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【書評】『サードドア』(アレックス・バナヤン)

 お薦めの本の紹介です。
 アレックス・バナヤンさんの『サードドア』です。
サードドア

アレックス バナヤン/大田黒 奉之 東洋経済新報社 2019年08月23日
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by ヨメレバ

 アレックス・バナヤン(Alex Banayan)さんは、大学1年生のとき、米国の有名なテレビ番組『プライス・イズ・ライト』で優勝され、賞品の豪華ヨットを獲得。
 それを売って得たお金を元手に、世界で屈指の成功者たちから「自分らしい人生のはじめ方」を学ぼうと旅に出られました。

 インタビューを求めた著名人は、スティーブン・スピルバーグ、ビル・ゲイツ、シュガー・レイ・レナード、ラリー・キングなど、錚々(そうそう)たる顔ぶれが並びます。

成功への抜け道、「サードドア」とは?

 成功を収めた人は、誰もが必ずしも、順風満帆な道のりを歩いてきたわけではありません。
 ときには、他の人なら尻込みするような、狭く暗い道を進まざるを得ないこともあります。

 バナヤンさんは、そんな“裏街道”を進んだ先に待っている成功への扉を「サードドア(第3の扉)」と呼びます。

 人生、ビジネス、成功。
 どれもナイトクラブみたいなものだ。
 常に3つの入り口が用意されている。

 ファーストドア:正面入り口だ。
 長い行列が弧を描いて続き、
 入れるかどうか気をもみながら、
 99%の人がそこに並ぶ。

 セカンドドア:VIP専用入り口だ。
 億万長者、セレブ、名家に生まれた人だけが利用できる。
 それから、いつだってそこにあるのに、
 誰も教えてくれないドアがある。
 サードドアだ。

 行列から飛び出し、裏道を駆け抜け、
 何百回もノックして窓を乗り越え、
 キッチンをこっそり通り抜けたその先に−−必ずある。

 ビル・ゲイツが
 初めてソフトウェアを販売できたのも、
 スティーブン・スピルバーグが
 ハリウッドで史上最年少の監督になれたのも、
 みんなサードドアをこじ開けたからなんだ。

『The Third Door(サードドア)』 巻頭 より アレックス・バナヤン:著 大田黒奉之:訳 東洋経済新報社:刊

 成功者は、最初から成功者だったわけではありません。
 有名人も、最初から有名人であったわけではありません。

 知名度がなく、無名だった人物が、いかにチャンスを掴んで、成功者の仲間入りを果たしたのか。
 多くのライバルたちが見つけられなかった「サードドア」を見つけることができたのか。

 本書は、バナヤンさんが多くの成功者へのインタビューを通して得た、「人生の始まり」の秘訣を具体的にまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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スピルバーグの「サードドア」

『ET』『シンドラーのリスト』『インディー・ジョーンズ』。

 数々の不朽の名作を世に送り出してきた映画監督、スティーブン・スピルバーグ。

 彼も、無名の存在から「サードドア」をこじ開け、チャンスをつかんだ一人です。

 スピルバーグのキャリアのスタートは、僕と同じくらいの年の頃だ。さまざまな記事を読んだが、スピルバーグ本人によると、事実はこうらしい。
 彼はユニバーサル・ハリウッドのツアーバスに乗ってあちこちを回った後、バスから飛び降りてこっそりトイレに行って、建物の陰に隠れた。
 ツアーバスが行ってしまうのを見計らって、その日1日、そこで過ごした。
 あちこちをさまよい偶然出会ったのが、ユニバーサルで働いていたチャック・シルヴァーズだった。2人はしばらく話をして、シルヴァーズは監督になりたいというスピルバーグの熱意に押され、3日間のフリーパスを与えた。
 それから3日間、スピルバーグはスタジオに通いつめ、4日目に、スーツ姿で父親のブリーフケースを持って現れた。スピルバーグは入口まで行って手を振りながら“やあ、スコッティ!”と声をかけた。すると警備員が手を振り返した。
 それから3カ月間、スピルバーグは入口に行ってそんなふうに手を振り、そのまま中に入った。スタジオ内では、ハリウッドスターやプロデューサーに近づき、ランチに誘った。防音スタジオに忍び込み、編集室にもぐり込んでノウハウをしっかり吸収した。
 僕の目には、これは映画学校に合格できなかった若者が、独力で学びを得た方法なのだと映った。ある日などはブリーフケースにもう1着スーツを入れて事務室に泊まり、翌朝新しいスーツに着替えてスタジオ内で活動を続けた。
 チャック・シルヴァーズは結果的にスピルバーグのメンターになった。
 彼はスピルバーグに、もうみんなとのお喋りはいいから、これはというショートフィルムができたら戻ってきなさいと言った。
 12歳の頃から短編を制作してきたスピルバーグは、『アンブリン』という26分の短編を完成させる。数カ月の間監督をし、みっちり編集を終えてから、シルヴァーズにその作品を見せた。
 映画はすばらしいできで、それを観たシルヴァーズの頬を涙がつたった。
 シルヴァーズは、ユニバーサルの制作副部長、シド・シャインバーグに電話をかけた。
「シド、君に観てほしいものがある」
「映像がクソみたいにたまってるんだ・・・・・夜中の12時にここを出られたらいい方だよ」
「その映像リストに加えてほしいものがある。今夜観た方がいい」
「そんなに大事なのか」
「そうさ、大事だよ。君が観ないなら他の人に観せるけどね」
 シド・シャインバーグは『アンブリン』を観て、ただちに会いたいとスピルバーグを呼んだ。
 スピルバーグがユニバーサル・スタジオ駆けつけると、シャインバーグはその場で7年契約をオファーした。こうしてスピルバーグは、ハリウッド史上最年少で大手スタジオの映画監督となったのだ。

