本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『誰でもすぐ使える雑談術』(吉田幸弘)

 お薦めの本の紹介です。
 吉田幸弘さんの『誰でもすぐ使える雑談術』です。

 吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)さんは、コミュニケーションデザイナー・人材育成コンサルタント・上司向けコーチです。

「雑談上手な人」に共通することは?

 良好な人間関係を構築するには、雑談が上手な方がいい。

 とよく言われます。

 では、雑談上手な人のイメージは、どのようなものでしょうか。

「常に最新のニュースをチェックしている話題豊富な人」
「いつも周囲に人が集まる、みんなを楽しませてくれるお笑い芸人のような面白い人」
「グルメ好きで美味しいお店に詳しく、ワインを片手にうんちくをスマートに語る人」
「平日は遅くまで飲みに行き、休日はアウトドアに行くアクティブな人」
「アナウンサーのようにスマートで流暢(りゅうちょう)に話す人」
確かにこれらの人たちは雑談上手と言えるかもしれません。
 かつての私は、このように人を引き寄せる方をうらやましく思っていました。
 雑学大百科も買いましたし、映画を年に100本観たときもありましたし、毎週のように美味しいレストランに通ったこともあれば、マリンスポーツに挑戦したこともありました。
 そうです。雑談上手な人たちの真似をしようとしたのですが、うまく雑談できるようになりませんでした。
 薄々感じておりましたが、雑談はセンスであり、やはり元々生まれつきコミュニケーションの得意な人しかうまくできないだろうなとの結論に至りました。
 そのように思いながらも、ふと営業し成績をあげたり、高いポジションに就いていたり、パフォーマンスが高い人を見かけるようになり、その人たちの共通点に気づきました。

  • 高尚な話題でなく身近な話題で盛り上がっている
  • その人が流暢に話すというより相手に話させている人が多い

 このようなコミュニケーションなら自分にでもできるのではないかと思い、早速真似をすることにしました。結果、雑談が苦にならなくなり、良好な人間関係の構築ができるようになったのです。

『誰でもすぐ使える雑談術』 はじめに より 吉田幸弘:著 さくら舎:刊

 吉田さんは、実は雑談は元々のセンスではなく、トレーニングと思考次第でうまくなれると強調します。

 本書は、コミュニケーションの達人、吉田さんの実践に基づいた、ビジネスに直結する雑談術のノウハウをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「最初のひとこと」を準備しておく

 雑談には、準備が必要です。
 ノープランだと、緊張して、うまく話せなくなりがちです。

 吉田さんは、具体的には次の2つを準備しておくといいと述べています。

  1. 訪問先には20分前に着くようにする
  2. 最初のひとことを準備しておく

 雑談は、アドリブでしようとするから難しいと感じてしまうのです。
 もちろん、上級者の方々や元々得意な方は別かもしれません。
 私も今でこそ雑談術のセミナーの講師をしてはいますが、元々は言葉に詰(つ)まっていました。ルーティンワークのようにしたから慣れてきたのです。
 これらは社外のお客様を相手にする場合に限りません。社内の同僚、上司、部下に声かけするときも、最初のひとことを決めてルーティンワークにしてしまえばいいのです。
 ただし、準備をしておくことは大切ですが、注意点もあります。

  • トークをガチガチに準備しない
     最初の声がけトークに留まることなく、どのような話をしようとシナリオを完璧にしすぎないことです。完璧にしすぎてしまうと、一方的に自分から話す量が多くなってしまいがちです。
     また、そもそも雑談は話が脱線しがちです。むしろ雑談は本題ではありませんから、脱線するのがほとんどです。むしろ脱線し、相手がどんどん話してくれたことで、聞き役であるこちらに良い印象を持つようになります。かつ、情報を得ることができます。
     それなのにあまりにガチガチにしてしまうと、脱線した際に頭が真っ白になってしまいます。一番いいのは逸(そ)れた場合のことを想定しておくことですが、なかなか難しいでしょう。
     よってガチガチにせず、逸れたら逸れたでいい。相手の反応がよくなければ無理に雑談を続けなくていいとリラックスして臨(のぞ)むようにしましょう。
  • 欲張らない
     これは営業職の方に多いのですが、例えば今日はどんな話を聞こう、質問しようとプランを多く立てすぎてしまうことです。また、リーダーの方は「これを聞いてこい」とあまり多く指示しないでください。
     聞かなければならないことを多くしてしまうと、全部聞いてくるという目的ばかりが頭に残り、お客様の話に集中できなくなってしまいます。
     よって話したいこと、聞きたいことはできれば1つ、多くても3つ以内に留めておくようにしましょう。

『誰でもすぐ使える雑談術』 第1章 より 吉田幸弘:著 さくら舎:刊

 入りだけ決めておき、あとは「流れ」で進める。
 それが雑談が上達するコツだということですね。

 雑談は、あくまで相手とのコミュニケーションを深めるツールです。
 形式よりも、その場の雰囲気づくり重視で、気楽に臨みましょう。

最初は、どんな話題がいいか?

