本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『運の良くなる生き方』(西中務)

 お薦めの本の紹介です。
 西中務さんの『1万人の人生を見たベテラン弁護士が教える「運の良くなる生き方」』です。

 西中務(にしなか・つとむ)さんは、弁護士です。
 キャリアは半世紀近く、依頼者はのべ1万人を超えるベテラン弁護士です。

運の不思議「幸福な人の条件」とは?

 西中さんは、弁護士として、人様の重大事と、多くの関わりを持ってきました。
 その経験から学んだことは、運というのは、不思議なものだということです。

 1万人もの人生を見てきた私にはわかるのですが、世の中には、確かに運の良い人と悪い人がいます。
 例えば、運の悪い人は、同じようなトラブルに何度も見舞われます。
 トラブルで私の事務所に来て、裁判で決着がついた。ところが、同じ人がまた同様のトラブルで、私に相談に来るのです。そうやって、何度も何度も、争い事を繰り返す人は本当に多いものです。
 私は不思議でなりませんでしたが、やはり、運が悪いとしか言いようがない。
 かと思えば、全く逆の人もいます。
 別にトラブルというのではなく、商売に関連した法律相談のために事務所に来るのですが、やはり何度も繰り返して事務所にいらっしゃる。そして、来るたびに、会社は大きくなっているのです。
 こちらは、運が良いとしか言いようがありません。

 1万人という膨大な数の依頼者を見ているうちに、私には運の良い人と運の悪い人の見分けが簡単につくようになってしまいました。
 もちろん、運とは不思議なものですし、私のような凡人には到底、本当の理屈はわかりませんが、数々の人生を見せてもらった経験から、幾つかの教訓は学ばせてもらったと思います。
 運が良くなれば、幸福な人生に近づけます。
 皆さんに幸福をつかんでいただくために、運の不思議なところや、運の良し悪しについての経験則をご紹介したいと思うのです。

『運の良くなる生き方』 はじめに より 西中務:著 東洋経済新報社:刊

 本書は、西中さんが1万人の依頼者から得た「運の良くなる生き方」の経験則を、具体的なエピソードを交えながらまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「謙虚さ」がないと、運が逃げる

「心」と「運」には、深い関係にあります。
 同じ行為でも、どんな意識でやったかで、結果は変わってきます。

 西中さんは、特に重要なことの一つは、運を良くするには謙虚さが必要ということだと述べています。

 人のために良いことをたくさんしているのに、運が良くならない、幸福がやってこないという依頼者に、時々、会うことがあります。
 例えば、地元のために大変に貢献している人がおられました。この人は地元の大変な有力者で、自治会長を務め、PTAの会長でもありました。どちらも、もちろん何の報酬もない役職で、地域の人々のために大変尽くしていたわけです。
 ある年、この有力者が市議会議員に立候補したのです。地方都市のことですし、当選に必要な得票数は2000か3000票ほどでした。知名度は十分すぎるほどありましたし、長年の貢献もあるので、楽々と当選すると思われていました。
 ところが、結果は逆で、全く票が集まらずに大差で落選してしまったのです。
「なんで落ちたんか、さっぱりわかりませんわ」
 そうおっしゃっていましたが、私には何となく、落選の理由がわかる気がしました。
 その人は、ご本人の思っているほどには評判が良くなかったのです。依頼された仕事について関係者と会っていて、そのことを感じました。
 また、選挙の話をする口ぶりにも、何とはなしに引っかかるものを感じます。
 もちろん、その人の話は嘘ではありません。地元のために一生懸命働いてきたのは間違いないのです。それなのに、なぜ、評判が良くないのか。
 その理由は、謙虚さがないからです。
 自治会長にせよPTA会長にせよ、「皆のために、務めてやっている」という気持ちが口調や態度にありありと出ていました。何をするにつけても、高慢な気持ちが出ていて、周囲の人々の反感を買っているわけです。
 それでいて、ご本人は皆の反感に気づいておらず、高慢なままです。
 高慢な心で謙虚さがなければ、せっかく良いことをしていても、皆に嫌われます。人間関係が悪ければ、争いも起こりますし、人からの信頼や協力を得ることもできません。
 これでは、運は良くなるわけがないのです。
 どんなに有能でも有力でも、たった一人で社会が成り立つわけがないことは、誰にもわかっていることです。それでも、高慢になってしまうのが、どうも、人間の悲しい特徴のようです。
「やってやる」ではなく、「やらせてもらっている」と思う謙虚な心を忘れない
 もし、人のために良いことをしていても、運が悪いという人がいたら、ぜひ、謙虚さを忘れていないか確かめてみてください。

