本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『脳にまかせる勉強法』(池田義博)

 お薦めの本の紹介です。
 池田義博さんの『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』です。

 池田義博(いけだ・よしひろ)さんは、一般社団法人「日本記憶能力育成協会」の会長です。
 2013年の世界記憶力選手権において、日本人初の「記憶力のグランドマスター」の称号を獲得されました。

「記憶力」は、いつからでも上げることができる!

 池田さんは、記憶力とは「才能や年齢に関係なく、技術で上がるもの」だ、と言い切ります。

 40代半ばで、記憶力を競う大会、「記憶力日本選手権大会」に挑戦。
 見事、4回連続で「記憶力日本一」となり、「脳はいつからでも鍛えることができる」という自らの考えを実証しました。

 脳には記憶の仕組みがあり、それを利用すれば、ラクに物事を覚えることができるのです。それを知らないと、本当はそうではないのに、自分は「記憶力が悪い」と勘違いしてしまうかもしれません。記憶力の違いは、「方法を知っているか、知らないか」の差でしかないのです。
(中略)
 脳は想像以上に優秀な器官です。しかし、その優秀な脳を使いこなす方法を知らない人が多いのです。普段の勉強で意識して脳を使うということは、皆さん、あまりないかもしれません。けれども、使いこなすことができれば、記憶に自信のなかった私でも「記憶力日本一」になれるぐらいのすごい力は秘めているのです。

「脳を使いこなす」といっても、つらいトレーニングは必要ありません。
 誰でも、思い立ったその日から簡単に取り入れることができる方法なのです。
 勉強するときにはその方法を使って、淡々とまるで作業のような感覚で進めていくだけです。

 そして、大変なことはすべて脳にまかせればよいのです。

「脳にまかせる」とは簡単にいうと、勉強の労力を2分の1以下にし、成果を2倍以上にする勉強法とお考えください。
 脳はまるで腕のよい料理人のようです。あなたはただ材料を脳に提供するだけ。あとは脳が勝手にそれらをうまく調理して記憶してくれたり、考えをまとめてくれたりするのです。
 
『脳にまかせる勉強法』 はじめに より 池田義博:著 ダイヤモンド社:刊

 池田さんは、記憶力を上げるのに必要なのは、もともとの「脳の性能」ではなく「技術」だと強調します。

 本書は、脳の機能を最大限に発揮し、記憶力を格段にアップする、超効率的な勉強法のノウハウをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「大喜利力」で、記憶の量が変わる!

 池田さんは、大喜利における落語家さんたちの答えの導き方が、勉強を覚えるのに非常に有効な手段だと述べています。

 脳はバラバラに見えているもの同士の中に関係性が存在していることを見つけたとたん、うれしくなって思わず記憶を強めてしまうという性質を持っています。
 たとえば、電話番号などもただ数字の羅列と思っていてはなかなか覚えられませんが、並んでいる数字でゴロ合わせができたりすると、急に覚えやすくなるのはそういうことです。
 勉強にも、この「わかった! 見つけた!」を利用すると記憶を強めることができます。
 そのために必要なのが「大喜利力」なのです。
 この大喜利力は、普段の勉強のときにも常に意識しておく必要があります。
 大喜利の中に「なぞかけ」というものがあります。
「カツオブシとかけてマラソンととく、そのこころは?」
「どちらもかんそう(乾燥)(完走)が大事です」
 といった言葉遊びのことです。
 このなぞかけの答えを見つけ出すコツが、記憶にも利用できるのです。
 先ほどの例でいえば、「カツオブシ」と「マラソン」で連想する言葉から「かんそう」という同音異義語を探して答えを導き出しました。
 このように、なぞかけの答えを出すためのコツはいかにお題の二つに存在する「共通点」や「規則性」を見つけ出せるかなのです。
 勉強も同様です。それぞれに何か共通する要素はないか、規則性はないか、常に意識しましょう
「それぞれに共通の文字が入っている」とか「それぞれの言葉の頭の文字をつなげると意味のある言葉になる」など、ちょっとしたことです。
 ここでクイズです。次に挙げる市の共通点は何かわかりますか?
「金沢市・黒磯市・筑紫野市・桜井市・青梅市・赤穂市」
 正解はのちほど。
「大喜利力」とは、「パターン認識能力」のことだともいえます。隠れているパターンを見つけ出す能力は、記憶や勉強において非常に重要です。
 普段の勉強のときから、この「大喜利力」の意識があるかないかで記憶の量にもかなりの差が出てきます。
 最後にクイズの答えですが、正解は「名称の中に色が入っている」でした。

