本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『「腕もみ」で胃腸の不調がみるみる改善する!』(孫維良)

 お薦めの本の紹介です。
 孫維良先生の『1日1分! 「腕もみ」で胃腸の不調がみるみる改善する! ―遠くのふくらはぎより近くの腕!』です。

 孫維良(そん・いりょう)先生は、中医学がご専門の医師です。
 現在は、東京中医学研究所の所長を務められています。

からだの不調は、「自分の手」で治す

 手を使った治療法は、人類が考え出したもっもと古い治療法です。
 世界中で、その土地の文化とともに発展してきました。

 例えば、日本では、「指圧」。
 アメリカでは、「カイロプラティック」があります。
 中国では、「あんま療法」だけでも、400種類以上あるそうです。

 孫先生は、どの手技治療も、基本となる考え方は、自分のからだは自分で治すことだと述べています。

 中国には、古くから「病気は自分でつくったものだから、自分で治すもの」という文化がありました。
 この文化には、いまも深く浸透していて、わたしが知る限りでも、何百人もの人が、セルフケアによって病気を克服し、健康を取り戻すことに成功しています。手技治療がはじまった歴史を考えると、数えきれないくらいの人が自力で病気から回復し、健康的な一生を送られたのだと思います。

 考えてみると、病気の多くは自分でつくり出すものです。
 糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化といった生活習慣病は、まさに自分がつくる病気だといえます。
 また、仕事でパソコン作業以外に、スマートフォンやテレビなど、目を使いすぎることで起きる眼精疲労、悪い姿勢を続けることで症状が悪化する肩こりなども、自分でつくる病気といっていいでしょう。

 自分でつくったら、自分で治す。
 それができるのが、「自分の手」を使った治療法なのです。

 自分の手なら、いつでも「手あて」することができます。病院や診療所のように休診日はないので、極端な話、365日治療を続けることができます。しかも、調子が悪ければ、1日数回治療することもできます。

 安易に薬に頼る前に、テレビや新聞の広告に煽られて電気マッサージ器などの健康機器を購入する前に、まずは、自分の手を使って自分の体をいやしてあげませんか。

『「腕もみ」で胃腸の不調がみるみる改善する!』 第1章 より 孫維良:著 プレジデント社:刊

 孫先生は、自分の手は、自分のからだを守る最高のパートナーだと強調します。

 本書は、自分の手を使って自分のからだを治す方法として、「腕もみ」健康法のやり方をわかりやすく解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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からだに流れる「気」が健康を左右する

 孫先生は、胃腸が悪くなると、そのシグナルは腕に現れると指摘します。

 東洋医学では、人間のあらゆる器官はバラバラに独立して機能しているのではなく、お互いに関連しあいながら生命活動を維持していると考えられます。
 その活動を支えるエネルギーを「気」といい、つねにからだの中を循環しています。この気の状態が変わると、からだの中にも影響を与えます。つまり、気の状態が健康を左右すると考えるのが東洋医学なのです。
「病は気から」という言葉があります。まさに気の変化が病をもたらすのです。

 たとえば、胃が痛いとします。
 西洋医学なら、胃カメラやバリウム検査、血液検査などから胃の状態を把握します。医師は、数値や画像に異常がなければ、患者さんが「痛い」と言っても、どこも悪くないと診断します。
 もちろん、異常なしと診断されても、患者さんが違和感を訴えるなら、違った角度から再検査します。
 それでも検査の対象は胃であり、医師が求めるのは、痛みの原因を明らかにすることです。

 しかし、東洋医学の場合は、患者さんに「痛い」という自覚症状があるなら、その段階で病気を患っていると判断します。
 そして、症状が現れている場所が胃であっても、心臓であっても、肺であっても、からだのエネルギーバランスが崩れていると考えます。胃が痛いのは、からだ全体の問題で、その症状が胃に現れているととらえるのが東洋医学です。

