本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『「がまん」するから老化する』(和田秀樹)

 お薦めの本の紹介です。
 和田秀樹先生の『「がまん」するから老化する』です。

 和田秀樹(わだ・ひでき)先生は、精神分析学がご専門の精神科医です。
 メンタルヘルス関係のご本を多く書かれています。

アンチエイジングに本当に必要な健康法は?

 ひとくちに高齢者といっても、非常に個人差が大きいです。

 90代なのにかなりアクティブで見た目も若々しい人もいます。
 一方、60代でおじいさん、おばあさん然としている人もいます。

 その理由のひとつは、「いま多くの医者が推奨している、予防医学的、節制的健康法は老化を逆に進めてしまう」ことにあります。

 例えば、老化予防と健康法として、一時期もてはやされた「メタボ検診」。
 太り過ぎは、糖尿病などさまざまな生活習慣病にかかりやすいので、改善を求められてきました。

 しかし、統計を見る限り、太めの人のほうが、やせ型より6〜8年も長生きすることが明らかになっています。
 その理由は、太めの人のほうが、免疫機能が高かったり、うつ病になりにくかったりするためだと想定されています。

 単純に、「太っているからダメ、やせているからいい」というわけではないということですね。

 和田先生は、これまで「体にいい」と思われてきた健康に対する常識が、逆に老化を促進したり、健康を損ねる原因にもなりかねないと警鐘を鳴らします。

 本当の意味でのアンチエイジング(抗加齢)を考える。
 そのためには、ある特定の病気の予防や臓器の健康だけに焦点を合わせるのではなく、人間全体としての老化予防や健康法をトータルで考える必要があります。

 本書は、誰にも役立つ老化予防の知識を、具体的な方法を含めてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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歳を取るほど、使わないことによる衰えがひどくなる

 和田先生は、本来の正常老化の場合、歳を取ったからといって大きな機能低下はないと述べています。

 心臓の機能でいうと、若い人の心臓は最大で安静時の4.6倍の血液を送り出すことができます。 

 70歳の高齢者では、それが3.3倍に低下しますが、日常生活に何の支障もない程度の衰えです。

 一般的に考えられているほど、歳を取ったらさまざまなことができなくなるわけでもない。現実に75~79歳でも九割近い人は、若い人と同じように正常歩行ができる能力を保っているわけだし、実用機能では極端な違いは表れないのだ。
 しかし、もちろん若い人との違いもある。歳を取るほど使わなかったときの衰えが大きくなるのだ。すなわち、若者がスキーで骨折した場合、1カ月間ベッドに横になっていても、骨がつながった時点で歩ける。だが高齢者が、たとえばそれまで元気だった80代の人が、風邪をこじらせて肺炎になって1カ月寝ていると、しばらくリハビリをしないと歩けなくなる。リハビリ医学が進歩する以前は、そのまま寝たきりになってしまう高齢者が大勢いたのである。
 この「廃用」と呼ばれる現象が、歳を取れば取るほど起きやすくなる。
 脳の知的な活動についても同様だ。若者の場合、勉強をさぼっているとテストの成績こそ下がるものの、知能テストの結果がどんどん悪くなるということはありえない。だが高齢者が入院して、ずっと天井を見ているような暮らしをしていると、急速に記憶力や、日時や自分がどこにいるのかという見当識が衰えて、認知症のような症状が現れることは珍しくない。筋肉も脳も、使わないことによる衰えが激しくなるのだ。
 結果として同じ年齢でも、若い人並みの運動能力を持っている人や知的な仕事で業績を上げている人もいれば、よぼよぼと歩くのがやっとという人や、記憶力や見当識が怪しくなっている人もいるのである。

 『「がまん」するから老化する』 第1章 より 和田秀樹:著 PHP研究所:刊

 年齢にかかわらず、使わない体の機能はどんどん衰えていきます。
 ただ、歳を取るほど、その機能を回復させるまで時間がかかります。

 体の衰えを防ぐには、いろいろな体の機能を定期的に使うこと。
 若いうちに、頭も体も、しっかり動かす習慣を身につけたいですね。

「よい脂肪」と「悪い脂肪」

「摂り過ぎると太る」ということから、悪いイメージのある脂肪。
 最近、脂肪の中にも「よい脂肪」と「悪い脂肪」があることがわかってきました。

 和田先生は、悪い脂肪の代表例として、「マーガリン」を挙げています。

 マーガリンに多く含まれる「トランス脂肪酸」が、動脈硬化の原因になるからです。

 トランス脂肪酸とは植物油に水素を添加して固めるような加工をしたり、調理の過程で高い熱を加えた場合などに発生する物質だ。「総摂取カロリーの2%を超えると生命に危険を及ぼす」とも言われ、動脈硬化のほかにもアレルギー、痴呆(ちほう)、脳血管障害、ガン、糖尿病などさまざまな病気との関連が疑われている。
 マーガリンだけでなく、パンやスナック菓子によく使われるショートニングに多く含まれているほか、マヨネーズ、アイスクリーム、ドーナツ、フライドチキン、フライドポテトなどあらゆる加工食品に使われている。いわゆるジャンクフードに多いから、「こんなものばかり食べていたら太る」というイメージだけでなく、実質的に寿命を縮める種類の食べ物であることが裏付けられた格好だ。
 また、食品に含まれる脂肪の主成分が脂肪酸である。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別されるが、これは炭素のつながり方の違いである。バターやラードなどの動物性脂肪は飽和脂肪酸を多く含み固まりやすい。オリーブオイルやサラダ油などの植物性脂肪や魚の脂肪は、不飽和脂肪酸を多く含んでいて固まりにくいのだ。
 同じように肉を多食して、同じような食生活をしている欧米諸国でも、動脈硬化や心筋梗塞が多くて寿命を縮めている国々は、よくない脂肪の摂り方をしていると考えられる。アメリカはさすがにそのことに気がついているらしく、すべての食品にトランス脂肪酸の含有量を表示する義務ができている。単純に脂肪を減らせばいいと信じてきた日本人も、「よい脂肪」と「悪い脂肪」があると認識を改める必要がある。