『脳にまかせる勉強法』 第1章 より 池田義博:著 ダイヤモンド社:刊

 脳は、脈絡のない文字や数字の羅列を、単純に覚えることは、苦手です。
 一方、関係性の存在している物事を覚えるのは、得意です。

「共通点」や「規則性」などを手がかりにして覚えると、いくらでもインプットすることができます。
 まさに、“芋づる式”という感じですね。

記憶の定着度は“ペンキ塗り”のようなもの

 範囲が限定されている勉強をする場合、「鉄則」ともいえる進め方があります。

 それは、理解度は二の次にして、とにかくスピードを優先して、できるだけ早く全範囲の勉強を終わらせ、それを何回も繰り返す方法です。

 勉強における記憶の定着度とは、ペンキ塗りのようなものと考えてください。
 壁にペンキを塗るときには1回で塗り終わることはありません。なぜなら、一度ではところどころムラができてしまっているからです。
 そのため完成までには、何度もペンキを塗り重ねて厚みを増す必要があるのです。
 勉強の記憶も、これと同じことがいえるのです。

 わかりやすい例として、今ここに新しく英単語を覚えようとしている学生が2人いるとしましょう。1人をAさん、もう1人をBさんとします。
 2人が覚えるのは同じ100個の英単語とします。
 Aさんは、その100個の英単語を4時間かけてその日1日だけで覚えたとします。それに対してBさんは、1日1時間の学習時間で4日かけて覚えたとします。覚えるのに使った時間は、どちらもトータルでは4時間です。
 仮に覚えた直後に記憶のテストをしたとすると、その時点では2人の記憶量には差はありません。
 ところが、しばらく時間が経過した後でテストをしてみると、4日に分けて学習したBさんのほうが思い出せる量が多いという結果になるのです。
 これは記憶に関する脳の性質であり、薄い記憶を何回にも塗り重ねたほうが、じっくり時間をかけて一度で覚えるよりも忘れにくい強い記憶となった、つまり記憶の定着度が高かったことを示しています。
 ただし、ある条件を考慮しないまま進めてはいけません。
 その考慮すべき条件とは、「勉強範囲の広さ」、すなわち「勉強の全体量」です。
 学校の定期試験ぐらいならば、問題はないのですが、入学試験、資格試験などを考えた場合、勉強しなければならない範囲はかなり広いものとなり、勉強内容のボリュームも大きくなります。
 このような広い範囲を、先ほどの方法で進めるとどうなるか考えてみましょう。
 スピードを重視して、記憶の定着は後回しで全範囲を進めたとします。
 繰り返すことにより記憶を厚くしていくのだから、1回での記憶は薄くていいはずなのですが、範囲がとても広い場合、この一度の記憶があまりにも薄すぎるのです。

『脳にまかせる勉強法』 第2章 より 池田義博:著 ダイヤモンド社:刊

図1 同じ勉強をしても記憶量に差が出る 第2章P90
図1.同じ勉強をしても記憶量に差が出る
(『脳にまかせる勉強法』 第2章 より抜粋)

 記憶の定着度は、時間とともに、急激に下がっていきます。
 それを食い止めるためには、「薄い記憶を何度も塗り重ねる」ことが必要となります。

 時間をかけて一度で覚えるより、短時間で、何度も繰り返して覚える。
 それが脳の機能をフルに使った、賢い勉強のやり方です。

範囲を狭めて集中力をキープ

 具体的な勉強の進め方についてです。

 最初に、全範囲を、狭く区切る必要があります。
 目次や章といった、内容による区切りは無視し、単純にページ数で区切ることにします。

 この速習法は、運動でいえばダッシュを繰り返しながら進んでいくようなものです。ですから最初に設定する範囲に無理があると、途中で息切れを起こします。
 つまり集中力が続かなくなるということです。そうならないために、最初は1ページを一つの範囲に設定しましょう。最初は、と言ったのは、この進め方に慣れてきたら自分のペースに合わせて最小範囲を調整することが可能だからです。
 この最小範囲である1ページを3回繰り返しながら勉強を進めていくことになります。一番のポイントになる復習の方法ですが、具体的に1ページ目から説明していきます。
 はじめは1ページ目の学習を終わらせます。終了したら、そのページの数字を丸で囲みます。これがそのページの学習が1回終了したことの印となります。
 そしてもう一度1ページを復習すると二重丸になります。このように、ページの数字に二重丸がついたら次のページに進む合図です。
 次のページが終了したら同じようにページの数字を丸で囲みます。今度はこの1個の丸が前のページに戻る合図になります。
 まとめると、最初のページのみ連続して2度学習して二重丸になったら次のページに進み、次のページを学習後、丸を1個つけたら前のページに戻る、という流れを繰り返します。ページ数を並べると、①→①→②→①→②→③→②→③→④→③→・・・・というように1ページにつきトータル3回ずつ学習しながら進むことになります。
(中略)
 前項で説明した変則的とも思われるこの進め方の目的は、以前にもお伝えしたように「記憶の保持」です。
 脳にとって復習とは、ある程度時間が過ぎた後で行うことに意味があるからです。
 そうすることによって、脳自身が「あっ、この部分の記憶が弱い」と自覚してくれて自動的に記憶を補強してくれるのです。

