本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』(三原康司)

 お薦めの本の紹介です。
 三原康司さんの『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方 思考展開ワークショップ』です。

 三原康司(みはら・こうじ)さんは、イノベーション創出思考法インストラクター、ワークデザインインストラクターです。

アイデアを生み出すのが得意な人には、理由があった!

 三原さんは、アイデアを生み出すのが得意な人は、「考える方法」を知っているのだと指摘します。
 つまり、「発想の手順」を知っているということです。

 誰でもアイデアを考え出すときには、自分でも気づかないうちに、脳内でアイデアを考える手順が働いています。その手順が優れているかどうかによって、アイデアの量と質に大きな差がつきます。

 本書では、新しいアイデアを閃(ひらめ)かせる「思考展開法」を解説します。そのプログラムを自分の思考回路に組み込むことができれば、新商品企画、新サービス企画、新ビジネスモデル企画、問題解決、事業戦略、などなど多くのことに活用することができます。
(中略)
 本書で紹介する思考展開法の最大の特徴は、自問自答形式で企画案を考えることです。いろいろな案を出していくときには、グループで議論したり、専門家や経験者の意見を聞いたりすることも、もちろん効果的です。本書の思考展開法もそういう方法を取り入れることを推奨していますし、思考展開法をプロジェクトチームで進めることなども有効でしょう。
 ただし、画期的なアイデアの誕生にとって何よりも重要なことは、「個」の力です。自問自答形式でアイデアを引き出していく思考展開法のメリットは、自分一人で「個」の力を高められることです。
 思考展開の目的は、手法の使い方がうまくなることではありません。斬新で革新的な発想をして、人々が喜び、便益を感じてくれる企画を立案し、実行することです。本書で紹介する思考展開法を使って、みんながわくわくするようなアイデアを生みだしてください。

 『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』 はじめに より 三原康司:著 日経BPマーケティング:刊

 本書は、天才的な発明家による輝かしい成果を解説し、「閃き」を手に入れるための思考展開法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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私たちのまわりにある「マッチング」の発明品

 画期的なアイデアが生み出されるときに、起こること。
 それは、「ニーズとシーズのマッチング」です。

 シーズとは、「種」のこと。
 商品化に結びつく技術などを指します。

 ニーズとは、「必要性」のこと。
 人々が「欲しい」と感じているモノやコトを意味します。

 三原さんは、シーズもニーズも、「隠れている」ことが多いと述べています。

 シーズが隠れているというのは、「何に使うのがいいかわからない」という状態です。偶然開発された技術、昔からあるけれどあまり使われていない製品などが「隠れているシーズ」候補です。もしかしたら、ベテラン社員の持っているノウハウや倉庫に放置されている装置なども「隠れているシーズ」かもしれません。
 一方、ニーズが隠れているというのは、商品やサービスが登場した後で、「そうそう、こういうものが欲しかったんだよ」ということが起きるような状態です。つまり、欲しいと思っている人たち自身が気づいていないニーズがあるということです。
 そうした「隠れているシーズ」と「隠れているニーズ」をマッチングさせることができれば、画期的な発明が実現し、新しい市場が生まれることが多いのです。既存のシーズの用途をちょっと広げたりすると、ニーズと結びついた実用的なシーズが生まれることがあるのです。

 『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』 Session 1 より 三原康司:著 日経BPマーケティング:刊

 私たちの身の回りにある、数々の商品。
 その多くは、「シーズ」と「ニーズ」を、うまくマッチさせることで生まれた発明です。

 三原さんは、例として「レインコート」「ぜんまい時計」を挙げて、以下のように説明しています。

 例えば防水のレインコートは、1800年代の前半、チャールズ・マッキントッシュというスコットランド人の科学者が発明したと言われています。マッキントッシュが発見したのは、石炭からガスを製造する過程で生じる廃棄物から得られる防水性の溶剤でした。その溶剤を使えば防水することができる、ということです。そこで彼はこのことについて深く考えました。
「この溶剤を塗った素材を使えば、雨の日にも濡れない防水ジャケットを作ることができる」
 このシーズは、「雨の日にも洋服を濡らさないで出かけたい」というニーズとマッチし、レインコートが生まれました。
 もう1つ例を見てみましょう。昔、時計などの動力源になっていた「ぜんまい」は、ものを動かすエネルギーを蓄える装置として、人類の発明の中でも重要なものでした。今でもぜんまいが使われている腕時計を好んで使っている人も多いと思います。ネジを巻きあげるとコイルばねが圧縮され、エネルギーが蓄積されます。そのコイルばねが伸びようとする力によって歯車を回し、針を動かしているわけです。
 コイルばねを使った初めての時計は、ドイツ人のの錠前師ペーター・ヘンラインが、1500年代初頭に作ったと言われています。では、コイルばねの発明者は誰だったのかというと、それは定かではないのですが、ヘンラインの発明からさかのぼること50年前にできていたと言われています。このコイルばねなしには、ぜんまい、そしてぜんまい時計は生まれなかったわけです。
 ヘンラインは、コイルばねというシーズを見つけて、「コイルばねの力で徐々に針を動かす装置を作れば、時間を知る道具を作ることができる」と考えたのでしょう。そして世の中の人々の「正確に、簡単に、今の時間を知りたい」というニーズとマッチし、ぜんまい時計は世の中の必需品となったわけです。

