【書評】『1万円起業』(クリス・ギレボー)
お薦めの本の紹介です。
クリス・ギレボーさんの『1万円起業 片手間で始めてじゅうぶんな収入を稼ぐ方法』です。
クリス・ギレボーさんは、作家であり、起業家であり、トラベラーです。
世界中を旅しながら、様々な場所で、あらゆる形のビジネスを生み出し続けておられます。
「小さい者が勝つ時代」がやってきた!
今、新しい世の中で“新しい生き方のモデル”が着実に広まっています。
それは目的のある人生を手に入れると同時に、豊かな収入を得る生き方のこと。
それを可能にしたのが、「マイクロビジネス革命」と呼ばれるものです。
今日、テクノロジーが急激な進歩を遂げ、インターネット環境がどこでも手に入ります。
起業に必要なあらゆるサービスが使いやすく、かつ、かかる費用も劇的に減っています。
また、マーケティングに多額の費用を掛ける必要もなくなりました。
借金をせずに、手持ちのわずかな資金ですぐに事業を始める。
自分の情熱とスキルを駆使して一人でプロジェクトを始める。
そんな何年か前までは夢物語だったようなことが実現可能となっています。
そして、実際に何千、何万という「1万円起業家」たちが生まれています。
彼らは、独立して働くつもりなどなかった普通の人たちがほとんどです。
自分がやりたいことを実現しながら、何か価値のあるものをつくり上げる生き方。
本書は、そんな生き方を「ごく自然な選択の結果」として実際に手に入れた人たちの実例集です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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1万円起業がうまくいく「たった三つのルール」
1万円起業がうまくいくためのルールは、以下の三つだけです。
ルール①「共通部分」を探す
共通部分とは、あなたが好きなことや得意なこと(その両方を兼ね備えていればいちばんいい)と、他人の興味が重なる部分だ。
その他人の興味は、喜んでお金をはらうほど強いものでなければならない。
あなたが大好きなこと、得意なことが何でも人の興味を引くわけではないし、ビジネスにつながるわけでもないのだ。
この点を勘違いすると悲劇のもとでしかない。
だが、情熱やスキルと他人の興味が一致する二つの円の共通部分ならば、自由と価値に基づいたマイクロビジネスが誕生する余地がある。ルール②スキルを転用する
本書に登場するプロジェクトの多くは、必ずしもそのためにもっともよく使われるスキルの持ち主ではなく、関連した別のスキルの持ち主が始めたものだ。
たとえば、すぐれた教師は勉強を教えるのがうまいだけではない。コミュニケーション全般、集団管理、長期計画の策定と実行、そして異なる利益団体(生徒、保護者、学校経営者、同僚教師)の関係の調整などにも長けていることが多い。教師はそれ自体が尊い仕事だが、これらのスキルとは別のビジネスを創造するうえでも役に立つ。
「スキルの転用」と言われてもピンとこないかもしれないが、こう言い換えればどうだろう。「自分が得意なことはたぶん一つだけではない」と。
(中略)
ルール③「魔法の薬」
最初の二つのルールをまとめると、マイクロビジネスを誕生させる、ごく当たり前の計算式が見えてくる。情熱やスキル + 有用性 = 成功
『1万円起業』 第1章 より クリス・ギレボー:著 本田直之:監訳 飛鳥新社:刊
事業の立ち上げに必要なものも、次の三つのみです。
- 製品またはサービス=あなたが売るもの
- 代金を払ってくれる人びと=顧客
- 支払いを受ける手段=製品またはサービスとお金を引き換える方法
起業するのに、戦略もマーケティングも、多額の起業資金も要りません。
すごい世の中になったものです。
顧客を見つける確実な戦略とは?
商売を始める上で欠かせないのが、「顧客」や「クライアント」の獲得です。
「クライアントの見つけ方」の具体的な戦略のひとつが、「ほしいものをお客に聞く」方法です。
異なるアイデアを検討し、どれがいちばんいいか確信がないときは、商品を買ってくれそうな人や現在の顧客(もしいれば)、あるいは自分のアイデアにぴったりな誰かにズバリ聞いてみるのがいちばん早い。
質問は具体的に。何かを「好きか」どうか聞いても、あまり役に立たない。あなたは単なる趣味ではなくビジネスを始めようとしているのだから、あなたが売ろうとしているものにお金を払ってくれるかどうか聞いてみるといい。それによって、単に「好き」なのか、実際に「お金を払って買う」かが区別できる。
次のような質問から始めると効果的だ。
- _____について、いちばん困っていることは何か?
- _____について、いちばん知りたいことは何か?
- _____について、どんなことをしてほしいか?
空欄には、具体的な話題や特定のニーズ、あなたが調査している産業を入れる。たとえば「子育てについて、いちばん困っていることは何か?」あるいは「動画の撮り方について、いちばん知りたいことは何か?」という具合だ。
こういった調査――回答者が好きに答える自由記述の調査――で面白いのは、それまで考えてもみなかったことが学べるところだ。それはまた、新製品の大々的な売り出し、あるいは市場への再導入のきっかけにもなる。『1万円起業』 第5章 より クリス・ギレボー:著 本田直之:監訳 飛鳥新社:刊
「これは絶対に役に立つ」
自分がそう思うものでも、実際にお客さんが買ってくれないとビジネスになりません。
お客さんに聞いた、具体的な「困っていること」や「知りたいこと」。
それは既存のサービスでは手の届かない部分であることがほとんどです。
これまで隠れていた潜在的な市場、ニッチ(すき間)なニーズを狙う。
それが「1万円起業」の本質といえます。
「30kmで出されたオレンジ」を目指せ!
