本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『寝てもとれない疲れをとる本』(中根一)

 お薦めの本の紹介です。
 中根一先生の『寝てもとれない疲れをとる本』です。

 中根一(なかの・はじめ)先生は、鍼灸師です。

疲労を放置することは、人生最大のリスク

 どれだけ寝ても、寝足りない。
 ちょっと体を動かしただけで、疲れてしまう。
 気が重く、何事もやる気が起きない。

 そんな症状に悩んでいる人は、多いのではないでしょうか。

 中根先生は、「現代人が抱えている疲れ」は本当に深刻で、多くの方は自然に回復できる範疇(はんちゅう)を超えてしまっていると警鐘を鳴らします。

 たとえ今、体力にまかせて何とか乗り切れていたとしても、それは「気合い」や「ごまかし」によるもの――問題の先送りに過ぎません。倒れたり病気になって、溜め込んだツケを一気に払わされる日が来てから焦っても遅いのです。
 何歳になっても元気に、高いパフォーマンスを発揮していくためには、その時々でしっかり疲労を回復していくことが必要なのだということを忘れないでください。

 なぜ鍼灸師(しんきゅうし)である私が、現代人の抱える疲労に警鐘を鳴らしているか? それには理由があります。
「疲労」というものは、活動をしたことによって生まれる副産物のようなもの。疲労そのものは病気ではありません。でも、疲れを解消させられないまま頑張った人たちが、様々な体の不調を訴えて、鍼灸院へ駆け込んでいらっしゃるのです。
 疲れている状態では、病気やストレスへの抵抗力や回復力を十分に発揮することはできません。つまり、風邪を引きやすくなったり治りにくくなるばかりか、がん、アレルギー、認知症、胃腸炎、鬱(うつ)病などのあらゆる病気の発症・悪化のリスクを高めてしまう可能性があります。疲れを放置すれば、ただツライばかりでなく、結果として寿命を縮めることになりかねないと、世界中の医師たちから指摘されているのです。
 このような、疲労によって引き起こされる様々な問題を未然に防ぐこと。それこそが、私たち鍼灸師が専門としている「東洋医学」の本当の使い方なのです。
 実際、世界のトップエグゼクティブや一流のクリエイターたちの多くは、「東洋医学」への関心を高めています。

『寝てもとれない疲れをとる本』 はじめに より 中根一:著 文響社:刊

 本書は、東洋医学をベースにした、ふだんの生活や仕事に取り入れられる「慢性疲労を解消するためのコツ」をわかりやすくまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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東洋医学の力で疲れを「根治」しよう!

 疲れが「溜まる」とは、どのような現象なのでしょうか。
 中根先生は、以下のように説明しています。

 疲れが積み重なっていくほどに心身がドンヨリと重くなり、動きづらくなるのは、体の新陳代謝(しんちんたいしゃ)が下がっていることが原因です。つまり、エネルギーの伝達や血液やリンパ液の流れがうまくいかなくなり、代謝したことによって生まれた不要物が体から排泄(はいせつ)されにくくなっているのです。
 東洋医学では、このように疲れが溜まるイメージを、「流れが滞る」という言葉で表現しています。
 東洋医学の「氣(気)」という考え方をご紹介しましょう。
「氣」を「エネルギー」と説明する人もいますが、私は、「代謝によって、体内がスムーズに流動していること」と考えています。「氣」の字義をひもとくと「米+雲」の意。そこから転じて「変化するもの、反応するもの」と捉えられるからです。
 この「氣(新陳代謝)」が流れている状態ならば、生じた疲労感もきれいに解消されていきます。
 反対に、「氣の流れ」が滞ると、体内での代謝や生理現象もスムーズでなくなります。すると、自然に解消されるはずの疲れが抜けず、重たく、不快なものがどんどん溜まっていくように感じるのです。
 流れている水はきれいなままですが、流れが止まった水はドンヨリと淀(よど)んでくるもの。このようにイメージをしてもらえば、流れていることの大切さがよりわかりやすいかもしれません。

 また、「肩こり」は、乳酸(にゅうさん)などの不要物が筋肉の中で滞ることで起こります。解消するには、再び血流を盛んにすることが効果的です。
 そこで、東洋医学ではその原因に合わせて鍼灸やマッサージなどを施して、「筋肉を柔らかくする」「血流を促進する」「血液をよい状態に戻す」という変化を促します。
 これなどは「停滞」か生み出した疲労を、その原因に対して適切な刺激によって流れをつくり、解消させる典型例だといえますね。

