本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『人生の困難を突破する力』(小野寺佑太)

 お薦めの本の紹介です。
 小野寺佑太さんの『人生の困難を突破する力』です。

 小野寺佑太(おのでら・ゆうた)さんは、コンサルタント・企業経営者です。

成功者になるために必要なのは「突破力」!

 日本に100万人いるといわれる、「生保営業マン」。
 その中のわずか0.007%のトップセールスが、「TOT(トップ・オブ・ザ・テーブル)」と呼ばれる人たちです。

 小野寺さんは、その名誉ある称号の登録資格を、たった4年で手に入れることに成功しました。

 保険業界に入ってすぐに新人ナンバーワンを獲得し、わずか数年でTOTという大きな成績を残してきた――。
 その結果だけを見た人からは、「若くして成功を収めた」「順風満帆の人生だ」と思われることが少なくありません。しかし、TOTの称号を得るまでの道のりは厳しく険しいものでした。
 外資系保険会社に入社してすぐ、新人ナンバーワンという結果を残した私は意気揚々と独立。しかし開業からわずか半年で会社の現預貯金は700万円になり、私個人の手持ちも1000円にまで激減しました。
 背に腹はかえられないとノンバンク2社から100万円を借り、「今月中に大口の契約が取れなければもうお手上げ・・・・・。あとは自宅でも車でも売るしかない」そう思った時期もありました。
 私を信じて独立を共にしてくれた仲間の一人はこの極限状態に耐えられず、1年半で体重が20キロも減り、肉体的にも精神的にも追い詰められたくらいです。
 もちろん私自身もこの危機に、全く不安がなかったというわけではありません。常に最悪のシナリオを何パターンも想定し、万が一に備えることも怠りませんでした。しかし、そんな絶望の中でも、「この危機は必ず乗り越えられる、自分にならできる」と信じ続け、そして本当に危機を脱して一気にTOTの登録資格を得ることができたのです。

 そういうと、「なぜそんなにメンタルが強いのか」と驚かれます。子どもの頃から負けん気の強さは人一倍。しかし、もともと持っている性分だけで、この強さはつくられたのではない――今ではそう思うようになっています。
 誰もが諦めてしまうような絶体絶命の窮地に追いやられても屈することのない強い心は、人生において経験した多くの困難を通じて次第に身についてきたものだからです。
 生きている限り、人生には大なり小なり困難がつきものです。人によりその困難の大きさや回数は違っても、誰にでも必ず降りかかってくるでしょう。
 しかし困難を突破できれば、一回り大きく成長し、今よりも一段高い景色を見ることができる――。そのことを、身をもって幾度となく経験してきました。

『人生の困難を突破する力』 序章 より 小野寺佑太:著 幻冬舎:刊

 長い人生、試練は、必ず起こるものです。

「もうだめかもしれない」

 そんな状況に陥ったとき、その人間の真価は問われます。

 本書は、何度も挫折を繰り返し、その度に絶体絶命のピンチからはい上がり、成功した小野寺流「突破力」をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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お金が絡む重要なことは、オーナーと話す