人が「ほしい」と思うオファーとは、どのようなものでしょうか。
ギレボーさんは、はじめてフルマラソンに挑戦したときのエピソードを例に挙げています。
疲れ切っていた30km地点で出会った二人のボランティア。
一人は、新鮮なひと切れのオレンジを配っていました。
もう一人は、乾いたドーナツを配っていました。
ギレボーさんの心に響いた魅力的なオファーは当然、前者の方でした。
人を引きつけずにおかないオファーとは、30キロ地点で出されたオレンジだ。
ワシントン大学で、卒業を控えた四年生を対象に毎年支給される2万ドル(200万円)のボンダーマン研究奨学金もそうだ。この奨学金には厳格な規則がある。受け取った学生は、一人で世界を旅すること。八ヶ月は帰ってきてはいけない。ああ、君たちがちゃんと生きているとご両親に伝えたいから、たまには短い連絡をよこすように――。
奨学金に応募する学生が毎年数100人はいるだろうって? その通り。
見込み客が断れないオファーはどうすればできるのだろうか?
何度も繰り返すが、まず魚を与えるのが大原則。
次に、適切な時期に、適切な相手を選んでいるかどうか。相手はよくてもタイミングが悪いときがままあるものだ。マラソンランナーはレース後なら喜んでドーナツを食べるだろうが、30キロ地点ではノーサンキューだ。
そして製品やサービスを説得力のあるキャッチコピーとともに差し出せば・・・・断れないオファーのでき上がりだ。『1万円起業』 第7章 より クリス・ギレボー:著 本田直之:監訳 飛鳥新社:刊
与える魚(相手の利益になるもの)が魅力的なものでも、時と場合を選ばないと、相手にまったく響かないどころか、敬遠されてしまうことになりかねません。
逆に、ベストのタイミングでベストなオファーを出すことができれば、成功する確率は大きく上がりますね。
「コスト」でなく、「ベネフィット」に基づく価格
「1万円起業」も立派なビジネスです。
ギレボーさんは、ビジネスは常に利益を重視しなければならない
と強調します。
自らの経験ももとに「収益性をたちまち高めるルール」のひとつとして、以下の方法を挙げています。
オファーの特徴よりもベネフィットを強調すべきなのと同様に、オファーの価格もベネフィットに基いて考えるべきだ。製品やサービスを生み出し、完成させるためにかかる時間と実際のコストに基づくべきではない。それは、買い手にとってまったく関係ないことだからだ。
実際、価格を決定する最悪の方法は、それをつくるのにどれくらい時間がかかるか、あるいはあなたの時間にどれくらい「価値があるか」を考慮することだ。
あなたの時間にどれくらい価値があるかは、完全に主観的な問題だ。ビル・クリントンはたった1時間のスピーチで20万ドル(2000万円)稼ぐ。家族で集まってステーキを食べる夜、あなたはクリントン(あるいは別の大統領でもいいが)に20万ドル払ってスピーチしてほしいとは思わないだろうが、理由はどうあれ喜んでそれだけの金額を投資する会社もあるのだ。
提供するベネフィットに基いて価格を決めるときは、1歩も引かない覚悟をしよう。いくらにしようと、高すぎると文句を言う人は必ずいる。
これまで会った人たちのなかで、「新しいビジネスが成功しているのは業界最安値をつけているからだ」と言った人は、ほとんどいなかった。
出血大サービスの戦略がウォルマートでうまくいくからといって、おそらくあなたや私にとってはうまくいかないだろう。価格で競うほうがはるかにいい。『1万円起業』 第10章 より クリス・ギレボー:著 本田直之:監訳 飛鳥新社:刊
「1万円起業」は、趣味でやっていたことや個人的に「好きだから」と理由で始めることが多いです。
趣味の延長で始めると、楽しいことをやってお金をもらうことに引け目を感じたり、自分のやっていることの価値を正確に評価できず、自分のサービスに低すぎる金額を設定してしまいがちです。
価格ではなく、他の「何か」で勝負しなければ既存のサービスには太刀打ちできません。
自分が提供するサービスの「ベネフィット(価値)」は、市場ではどの程度のものなのか。
それをしっかり客観的に判断して価格を決定すべきということです。
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「起業」というと、多額の資金が必要で、長期間周到に準備して、立ち上げてからしばらくは寝る間も惜しんで働き、事業を軌道に乗せるためにすべての精力を注がなければ成功しないもの。
そんなイメージをいまだに、多くの日本人はもっています。
しかし、海の向こうの米国では、本書で紹介されている「1万円起業家」がどんどん誕生しています。
いずれ、日本にもその波は押し寄せてくることでしょう。
今の仕事を続けながら始めることができ、ノーリスク。
さらに自分の好きなことや趣味をベースにしたビジネスができる。
もし、そんなチャンスが誰の目の前にもぶら下がっているのなら、真剣に検討しない手はありませんね。
とにかく、何ごとも、実行してみることが大事です。
本書は、これまでの古い「ビジネスの常識」から抜け出すために、一読の価値ありです。
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