【書評】『朝晩30分好きなことで起業する』(新井一)
お薦めの本の紹介です。
新井一さんの『働きながらリスクゼロで小さく稼ぐ 朝晩30分好きなことで起業する』です。
新井一(あらい・はじめ)さんは、これまで10000人の起業をプロデュースした「起業のプロ」です。
「好きなこと」で働きながら起業する!
学生、主婦、OL、会社員、フリーター、引きこもり。
新井さんは、これまで、起業とは、一見無縁と思える人たちを、起業に導いてきました。
起業というと、「自分にはとうてい無理だ」と思い込んで、あきらめている人も多いです。
しかし、難しく考える必要は、全くありせん。
新井さんは、「好きなこと」、「強み」がビジネスになっていくもの
だと強調します。
起業をするのに性格の向き不向きも特にありません。よく言われるような起業家スピリットも必要ありません。
多くの方は、起業家に対して固有のイメージを持っています。「パワフルで朝から晩まで働いても疲れない」「いつでも明るくて人と交わるのが好き」「とにかく前向きでやる気全開」・・・・・。そういう起業家が目立っているのでそんな印象があるのでしょうが、これらは決して必要不可欠な要素ではありません。
かくいう私は「人と話すのが苦手で、なるべく人と付き合いたくない」性格ですが、会社員を続けながら朝晩30分ずつの時間で「好きなこと」でビジネスを展開し、成功を収めてきました。「好きなこと」を持ってさえいれば、すべての人に起業のチャンスがあります。
あなたが今会社員なら、起業と会社をはかりにかける必要もありません。会社員を続けながら、起業への第一歩を踏み出してください。『朝晩30分 好きなことで起業する』 はじめに より 新井一:著 大和書房:刊
本書は、働きながら「好きなこと」で起業するための具体的なノウハウをまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「朝晩30分」だけでいい
会社員のまま、起業準備をする。
そのメリットのひとつに「時間」があります。
新井さんは、起業のために必要な朝夕30分の時間を作り出せるのは、規則正しく生活している会社員だからこそ
だと指摘します。
会社員は就業時間が決められています。決まった時間に出社し、その日の業務が終了して退社するまでは会社に拘束されます。それが辛いという人も多いですが、見方を変えれば就業時間以外は自由ということです。
その中から毎日どのくらいの時間を起業準備のために使えるかを計算することができます。
休みも定期的にありますし、有給休暇もあります。お正月や夏季休暇、ゴールデンウィークなどの長期休暇もしっかりとることができます。法定労働時間の上限まで働いた場合でも年間105日の休暇があります。一般的な企業の平均は年間120日だとされています。さらに、今年だけでなく来年の予定もだいたい予測することができます。つまり、長期的な計画を立てやすいのです。会社員を辞めて、起業してしまった場合はどうなるのか。
私自身も経験がありますが、独立した年は大晦日と元日の2日間しか休みをとることができませんでした。
自分で自分のスケジュールが決められるのが起業のよさなのですが、いざそうなると「おちおち休んでなんかいられない!」という気持ちになってしまうのです。
自分の代わりに仕事をしてくれる人は誰もいないので、自分が動かないことにはいつまでもお客さんを待たせてしまうことになります。そんなもったいないこと、失礼なことはできません。つまり、休めない。休む気にならない。休日出勤があるたびに「休みの日なのに仕事なんて」とイライラ怒っていた人が、会社を辞めて起業すると、一年365日中、いつも仕事のことが気にかかって「仕事があるのに休んでいいのかな」と思うようになります。
長期旅行はなかなか実行できません。来年のいつ頃が暇になるかという予想を立てることもできません。
ただしそれが全く苦にならないのが「好きなこと」から始める起業の面白いところです。
確実に休日がある会社員。一日のうち仕事から完全に離れられる時間が持てる会社員。また、会社員は日々の自由な時間は少ないかもしれませんが、その代わりに「期間」のゆとりがあります。長い目で取り組めるというのが大きなメリットです。
せっかくの恵まれたこの身分を早まって手放してはいけません。
繰り返しますが、起業準備は会社員を続けながら行うのが最も効率的で、ゴールへの近道となります。まずは今の生活の中から起業準備のために使う時間を作り出してください。
朝と晩それぞれ30分あれば十分です。
その時間を使って「好きなこと」を見つけます。『朝晩30分 好きなことで起業する』 Step1 より 新井一:著 大和書房:刊
毎月決められた金額の給料が支給され、ボーナスも出る。
週に2日の休日があり、年末年始やゴールデンウィークなど、まとまった休みも取れる。
当たり前のように感じていることも、実は、当たり前ではないということですね。
会社員を続けて、経済的、時間的な余裕を確保しながら、起業の準備を進める。
重要なことほど、焦らず、慎重に、ですね。
