本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『5分間逆算仕事術』(長谷川孝幸)

お薦めの本の紹介です。
 長谷川孝幸さんの『5分間逆算仕事術』です。

 長谷川孝幸(はせがわ・たかゆき)さんは、風土刷新コンサルタント・失敗回避アドバイザーです。

たった「5分」の逆算が大きな成果を生む!

「仕事でミスなくロスなくスムーズに進めて、もっといい成果を出したい」
「残業を減らして、仕事以外の時間も充実させたい」

 多くの人がそう望んでいますが、なかなか思い通りにはいかないのが現実です。

 長谷川さんの「5分間逆算仕事術」は、増え続ける仕事に悩む私たちに、大きな助けとなるツールです。

 今でこそ私は皆さんに段取り改善の指導をしていますが、私自身が会社員だった頃はけっして優秀とはいえませんでした。むしろ段取りの悪い、「使えない社員」の期間が長かったのです。そのためにつまらない回り道もしてきたし、周囲に迷惑もかけました。もちろん自分自身がストレスを常に抱えてきました。
「なんできちんとできないのだろう」
「もう迷惑をかけたくないな」
 そんな思いの中で試行錯誤を重ねてきました。そして、私自身が実践し、段取り力を飛躍的にアップさせた方法が本書でまとめている「5分間逆算仕事術」なのです。

 段取りよく仕事をこなす人とそうではない人、その差はゴールからしっかり逆算して考えることができているかどうかにあります。
 達成したいゴールはどのような状態か、そのためには何が必要かなどしっかりと逆算し、考え、準備する。
 このプロセスは時間をかけてやるものではありません。たった5分間でいいのです。そしてこの5分が結果に大きく差をつけるのです。
 もともと段取りのよい人というのは、わざわざじっくり考えなくても自然に段取りができてしまうので、人に指導することが不得手です。
 たとえば、スキップができない人に言葉だけでスキップの仕方を教えるのは難しくありませんか? 子どもの頃から自然にスキップができてしまっている人は案外、できない人にわかりやすく教えられないものです。

『5分間逆算仕事術』 はじめに より 長谷川孝幸:著 三笠書房:刊

 本書は、段取り改善のプロ、長谷川さんが自らの体験と5000人以上に教えた経験から得たノウハウをわかりやすくまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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信頼される人の「5つの型」

 長谷川さんは、信用を得るということは時間をきちんと守るということだと指摘します。

 仕事のできる人は、例外なく、周囲から信頼を得ています。
 そして、信頼を得るには、「時間に厳しい人」になることが最初のステップです。

 長谷川さんは、「時間に厳しい」とは、次の5つができることを意味する、と述べています。

  1. 時間内に(in time)
  2. その時間に(on time)
  3. 規則的に(punctual)
  4. ただちに(quickly)
  5. 急いで(rapidly)

 その中の「ただちに」とは、どういうことでしょうか。

「人はどうしてもらうとうれしいか?」、この答えは「してほしいことをしてほしいようにしてもらう」です。
 仕事はお客様や会社が「してほしいこと」をすることです。そして特にルーティンで決まっていることなどは考えるまでもなく粛々と行われます。そんな中で「してほしいように」となっているかどうかがサービスとして高水準かどうかの分かれ目なります。
 たとえば「放っておいてほしいときには放っておいてもらって、かまってもらいたいときにかまってもらう」というのがよいです。
 もしあなたが洋服を買いに行ったとしましょう。商品をあれこれ見ているときに販売員にぴったり寄り添われてあれこれ口に出されるのは邪魔くさいものです。
 一方で買いたいものが決まったのになかなか販売員が来ない、こんなときはどうでしょうか。おそらく、「なんで店員がいないんだ!」とイラッとするのではないでしょうか。
「人はどうされるとイラッとするか?」、これは「自分の欲求を必要以上に邪魔される」です。
 運転していて進行方向が赤で信号待ち、これは仕方ありません。しかし信号が青になっているのに前の運転手がスマートフォンか何かをいじっていて気づかず進まないというのはイラッとします。
 仕方ないことは仕方ない、しかしどうにかできるはずのことが進展しないと、我慢強い人であっても心の底でイラッとするものです。
 だから職業人は、頼まれたことはすぐに取りかかり、発生した案件はさっとかたづけることが大事です。

