【書評】『新版 人生を変える80対20の法則』(リチャード・コッチ)
お薦めの本の紹介です。
リチャード・コッチさんの『新版 人生を変える80対20の法則』です。
リチャード・コッチさんは、起業家・投資家・経営コンサルタントです。
数多くの欧米の優良企業のアドバイザーを務められています。
「80対20の法則」とは何か?
経済学の有名な法則のひとつに「パレートの法則」があります。
パレートの法則とは、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している
という経験則です。
一般的には、「80対20の法則」と呼ばれます。
この法則が当てはまる事象には、以下のような例があります。
- ビジネスにおいて、売上の8割は全顧客の2割が生み出している。
- 商品の売上の8割は、全商品銘柄のうちの2割で生み出している。
- 売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している。
「80対20の法則」が有効なのは、経済の分野にとどまりません。
個人でも組織でも、ビジネス全般でも普段の生活でも、あらゆる場面に当てはまります。
コッチさんは、この法則を知っていれば、いままでよりはるかに少ない努力で、いままでよりはるかに大きな成果を上げることができる
と指摘します。
本書は、「80対20の法則」を日々の生活や仕事で活かす方法を、実例を交えて解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「80対20の法則」はなぜ重要なのか?
「80対20の法則」が重要な理由は、それがなかなか実感として湧かないから
です。
すべてが50対50で釣り合いがとれる。
それは迷信にすぎず、現実はまったくそうではないことが、この法則があぶり出してくれます。
真実がわかると、不均衡の大きさに驚くことが多い。よく調べてみると、不均衡の度合いはさまざまでも、一様にわが目を疑うような結果が出てくる。経営者ならたいてい、製品によって収益性に差があることは知っているだろう。しかし、どれだけ差があるかが明らかになると、目のまえの現実をなかなか理解できない。学校の教師なら、校内暴力や長期欠席などの問題の大半が、ほんの一部の生徒に原因があることを知っているだろう。しかし、その調査結果を目にすると、言葉を失う。誰でも、有効に使われた時間と無駄に使われた時間があることを知っているだろう。それでも、投入と産出のデータを示されると、とても信じられないのだ。
80対20の法則には、もっと注意を払う必要がある。意識するとしないとにかかわらず、家庭でも、社会でも、職場でも、その法則がつねに働いているからだ。80対20の法則を理解すれば、自分の周りで起こっていることがじつによくわかってくる。
80対20の法則をうまく活かせば、何もかも驚くほど改善する──それが本書のいちばん伝えたいことである。個人なら、毎日の生活が楽しくなる。企業なら、収益性がはるかに向上する。非営利団体なら、もっと社会のためになる製品やサービスを提供できるようになる。政府なら、国民の生活をもっと豊かにできる。どんな人にも、どんな組織にも、必ずプラスになる。いままでより少ない努力で、少ない経費で、少ない投資で、いままでより多くのものを得ることができる。『新版 人生を変える80対20の法則』 第1章 より リチャード・ コッチ:著 仁平和夫・高遠裕子:訳 阪急コミュニケーションズ:刊
日本人は、「すべての面で平等であることがいいこと」だと教えられてきました。
そのせいで、
「すべての仕事を同じように重要である」
「すべての友人を同じように扱わなければならない」
というような思い込みがちです。
自分の業務の中で利益を稼ぎだしている本当に重要な仕事は何か。
自分が豊かな生活をおくる上で欠かせない本当に必要な友人は誰なのか。
そんな観点から、あらゆる局面に「80対20の法則」を当てはめ直す必要がありますね。
キーワードは「シンプル・イズ・ビューティフル」
実際に「80対20の法則」を実行するためにはかなりの思い切りが必要です。
頭ではわかっていても、実際に「その他大勢」の80%を切り捨てることができません。
経営者でもよく、「高採算のセグメント(部門)だけに力を入れるわけにはいかない」といいます。
しかし、それは現状を変えたくないことの苦し言い訳であり、保身を正当化する
以外の何ものでもありません。
もっとも収益性が高いセグメントに力を集中すれば、その事業は驚くほどのスピードで成長する。だいたい年20%は成長するし、それ以上のペースで成長する場合もある。その分野はすでに地位を確保し、顧客もしっかりつかんでいるのだから、会社全体の業績を伸ばすよりはるかに簡単である。低採算のセグメントから受けている間接的な助けなど、すぐに必要でなくなる。
いらないものはさっさと捨てるに限る。意思さえ強ければ、必ずできる。低採算のセグメントは、買い手があれば売り払えばいいし、買い手がなければ閉鎖すればいい(財務の人間は「撤退コスト」などをもちだして、大反対するだろうが、耳を貸す必要はない。そんなものは紙の上の数字にすぎない。コストと言っても、たいていの場合、現金支出が発生するわけではない。現金支出が発生する場合でも、それはすぐに取り戻せる。単純化の効果は絶大なので、財務屋が言うよりはるかに早く取り戻せる)。
ただ、売却せず、閉鎖もしない第三の道がある(これが案外、絶妙な手なのだ)。それは、市場シェアが低下するに任せる方法である。収益性の低い顧客や製品のことは放っておく。サポートをどんどん打ち切り、販促の予算を減らし、価格を引き上げる。そうすれば、売り上げが減っていく間も、儲かって笑いが止まらない。『新版 人生を変える80対20の法則』 第5章 より リチャード・ コッチ:著 仁平和夫・高遠裕子:訳 阪急コミュニケーションズ:刊
時間にしろ、お金にしろ、有用な資源は何でも限りがあります。
組織においても、個人においても、「選択と集中」が成功の大きなカギです。
「いらないものはさっさと捨てるに限る」
その割り切りのよさは身につけたいですね。
『努力と報酬は別物』と考える
多くの人は、懸命に働くことに喜びを感じ、それがよいことだと思っています。
しかし、ここに問題があります。
ただがむしゃらに働けば、見返りは少ない。自分の心に嘘をつかず、ほんとうにやりたいことをやれば、見返りは大きく
なります。
額に汗しないことの罪悪感など、さっさと捨てよう。それは、働き過ぎないために必要であり、さらに、楽しいことをやるためにも必要である。楽しいことをやって何が悪い。楽しくないことをやるのは、何の価値もない。
好きなことをやろう。好きなことを自分の仕事にしよう。自分の仕事を楽しいものにしよう。金持ちになった人はほとんど例外なく、好きなことをさんざんやって大いに楽しんだうえに、笑いが止まらないほど儲けている。これもまた、80対20の法則の一例である。わずか20%の人が、富の80%を独占しているだけでなく、仕事から得る喜びの80%をも独占している。ここでもまた20%だ!