ビジネスと深くかかわる「自分自身の内面」
ビジネスにつながる「好きなこと」を見つける。
そのために大切なのが、「自分自身の内面から出てくる想いに気づくこと」です。
新井さんは、以下のような自分の内面をさらに掘り下げて「好きなこと」を見つけ出すためのワーク
を紹介しています。
ワーク1 これまでに達成したこと
毎晩、寝る前の5分を使ってこれまでに達成したことを書きだしてみよう。
これまでの人生を、「幼少期」「小学生時代」「中学・高校生時代」「大学生時代」とその後10年ごとのステージに分けて、それぞれの期間に達成したことを書きだしてください。たとえば知人の女性はこんなふうに書きました。
- 幼少期 おゆうぎ会で主役をやった
- 小学生時代 臨海学校で3キロの遠泳に成功した
- 中学・高校生時代 受験に成功し、志望校に入学できた
- 大学生時代 一人暮らしを始めた
- 20代 結婚と出産
- 30代 特になし
- 40代 再就職して社会復帰
書いた後に感想をたずねるとスラスラと書けたところと、どんなに考えても思いつかなかったところがある」ということでした。そしてこう返されました。
「これにどんな意味があるんですか?」実は書き出した内容の一つひとつになにか大きな意味があるというわけではありません。
大切なのは、すぐ書けることとなかなか書けないことがあるということに自分自身が気づくということなのです。
スラスラと書けることとスラスラと書けないことは、記憶の中で何が違っているのでしょうか?
すぐに思い出せて書けた出来事は、強い気持ちがセットになっている記憶です。その出来事があって、その時自分がどう感じたかを覚えているからこそいつまでも記憶に残るのです。
このことを示す非常にわかりやすい例として、3・11の東日本大震災のことがあります。2011年の3月11日の記憶は、あまりに大きな気持の動きがあったため、日本人の誰の胸からも消え去ることはありません。
誰にたずねても、その日の記憶のことを細かに話してくれます。
ところが、昨年の3月11日はどんな日でしたか? と聞いても、たいていの人は思い出すことができません。つまり、スラスラ書けた出来事には、何らかの強い気持ちが伴っているということです。それをひとつずつ確認します。達成したことというテーマだったので、感情は「嬉しかった」「誇らしかった」ということになるでしょう。でも、達成したことは他にもたくさんあるはずなのに、なぜその達成を自分は選んで書きだしたのかを考えてください。
共通していることが見えてくるはずです。たとえば「親が喜んでくれたから嬉しかった」「先生にほめられたから誇らしかった」「友達にすごいねって言われて自慢できた」というふうに、どんなシチュエーションの時に自分がすごく嬉しかったのかが明確になります。この作業は、一気にやる必要はありません。寝る前の5分くらいを使って考えることをしばらくの間、続けてみてください。寝る前だけじゃなく通勤電車の中でもいいと思います。
繰り返し過去の達成について考えていると、ある時ふと「本当は自分はこういう人生が送りたいんだな」と思う瞬間がやってきます。
それをノートに書いておいてください。「好きなこと」を見つけるための大きな第一歩です。『朝晩30分 好きなことで起業する』 Step1 より 新井一:著 大和書房:刊
「三つ子の魂百まで」
子どもの頃の性格や好き嫌いは、歳を重ねても、変わるものではありません。
大人になると、仕事などで忙しくなり、自分自身を振り返る機会が少なくなります。
また、好きなことをして遊んだりする時間も、少なくなります。
「本当は自分は何をしたいのか」
それを知るためには、過去の自分を見つめ直すのが一番です。
世界一ではなく、「商店街一」を目指す
「好きなこと」を自分のオリジナリティとして、「強み」と言えるまでに高める。
それには、その分野について「私はスペシャリストだ」と名乗れるくらいの知識が必要
です。
そのためには同じジャンルの本を60冊読む、と決めてください。
60冊の本を読むというのは実際には大変なことです。でも、その大変なことができるからこそ、自分の強みにできるのです。
誰もが億劫(おっくう)がってやろうとないことにコツコツと真面目に取り組むことで、そのジャンルを極めることができます。
頭一つ飛び抜けた存在になれます。よくある間違いが、スペシャリストを目指すとなると、日本一、世界一と意気込むタイプ。よほどのことがない限り、絶望的に難しいでしょう。
日本一からどんどん絞り込んでいくのです。東京一、千代田区一、というように。
千代田区だけでも数千の企業がひしめき合っています。ですからどんどんどんどん小さくしてくのです。丸の内、丸の内のさらに丸ビル。さらに丸ビルの4階、といったように。最もわかりやすいのは、商店街で買い物をするのが好きなら、その商店街のすべてのお店に立ち寄って店主と話をします。
どんなものがどこで売られているのか、実際に購入して味や使い心地なども記録に残しましょう。3ヶ月かけてすべての店を回り終わった頃には、あなたはその商店街のスペシャリストを名乗ることができます。