 『「がまん」するから老化する』 第2章 より 和田秀樹:著 PHP研究所:刊

 脂肪は、人間が生きていく上では欠かせない栄養素です。

 ただやみくもに、減らせばいいというものではありません。
 ダイエットに積極的に取り組んでいる人は、とくに注意が必要です。

「よい脂肪」と「悪い脂肪」を切り分け、日々の健康にも役立てたいですね。

「前頭葉」の活性化が老化防止のカギ

 人は、歳を取るにつれて、「面倒くさい」と思うことが増えていきます。

 和田先生は、人間は身体機能よりも、心や感情から老け始めることを示唆していると指摘します。
 感情の老化は、『いちばん最初の段階で食い止めなければいけない防波堤』です。

 人の感情を司るのは、脳の前方の「前頭葉」と呼ばれる部分です。
 前頭葉には、意欲や創造性を担う機能があると考えられています。

 前頭葉が老化すると、意欲を持ってものごとに取り組んだり、自分で考えをまとめたりすることが苦手になってくるといった変化が現れる。
 側頭葉なら左側は言語の記憶や理解に関係していて、この部分が脳梗塞になると、人の話がまったく理解できなくなる感覚性失語と言われる症状が現れるが、前頭葉の場合、知能はとくに変化せず、驚き・怒り・悲しみ・喜びといった感情に変化が目立つのだ。
 すなわち前頭葉が衰えると、老け込んだ人間になりやすい。脳の中ではまず前頭葉の老化予防が大事だと判明してきている。
「脳トレ」で一躍有名になった、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授は、前頭葉の血流を増やすために単純な計算や音読を勧めている。彼は毎日、読み・書き・計算を反復練習する「学習療法」を提唱している。前頭葉が刺激され、記憶力を鍛える練習はしなくても、物忘れが改善されたりするという。
 一般論から言うと、老化の予防とは前述のようにその部位を使うことだ。50の声を聞いて、足腰が以前より弱ってきたなと思ったら歩かないといけないとか、パソコンでばかり仕事をしていて漢字を忘れたなと思ったら、ときには手書きで文字を書いてみる。何と言っても「使うこと」が、もっともシンプルな老化予防作業だ。

 『「がまん」するから老化する』 第4章 より 和田秀樹:著 PHP研究所:刊

 前頭葉は、決まりきった作業を行っているときには、あまり使いません。

 経験したことのないことや、ワクワクドキドキするようなことをやる。
 そんなときに、前頭葉は活発に活動します。

 平日は、家と会社の往復だけ。
 休日は家でだらだらテレビを観る。

 そんな刺激のない生活が、もっとも感情を老化させます。

老化予防の手本は医者より、若々しい人

 野球がうまくなりたい人は、野球がうまい人に習うのが一番です。

 老化予防や健康長寿の方法についても、それは同様です。

 ではどういう人を手本にすればいいかというと、年齢を感じさせない若々しい人だ。
 とはいえ、「酒もタバコもやり続けて長生きしている人がいるから自分も」と真似するのとはもちろん違う。一人だけ見ては例外も多いし、何が若々しさに寄与しているのかわからない。
 たとえば自分から見て、若くて元気な80代を数多くリストアップして、この人たちの共通点は何だろうと考える。おそらくそんな人たちの生活習慣が、アンチエイジングにより近い。そうすると「作家の先生とかって、銀座で遊んでる人のほうが若いんだ」などという発見があるかもしれない。「やはり長寿村ではみんな働いている」と再確認することになるかもしれない。
 健康常識や長寿常識を鵜呑みにせずに、「待てよ」と疑いつつ、自分なりに確かめてよさそうなものを実践する。それがアンチエイジングの本質だと思う。

 『「がまん」するから老化する』 第章 より 和田秀樹:著 PHP研究所:刊

 ほとんどの医者は、アンチエイジングや若返り法については教えません。
 医者のアドバイスは、「病気を治すための方法」で、「病気にかからないための方法」です。

 和田先生は、「病気にかからないで生きること」と「若々しく生きること」は、まったく別のことだと強調します。

 いつまでも年齢を感じさせずに若々しく生きる。
 そのために、身近にいいお手本をたくさん見つけて見習いたいですね。

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 日本は、世界でもトップクラスの長寿大国であり、急激に高齢化が進む社会です。
 これから関心を集めるのは、「人生の質(クオリティー・オブ・ライフ)」です。

「長く生きるだけでなく、いつまでも健康的で充実した人生を送りたい」

 そう誰もが願っています。

 いずれ来る「その日」のため、アンチエイジングに関して正しい知識を持つこと。
 手遅れになる前にしっかりとした準備をしたいですね。

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