【書評】『NLPの教科書』(前田忠志)
お薦めの本の紹介です。
前田忠志先生の『脳と言葉を上手に使う NLPの教科書』です。
前田忠志(まえだ・ただし)先生(@maedatadashi)は、米国NLP協会認定トレーナーです。
NLPの創始者であるリチャード・バンドラーに師事したご経験をお持ちです。
現在は、NLPコミュニケーションスクールの代表を務められています。
「プログラミング」は変えられる
人間関係の悩み、人とのコミュニケーションでの悩み。
それをつきつめると、「他人が自分の思いどおりにならない」ことに行き着きます。
それ以外の悩みは、自分の行動や感情から引き起こされるものです。
「こうなりたい」「こうしたい」と思うのに、そうならない自分がいるから悩むわけです。
そういった他人との関係、自分との関係の悩みに答えるのが「NLP」と呼ばれる理論です。
NLPは、「Neuro-Linguistic programming」の頭文字をとったものです。
「神経言語プログラミング」と訳されます。
Neuroは「神経」、つまり、「五感」のこと。
Linguisticは「言語」のこと。
人は、五感を通して得られた情報を言語によって思考して意味づけし、コミュニケーションします。
Programmingは「プログラミング」、思考や行動のパターンです。
NLPは、神経、言語、プログラミングの相互作用を解き明かすものです。
たとえば、目の前の上司が「もっとしっかりやるように」と言ったとき、目の前に上司がいるのが見え(視覚)、上司の言葉を耳にしています(聴覚)。これがNeuro(神経)です。
そして、この体験を「また怒られた・・・・」などと意味づけし、「すみません・・・・」などと言葉にします。これがLinguistic(言語)です。
このとき、「私は何をやっても駄目・・・・」という思考のパターンがあります。これはProgramming(プログラミング)です。
プログラミングは変えられます。「私は何をやっても駄目・・・・」ではなく、「わたしはやればできる」というように変えれば、上司から「もっとしっかりやるように」と言われたときに、「期待されている」などと意味づけし、「頑張ります」などと言えるようになります。『NLPの教科書』 Part1 より 前田忠志:著 実務教育出版:刊
コミュニケーションで問題が起きた場合「相手が悪い」と考えてしまいがちです。
しかし、相手を変えるのは至難の業です。
そのようなときでも、自分のコミュニケーションを変えることはできます。
自分とのコミュニケーションを上手にすることで、悩みを解決し、夢や目標を実現できます。
本書は、NLPのスキルを解説し、他人や自分とのコミュニケーションに生かす方法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
[ad#kiji-naka-1]
「バックトラック」で相手に合わせる
コミュニケーションにおいて、相手に何かを働きかける。
そのためには、相手が自分に対して「心を開いている」状態であることが必要です。
相手が心を開いている状態を、「ラポール」といいます。
相手とラポールを築くための方法の一つが、「バックトラック」という手法です。
人は、自分の気持と違うことを言われると心を閉ざしてしまいます。
そうならないためには、相手の言葉をおうむ返しするのが効果的です。おうむ返しすることを「バックトラック」といいます。バックトラック(backtrack)は、「来た道を引き返す」という意味です。
お客さんが「一人暮らしなんですが、このあたりで新築のお部屋を探しているんですが・・・・・」と言ったとき、バックトラックをすると、「一人暮らし用の新築のお部屋ですね」などと言うことができます。
お客さんはそう言われると、自分の言いたいことを聞いてくれているという安心感をもち、次の話も進めやすくなります。
コミュニケーションに苦手意識を持つ人の中には、上手に話をできるようになりたいと思っている人が多くいます。しかし、コミュニケーションスキルを高めるための近道は、上手に話すことよりも、まず、上手に聴くことです。
人は誰でも、自分のことをわかってもらいたい、自分のことを重要だと感じたいと思っています。そして、自分の話を聴いてもらうことで、この気持ちが満たされます。「私に話をしてもらいたい」という人より、「私の話を聴いてもらいたい」という人のほうが多いのです。
「はい」「ええ」「うん」などの相づちだけでも話を聴くことはできますが、バックトラックは、より強力な聴き方です。『NLPの教科書』 Part2 より 前田忠志:著 実務教育出版:刊
人は、誰でも自分の言ったことを相手に理解してもらいたいものです。
いきなり、相手から自分の言ったことを否定される。
誰でもそんなことをされたら、たとえ正論でも、相手に心を閉ざしますね。
「コミュニケーションスキルを高めるための近道は、上手に話すことよりも、まず、上手に聴くこと」
頭の中に、刻みこんでおきたいですね。
「心のフィルター」に合わせて話す
私たちは、さまざまなフィルターを通して、出来事を体験しています。
こうした無意識的なフィルターのことを、「メタプログラム」といいます。
数多くあるメタプログラムの一つが、「判断基準」です。
判断基準には、大きく次の二つがあります。
- 自分で判断するのを好む「内的基準」
- 他者に判断してもらうのを好む「外的基準」
デジカメを買いに行った場面を想像してみてください。次の二人の店員では、どちらのほうが気持ちよく感じるでしょうか?