ドーナツ屋だけを100軒まわって徹底比較するというのでもいいでしょう。
軒数でなくても、一つのお店の全メニューを食べて記録して評価するということでも実行できたら立派な強みとなります。他の人がまだやっていないことを見つけて、深掘りするのがポイントです。どの場合も、途中で嫌になって止めたくなってしまうかもしれません。
単に「それほど好きではなかった」ということです。
強みにできるほどの「好きなこと」ではなかったということ。その場合は別の「好きなこと」を探してください。途中で「これは違うな」と思ったら、方向転換してもかまいません。苦しいことを無理して続ける必要は全くありません。
(中略)
マニアックな領域でスペシャリストになった人たちはみなさん「好きなこと」がスタートです。
好きだから楽しい。楽しいから続ける。そうやって蓄積された経験や知識が「強み」となります。『朝晩30分 好きなことで起業する』 Step2 より 新井一:著 大和書房:刊
起業は、いわば、個人商店を出すようなもの。
全国展開している大手チェーン店と、値段の安さや品ぞろえの豊富さで勝負しても、勝ち目はありません。
目指すは、知る人ぞ知る、路地裏の隠れた名店です。
ターゲットは、絞れるだけ絞り込む。
そして、そのジャンルについては、誰にも負けないくらいに勉強する。
「好きなこと」を極めて、マニアックな領域でのスペシャリストになりましょう。
会社のお金でスキルアップしていると感謝する
会社員のまま起業準備する。
そのメリットのひとつに、「お金をもらいながらビジネスの経験を積める」ということがあります。
パソコンの使いこなし方、書類の作り方、営業電話のかけ方や受け答えのマナー、仕事上での言葉遣いなどを給料をもらいながら勉強できるというのはとても恵まれたことです。これらの経験のない学生に比べると、起業準備を進めるにあたって大変有利な条件となります。
このような基礎業務の研修は、いざ外部で受けるとなると大変な高額になりますので会社員の間にしっかり身に付けておくといいでしょう。
また、会社の看板のおかげで、通常なら会うのが難しい方とも会うことができます。
ここで作った経営者層との人間関係は、起業後も続く場合があります。関係者への根回しなんていう発想も、会社員ならではのビジネスの知恵の一つです。最近は、学生起業家も増えています。中には大成功を収めている人もいますが、できれば起業する前に一度は会社員になったほうがいいと私は感じています。
それくらい、会社員経験が起業後に役に立つことが多いからです。起業の相談に来る学生や主婦の中には、社会人としての基本的なことやビジネスのいろはが分かっていない人もいます。
相談に来ているのに、そしてこちらの方が明らかに年長者なのに、いわゆる「ため口」で話す若者、料理が上手だというだけですぐにでもカフェを開いて起業できると思い込んでいる主婦など、あまりに世間知らずでどこから教えればいいのかと頭を抱えてしまうこともあります。会社員の間に、最低限のパソコンスキル、コミュニケーションスキル、社会人としてのマナーや礼儀は身に付けてください。
これらの能力はポータブルスキルと呼ばれるもので、持ち運びができる能力です。
どんな仕事においても必ず必要になります。正社員でなくても構いません。派遣社員でも、パートでも、アルバイトでも。
組織の中で、一度は怒られたことがある。全く新しいことを一から覚えたことがある。そういう経験が大切です。
最近の若い人たちは、なんでもスマートフォンで済ませてしまうのでパソコンはあまり使っていないという人も多いのですが、ビジネスでは必要になることが多いのでワード、エクセル、パワーポイントもしっかりマスターしておきましょう。
会社の中で鍛えられることによって、知らず知らずのうちに特定の業務の専門性が高まることもあります。専門的な知識や経験は、起業にももちろんとても役に立ちます。『朝晩30分 好きなことで起業する』 Step2 より 新井一:著 大和書房:刊
当たり前のことを、当たり前にできること。
それが、成功するための必要条件です。
会社で働くにしろ、起業するにしろ、それは変わりません。
ポータブルスキルを磨いて、会社員だった経験を「強み」にする。
そのような意識で仕事に取り組めば、単調になりがちな会社生活にも、ハリが出ますね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
新井さんは、「好きなこと」から始める起業は、すべての人が実行可能なもの
だと強調されています。
「好きなこと」は、どれだけ長時間やっていても、つらくありません。
逆に、やればやるほど「上手になりたい」「その楽しさを広めたい」という気持ちが湧いてきます。
どんな才能も、「好き」という気持ちに、敵うものはありません。
「好きこそものの上手なれ」とは、よく言ったものです。
好きなことは、誰にでもあります。
そして、「好き」をビジネスにする方法も、必ずあります。
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