 胃腸が悪くなると、腕にも異変が現れる
 腕の異変を解消すると、胃腸がよくなる

 これは、東洋医学的には、よくあるケースなのです。

 胃が痛いなら、胃を治しましょうと考えるのが西洋医学。
 からだ全体の乱れを整えて胃の痛みをなくしましょうと考えるのが東洋医学。

 どちらが正解というわけではありませんが、東洋医学のほうが、人間が持っている自然治癒力を高めることを目指しているといえます。

『「腕もみ」で胃腸の不調がみるみる改善する!』 第1章 より 孫維良:著 プレジデント社:刊

 なぜ、胃腸が悪くなると、腕に異変が起きるのか。
 その科学的な裏付けは、ほとんどありません。

 孫さんは、科学的な根拠がないというより、現代科学では、いまだ解明できていないといったほうが正しい表現だと述べています。

 中国4000年の歴史を感じさせる、中医学の奥深さですね。

「気の流れるコース」は決まっている

 人間のからだだけでなく、宇宙全体そのものが気で構成されている

 これが、東洋医学の根源となる考え方です。

 からだの中を流れる気は、無秩序に流れているのではなく、一定の法則のもとに、決められたコースを循環しています。
 それにより、からだのあらゆる器官を正常に動かし続けています。

 この気の流れるコースを、「経絡(けいらく)」といいます。
 わたしは、いつも、この経絡を電車にたとえて説明するようにしています。
 気というエネルギーを電車の乗客だとすると、経路は線路。そして、電車に本線と支線があるように、経絡にもメインとなる路線とローカル路線があります。

 経絡の主要路線は、からだの右側、左側にそれぞれ12本ずつあります。
 具体的に紹介すると、肺経、大腸経、胃経、脾経、心経、小腸経、膀胱経、腎経、心包(しんぼう)経、三焦(さんしょう)経、胆経、肝経。
 路線名を見るとなんとなく想像がつくと思いますが、肺経なら肺、大腸経なら大腸という臓器を通るルートになります。この主要路線のことを「経脈(けいみゃく)」といいます。

 ローカル路線は、エネルギーがからだのすみずみにまで届けられるように、その主要路線からさらに手足の先や顔面といった末端にはりめぐらされています。このローカル路線のことを「絡脈(らくみゃく)」といいます。
 要するに経絡とは、経脈と絡脈からとった名前なのです。
 からだの中には、左右合わせて24本ある主要路線と、そこから枝分かれするローカル路線が張りめぐらされています。しかも、各路線はからだのどこかでつながっていて、全体で見ると1本のルートになります。

 つまり、どこかでトラブルが起きると、その影響は全体におよぶということです。電車通勤されている方ならわかると思いますが、ほかの路線の事故で自分が乗ろうとしている路線の電車に影響が出ることがありますよね。全体が1本でつながっているとはそういうことです。
 東洋医学が、胃腸が悪くてもからだ全体を診るのは、経絡が1本でつながっているからなのです。

『「腕もみ」で胃腸の不調がみるみる改善する!』 第1章 より 孫維良:著 プレジデント社:刊

「経絡」は、からだ全体に張り巡らされています。
 つまり、からだの中のあらゆる器官は、「気」が流れる経絡によって、つながっているということ。

 気のエネルギーがうまく流れなくなると、からだのいたるところにトラブルを生じるようになります。

1日1回、右腕をグーッと30秒、左腕をグーッと30秒

 腕には、12本ある経脈のうち、「肺経」「大腸経」「心経」「小腸経」「心包経」「三焦経」の6本が通っています(下図1を参照)。

 そして、そのすべてが「胃腸」に関連しています。

図1 腕を走る経脈 後面 第2章P57図1 腕を走る経脈 前面 第2章P56
図1.腕を走る経脈(右が前面、左が後面)
(『「腕もみ」で胃腸の不調がみるみる改善する!』 第2章 より抜粋)

 これらの経絡を刺激して、胃腸の不調を取り除こうというのが、「腕もみ」健康法です。

 それでは、「腕もみ」の基本の動きを解説します。

①イスに座り、両足を肩幅より少し広げ、リラックスします。
 この時点ではどこにも力を入れる必要はないので、とにかく全身の力を抜いておくことです。
 イスは肘で前腕を押すときにしっかり体重ががかけられるように、足の裏が地面につく高さのものに座るか、高さを調整しておきます。ひざが90度に曲がるくらいの高さがベスト。低すぎても体重をかけづらくなるので注意しましょう。
②片方の前腕を、手のひらを上にして、同じ側の太ももの上に乗せます。
 このとき前腕の内側が上を向いている状態になります。
 これで「腕もみ」の準備は完了です。
 準備ができたら、太ももに乗せた前腕の経絡を刺激します。
③もう片方の手の肘を、太ももに乗せた前腕の上に乗せ、下方向に体重をかけてグーッと5秒くらい押したら、前腕から肘を離します。
 最初に肘を置く位置は、肘を曲げたときにできるしわのあたり。そこから少しずつ押す位置を指先側にずらしながら、30秒かけて、手首の近くまで押していきます。