『運の良くなる生き方』 第一章 より 西中務:著 東洋経済新報社:刊

 高慢さは、心の目を曇らせます。
 自分では気づかないうちに、行動が利己的になり、周囲の反感を買ってしまいます。

 まさに「高慢の罠」ですね。

「やってやる」ではなく、「やらせてもらっている」。

 謙虚な気持ちは、なくさないようにしたいものです。

知らないうちに犯している「道徳的過失」

 罪には、「法律的な罪」「道徳的な罪」の2種類あります。

 法律的な罪とは、法律という六法全書に書かれているルールを破ることです。
 一方、道徳的な罪とは、法律は破っていないけれど、人に迷惑をかけていることによる罪です。

 西中さんは、道徳的な罪に気づき、感謝の心を持てば運が落ちるのを防げると述べています。

 犯罪ではないけれど、道徳的に見れば罪に当たる行い、それが道徳的な罪です。
 人が生きていると、知らないうちに、誰かに対してひどいことをしている場合があるのですが、それは刑法の犯罪にはなりません。
 では、なんの罪にもならないのか。
 知らないうちに人を傷つけた本人は、こう思うかもしれません。
「仕方がなかったんだ」
 でも、悲惨な目にあった人にとっては、そうではないでしょう。
「あいつがあのとき、あんなことをしなければ・・・・・」
 そう思って当然です。
 誰かの行いで、自分が悲惨な目にあったと想像すればわかると思うのです。刑法の犯罪でなくとも、道徳的に見ればやはり「罪」なのですから。
 省みれば、私にも思い当たることが、いくつも出てきます。
 例えば、私は大学を二つ受けて、二つ合格しました。けれど、現実に入学したのは大阪大学だけです。私が合格したばかりに、誰かが一人、不合格になっているはずなのですが、私はもう一つの合格を無駄にしたわけで、そんな無駄がなければ不合格で悲しませたり苦しませたりする必要のない人を一人、不幸にしています。
 しかも、二つの大学に合格しても一つしか行けないことは、大学を受ける前からわかっていたのです。つまり、最初から、誰かを犠牲にするつもりだったことになります。
 また、私は弁護士になる前にサラリーマンを数年してたのですが、その会社に就職するときにも、同じことをしました。
 就職活動で二つの会社で内定をもらっていました。もちろん、実際には一つの会社にしか勤めていませんが、このときも、必要のない犠牲を誰かに強いていたのです。
「大げさに考えなくても、あなたが辞退したら、繰り上げて誰かが合格している」
 そうおっしゃるかもしれません。でも、一時にせよ不合格だと伝えられて、がっかりしたり悲しんだりしたことに変わりはありませんし、もしかしたら、そのせいで志望していなかった大学や会社へ行くことに決まった人だっていたかもしれないのです。
 自分の都合で、二つも合格を狙うこと自体、勝手な考え方です。
 道徳的な罪なのは間違いないでしょう。

 誰しも、こんな罪を犯していますが、皆が同じだからと言って罪ではないということはなりません。
 刑法犯でなくとも、何らかの形で償うべきです。
 運が良くなりたいのなら、道徳的な罪を償う必要がある。
 これが1万人の人生を見てきた、私の経験則なのです。

『運の良くなる生き方』 第二章 より 西中務:著 東洋経済新報社:刊

 道徳的な罪の特徴は、「気づきにくい」ところにあります。

 気づかずに、無意識にやってしまったことが、誰かを苦しめている。
 そんな道徳的な罪の積み重ねが、運の悪さにつながります。

 これまで自分自身がしてきた行動や、発してきた言葉を振り返る。
 運を良くするためにすべき、最初の一歩ですね。

「恩返し」「恩送り」が運を開く

 西中さんは、道徳的な負債が人の運を大きく左右すると指摘します。

「道徳的な負債」は、二つの内容を持っています。
 一つは、人が生きているうちに犯してしまう法には触れない道徳上の罪です。

 もう一つは、人が生きていくのにこうむってきた恩恵です。

 太陽や水などの自然、国や学校、親や先生。
 私たちは、たくさんの存在により、生かされてきました。

 それらの恩を返すことが、運を良くすることにつながります。

 ただ、恩を返そうにも不可能な場合があります。親孝行をしたくても、もうこの世にはいない人もいるでしょう。また、太陽や自然の恩恵は返しようがありません。
 そんなときには、恩を与えてくれた人などに直接返すのではなく、別の人に返すと良いようです。誰かからもらった恩を、別の人に返す。すると、その人がまた自分ではなく別の人に返す。そうやって、世の中全体に恩が循環するようになります。
 恩を順送りにするわけで、これを「恩送り」と呼びます。
(中略)
 私は大阪府立北野高校の出身です。俳優の森繁久彌(もりしげひさや)さんが同じ学校の先輩で、在学当時、講演をしてくださったのですが、今でもその話が忘れられません。
 演題は「200万人に御礼」というものでした。まず、森繁さんは私たち生徒に向かってこう尋ねました。
「君たちが15歳になるまでに、どれだけの人のお世話になっていると思う?」
 答えられる者はいません。すると森繁さんは言われたのです。
「200万人の人のおかげで現在があるんだよ」
 そして、こんな話をなさいました。
 生まれてすぐの赤ん坊のときに飲んでいたミルクは、とても大勢の人のおかげで出来ている。牛を飼っている人、牛乳を集めて運ぶ人、牛乳を粉ミルクにする人、粉ミルクを運ぶ人、お店で売る人、それを買ってきてお湯で溶かして飲ませてくれた人、これだけの人々のおかげで、君たちを育てたミルクは出来ていたのだ。
 大きくなってから食べてきた食事も同じ、大勢の人のおかげだし、いつも着ている服もそう、暮らしている家もそう、通っている学校だってそう、どれも大勢の人々がいなければ出来なかった。
 15年間、生きるためにお世話になった全ての人々を数え上げると、200万人になる。その全ての人々のおかげで、今、生きている。
 15歳の高校生だから、これまで何一つ、自分で作ったものはない。全て人様のおかげ、そして親や祖先のおかげである。
 森繁さんはこのように私たちを諭し、最後にこんな言葉で講演を結んだのです。
「200万人のおかげで、これまで生きてこられたんです。その人たちに感謝して、お礼をしましょう。決して命を粗末にしてはいけない」
 実は、当時の北野高校では自殺者が多く出ていたのです。200万人に恩があると教えてくれたのは、そのためだったのでしょう。
 若かった私は、森繁さんの話に衝撃を受けました。膨大な数の人々のおかげで、自分は今、生きていられる。この事実を忘れないようにしようと思ったのです。