 この話を読んだとき、スピルバーグはスタジオ内にネットワークを作ってコネを築く、「ピープル・ゲーム」をしたんだと思った。でも「ネットワーク作り」という言葉から連想できるのは、就職説明会での名刺交換だ。となると彼がしたのは、ただのピープル・ゲームじゃない。それを超えた、スピルバーグゲームをしたんだ。

  1 ツアーバスから飛び降りる
  2 インサイドマン(内部の関係者)を見つける
  3 その人に中に入れてもらえるよう頼む。

 最も大事なステップは、インサイドマンを見つけることだろう。その人は内部での自分の立場を使って、僕らを中に入れてくれるからだ。
 チャック・シルヴァーズがスピルバーグに3日間のフリーパスを与えなかったら、制作副部長に電話して映画を観るよう促さなかったら、スピルバーグは契約にこぎつけることはなかっただろう。
 もちろん、スピルバーグにはすごい才能があったが、他の野心的な監督たちだって才能がないわけじゃない。スピルバーグは契約を結べて、他の多くの人はそうできなかったのには理由がある。それは魔法の力じゃない。単なる運でもない。スピルバーグ・ゲームなんだ。

『The Third Door(サードドア)』 STEP2 より アレックス・バナヤン:著 大田黒奉之:訳 東洋経済新報社:刊

 シルヴァーズに出会ったことは、スピルバーグにとって大きな幸運だったことは間違いありません。
 しかし、その幸運を呼び込んだのは、スピルバーグの「何が何でも、ハリウッドで映画監督になってやる」という熱意と行動でした。

 サードドアを開けるカギは、才能ではなく、信念。

 スピルバーグのエピソードは、それを雄弁に物語っています。

人生にとって必要な「5つの基本ルール」

 バナヤンさんは、起業家として有名なエリオット・ビズノーとアポイントを取ることに成功します。
 エリオットは、バナヤンさんのメンターともいうべき重要な存在となります。

「じゃあまず、基本ルールを言っておかなくちゃ。これから話す5つのルールは、今日に限ったことじゃない。君のこれからの人生にとっても必要なんだ」
 エリオットは僕の目をじっと見た。「書き留めといてくれ」

 僕はメモ帳を取り出した。
ルールその1 ミーティング中は決して携帯を見るな。メモを取るのはかまわない。電話を使っているとバカみたいに見える。いつもポケットにペンを入れておくんだ。
 世の中がデジタル化すればするほど、ペンを使った方が印象が強まる。そもそもミーティング中に電話を使うなんて無礼だ」
ルールその2 メンバーとして振る舞え。以前からいるみたいに部屋に入るんだ。有名人を見たからってポカンと見とれちゃだめだ。クールに、落ち着いて。写真を撮らせてくださいなんて決して頼むな。
 仲間と見なされたいのなら、仲間らしく振る舞うんだ。ファンは写真をねだる。仲間は握手をする」
「写真といえば、ルールその3 神秘(ミステリー)が歴史(ヒストリー)を作る。クールなことをしたからって、その写真をフェイスブックに投稿するな。
 世の中を変える人間は、やみくもにネットに投稿したりしない。あの人は何をしているんだろうと勝手に思わせておけばいい。それに、ネットに投稿しないと注目してくれない連中なんて、初めから相手にすべきじゃない」
ルールその4
 彼はゆっくりと言葉の一つひとつに力を込めた。「これが一番大事だ。これを破ったら」と言って、彼は首の前で手を水平に動かした。「君は終わりだ」
「俺の信用を失ったら、君は終わりだ。決して約束を破るな。君を信頼して俺が何か打ち明けたなら、君は金庫になったつもりでそれを胸にしまうんだ。一度中に入れたものを出しちゃだめだ。
 今日この日から、みんなとの関係も同じだ。君が金庫のように振る舞えば、みんなも君を大切に扱ってくれる。名声を築くには何年もかかるが、失うのは一瞬だ。わかった?」
「わかりました」
「よし」。彼は立ち上がって、僕を見下ろした。「立って」
「でも、たしかルールは5つだって」
「ああ、そうそう。最後はこれだ。冒険好きなものにだけチャンスは訪れる」
 どういう意味なのか聞く前に、エリオットは歩き出した。後を追いかけると、彼は僕の方を振り返った。「大物たちと遊んでみるか?」
 僕はうなずいた。
「ところで」と彼は僕を上から下まで見てこう言った。
「トムスが似合ってるな」