 押している間は、押されているほうの手を広げようとしても広げられないくらい強めに押します。それだけの圧をかけると、前腕から肘を離した瞬間に、少なくなっていた血流がサーッと一気に流れ出すのを感じることができます。

 30秒かけて右腕を、30秒かけて左腕を刺激したら完了。
 所要時間は、左右両腕で1分。

 これを1日1回行うのが、「腕もみ」健康法です。回数を増やすのはかまいませんが、それより1回でいいので、毎日続けるようにしましょう。

『「腕もみ」で胃腸の不調がみるみる改善する!』 第2章 より 孫維良:著 プレジデント社:刊

図2 腕もみ 健康法のやり方① 第2章P78
図2 腕もみ 健康法のやり方② 第2章P79
図2.「腕もみ」基本の動き
(『「腕もみ」で胃腸の不調がみるみる改善する!』 第2章 より抜粋)

「腕もみ」の効果を確実にするために、気をつけること。
 それは、体重をしっかりかけて押すことです。

 孫先生は、十分に体重がかかっているかどうかの目安は、「イタ気持ちいい」と感じるかどうかだと述べています。

 繰り返しやってみて、コツをつかみたいですね。

腕にある「内関」のツボを刺激する

 孫さんは、「腕もみ」以外の、胃腸がよくなる方法も紹介しています。
 そのなかのひとつが、「ツボを直接刺激する方法」です。

 ターゲットにするツボは、心包経の経脈(けいみゃく)の奥にある「内関(ないかん)」というツボです。
 内関は、手首の下あたりにあるツボです。具体的には、手首を曲げたときにできるしわから指3本分、肘の位置で、手首を動かすとできる2本の腱の間にあります。
 それでは、ツボの正確な場所を探してみましょう。
 先の手順でツボを探し、親指をあてて押してみてください。
 どんな感覚がありますか?

 ツボに正しく刺激が伝わると、独特の感覚が生まれます。これは、送り込まれた気を受け取ったというツボの合図です。この合図のことを、「得気(とっき)」といいます。

 得気には次の5種類があります。
 だるい感じ、しびれる感じ、涼しい感じ、熱い、または温かい感じ、はれぼったい感じ。すべてを感じる必要はなく、どれか1種類でも感じられれば、刺激がツボに届いたことになります。

 ツボの位置がハッキリわかったら、以下の手順で内関のツボを刺激します。
①内関のツボを刺すように親指を立てます。
②10〜15秒間、立てた親指をギュッと押し込みます。
 ツボは深い位置にあるので、少し痛いと思うくらい強く押してください。
 5種類のうち1種類でも感覚があれば、親指から送るエネルギーが、しっかりツボに届いています。
 右手の内関が終わったら、続けて、左手の内関も押します。

 もし、どの感覚もなければツボには届いていないということなので、親指を少しずらして、もう一度押してみましょう。感覚がないまま押し続けても、まったくツボ治療の効果は期待できません。感覚が確認できるまで、何度も行ってください。

 内関をうまく刺激できると、胃の不快感が解消されます。
 また、内関は、動悸(どうき)や胸の痛みといった循環器の症状にも効果があります。さらに、精神をリラックスさせる効果もあります。

『「腕もみ」で胃腸の不調がみるみる改善する!』 第3章 より 孫維良:著 プレジデント社:刊

 ツボは、ピンポイントで正確に押さないと、効き目がありませんが、その効果は抜群です。
 孫先生は、ツボは、気の流れが悪くなるとすぐに反応する場所で、また、気の出入り口でもあるので、そこを刺激すると効果が出やすいと指摘します。

 押したときの感覚を確かめながら、正確な位置を覚えましょう。

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「治三分、養生七分」

 中国には昔から、そんな言葉があります。
 治療で治せるのは30%で、病気を完全に治すには、それからの養生生活が大きな割合を占めるという意味です。

 人間が本来持つ「自己治癒力」高めることで、からだの不調を根本から治す。
 この東洋医学の考え方から、一般人向け健康法として編み出されたのが「腕もみ」です。

 使うのは、自分のからだだけ。
 しかも、1日1分。
 イスがあれば、どこでも、誰でも、簡単にできる。

 日々の健康維持に、「腕もみ」健康法を活用していきたいですね。

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