 また、この進め方をするのにはもう一つ理由があります。
 この勉強法の重要ポイントは「スピード」です。
 そもそもスピードを上げて進めていかないと、復習の回数が多いぶん、この勉強法をとらないで進めていった場合よりもかなりの時間がかかってしまうことになり、この勉強法を選ぶ意味がありません。
 短期間で全範囲を終わらせ、その時点で3回学習できているというのが、この勉強法の有利な点なのです。
 不安感があるとスピードを上げたまま進めることは難しいですが、この勉強法そのものがスピードを上げることへの不安を生じさせない仕組みになっています。
 なぜなら、すぐに前に戻って復習できるからです。しかも短時間にトータル2回も。
 これが安心感を生み、迷わずスピードを保ち続けることができるのです。

『脳にまかせる勉強法』 第2章 より 池田義博:著 ダイヤモンド社:刊

図2 3サイクル反復速習法 第2章P100
図2.3サイクル反復速習法
(『脳にまかせる勉強法』 第2章 より抜粋)

 最初は、本当に頭に入っているのか、不安になるかもしれません。
 しかし、記憶の定着は、回数勝負です。

 リズムよく、集中して進めていきたいですね。

知識の深掘り「1分間ライティング」

 記憶を定着させるうえで重要なのが、「アウトプット」です。
 つまり、自分の頭の中にある知識、考え、アイデアなど思いつくものすべてを紙に書き出すことです。

 池田さんは、アウトプットの具体的方法のひとつとして、「1分間ライティング」を紹介しています。

 アウトプットの仕方は「単語」ではなく、ここでは「文章」を書くようにします。
 最初に、前日勉強した範囲で出てきたキーワードを一つ決めます。そのキーワードは用語でもいいですし、問題の形にしてもよいでしょう。
 たとえば、日本史であれば「飛鳥文化の特色は何か?」といったもので構いません。そのキーワードをスタート地点にして、関連事項をどんどん文にしていきます。
 リラックスを心がけて、頭の中の情報を苦労してひねり出すというよりも、ふと浮かんできたり、連想したりしたものをきっかけにして、芋づる式にずるずると文章にしてつなげていく感覚です。
 あくまで、目的は頭の中の「見える化」です。
 人に理解してもらうわけではないので、文章をまとめる必要はありません。文のつながりがおかしくても、まったく問題ないのです。
 キーワードに関連すると思えることであれば、なんでも思いついたままを書いていきます。思いつくままなので、当然書いていく項目の順番にはこだわりません。
 とにかく、肩の力を抜いて手を止めずに書き続けることです。
 慣れないうちは、頭の中のことをそのまま文にするというのは結構難しい作業です。何も浮かんでこないことも多いかもしれません。
 そんなときは、キーワードのみを書き続けてください。
 そのうち頭にひっかかるものが出てくれば、またそこから連想して続けていけばよいのです。
 そこまでしても本当に何も浮かばないときは、「何も浮かばない。何も浮かばない。でもそのうち何か浮かんでくるはず・・・・」などと書き続けてもらっても結構です。

 大事なのは、脳の中身を引き出そうとする意識です。
 その意識を持ちつつ手を動かし続けることによって、脳と手を直接つなぐ回路が形成され、最終的に脳の自動化につながるのです。
 ある知識を反射的に書き出すことができれば、それは頭に入っている「使える知識」であることの証明になるのです。

『脳にまかせる勉強法』 第3章 より 池田義博:著 ダイヤモンド社:刊

図3 1分間ライティング まとめ 第3章P131
図3.1分間ライティング:まとめ
(『脳にまかせる勉強法』 第3章 より抜粋)

 キーワード1つにつき、1分間。
 とにかく手を止めずに、頭に浮かんたことを文章にして、書き続けていく。

 余計なことを考えず、リラックスして取り組みたいですね。

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 近年、「ビッグデータ」に象徴されるように、膨大な情報から必要なものを取り出して利用するスキルがもてはやされています。
 一方、「知識」そのものの価値は、タダ同然となり、ないがしろにされている傾向があります。

 しかし、「考える力」は、私たちの頭のなかにある知識が元になります。

 池田さんは、必要な知識が頭の中にあることが前提にあり、それがあるからこそ養うことができるのが、「考える力」ではないかと指摘されています。

 料理の仕方を知っていても、「具材」がなければ、つくれません。

 新鮮で、役に立つ具材を、いかに効率的に集めるか。
 それが、おいしい料理をつくるポイントです。

 IT(情報技術)全盛となった今でも、記憶力の重要性は変わりません。
 それどころか、技術の進歩に合わせて、必要な知識は、増え続ける一方です。

 脳の性質を上手に利用した、これまでの常識をくつがえす「池田式記憶術」。
 ぜひ、皆さんも試してみてください。

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