本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

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【書評】『トップ1%の人だけが実践している集中力メソッド』(永田豊志)

 お薦めの本の紹介です。
 永田豊志さんの『トップ1%の人だけが実践している 集中力メソッド』です。

 永田豊志(ながた・とよし)さんは、知的生産研究家・新規事業プロデューサーです。
 2005年より共同して会社を設立し、新しいウェブサービス開発に携わるかたわら、ビジネスパーソンの知的生産性研究に取り組まれています。

「集中力」は誰でも、訓練や習慣で身に付けられる!

 人はみな、生まれた瞬間は同じスタートラインに立っています。
 しかし、人生を歩んでいくうち、大きなギャップができていきます。

 学歴、育った家庭の経済状況、生まれたタイミングや時代背景。
 このギャップの原因には、さまざまな要素が考えられます。

 ただ、その“根っこ”を掘り下げると、すべて「集中力」に行き当たります。
 集中力は、私たちの人生を大きく変え、成功させる源泉となっている力で、おとなになっても十分身に付けることができるものです。

 集中力は後天的なもので、誰でも訓練や習慣によって身に付けることができるもの。
 その根拠となるのが、「モンテッソーリ教育」と呼ばれる教育プログラムです。
 

 モンテッソーリ教育とは、20世紀初頭のイタリアで初の女性医師として精神病院で働いていた女性マリア・モンテッソーリが考案したした幼児教育プログラムです。
 その根幹は子供の自発性や集中力を養うメソッドであり、子供の能力を伸ばすための独自の教具とセットで運営されています。
 マリア・モンテッソーリがそのメソッドを発見したのは、偶然でした。
 彼女の前に、母娘の物乞いが現れたときのことです。お母さんの物乞いが、モンテッソーリに近づいているときに、幼い娘は、道に落ちていた切手を熱心に触っていたそうです。
 娘は周りの状況や、自分の置かれた貧しい境遇をすべて忘れて、その作業に「深く、深く集中」していたのです。そして、モンテッソーリは、手先を使って深く集中している幼い娘の表情を見てハッと気づいたのです。それは「集中によって、子供の中の何かが大きく変化していること」でした。

 そこから、彼女は、「集中」がもたらす子供たちへの素晴らしい効果を研究することになります。子供たちに「集中」を促すことによって、それまでの教育のいろんな問題がクリアになる、そう考えたのです。
(中略)
その後、モンテッソーリはメソッド、教具、教師の育成プログラムを開発し、普及に努めました。そして、モンテッソーリ教育は、瞬く間に欧米に広がっていきます。世代を越え、国を越え、集中のもたらす教育効果が世界中の子供たちを変えていきます。

 『トップ1%の人だけが実践している集中力メソッド』 第1章 より 永田豊志:著 かんき出版:刊

 幼児期にモンテッソーリ教育を受けている、主な著名人は以下の通りです。

ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン(グーグルの共同創業者)、ジェフ・ベゾス(アマゾン創業者)、マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック創業者)、バラク・オバマ(米国大統領)、ピーター・ドラッカー(経営学者)

 いずれも各分野で世界的に成功をおさめた超一流の人たちです。

 本書は、モンテッソーリ教育のノウハウから、「集中力」を高めるテクニックを取り出し、まとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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感受性の高い時期にやるべき「お仕事」とは?

 人間の幼児期、0〜6歳は「敏感期」と呼ばれ、子供の感受性が非常に高まる時期。
 身体や五感といった感覚器が鋭敏になり、言語や数、秩序などにかかわろうとする気持ちが非常に高まる期間です。

 モンテッソーリ教育では、この敏感期に、次の三点を徹底的に行なうことを提唱しています。

  1. 子供が自分でやりたい「お仕事」を選ぶ
  2. その「お仕事」に没頭する
  3. 自分で納得いくまでやりきる
    1.  モンテッソーリ教育で言う「お仕事」とは、ハサミで切る、ものを大きさや長さによって並び替える、のりで貼る、糸を縫うなどのたわいもない一連の作業です。その作業をほかの人がやるのを見て、本人が「やりたい」と意思表示したときだけ、先生は「やってみる?」と誘います。決して、先生が作業を薦めたり、強要したりはしません。

       モンテッソーリ教育では、先生が声でやり方を説明することもありません。子供たちの目の前で、一つひとつの動きを分析して見せるのです。子供たちは、それを理解しようと真剣なまなざしで先生の動きを追います。
       そして、自分の頭で考え、手足あるいは指先を動かして、先生に提示された見本と同じようなことができるまで、何度も、納得のいくまで続けます。
       一つの複雑な動作(むろん、おとなにとっては造作ないもの)を、一つひとつの細かな動きとして分解し、徹底的に真似る。自分の動作と見本を比べて正確に真似ます。
       子供たちは、しばらく集中した後、ふいにツキモノがとれたような、達成感に満ち溢れた穏やかな表情を見せて、「お仕事」を完了させます。始めるときも自分で決めて、止めるときも自分で決めるのです。その記憶は、自分の能力を100%出しきった貴重な体験として脳に刻まれます。

       『トップ1%の人だけが実践している集中力メソッド』 第1章 より 永田豊志:著 かんき出版:刊

       小さい頃に、このような教育を受けるメリットが大きいことは間違いありません。
       では、大人になってからでは遅いのかというと、そうではありません。

       脳には、「可塑性」という特徴があり、大人になっても脳の構造は変わり続けます。

       大人になるにしたがって脳の神経細胞(ニューロン)はどんどん減っていきます。
       しかしそれは、より効率よく処理するために無駄な神経細胞を間引いているためです。

