、スターバックスの最大の魅力です。

 パートナー(従業員)の一人ひとりがミッションを理解して働いている。
 そのことの証ですね。

 スターバックスに限らず、高いブランド力を維持する会社は、末端の社員までミッションが行き渡っています。

「私」を無くすこと

 ミッションを構築するにあたっては、無私、つまり、「私」を無くすことが重要です。

 ここで言う「私」とは、たとえば自分の出世のためや、お金儲けをしようといったたぐいの気持ちです。
 自分の営利栄達ではなく、何らかの形で世の中をよくしていこう、人のためになることをしようという志(ミッション)を定めたなら、思い切ってビジネスを始めてみればいいと思います。
 会社員として企業の中で生きていると、ミッションを見つけることは、確かに簡単なことではありません。仮に見つかっても企業のミッションと自分のミッションをどう折り合いをつけるか悩みます。それらが一致していいたらどんなに幸せでしょうか。
 しかし、ミッションを作るにあたって自分の心に聞いてみれば、そこに「私」があるのかないのかは明確にわかります。自分だけは絶対にごまかせません。
 自分の気持ちが、「世の中をよくするためだ」と信じられるかどうか。そう思えるなら、前に進めばいいのです。

 『ミッション』 第5章 より 岩田松雄:著 アスコム:刊

 ミッションは、自分自身の成長や会社の成長とともに大きくなっていきます。
 なので、今の時点でミッションがないことを恥じる必要はありません。

 それよりも、自分のミッション、つまり今生かされている理由を考え続けることこそが大切です。

「世の中をよくするためだ」

 そう信じられる自分だけのミッションを見つけるべく、日々努力をしていきたいですね。

「背景」と「意義」を必ず説明する

 自分のミッションを周囲に伝えるために、身につけておくべき習慣のひとつ。
 それは、指示やお願いをするとき、できるだけその背景にある意図や、意義を説明することです。

A:「このデータ、前期、前々期と比較して表を作って、30部コピーしておいて」

B:「このデータ、明日の◯◯ブロックの店長会議で使いたいんだ。前期、前々期と比較して表を作ってほしいんだけど、店長さんたちを元気づけるために伸びが強調できるようにしておいて。みんな喜ぶだろうから。今聞いている参加者は30名だけど、必要分コピーしておいてね」

 AとB、しゃべる時間の差はせいぜい10秒。しかしBのほうは、自分が与えられた仕事が持っている意味、それがどういう形で社業にかかわっているのかをはるかに理解しやすいはずです。
 ちょっとでいいので、背景や意義を説明しておくと、相手はモチベーションがわき、仕事の優先度合い、要求されているクオリティのレベルを判断できるのです。これは、クセさえつけてしまえばそれほど難しいことではありません。
 マネジメントレターとも共通しますが、私は、よきリーダーはよき説明者であると考えています。
 せっかくミッションを持ち、目標を掲げて走っていても、今どのあたりを走っているのか、スピードはどのくらい出ているのか、もっとよいやり方はないのか、自分は全体に貢献できているのかを知りたくなるし、知らされるほうが、目標に向かおうとする力そのものがより強くなる。だから、数字をはじめとする情報はできるだけオープンにし、みんなで共有するほうがいいのです。

 『ミッション』 第6章 より 岩田松雄:著 アスコム:刊

 何のためにやるのか。
 目的は何なのか。

 指示を受ける方も、それをはっきり理解したほうがやりがいを感じます。

 自分のやることが、ミッションや理念とどのようにつながるのかを事あるごとに示してあげる。
 それが、組織の中にそれらを浸透させる最も有効的な方法です。

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 喜びながら働け、社会にも貢献できるような確固たるミッションを持つ。

 それを実践している企業は人を惹きつけます。
「また来たい」と思わせる魅力を持っていますね。

 会社を家に例えると、ミッションは、“大黒柱”のようなもの。
 大黒柱がしっかりしていないと、成長とともに自らの重みで潰れてしまいます。
 また、想定外の大きさの嵐が来たときに倒壊してしまいます。

 それは、会社だけでなく、個人にもいえることです。

 自分が世の中のためにできることは何か、自分自身のミッションは何か。
 つねに自問自答しながら生きていきたいですね。

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One thought on “【書評】『ミッション』(岩田松雄)

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