『寝てもとれない疲れをとる本』 第1章 より 中根一:著 文響社:刊

 疲れは、「氣」の流れが滞ることから起こります。

 同じ姿勢で、長時間作業していると、体の筋肉がこわばって、硬くなります。
 やはり、一定時間ごとの息抜きは、必要だということですね。

 中根先生は、30分に一度、ほんの10秒でも立ち上がったり姿勢を変えることを勧めています。

4つの体質で知る、あなたの「体の個性」

 疲れ方は、体質により、4つのタイプに分けることができます。

 自分の体質・疲れ方は、どのタイプか。
 それを調べるには、『体質&疲労チャート』を利用します(下の図1を参照)。

図 体質 疲労タイプ チャート 寝てもとれない疲れ はじめに
図1.「体質&疲労タイプ」チャート
(『寝てもとれない疲れをとる本』 はじめに より抜粋)

 チャートをたどっていくと分かれる、

  • 「木」タイプ(東洋医学では「肝(かん)」と呼ぶ)
  • B「土」タイプ(東洋医学では「脾(ひ)」と呼ぶ
  • C「金属」タイプ(東洋医学では「肺(はい)」と呼ぶ
  • D「水」タイプ(東洋医学では「腎(じん)」と呼ぶ

 の4タイプは、東洋医学の「陰陽五行(いんようごぎょう)」の観点と日本の鍼灸術、そしてこれまで培った私の経験に基いています。実際、私の鍼灸院では、このチャートをより専門的にしたものを用いてあらゆる診察を行っています。

 また、体の中で起きる変化(=生理)は、感情の変化とリンクしています。そのため、この疲労タイプには性格的な特徴も含みます。体の状態を心のありようと関連づけて考える「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方が、東洋医学における心と体の捉え方なのです。

 ただし、この体質・性格の傾向は、固定されたものではありません。
「生まれもった体質はおっとりした性格(=「土」タイプ)だけど、教育熱心な両親の影響で今はきっちりした性格(=「木」タイプ)」
「以前は熱血タイプの頑張り屋(=「木」タイプ)だったけど、年令を重ねるごとに力の抜きどころがわかってきた(=「水」タイプ)」
 など、生活環境などによって変化したり、2つ以上のタイプが混ざることもあります。どのタイプの方も加齢によって徐々に「水」タイプの傾向が強くなっていくことも忘れてはならないポイント。

 このように、タイプごとに明確な境界はなく、状況に応じて少しずつ変化していくものなので、もし、チャートをたどってもあまりピンとくる結果にならなかった場合には、そこで導き出されたタイプ別のケアを行っていただいた後で、もうひとつ「ピンとくる」タイプのケアも追加してみるといいでしょう。

『寝てもとれない疲れをとる本』 第2章 より 中根一:著 文響社:刊

「疲れ」と一口に言っても、その原因はさまざまです。

 自分の疲れは、どこから来るのか。
 自分の体質を知ることで、効果的な対策を打つことができます。

 大事に至らないうちに、病気を未然に防ぐ。
 東洋医学の知恵を上手に利用し、慢性的な疲れを根治したいですね。

「木」タイプの疲れの処方箋

 上のチャートで、Aの「木」タイプの体質の特徴と疲労対策は、以下のとおりです。

【特徴】
 責任感が強く、頼られるキーパーソン的な人が多いようです。周囲の期待に応えようとする傾向が強いので、自分への評価が気になることも多々あります。課題を達成しようと頑張るため、自分に対してはもちろん、人に対しても厳しくなりがちです。

【疲れに対して】
 4つの体質のうち、とくに1つのことに没頭してしまって「疲れ」に気づきにくいタイプです。もともと活動的な方が多く、仕事でも遊びでも、心身の疲労感よりのめりこむ快感が勝ってしまう場合が少なくありません。結果、「休み下手」となり、知らずと疲れを溜め込んでしまいがちなのです。本人は「今、すごくノッている、やめたくない」という感覚になっていても、そのまま休みなしに突っ走れば、どこかでバタンと倒れてしまいかねません。
 そんなタイプの人が自分の疲れに気づいたときには、たいてい、体の危険信号が点滅している状態ですから、「ちょっと疲れたかな?」という感覚に素直に従って上手にペースダウンすることをオススメします。

【疲れのサイン】目、側頭部、首、肩、爪にあらわれる

  • 首や肩の筋肉がこる、まぶたが痙攣(けいれん)する。
  • 目が疲れる、ドライアイ、目の充血が起こる
  • 爪が割れる、二枚爪になる。
  • 冷えのぼせが起こる(手足は冷たいのに、脳の血流が多いため上半身に熱を感じる)。
  • 手足に汗をかく。
  • お腹(おへその左側)が、ドンドンと脈打つ。
  • 側頭部がズキズキ痛む。