 16歳のときに、家族と喧嘩して家を飛び出した小野寺さん。
 ガテン系日雇いバイトを転々とし、最終的に型枠解体の仕事を得ます。

 そして、「家族をもっと楽させたい」との思いから、起業を決意します。
 小野寺さんが、18歳のときです。

 この頃、経営者として、一番気を遣ったのは、取引先との契約でした。

 建設業界は多くの場合が請負契約で、私も元請けから仕事をもらい、職人を現場に手配することが重要な仕事でした。請負契約の場合、工事が始まる1、2ヶ月前になると事前に現場を視察して、各現場の親会社の社長や現場の親方と、仕事の打合せをします。その後に各親会社の社長と1平米いくらか、職人なら1人工いくらといった単価の取り決めをするのです。
 私は仕事をいただいている立場なので、無理な金額設定をしないようにしたり、お声掛けいただいた仕事については基本的に全て請け負うようにしていました。なぜなら親会社の社長が、20代前半の若い私が社長を務めているような会社であるにもかかわらずその働きぶりを認めてくれて、仕事を依頼してくれたからです。そうしたこともあって、私は現場の依頼がくるたびに、喜びを噛み締めていました。
 そんな中でも、支払サイトに関しては、親会社の社長に事前におうかがいするようにしていました。自転車操業とまではいきませんでしたが弱小企業でしたし、私が慎重なタイプだったこともあって、社員の2ヶ月分の給与を常に確保しておきたいと考えていたためです。社員の給与以外にも、家賃、事務所の経費なども賄う必要がありました。
 私の会社支払サイトは月末締めの翌月末支払いだったこともあって、なるべく、月末締めの翌月末支払いにしていただけないでしょうかと、社長に交渉していました。
 もちろん相手の親会社の支払サイトの関係もあるので、全てが思う通りにいかないのですが、できるだけそうできないかと、私が直接社長と交渉していました。
 周りの各親会社の社長に恵まれていたのか、ほとんどの社長たちが私の要望を容認してくれました。当時若い経営者でありましたが、私のことをそれだけ必要としてくれていることに感謝をしたことを今でもよく覚えています。

 この時にこうして各親会社の社長たちと向き合い、会話をし、理由を言い、結果をもらう。そういう経験もまた、いまの仕事に役立っていると思います。
 この頃に経営者に交渉するという能力を自然に身につけたといってもいいくらい、よい経験をさせてもらいました。相手が自分よりも立場が上の人であっても、話せば分かってもらえる。そのことをこの時期に学び、実践していったのです。

『人生の困難を突破する力』 第1章 より 小野寺佑太:著 幻冬舎:刊

 ビジネスで成功するためには、「信用」を得ることが必要不可欠です。

 信用は、約束を守るたびに積み重なっていくもの。

 契約における金額を詳細まで詰めて、きっちり決める。
 決まった契約をしっかり守る。

 ビジネスの基本を若い頃に身につけたからこそ、今の小野寺さんがあります。

這い上がるのに必要なのは「自分を信じる力」

 順調だった会社経営も、2008年に起こったリーマン・ショックを境に傾き始めます。

 小野寺さんは、経営者として厳しいプレッシャーに追い詰められ、「パニック障害」を発症します。
 それに追い打ちをかけたのが、妻子の家出です。

 病状は、悪化の一途をたどります。

 2010年の夏、小野寺さんは、ある一人の占い師を頼ります。
 バラエティ番組などに多数出演する有名占い師「魚ちゃん」です。

 魚ちゃんは歯に衣着せぬ物言いで辛口のアドバイスをすることで有名です。
 掘りごたつのある座敷に通され、いよいよ私の番。私の前に突然正座をした様子を見て、周囲のお客さんたちにどよめきが起こり、一斉にお客さんが私と魚ちゃんのほうに振り向きました。そして、魚ちゃんはじっと私の目を見たかと思うといきなり精神統一を始めました。
 開口一番、店内に響き渡る大きな声で「絶対にあなたは成功する。あなたは上に上がっていく人だ」と、辛口で評判のはずの魚ちゃんが確信をもって私のことを褒めてくれたのです。
 のちに魚ちゃんは当時を振り返り、こう話しています。
「当時の小野寺さんは相当弱っていました。でも大丈夫だと瞬時に思ったのです。まじめに自分のことを考えているのが全身から伝わってきたからです。
 人間、どん底にいるときでも、ただ悩んでいるだけではだめです。
 ネガティブになっているときは、たいていの人が自分のことを責めてしまうものです。反省するのも大切ですが、『自分は大丈夫』という心をもっていることが再び立ち上がるのには必要なのです。
 つまりは、自分自身を愛せるかどうかということなのですが、私には小野寺さんは誰よりも自分を愛しているというオーラが見えたのです。その強い思いがこの人をつくっているといってもいいでしょう。どん底に落ちても自分を愛する力が大切です。
 自分を好きになるというのは、簡単なようですぐにはできません。子どもの時の環境にもよります。
 小野寺さんの子ども時代の環境は、ふつうの子どもと同じように過ごせる環境ではなかった。全てが満たされているという環境ではなかったのです。そういう子はけっこういますが、その中から世の中の表舞台に立てるまでになれる人は一握りです。
 劣等感が大きいほど出世する。なにか足りない環境で自分がどうすれば生き残れるかを考える人のほうが出世するんです。
 会ったその日から、この人は将来的になにかをやる。どういう仕事かわからないけれども、ゆくゆくは人の上に立つ人間になると確信しました。それはすごいオーラでした。私は仕事柄いろいろな人に会ってきましたが、後にも先にもこれほど強い力のある人にはそうそうお目にかかれません。どんなどん底に落ちても這い上がる人。その力を感じました」