『The Third Door(サードドア)』 STEP3 より アレックス・バナヤン:著 大田黒奉之:訳 東洋経済新報社:刊

 エリオットの「基本ルール」は、誰にでもできるものばかりです。
 しかし、実際にそのとおりに行動している人は、ごく少数でしょう。

 とくに最後の2つ、「信頼」と「チャレンジ精神」の重要性は、強調してもし過ぎることはありません。
 私たちも、頭にしっかり刻み込んでおきたいですね。

「やらないことリスト」を作る

 エリオットの事業を手助けを続けるか。
 それとも、自らの「ミッション」に専念するか。

 バナヤンさんが、そんな悩みを抱えていたとき、ある人物から有益なアドバイスを受けます。

 男性は背が高くて穏やかな表情だ。理由は後で明かすが、ここではダン・バブコックという仮名を使わせてもらおう。
 僕はきっと胸の内を吐き出したかったんだと思う。心の中の板挟みを、いつの間にかダンに打ち明けていた。
「僕はどうしたらいいでしょうか?」
「それは誰にもわからないと思う」とダンは言った。
「難しい決断だね。正解を知っているのは君だけだ。でも何か助けになることをしてあげたいな」
 ダンは自分のノートに手を伸ばし、2枚破って僕に手渡ししこう言った。
「僕はウォーレン・バフェットの下で7年間働いたんだ。彼から教わった中で最高のアドバイスがこれだった」
 僕はポケットからペンを取り出した。
「1枚目の紙には」とダン。「これから先の1年で達成したい25個のことを書くんだ」
 僕は家族のこと、健康のこと、エリオットとの仕事、ミッションに励むこと、旅行したい場所、読みたい本などを書いた。
「この中で、今から3カ月で達成したいものを5個しか選べないとすれば」とダン。
「どれにする?」
 僕はそれらを丸で囲った。ダンは、「その5つを2枚目の紙に書き移して」と言って、1枚目の紙にあるこの5つを線で消した。
「これで君には2つのリストができた」と彼は言った。
「5つのリストの上に優先リストと書いて」
 僕は言われたとおりにした。
「よし」と彼は言った。
「さて、残りの20個がある1枚目の紙にはこう書くんだ。『やらないことリスト』」
「えっ?」
「それがバフェット氏の成功の秘訣さ」とダンは言った。
「優先すべきトップ5を達成するカギは、残りの20をやめることだ」
 僕は優先リストに目をやり、それからやらないことリストに視線を移して言った。
「なるほどと思いますが、やらないことリストの中には、本当にやりたいこともあるんです」
「君次第さ」とダンは言う。
「この25個を全部かなえようとするのもいいし、あるいは5個に絞って世界レベルを目指すのもいい。でもほとんどの人はやりたいことが多過ぎて、どれ1つまともにできないんだよ。
 僕がバフェット氏から学んだことが1つあるとすれば、やらないことリストこそがワールドクラスになるカギだってことさ」
「成功とは」と彼は続けた。
「自分の欲求に優先順位を付けた結果なんだ」

『The Third Door(サードドア)』 STEP3 より アレックス・バナヤン:著 大田黒奉之:訳 東洋経済新報社:刊

 数ある「やりたいこと」の中から、「本当に実現したいこと」だけを選び出す。
 そして、それ以外の「やりたいこと」は『やらないことリスト』に入れる。

『優先順を付けることが大切』とは、よく聞く言葉です。
 それは人生の目標や願望についても例外ではないのですね。

「オマハの哲人」と呼ばれ、世界最高の投資家であるウォーレン・バフェットの教えだからこそ、説得力がありますね。

「幸せ」ってなんだろう?