       永田さんは、私たちの脳は年齢に関係なく発展し続けることができると強調します。

      「今」だけに注意を向けること

       集中力は、脳の「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という部分を使います。
       ものすごいレベルの集中力が持続しているときは、前頭前野が活性化しているときです。

       永田さんは、集中力を長時間維持するためのコツについて、以下のように述べています。

       集中力はただただ、一点を見つめて心をそこに向けることです。過去や未来に気をとられてはいけません。過去の成功や失敗体験、あるいは未来の評価や成功を気にしてはいけません。集中するときは、「今」だけに注意を向けることが大事です。試合でも、仕事でも、人生でも、負けるとすれば、それは「今」に対する集中力が切れたからです。
       私たちはもっと「今」にフォーカスすべきです。未来の成功のためにやっていることでも、集中力を強化するのであれば、未来のことはキレイさっぱり忘れましょう。
       なぜなら成功を意識すると、失敗が怖くなるからです。失敗が怖くなれば、緊張し、体には力が入り、頭は真っ白になってしまいます。そうなるとミスを誘発するだけです。むしろ「どんなミスを重ねて最後まで楽しもう」というくらいの開き直りの精神が集中力を生み、よい結果を生み出すものです。

       『トップ1%の人だけが実践している集中力メソッド』 第2章 より 永田豊志:著 かんき出版:刊

      「今」これをやる、と決めたら、そのことだけに専念するように心掛けること。
      「ワーキングメモリ(短期記憶)」は限られ、同時に処理できる量は多くありません。

       一つひとつのことを集中してこなしていくこと。
       結局はそれが、より多くの知識やノウハウを蓄積する秘訣です。

      「一点」と「分散」のスイッチを切り替える

       集中力とは、『他のノイズを排除して、一つの物事に焦点を当てる能力』です。

       集中の仕方には、大きく「一点集中」「分散集中」の2つがあります。

       注意が一点に向いているとき、これを「一点集中」と呼びます。
       しかし、目的を達成するためには、必ずしも一点だけに集中すればいいというものでもありません。サッカーの試合、将棋の対局、工場全体の稼働性をモニタリングするとき、私たちは全体に対して注意を分散させながら、物事を把握する必要があります。
       これを「分散集中」と呼びます。
       
       かつて、サッカーの中田英寿選手はパスの練習をするときにしきりに首を振るようにしていました。これは、パスを正確に通すためにボールに集中する「一点集中」と、周囲の状況を把握する「分散集中」を素早く切り替えるために行っていたのだとか。驚くようなところに鋭いパスを通す選手を見ると、私たちは背中に目が付いているのではないか、と思うことがありますよね。
       スポーツでは、こうした一点集中と分散集中を瞬時に切り替えながら、部分と全体を把握することが求められます。むろん、こうした能力は、スポーツだけでなく、仕事でも必要です。

       『トップ1%の人だけが実践している集中力メソッド』 第3章 より 永田豊志:著 かんき出版:刊

      「一点集中」と「分散集中」。
       その使い分けのポイントは、「木を見て、森を見る」視点を持つことです。

       2つの視点のスイッチを、いつでもこまめに切り替えるられるようにしたいですね。

      「自由研究時間」がヒット作を作る

       永田さんは、組織において自発性や集中力を生み出すための優れた制度や、仕組みを取り入れている企業のケーススタディをいくつか紹介しています。
       その中のひとつに、グーグルの「20%ルール」があります。

       グーグルの20%ルールとは、「会社にいる時間の約20%は、担当業務以外の自由な研究などにあててよい」というものです。
       Gmail、グーグルニュース、アドセンスなどは、20%ルールの中の自由研究から生まれています。

       グーグルでは、つねにこうした小さな自主的な製品プロジェクトがあちこちで進んでます。

       自主的なプロジェクトと書きましたが、やってもやらなくてもよいのではありません。
       この20%ルールは、「義務」なのです。義務だから、この2割の時間の成果もしっかり査定されます。つまり、どのようなテーマにするかは自主性に任されていますが、20%の時間を自由研究に費やすことは、マストなのです。
       これは、現在の成長を維持する仕事に8割、将来を担う新しいイノベーションに2割使いなさいという会社としての戦略にほかなりません。
       ところで、20%というのはなかなか絶妙な配分だと思います。もし、偉大な発明がパレートの法則に従うとすれば、「偉大な発明の8割は、全体の2割の時間から生まれる」と考えることもできるでしょう。
       週一日という時間は新しいものを生み出すためには、短すぎるでしょうか? そんなことはありません。創造性というのは、あらゆる制約で威力を発揮するものです。
       時間、予算、仕様などの条件が厳しいほど、新しい解決方法や表現方法が必要となり、イノベーションが生まれやすくなるものです。全体の20%という時間は、本当にやる気のある者にとっては十分な時間なのです。

       『トップ1%の人だけが実践している集中力メソッド』 第4章 より 永田豊志:著 かんき出版:刊

       勤務時間の20%という短い時間で、業務に関係のない分野の仕事で成果を上げる。
       これはかなり難易度の高い要求です。

       高いハードルに対して自発的にやる気をもって取り組む。
       すると、創造力や集中力が増し、よりよいアイデアが湧いてくる。

      「20%ルール」は、いろいろな場面で応用できそうですね。

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       ひとつの幼児教育プログラムが、世界を変える偉人たちをこれほど多く世に送り出していることは驚きです。

       逆にいうと、小さい頃に身についた良い習慣は、年齢を重ねても決してなくならないということ。
      「三つ子の魂百まで」とは、よく言ったものですね。

       習慣は、日々の行動や意識から作り出されるものです。
       新しい習慣を身につけることは、それまでの習慣に長く浸っているほど大変です。
       しかし、不可能ではありません。

       普段の生活から本書のメソッドを実践し、集中力を高めて、より充実した人生を送っていきたいものです。

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