 雑談をするとき、最初は、どんな話題がいいでしょうか。

 吉田さんは、天気の話題が一番いいと述べ、その理由を3つ挙げています。

①共通の話題である
 雑談では共通の話題が盛り上がるといいます。
 その共通の話題が天気なのです。
 一緒にいる今ここの場所では雨であったり、晴れていたり、同じ状態です。
 また、天気は人の行動に影響を及ぼします。大雨が降ったら、外出は控(ひか)えたい。晴れたら外出はしたい。でも暑すぎても困る。誰もが気にせざるを得ないのです。

②相手が答えやすい
 特に最初の会話は、ぎこちなくなりがちです。
 会話はキャッチボールです。
 最初は、相手が取りやすいボールを投げてあげなくてはなりません。
 取りやすいボール、いわゆる相手が答えやすい話題をふってあげる必要があります。
「天気の話題」は相手がすぐに答えられます。
 今熱いか寒いかはすぐわかりますし、世の中のほとんどの人が天気予報は気にするでしょう。雨が降ろうが雪が降ろうが関係ないという人はいないでしょう。
 今ならPCやスマホでその場で天気予報を見ることもできます。

③相手のタイプを見抜ける
 雑談は本題の前にするべきものであると思っている方が多いかもしれませんが、それはケースバイケースです。
 まず、当初の目的を最初に果たしたい、いわゆる本題を終わらせたいと思う方もいらっしゃるのです。そのような方は最初にダラダラ雑談をすることを嫌います。
 よって、すぐに本題に入ったほうがいいのです。
 その相手のタイプを見抜くために、最初に天気の話題を使うのです。
「今日、暑いですね」と言ったとき、「そうですね」だけで早く会話を終了させたい雰囲気も醸(かも)し出したら、もう雑談をせずに本題に入っていけばいいのです。
 あるいは面倒くさそうな顔をしたら、雑談はいったん終了です。
 ここでダラダラ雑談をしてしまうと、相手はイライラし始めます。
 まずは雑談をしても大丈夫な人かを見抜く。
 雑談は実は必ずしも最初にしなければならないものではない、ということです。
 本題を終わったあとに、雑談をすればいいのです。
 これは、非常に大切なことです。

『誰でもすぐ使える雑談術』 第2章 より 吉田幸弘:著 さくら舎:刊

 誰もが関心を持ち、その場にいるすべての人が同じ状況に置かれている。

 たしかに、「天気」以上に、最初の雑談にふさわしいテーマはありません。

 手の内を知らない相手の出方を探る。
 そのための“切り札”として、活用したいですね。

「人間くささ」を見せると、親近感を持たれる

 何度も会っている人。
 普段からよく顔を合わす人。

 そんな人たちとの距離を縮めるには、「あなたという人はどういう人間か」、いわゆる人間くささを出すことが必要です。

「ショックだった出来事」
「ちょっとした失敗談」
「ついやってしまって後悔するようなこと」

 吉田さんは、そんなちょっとした笑いのとれる打ち明け話をするといいと述べています。

 なお、これらの話をするとき、相手がイメージできるようにする必要があります。そうでないと、きょとんとされて終わってしまいます。
 具体的には、次の2点のいずれかを話に入れると盛り上がりやすくなるでしょう。

①数字を使う
 例えば、夏のある朝、同僚と会社のあるビルの下で一緒になったとき、このように話したとします。

自分「おはようございます。今日も雨降りますかね? 昨日の暴風雨、大変でしたよね」
同僚「私はたまたま社内にいたから助かりましたが・・・・・。外回りの人は大変でしたよね」
自分「ええ。昨日は途中で買った安い傘が壊(こわ)れて高い傘を買うはめになりました。災難でした」
同僚「大変でしたね」
 よくある盛り上がりにくい話です。
「安い」「高い」という形容詞があまりイメージできないからです。
 この場合、数字を使うといいでしょう。

 このケースでは、次のように言い換えることができます。
自分「おはようございます。今日も雨降りますかね? 昨日のゲリラ豪雨大変でしたよね」
同僚「私はたまたま社内にいたから助かりましたが・・・・・。外回りの人は大変でしたよね」
自分「ええ。しかも何と買ったビニール傘がたった10分で壊れちゃって!」
同僚「それは大変ですね」
自分「悔しいので、次のお店で1500円する高級傘を買いました。痛い出費です」
同僚「1500円も! それは痛いですね。でも1500円もするなら頑丈そうですね」
自分「そうですね。さすがにかなり頑丈なので、壊れませんでした」
 数字はインパクトもあるので、相手の反応も変わってきます。相手も1500円ということで高級傘をイメージできるので、盛り上がりますね。

②オノマトペを使う
 オノマトペとは擬音語・擬態語のことです。
 会話にリズムが出て相手が乗りやすくなるのが特徴です。

 例えば、午後から始まる会議の前に先輩とランチに行ったとしましょう。
自分「いや、午後の会議でプロジェクトの経過報告をしないといけないですね。会議の前は胃が痛いですね」
先輩「確かにね」