『人生の困難を突破する力』 第2章 より 小野寺佑太:著 幻冬舎:刊

「天は克服できない試練は与えない」

 どんな苦しい経験も、過ぎてしまえば、貴重な財産になります。
 大事なのは、困難に負けないこと、途中で投げ出さないことです。

『自分は大丈夫』

 そう信じ抜けるくらい、自分を愛すること。
 どんな状況でも、忘れないようにしたいですね。

理想のトップは、「実るほどこうべを垂れる稲穂かな」

 病状の悪化で会社を清算し、いったんはビジネスの一線から退いた小野寺さん。

 病が癒えて、次なるステージに進むことを決意します。
 それが、生命保険業界でした。

 小野寺さんが、27歳のときです。

 小野寺さんが生保の営業マンになりたての頃にお世話になったのが、草薙武雄という人物です。
 草薙さんは、生保業界では知らない人がいないくらいの超大物です。

 草彅塾では、お客さまから信頼される保険営業マンの心得など、本当にいろいろなことを教わり、常に驚きの連続でした。そんな草彅さんに、生涯忘れられないほどの経験をさせていただいたことがあります。
 入社1年にも満たない私を、帝国ホテルに招待してくださったのです。超一流の帝国ホテルのなかでもVIP会員のみが入店を許される高級ラウンジ――。建設業時代にはまったく縁のなかった華やかな世界に、私はおもわず緊張しました。

 草彅さんには客人をもてなす時にもルールがありました。自分が誘ったときは相手を中心に事を動かしていく――それをお店の人たちも熟知しているので、その日は全てが「小野寺ファースト」で動いているのが手に取るようにわかりました。
 こぎれいなユニフォームをきちんと着こなした人が、私を上座に座らせてくれて、草彅さんよりも先におしぼりやメニューを手渡してくれる。スマートな接待にはただただ驚くばかりでした。
 草彅さんからオーダーを促されたとき、貧乏性のところがある私は、恐縮して金額が低いメニューから選んでしまいました。すると草彅さんはすかさずこう言いました。
「小野寺君が食べたいものを食べなさい。『ごちそうさま』は一度しか言えないんだよ」と。
 真の成功者とはこういうものなのかと、いままで見たことのない世界を見せていただいた思いでした。
 その後も草彅さんと食事を共にする機会が多くなり、銀座の名だたる高級老舗店をはじめ、数々の名店に連れて行っていただきましたが、どこに行っても草彅さんといると特別待遇のもてなしを受けます。支配人や料理長がわざわざ挨拶にやってきたり、混雑しているときも草彅さんファーストで動いているように見えました。
 それは草彅さんがお金持ちで常連客だからなのでしょうか。そうではありませんでした。
 草彅さんはたとえお客さんの立場で店に入る時にも、必ず丁寧に頭を下げ、お店のスタッフに感謝の気持ちを伝えています。草彅塾で私が初めて草彅さんと出会った時と同じように・・・・・。その姿を見て、お店の人も一生懸命に草彅さんのために動いてくれるのだとわかりました。
 どんな立場の人にも礼を尽くすから、巡り巡って自分のところにその思いが戻ってくる。お客様だけでなく、家族、部下、塾生、お店のスタッフに至るまで気遣いができる方なのです。仕事では誰も文句のいえないほどの成果を出す実力がありながらも人柄はいたって謙虚。だからこそ高級スーツや高級腕時計を身につけていても嫌みがなく、まったく浮いていないのです。
 草彅さんの人柄を目の当たりにして、「実るほどこうべを垂れる稲穂かな」という言葉が頭をよぎりました。こういう振る舞いができるようになって初めて人間の感情は動くのだということを間近で見せてもらい、とても勉強になりました。