 バナヤンさんがインタビューをした有名人のひとりにスティーブ・ウォズニアックがいます。
 ウォズニアックは、スティーブ・ジョブズとともにアップルを立ち上げた共同創業者です。

 ウォズニアックはいくつかのエピソードを教えてくれた。僕にとって特に興味深かったのは、2人の価値観の違いが際立つ話だ。
 1つは、アップル設立前の話だった。ジョブズはアタリという会社で働いていて、テレビゲームの制作を頼まれた。彼はウォズニアックの方がいいエンジニアだとわかっていたので、ウォズに取引をもちかけた。
 もしウォズニアックがゲームを作ってくれたら、報酬の700ドルを折半したいと。ウォズニアックはそんな機会をもらったことに感謝して、ゲームを作った。
 ジョブズは報酬を受け取ると、すぐにウォズニアックに約束の350ドルを支払った。だが10年後、ウォズニアックは、ジョブズがその仕事で手にしたのは700ドルどころか数千ドルだったことを知る。
 その話がニュースになったとき、ジョブズは否定したが、アタリのCEOは真実だと主張した。
 2人の価値観の違いがわかるもう1つの話は、アップル初期の成長期の頃のことだ。
 当時、ジョブズが会社のCEOになることは確実だったが、重役陣の中でウォズニアックにふさわしいポジションはどこなのか、判断が難しいかった。
 そこでジョブズは彼にどのポジションがいいか聞いた。ウォズニアックは、社員の管理や会社の権力闘争に関わることは絶対にやりたくなかった。そこでエンジニアのトップがいいと言った。
「世間的には、成功とはなるべく権威のあるポストに就くことだろうけど」とウォズニアック。
「僕は自分に問うたんだ。それで僕が本当に幸せなのかってね」
 最後にウォズニアックが話してくれたのは、アップルが株式公開をしたときのことだ。IPO(新規株式公開)で、ジョブズとウォズニアックは想像を超えるお金を受け取ることになった。
 株式公開の前、ウォズニアックは、ジョブズがアップルの初期から共にいる従業員数人に対して、ストックオプション(自社株購入権)を与えないつもりでいることを知った。
 でもウォズニアックにとって、彼らは家族も同然だ。彼らがいたから会社ができた。だけどジョブズは頑として認めない。
 そこでウォズニアックは、自分が手にした株の一部を昔からいる従業員たちにあげることにした。全員がお金を受け取れるように。アップルが株式を公開すると、彼らはミリオネア(百万長者)になった。
 ウォズニアックがイスに座り直して、フォーチュンクッキーを割って、奥さんと笑っている。その姿を見ていたら、ライアンがインタビュー前に言った言葉がよみがえってきた。
 “ウォズが何でジョブズほど成功しなかったか”
 でも僕にはこの言葉しか浮かんでこなかった。
 “ジョブズの方が成功者だなんて、誰が断言できるだろうか?”

『The Third Door(サードドア)』 STEP5 より アレックス・バナヤン:著 大田黒奉之:訳 東洋経済新報社:刊

 世間的に言う「成功」が、その人の「幸せ」とイコールではない。
 ジョブズとウォズニアックの生き方・価値観を比較するとよくわかります。

 自分が本当に望むことは何か、自分にとっての幸せとは何か。
 それをしっかり見定めてから走り出さないと、せっかく見つけたサードドアが、“不幸の扉”になってしまいます。

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 どんなに才能に恵まれていても、途中で行き詰まりを感じ、苦しい思いをすることはあります。
 その壁を乗り越えられるかどうかが、その後の人生を決めるといっても過言ではありません。

 バナヤンさんは、自分の力はここまでだという、思い込みを変えてあげられたなら、その人の人生は大きく変わると強調されています。

 自分の限界を超え、自分に眠る可能性を引き出す扉。
 それがサードドアです。

 サードドアは、見つかりにくいだけで、誰にでも用意されている。
 そして、実際にサードドアを押し開いて、夢をつかんだ人がたくさんいる。

 その事実を知ることが、私たちに「自分もできるかも」という勇気を与えてくれます。
 皆さんもぜひ、これまでにないタイプの「自己実現ハウツー本」をお手にとってみてください。

サードドア

アレックス バナヤン/大田黒 奉之 東洋経済新報社 2019年08月23日
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2 thoughts on “【書評】『サードドア』(アレックス・バナヤン)

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