『運の良くなる生き方』 第三章 より 西中務:著 東洋経済新報社:刊

 人は、一人では生きることができません。

 さまざまな存在のおかげで、“生かされて”いる。
 私たちは、ついつい、その事実を忘れてしまいがちです。

 情けは人のためならず。
 他人にしたことは、巡り巡って、自分に返ってきます。

 恩の順送りを、自分で止めないこと。
 恩を循環させることが、運を循環させることでもあるのですね。

自分だけの利益より、全体のことを優先する

 成功している運の良い人には、特徴があります。
 それは、自分だけの利益よりも、全体のことを優先することです。

 運の良い人のやり方をまねすれば、ご自分の運も良くなるかもしれません。実は、私もよく人のまねをします。
 私がよくまねをさせていただくお一人が、イエローハットの創業者である鍵山秀三郎(かぎやまひでさぶろう)さんです。
 例えば、鍵山さんはスーパーやコンビニなどで食品を買うとき、必ず賞味期限を見て、期限が切れる寸前のものをわざわざ選ぶそうです。
 期限切れに近いものほど鮮度が低いですから味が落ちるし、うっかりと冷蔵庫の中で腐らせてしまう危険が高くなります。
 普通に考えれば、鍵山さんはわざわざ、損な商品を選んでいるわけです。
 なぜそんなことをするのかと不審に思い、私がお尋ねすると、鍵山さんはこうおっしゃるのです。
「賞味期限が過ぎても売れなければ、店はその食品を廃棄処分しなければいけなくなります。そうなればもったいないし、スーパーは損をします。でも、私が期限前に買えば、それを防げますから」
 一日でも賞味期限の長い商品を選ぶのが常識でしょう。でも、これは本当に正しいのか、私は考えてみました。
 客の立場からすると、賞味期限まで日にちがたくさん残っている食品の方が鮮度がいいし、長い間保存しておけるから得のように思える。
 けれど、これは本当に得なのか?
 皆が同じことをしたとすると、スーパーはよりたくさんの食品を捨てなければならない。その分、利益が減るので、自社の商品の値段を上げないと経営が成り立たない。値上げすると、客は割高の商品を買うことになる。値上げしないとスーパーは潰れて、客は近所に食品を売る店がなくなり不便になる。
 社会の全体を長い目で見ると、客にとっても賞味期限切れ食品が増えるのは損なのです。
 鍵山さんは、社会全体を考えているから、一見、損なうようで実は自分にも得になる買い物の仕方をしていたというわけです。
 自分のことだけ考えていると、思わぬ損をしてしまう。
 運を失うとは、こういうことのようです。
 もっと、全体を見てみれば、思わぬ得をすることもありますし、運が開けてくるのだと、私は思っています。

『運の良くなる生き方』 第四章 より 西中務:著 東洋経済新報社:刊

 自分のことだけでなく、全体のことを考える。
 人の上に立つ人が身につけるべき視点です。

 名経営者や成功者と呼ばれる人は、自然に、その視点が磨かれていくのでしょう。

 自分だけでなく、周囲のことも考えて行動する。
 すると、運が開け、より重要な役割を担うようになる。

 そんな上昇スパイラルを作り出すことが、運を良くする秘訣ですね。

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 運を良くするには、善いことを積み上げること。

 わかってはいますが、なかなか実行が難しいですね。

 では、なぜ、善いことを積み上げると、運が良くなるのか。
 西中さんは、「天の蔵」という考え方を紹介されています。

 それの理屈は、100働いて80の報酬を求め、後の20は他の人たちに贈る。そうすると、この20を天が見ていて、天にある蔵に貯金される。天の蔵の貯金が多いほど天は喜び、その人間の味方となってくれるというものです。

 昔から、「情けは人のためならず」とも言います。

 人のためにやったことが、巡り巡って自分に戻ってくる。

 この世界を統べる真理を理解すること。
 それが、運を良くすること、つまりは、人生を好転させる秘訣です。

 西中さんが自ら実践し、弁護士として1万人の人生を見た経験から生まれた「運の良くなる生き方」。
 ぜひ、皆さんも、試してみてください。

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