「これやって」
「はい」
「終わった?」
「まだやってません」

 これでは相手を怒らせるだけです。もちろん優先順位もありますし、何でも考えなしに取り組めばよいということでもありません。
 時間に厳しい人は、できることは5分以内に取りかかります。どうしてもできないことなら仕方ないけれど、できることなのに放置することはありません。
 あるターミナル駅の中の飲食店はその地域では有名店で、食事時をずらしてもいつも店の外にまで人が並んでいます。ただ、その店はたしかにおいしいのですが、ホール管理が非常に悪いのです。
 お客が帰ったらさっと皿を下げてテーブルをふけばすぐに並んでいるお客を通すことができるのに、数分も皿が放置されたままです。
 料理が出てくるのは駅の中ですから遅くはないのですが、メニューを持ってくるまでが遅く、結果として待たされます。飲食関係の口コミサイトには恒常的に「手際が悪い、二度と行かない」などと書かれていますから、店側も気づいていないとも思えませんが、最近見たときも4人席3つとカウンターの皿が下げられておらず、人が10人以上並んでいました。
 もしかしたら厨房が混乱しないよう調整しているのかもしれませんが、「すぐにかたづければ案内できるんじゃないの?」と不満に思う人も少なくないと思います。
 無理なことはしようと思ってもできませんが、やればできることならさっさとやらないと無駄に仕事の評価を下げてしまいます。

『5分間逆算仕事術』 第1章 より 長谷川孝幸:著 三笠書房:刊

「いつでもできるから」
「面倒くさいから」

 そんな理由で、指示された仕事を、ついつい後回しにしてしまった。
 そんな経験は、誰にでもあるでしょう。

 いつでもできるから、面倒くさいからこそ、その場で片づけてしまう。
 そんな意識を植えつけることが「できる人」になる第一歩ですね。

すぐ終わることからすませる

「ただちに」やるためのコツ。
 それは、緊急度の差異がないもの、つまり「どっちが先でもかまわないけれど、やってしまったらそれで完結する」というようなものは、時間や手間をかけず、すぐ終わることからかたづけてしまうことです。

 たとえば、

  • 簡単なメールの返信、回覧資料に目を通す、生産伝票を書いてしまうなどといった数十秒から数分以内で完了すること
  • 調べもの、チラシ原稿のチェックなど、締め切りが迫ってはいないがいつかはやらなければいけないもの
  • もらった名刺の管理、備品の補充といったすぐできる雑用

 などはすぐできることだったら一つひとつすませてしまうのです。
 面倒な仕事(時間・手間がかかる仕事)も簡単な仕事(すぐに終わる仕事)も1個は1個です。簡単な仕事でも放置して貯めてしまったらそれは「積み残し」ですが、すませてしまえば「1個クリア」です。
 積み残しが貯まるとそのこと自体がストレスですし、突発のことが発生して手をつけられなくなってしまったら簡単なことでもできないままになってしまいます。
 こういった「すぐ終わること」は、一つひとつはさほど喫緊でも重要でもないのでうっかり忘れてしまいがちです。しかし喫緊でも重要でもなくても、やらないわけにはいかないことです。
 大きな案件はもちろんですが、小さなことにもやり忘れ、やり残しが発生しないように、すぐできること、すぐ終わることももれなく書き出しておくことが必要です。と言うより、退勤前に書き出すのではなく気づいたらすぐその場ですませてしまうか、その場でメモに書いておき、すませたら線を引いて消します。
 そして退勤前の翌日の段取りを組む際に1日のメモを見直し、やり残しがあったら退勤前にさっとすませるか、翌日朝イチのタスクとして書いておき、いつまでも放置しておかないようにしておきます。もう退勤の時間なのですから無理してその日のうちにしなくてもかまいませんが、書いておかないと細かいことほど一晩寝たら忘れてしまうものです。