【即効!疲労解消法】

  • 温タオルなどで目を温める。
  • 1時間集中したら10分休むなど、意識して休みをとる。
  • 散歩・深呼吸などのリズム運動を20分間行なう。ガムを噛む。
  • 背中側の筋肉をしっかりと伸び縮みさせてテレビ体操をする。
  • 大きく口を開けて「あ」「い」「う」「え」「お」「あ」「お」と発声する。

【じっくり癒やす! 体質管理法】

  • 指圧・鍼灸・アロママッサージなどで筋肉の緊張をゆるめる。
  • 露天風呂で半身浴をしてゆったりと過ごす(窓を開けた浴室でもOKです。熱が室内にこもらないようにすることがポイント)。
  • 自然の中で、ただボーッとする。
  • クラシックなどのゆったりとした音楽を聴く

【ひと言メモ】

 東洋医学における「肝」は、全身に血流を巡らせることで、活動をするために必要な栄養補給を行なう働きのこと。その性質を持つ「木」タイプは、1つの課題を達成するまで、体力が続く限り戦い続けてしまう傾向があるので、活動させている場所にだけ血流が偏ってしまうことに。「何もしない」「休息をとる」ということに罪悪感を抱いてしまうかもしれませんが、しっかり休むからこそ、よりよい仕事ができるのです。「いい仕事をするための必要経費」として、しっかりご自愛ください。

『寝てもとれない疲れをとる本』 第2章 より 中根一:著 文響社:刊

「木」タイプの体質は、まさに典型的な日本人を表しているといえますね。

 多少の無理は我慢することができるから、休まない。
 そんな人ほど、体に現れた「疲労のサイン」を見逃さずに、体を休ませることが大切です。

胃腸の疲れは、「舌」を見ればわかる!

 ストレスによって心身が疲れてくると、自律神経が緊張に働き、消化・吸収機能が低下します。
 つまり、胃腸の状態が疲れやすさと密接に関わっているということです。

 胃腸を通じて、日々の食事からスムーズに栄養補給ができているかどうか。
 それは、「舌」を見るだけで、判断することができます。

 これは「舌診(ぜっしん)」という、伝統的な東洋医学の診察法です。鏡の前で、ご自身の舌を診てみてください。

 さて、胃腸が健康な人は、こんな舌をしています。
 ①舌の形・・・唇を底辺にした二等辺三角形で、舌先がきれいに尖(とが)っている。
 ②舌の色・・・薄ピンク色(食べ物でいうと中トロのような色み)。
 ③舌の苔・・・舌の付着物が白色で薄く、舌の表面が透けて見えている状態。

 この3つの観点をもとに、さっそくチェックしていきましょう。朝起きて、歯みがきのときなどに、舌をつき出して鏡に映してみるのがよいでしょう。
 健康な状態の舌と比べて、今のご自身の舌はどうでしょうか?

 いくつかの状態が複合的に舌に現れることもありますから、判別が難しいケースもあります。しかし、いずれにせよ96ページで紹介した「健康な舌」の3つの条件との違いは、体から発せられる「不調のサイン」です。
 ここで何か引っかかった人は、今の食べ方がご自身の体質や体の状態に合っていない可能性が大。つまりは、胃腸に負担をかけないように食べ方を変えるだけで、今よりも体の状態がよくなるということです。

 今回は舌を通して胃腸の調子を見ましたが、体は何かあると必ず、どこかに「不調のサイン」を出しています。そのサインにいち早く気づいてあげることで、病気を防ぐことができます。
「東洋医学は未病の医学」だと言われているのは、このサインの観察を大切にしているからなのです。

『寝てもとれない疲れをとる本』 第3章 より 中根一:著 文響社:刊

図2−1 舌の形をチェック 寝てもとれない疲れ 第3章
図2−2 舌の色をチェック 寝てもとれない疲れ 第3章
図2−3 舌の苔をチェック 寝てもとれない疲れ 第3章
図2.舌の形、色、苔をチェック
(『寝てもとれない疲れをとる本』 第3章 より抜粋)

 毎朝、鏡の前で、顔を洗うついでに舌の状態を確認する。
 ぜひ、習慣にしたいですね。

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 健康は、失ってはじめて、その大切さに気づくものです。
 また、一度失うと、なかなか取り戻すことができない、貴重なものでもあります。

 私たちの体は、多少の酷使には耐えて、黙って働いてくれます。
 ただ、限界が近づくと、悲鳴を上げ始めます。
 その最初のサインが、慢性的な「疲れ」です。

「敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず」

 自分の体質のタイプを知り、それに応じた対策をとる。
 いつまでも若々しく、悠々自適な生活を送るために、疲れと上手に付き合いたいですね。

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