(中略)
わたしは何も怠惰を勧めているわけではない。労働は、人間の本能的な欲求を満たす自然な活動であり、失業してみれば、あるいはひと晩でひと財産を築いてみれば、そのことが身にしみてわかる。誰もが、自分に合ったバランスやリズムをもっていて、怠け過ぎたり、働き過ぎたりすれば、ほとんどの人が本能的にバランスを回復しようと思う。仕事か遊びかの二者択一ではなく、仕事をしているときは高い価値を実現できる仕事、遊んでいるときは深い満足を味わえる遊びに集中することが大切なのだ。
残念なことに、間違ったことを懸命にやっている人が多い。仕事の量を減らして、創造力と知性が飛躍的に高まるとしたら、世の中はどんなに明るくなることか。怠惰な人にもっと働けと言うのなら、勤勉な人には仕事を減らせと言うべきだ。どちらも社会のためになる。大事なのは、仕事の量よりも質である。そして、その質は自発性にかかっている。『新版 人生を変える80対20の法則』 第9章 より リチャード・ コッチ:著 仁平和夫・高遠裕子:訳 阪急コミュニケーションズ:刊
個人において、全体の80%の利益を生む20%のことは、自分が好きなことです。
逆にいうと、残りの80%のことに労力を割き過ぎていることが、人生から豊かさを奪うということですね。
つまらないことはやめる
自分が達成すべきことの80%は、使える時間の20%が与えてくれることが多いです。
やるべきことは、「達成や幸福を与えてくれることは何かを探し出すこと」。
それに使う時間をできるだけ増やすことが目標になります。
活動の80%は結果の20%しか生み出さないので、そうした活動はやめるのがいちばんいい。価値の高い活動にもっと多くの時間を振り向けるよう努力すれば、価値の低い活動に費やす時間は自然に減ってくると思っている人が多いが、順番は逆で、まず価値の低い活動をやめようと努力するほうが話が早い。
わたしがこう言うと、必ず次のような反論を受ける。いくら価値が低い活動といっても、そう簡単に削れるものではない。それは、家族や社会や会社にとって、なくてはならないものなのだから・・・・。あなたもそう考えているとしたら、もう一度考え直してほしい。どんな環境でも、ものごとのやり方を変える余地はかなりある。先のアドバイスを思い出してほしい。時間の使い方について、常識にとらわれず突飛な発想をしよう。群れのあとについていってはいけない。
新しいやり方を試してみて、どうなるかみてみよう。できればやめたいと思っていることは、やる価値がないものなのだから、あなたがそれをやめても、誰も気づかないかもしれない。仮に気がついたとしても、黙っているかもしれない。そのつまらないことを、あなたに無理やりやらせるには大変なエネルギーが必要であると思う場合はなおさらだ。
ただ、価値の低い活動をやめるには、仕事を変えたり、会社を辞めたり、いままで付き合っていた友達と縁を切ったり、ライフスタイルを変えたり、環境を根本から変える必要があるかもしれない。その場合には、何をどう変えたいのか、じっくり考えてみる必要がある。ただし、何も変えたくないのであれば、潜在能力は永遠に眠ったままになる。『新版 人生を変える80対20の法則』 第9章 より リチャード・ コッチ:著 仁平和夫・高遠裕子:訳 阪急コミュニケーションズ:刊
気の進まない飲み会、上司のゴルフ接待、好きでもない友人との付き合いなど。
何も生み出さない非効率的な時間の使い方は、いくらでも見つかります。
自分にとって重要ではない、80%の時間をいかに減らすか。
それが人生を好転させるポイントです。
変えようと思わなければ、何ごとも変わりません。
人生を変えるために、自分に必要のないことを切り捨てる覚悟を持ちたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
残りの80%を切り捨て、それにより余剰となった資源を20%に注ぎ込む。
残りの20%に再び「80対20の法則」を当てはめて、残りの80%を探し出す。
この繰り返しで、理論上では、効率化は無限に進むことになります。
ただ、すべてにおいて効率性を重視すればいいというものではありません。
自分のやりたいことや時間をかけたいことをするために、その他の部分を効率化する。
そのための法則です。
誰にでも、自分の人生に価値の80%を生んでいる、人生の20%の占めることがあるはずです。
それをしっかり見極めた上で、「80対20の法則」を普段の生活に取り入れていきたいですね。
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