 時間がかかることはそれなりの時間が必要になりますが、やってしまえばすぐ終わることは手空きのときにすぐにすませます。その日のうちに時間がないのなら次の日にはやってしまうというつもりでいれば細かい積み残しに心を煩わされることがなくなってきます。

『5分間逆算仕事術』 第2章 より 長谷川孝幸:著 三笠書房:刊

 簡単な仕事、すぐに終わる仕事は、時間とともに頭の片隅に追いやられて、忘れてしまいがちです。

 仕事のやり残しを防ぐには、「その場で片づけてしまう」のが一番の方法です。
 それができない場合にも、必ずメモに残して、その日のうちに終わらせる。

 その積み重ねが、周囲の信頼と時間を生み出します。

あらゆることは「ゴールから逆算」

 長谷川さんは、仕事を効率よくこなすコツとして「ゴールから逆算する」ことを挙げています。

 人が100歳まで生きるために絶対に乗り越えなければいけないことは何か。それは「99歳までは死なないこと」です。
 この質問をすると「生きがいを持つ」「健康でいる」「お金を残しておく」などといった答えが返ってくることが多いのですが、どんなに健康でいてもお金がふんだんにあっても、99歳より手前で死んでしまったら100歳にはなりません。具合がよくなくてもお金がなくても、99歳の1年間を乗り越えた人だけが100歳になるのです。
 では99歳まで生きるために絶対に乗り越えなければいけないことは何か。もちろん「98歳まで死なないこと」です。
 よい30代を過ごすにはどうすべきか、まずは20代をきちんと生きる。来月ちゃんと給料をもらえるためには、今月しっかり働く。明日元気でいるためには、今日具合悪くならない。
「何だ、当たり前じゃないか!」と思う人もいるでしょうが、遠い目標も近い目標も、大きな目標も小さな目標も、絶対にその1個手前が実現しなければ実現しない。その1個手前はそのまた1個手前が実現しなければ実現しないのです。
 よって何かをしようと思ったらその最終形の一歩手前のイメージを考えます。その一歩手前の成立を実現するためには、さらにその一歩手前のイメージを考えます。そして現時点までつながれば、目標達成のためのプロセスがはっきりします。
最終的にどうしたいのか、そのためにどうするのか」という考え方のクセをつける、これが「ゴールから逆算」ということです。その上で「ではどうすればできるか」という手段を考えるのです。
 ゴールから逆算して考えた手段は最もシンプルで直接的です。多くの人が「今がこうだからこうする、そしてこうする、そしてこうする・・・・・」といった「現状積み上げ式」の発想をしがちです。しかしこれだと、

 ①その場しのぎになるおそれ
 ②あるべきゴールからずれるおそれ
 ③余計な迷い、余計な手間

 が発生するおそれがあります。段取りがよい人はシンプルにものを考えます。最終形を実現するための最もシンプルな方法を考えることが段取りを組むということなのです。そしてまた、あるべき姿を実現するためには、①あるべき姿を明確に認識する、②現状を明確に認識する、③あるべき姿と現状の差異を明確に認識するという3つの作業が必要です。簡単に言えば「どうしたいのか」がはっきりしていなければどうしようもないということです。そして「今何をすべきなのか」「今何ができていないのか」もはっきりしなければただ闇雲にオロオロするしかないということです。

『5分間逆算仕事術』 第3章 より 長谷川孝幸:著 三笠書房:刊

図1 ゴールから逆算するということ 5分間逆算仕事術 第3章
図1.ゴールから逆算するということ
(『5分間逆算仕事術』 第3章 より抜粋)

 例えば、スキーの滑降をするとき。
 まず、ゴールの位置をしっかり定める。
 そして、ゴールに最短距離でたどり着くルートを決め、コース取りのプランを頭に叩き込む。

 あとは、そのプラン通り、一気にゴールまで滑り切るだけですね。

確実に結果を出すための指示・命令の出し方

 長谷川さんは、相手への要求水準・相手の能力・案件の重要度・過去の状況・現状の逼迫度などで今回は指示にすべきか、今回は命令でいいかと使い分けることが重要だと述べています。