 『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』 Session 1 より 三原康司:著 日経BPマーケティング:刊

 私たちが「閃き」と呼ぶもの。
 それは、まさに「シーズ」と「ニーズ」が出会った瞬間のことをいうのですね。

ニーズを捉える「2つの方向」

 表面化したニーズを、解決のアイデアにまで導く。
 それには、2通りのアプローチがあります。

「目的を考える」方向と「手段を考える」方向です。

「木に穴をあける」というニーズについて考えてみましょう。これは2つの方向で考えることができます。
 1つは、「どうして、何の目的で木に穴をあけるのか?」という目的を考える方向、もう1つは、「木に穴をあけるにはどのようにすればよいか?」という手段を考える方向です。
「どうして、何の目的で木に穴をあけるのですか?」と聞いてみます。すると答えが、「2枚の木に穴をあけてボルトを通し、接合するため」だったとします。これは2枚の木を接合する1つのアイデアです。もしも、2枚の木を接合するためであれば、穴をあけなくても接着剤でくっつけるというアイデアもあります。このように、1つのニーズの目的を考えると他のアイデアが出てきます。
 次に、「木に穴をあけるにはどのようにすればよいですか?」と聞いてみます。これは手段を考える方向です。答えの1つは、「ドリルで穴をあける」です。そのためにはドリルが必要ですが、ある人の家にはドリルがありません。どうしましょうか? 例えば、「キリで小さな穴をあけ、それをナイフで広げていく」などといったアイデアが考えられます。このように、あるニーズを実現する手段のアイデアはいくつか考えられます。

 1つのニーズに対して、目的や手段を考えるとアイデアがいくつか生まれてきます。
 ニーズはアイデアの源なのです。そしてアイデアはニーズを満たさなくてはならないということです。言い換えると、人が必要と思うことを実現するアイデアが、望まれているアイデアです。
 アイデアを、いきなり考えられる人はいません。必ず何かの課題や問題があり、それに対して解決策や対応策のアイデアを考えます。そして、課題や問題はニーズと同意です。例えば、「木に穴をあける」のはニーズであり、課題です。「交通事故が増えている」という問題に対しては、「交通事故を減らす」という課題・ニーズに変換して、解決のアイデアを考えていきます。
 アイデアを出すためには、ニーズを見つけなくてはならない、と言えます。

 『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』 Session 3 より 三原康司:著 日経BPマーケティング:刊

 ニーズを満たす解決法は、一つではないということですね。

「目的」と「手段」、その両方からアプローチする。
 それにより、解決のアイデアのバリエーションは、大幅に増えます。

 忘れないようにしたいですね。

「隠れたニーズ」は理想から考える

「隠れたニーズ」には、次の2つの種類があります。

(A)まったく気づいていないニーズ
(B)考えられるが、できると思えないニーズ

 本書で紹介する思考展開法は、(B)の「まったく気づいていないニーズ」を発見・創出します。発見・創出されれば、「考えられるが、できるとは思えないニーズ」になります。そしてそのニーズを実現する理想的な手段を発見・創出していきます。

 では、「まったく気づいていないニーズ」を発見・創出するにはどうすればよいのでしょうか。
 馬車を追究していくと、馬を使ったモノの延長線上でしか発想は生まれません。つまり自動車は生まれません。だから馬車を追求するのではなくて、そのモノやコトの本質を考え、理想的なモノやコトを考える必要があります。
 では、どうやって理想的なモノやコトを考えればよいかというと、そのモノやコトの「機能」、つまりそのモノやコトが「何をしているのか」「何をするためにあるのか」という、そのモノやコトを使ったり利用したりする目的の本質を追究すればよいのです。できる限り本質的な目的を知れば、その目的を達成できるモノやコトが、人類が目指すべき理想的なモノやことであると言えます。
 ちょっと大げさになってきましたが、簡単に言えば、現在あるモノやコトにとらわれ、その技術・ノウハウの延長線上だけで考えるのではなく、そのモノやコトの目指している目的を見極めて、現在の延長線上にない技術やノウハウも考えよう、ということです。仮に延長線上にあるとしても、できる限り理想に近い目的を追求することによって、これまでに考えられていなかったニーズを発見・創出することができるようになリます。
「それは何のため(にしている)?」という問いを繰り返す[何のため展開]では、理想的な目的を追求することによって、これまで気づいてなかったニーズを発見・創出し、そのニーズを実現する理想的な手段を発見・創出することができます。