 あまり盛り上がりませんね。
 一方、オノマトペを使ってみましょう。
自分「いや、午後の会議でプロジェクトの経過報告をしないといけないですね。胃がキリキリしますね」
先輩「うん、キリキリする。やっぱり俺もだよ」
 先輩も返しやすくなると思います。
 もう一つ見てみましょう。
 外出先でゲリラ豪雨にあったときの話です。
Aさん「いや、昨日外にいたら、急にすごい雨が降ってきて大変だったよ。川の水もだいぶ増していたよ」
Bさん「外にいた人は大変でしたよね」

 Bさんはあまり乗ってきません。これは情景描写ができないからです。
 ここで、オノマトペを使ってみましょう。
Aさん「いや、昨日外にいたら雨がザーッと降ってきて大変だったよ。川なんかザブンザブンとすごい流れだったよ」
Bさん「へえー! そんなすごかったんですか! 大変でしたね」

 すごかったという情景がイメージできるので、相手も乗ってきます。ぜひオノマトペを使ってみましょう。

『誰でもすぐ使える雑談術』 第3章 より 吉田幸弘:著 さくら舎:刊

 会話が上手な人の話は、聞いている人がイメージしやすいです。
 その秘訣のひとつが「数字」と「オノマトペ」なのですね。

 より具体的に、情景がわかるように。
 私たちも、普段の会話に取り入れてみましょう。

「会話泥棒」にならないために

 かつては「雑談が苦手だった」という吉田さん。

 等身大の自分を出せず、優秀に見られたいとカッコつけていたため、知っているネタになると、これ見よがしに、飛びつくように反応していたとのこと。

 例を挙げてみます。会社の休憩室でのことでした。

相手「この前の3連休、家族で京都に行ってきたんですよ」
自分「京都いいですよね! 私も好きでよく行きますよ。清水寺(きよみずでら)、金閣寺(きんかくじ)は最高ですし、あと金閣寺の近くの石庭が有名な龍安寺(りょうあんじ)と、五重塔のある仁和寺(にんなじ)もいいですね。あとこの時期は川床(かわゆか)もいいですね。あっ(少し長く話しすぎたなと焦(あせ)り、相手へ質問する)。ところで京都はどこに行きました?」
相手「清水寺も金閣寺も行きましたよ。龍安寺は拝観時間が終わってしまって行けませんでした」
このように返答をした直後、相手は「あっ、そうだ! 1件取引先にメールを送らなくちゃいけなかった。それでは」と、デスクに戻ってしまいました。
「向こうから話しかけてきたのに・・・・・京都の話、盛り上がったのにな。何が悪かったんだろう?」としか思いませんでした。
 当時は原因がわかりませんでした。
 しかし、今ならわかります。もちろん私が長く話しすぎたのも原因でしょう。しかしそれ以上に、相手の会話を奪ってしまったことのほうが大きな原因です。俗にいう「会話泥棒」になってしまったのです。あくまで主役は「相手」です。「自分」が主役になってはいけません。たまに部下が手柄を挙げてそれをいかにも自分の手柄のようにしてしまう上司がいますが、それと同じです。
 このケースでは、相手の会話から類推できるキーワードは「3連休」「京都」「家族旅行」です。どこかに相手の話したいポイントがあったわけです。
 この場合、「家族旅行」がポイントでしょう。なぜなら、相手の感情と一番関連しているからです。「家族を大切にしている」という思いをわかってほしかったのでしょう。
 よって、次のように会話を展開していけばよかったのです。
相手「この前の3連休、家族で京都に行ってきたんですよ」
自分「家族で旅行されたのですね。いいですね!」
相手「まあ。たまには家族サービスしないとね。でも妻も娘も喜んでいたからよかったよ」
自分「◯◯さんは家族を大切にされていらっしゃるのですね」
相手「そうですね(満足そうな笑顔になる)」

 このように相手の感情に近いものがあれば、そのキーワードをポイントに話を展開させていけばいいのです。

『誰でもすぐ使える雑談術』 第4章 より 吉田幸弘:著 さくら舎:刊

 相手が振ってきた話題は、基本的に「相手が話したいこと」です。
 それを察したうえで、会話をつなぐことが大切です。

 相手が打ちやすいボールを上げてあげる。
 バレーボールのセッターのような感じです。

 間違っても、自分がスパイクを打ち込まないようにしたいですね。

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 仕事とは、直接、関係はない。
 けれど、うまくできるかできないかで、作業効率や完成度に大きく影響する。

 それが「雑談」です。

 お客様相手の仕事はもちろん、そうでなくても、組織の一員として仕事するならば、必ず身につけておきたいスキルです。

 雑談術は、おしゃべりではありません。
 自分の好きなことを、だらだらと口にするのはNGですね。

 ビジネス使う雑談は、TPOをわきまえるべきです。
 相手の立場や目的によって、話す内容も話し方も調整する必要があります。

 簡単なようで、奥が深い「雑談」。
 本書は、その“いろは”を学ぶには、もってこいの一冊といえます。

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