 指示とは、やり方まで細かく指し示すこと
 命令とは、結果のみを求めること

 指示や命令をする際のポイントは、以下のとおりです。 

 段取りよく指示・命令を出すためには「わかりやすく」「簡潔に」ということを意識するとよいでしょう。話を簡潔にわかりやすくするには次の3点を意識すると大きく改善できます。

  • 結論を先に
  • 5W2H
  • 一文を短く

 事をスムーズに進める上で最も知っておくべきは「何をゴールとするか」です。相手を不快にしないようになかなか結論を言わず、補足説明をあれこれと先にされても、結局何が言いたいのかが見えないので聞いているほうは不安にしかなりません。だから結論を先に言って逆算しながら補足をするというのがよいのです。
 5W2Hとは「いつ(WHEN)・どこで(WHERE)・誰が(WHO)・何を(WHAT)・なぜ(WHY)」の5Wと「どうやって(HOW)・どのくらい(HOWMUCH)」の2Hで、ごく当たり前の基本的な要素です。当たり前故に意外とこれらが抜けることが多いのです。どんなに当たり前のことでも5W2Hは必ず盛り込むことが必要です。特に指示・命令を出す立場の人は上席であったり有能なことが多いので、5W2Hを「言わずもがな」と省略してしまう人が少なくありません。5W2Hなしにオーダーをして望んだとおりにならなかったとしたら、それはそんな曖昧なオーダーをしたほうに問題があるということです。
「一文を短く」というのはだらだら長く言わないということです。
 人間の脳というのはおおむね30文字以上の言葉を一度に認識できないと言われています。これは人間を含む動物は短い情報をたくさん獲得して状況認識するように脳ができているからです。たとえば野生のイノシシなどは「あっちに芋畑がある!」「あっちに人間がいる!」と瞬時に短い情報をどんどん獲得して動きます。人間も同様で「ああでこうでああで、それでああなってこうなって、その場合はこうでああでこうで、それで、・・・・・」などと一気にたくさんのことを言われると頭の中で咀嚼(そしゃく)できないのです。「これはこう。あれはこう。そしてこれがこう」とスパッスパッと短く表現してもらうと頭に入りやすいのです。アメリカの陸軍では戦場では30文字以上の命令を出してはいけないと規定されているそうです。
 たとえば「Go straight! and turn to right!(前進! 右折!)は24文字ですが「All the soldiers go forward and turn to the right side at the corner!」などと言われたら、確かに訳がわからなくなるでしょう。日本語で言うと「、」が多く、なかなか「。」にならない指示・命令はよくないということです。

『5分間逆算仕事術』 第5章 より 長谷川孝幸:著 三笠書房:刊

図2 指示と命令はこう使い分ける 5分間逆算仕事術 第5章
図2.指示と命令はこう使い分ける
(『5分間逆算仕事術』 第5章 より抜粋)

 上司の指示・命令が曖昧でわかりにくいと、部下からのアウトプットいい加減なものになりがち。
 結局、上司がやらなければいけない作業が増えて、仕事が遅くなるはめになってしまいます。

 上司と部下の信頼関係を築くには、円滑なコミュニケーションから。
 上の3つのポイントは、しっかり押さえておきたいですね。

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「段取り八分」という言葉があるように、何ごともしっかりとした下準備が効率的な作業には欠かせません。
 もちろん、仕事においても、それは言えることです。

「前もって、あれをしておけば」
「先に、上司に報告しておけば」

 社会人なら、誰でも一度は経験するであろう失敗。
「5分間逆算仕事術」は、それらを劇的になくしてくれる“魔法の薬”です。
 生産性向上が叫ばれている今の世の中。
 増え続ける仕事量に悩むすべてのビジネスパーソンにオススメの一冊です。

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