 『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』 Session 5 より 三原康司:著 日経BPマーケティング:刊

何のため展開 で本当のニーズを見つける Session5P105
図1.[何のため展開]で本当のニーズを見つける
(『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』 Session 5 より 抜粋)

 どんな技術や道具にも、必ず「目的」があります。
 その本質を見抜いて、まったく違うアプローチから迫ってみる。

 それが、[何のため展開]です。

 今までの方法で、行き詰まった。
 そんなとき、ぜひ使ってみたいですね。

展開は「密」にする

 三原さんは、[何のため展開]を行なうコツを、以下のように述べています。

[何のため展開]で目的を考えるときには、できるだけ細かい目的を飛ばさないように、密に展開することが大切です。ジャンプすると、ユニークで、画期的なアイデアを逃してしまう恐れがあります。
 例えば、「米をとぐ」という表現から新たな発想を考えようとするときに「米をとぐ」→「夕食を食べる」としてしまうと、この間の「ゴミや糠(かす)を水で洗い流す」という目的が飛ばされています。これが目的なら、必ずしも水を使わなくても、ゴミや糠が取り除ければよいことがわかり、新たな発想につながります。
 ジャンプすると、飛ばしてしまったところに画期的な発想の芽があっても、それに気づきません。これまでにない発想を追求するためには、展開を蜜にすることが大切です。
「ジャンプしているな」と思ったときには、後で間を埋めていきましょう。その時には、後述する[そのためには展開]を使って追加する方法もあります。
(中略)
 展開をジャンプさせず、自分の発想を刺激する方法として、表現を言い換えてみることは有効です。まずは動詞部分を言い換えてみる。そして名詞部分を言い換えてみる、という方法をとると、かなり密に展開することができるでしょう。
 例えば、「紙を切る」「紙を裁断する」「紙を切り離す」のように、表現を変えることによって、かなり密に展開することができ、その中から画期的な発想が生まれる可能性が高まります。
 言い換え方にはもう1つやり方があります。それは飾り言葉、修飾語をつけてみることです。例えば、「大きく簡単に切ることができない紙を、簡単に切る」「大きくて固い紙を、労力をかけずに裁断する」「大きくて厚い紙を、小さな力で切り離す」のように、修飾語をつけることによってユニークで独自性がある展開をしていくことができます。そして、その中から今までにない画期的な記述が生まれる可能性が高まります。
(中略)
 広く、多くの発想をするためには、思いついた1つの目的に固執しないことも必要です。目的の記述を分岐させ、その分岐した表現別に展開を進めていきます。ビデオレコーダーを対象にした例を見てみましょう。
 例えば「テレビ番組を録画する」から出発して、「暇なとき録画した番組を見る」→「ゆったりした気持ちで、好きな映像を、いつでも楽しむ」・・・・と展開することもできます。
 あるいは「ビデオを再生する」から出発して、「必要が生じたとき録画した番組を見る」→「仕事に関する情報を映像から収集する」と展開することもできます。
 このように、目的が2つ以上に分かれる場合は素直に分岐させましょう。
 分岐させても、その目的の目的が別系列の目的になっている場合があります。どんどん展開を進めていくと、やがて1つに統合させるようになります。つまり、[何のため展開]を分岐させて進めていくと、次の図(下図4を参照)のようにダイヤモンド型になる傾向があります。

 『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』 Session 6 より 三原康司:著 日経BPマーケティング:刊

ジャンプしたところを埋めていく Session7P135
図2.ジャンプしたところを埋めていく
(『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』 Session 6 より抜粋)

言い換え で発想を広げる Session7P137
図3.「言い換え」で発想を広げる
(『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』 Session 6 より抜粋)

何のため展開 はダイヤモンド型になる Session7P139
図4.[何のため展開]はダイヤモンド型になる
(『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』 Session 6 より抜粋)

 新しいアイデアを発想するときは、「目的」を

  1. 展開を密にする
  2. 表現を言い換える
  3. 分岐させる

 覚えておきたいですね。

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 三原さんは、創造力を妨げている最も大きな原因は、既成概念と固定観念だとおっしゃっています。

 こり固まった先入観を、いったん頭の外に追い出す。
 そして、子どものように、真っさらな思考で考える。

 それが、革新的なアイデアを生み出す秘訣です。

「自分には、創造(想像)力がない」

 それもひとつの思い込みですね。

 誰の頭にも、偉大な発明のネタが眠っています。
 問題は、それらをどう結びつけるか、です。

 アイデアや発想を生み出すことは、「技術」です。
 磨けば磨くほど、質の高いものが、たくさん浮かんできます。

 過去の偉人から、アイデアづくりの「いろは」を学び、普段の生活や仕事に活かしたいですね。

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