『人生の困難を突破する力』 第3章 より 小野寺佑太:著 幻冬舎:刊

 草彅さんとの出会いは、小野寺さんを生保業界に引きつける大きな理由となります。

 小野寺さんは、草彅さんから人間として謙虚な姿勢で人と向き合うことで相手を笑顔にできるということを学んだと述べています。

 準備が整ったとき、導き手(メンター)が現れる。
 小野寺さんと草彅さんは、出会うべくして出会った「運命の人」だったのでしょう。

「困っている人」を最優先にして行動する

 小野寺さんが大事にするポリシーのひとつ。
 それが、『困っている人を最優先にして行動する』ことです。

「資金繰りがショートし、今すぐまとまったお金が必要」

 あるクライアントから、そんな電話を受けたときも、小野寺さん自らその会社に出向いて対応しました。

「保険の契約の時に、小野寺さんに言われた、急な資金ショートに対応できないと社員を助けられないじゃないですかという言葉を思い出します。本当ですね。保険にはこういう効果があるんですね」
 社長の言葉が、今度は私の胸に沁みます。
 私はまさに、保険とはこういう利点でしか付き合っていません。死んだあとに出る保険金は「グリコのおまけ」。ないよりはいいですが、それを目当てにキャラメルは買いません(時々おまけ目当てに買う人もいますが)。
 それよりも現世利益が大切。社員やその家族を守ることが一番なのです。
 この日は社長の涙を見て、私自身ももらい泣きをしそうになるくらい嬉しい気持ちになりました。私の仕事が、確実に人の役に立っていることがわかったからです。自分が頑張って働いていることで、誰かが救われている。そういう仕事に携われていることが、いまの私には猛烈に嬉しいのです。
 その時に学んだのは「自分で言ったことは必ず守る」ということでした。
 契約の時に私は社長に対して「社長、この業界は景気がずっと良いというわけではありません。資金に困ったときは必ずこの内部留保が役に立ちます」と言ったのですから、そのことは徹底して守ります。だから連絡をいただいて、対応に向かったこの日はこの社長のために全力を尽くしたのです。
 それが私のやり方です。それが身をもって実証できて、私にも喜びの日になりました。
 人は本当に困っているときに、自分から声を上げることが難しいものです。だからこそ、助けの声を耳にした時、できるだけその声を拾い上げることが大切なのだと思います。勇気を振り絞って出した声を、聞き流さないことで人と人は信頼関係をさらに強くすることができるのです。

『人生の困難を突破する力』 終章 より 小野寺佑太:著 幻冬舎:刊

「情けは人のためならず」

 困っている人を助けることは、巡り巡って自分を助けることになります。

 損得を超えた信頼で、強く結びついた人間関係
 それこそが、最高の「保険」であり、「内部留保」だということです。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 これまで、数多くの絶体絶命の困難に遭いながらも、それらを打ち破ってきた小野寺さん。
 その姿は、チャレンジすることを恐れ、立ち止まっている多くの人たちに、勇気を与えてくれます。

 小野寺さんは、自分自身の目の前の壁を突破した先に、新しい未来が見えてくるとおっしゃっています。

 壁を乗り越える「突破力」は、実際に壁を乗り越えることでしか、育てることができません。

 一度目のチャレンジが失敗したら、二度目のチャレンジを。
 二度目もダメなら、三度目を。

 何度打ちのめされても立ち上がり、前を向いて進んでいく。
 小野寺さんの、そんなファイティングスピリットを、本書を通じて学びたいですね。

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