一人目は「機種によって、手にとった感じも違いますので、お手にとってご自由にご覧ください」と言う店員。
二人目は「こちらの商品が人気ありますよ。今なら、キャンペーンでお買い得になっています」と言う店員。
どういう機種を買いたいのか、自分で基準をもっていれば、一人目の店員のほうが気持ちよく感じるでしょう。
また、自分に基準がなければ、二人目の店員のほうが気持ちよく感じるでしょう。
「自分ではわからない」というように外的基準型の傾向が強い人には、「〜がお勧めです」「こちらは人気があります」という言葉が効果的です。
「自分で選びたい」というように内的基準型の傾向が強い人には、「ご自由にご覧ください」と言うほうがいいのです。
人とコミュニケーションをする際には、相手のメタプログラムに合わせることで、効果的に働きかけることができます。『NLPの教科書』 Part4 より 前田忠志:著 実務教育出版:刊
自分が「いい」と思っても、相手がそう思わなければ意味はありません。
相手が、何を基準に選ぶ傾向にあるのか。
それをしっかり把握して、相手に合わせた話し方をしたいですね。
「ストラテジー」の表し方
私たちは、いろいろなことをパターン化して行動します。
パターン化が起きていると、同じプロセスに従うことで同じ結果を得ます。
つまり、プロセスを変えることでパターンの結果を変えることができます。
プロセスは、細かく分割していくと、「五感を使う順番」となります。
NLPでは、何かを達成するために使う五感の順番を「ストラテジー」といいます。
ストラテジー(strategy)は、「戦略」という意味です。
五感は、自分の外部(External)のものに対して使うときと、自分の内部(Intertnal)のものに対して使うときがありますが、これを区別します。
そして、次のように記号を使ってストラテジーを表します。
- 視覚(Visual):「V」で表します。外部のものを目で見たときは、「Ve」心の中でイメージを思い浮かべたときは「Vi」で表します。
- 聴覚(Auditory):「A」で表します。外部のものを耳で聞いたときは「Ae」、心の中で言葉や音を聞いたときは「Ai」で表します。「Ai」のなかでも、心の中の言葉(Digital)を内部対話といい、「Ad」で表します。
- 体感覚(Kinesthetic):「K」で表します。外部のものに触ったり味やにおいを感じたときは「Ke」、心の中で体の感覚や感情を感じたときは「Ki」で表します。
(中略)
望ましくない結果が起きているときは、V、A、Kのいずれかを使っていないことが多いものです。ストラテジーを変えるときは、V、A、Kのすべてを使うようにしてみます。『NLPの教科書』 Part5 より 前田忠志:著 実務教育出版:刊
変えたい行動パターンは、そのプロセスのストラテジーを分析するのが効果的です。
例えば、「このままではダメだ」という内部対話(Ad)で不安を感じる場合。
視覚(V)や外部聴覚(Ae)、体感覚(K)を使ってストラテジーを変えるのが効果的となります。
「アンカリング」で、刺激と反応を組み合わせる
梅干しを見ると、すっぱい感覚が湧き起こり、自然と唾液が出てきます。
このように、何らかの刺激が引き金となって特定の反応が起こることはよくあります。
刺激と反応の組み合わせはパターン化されるからです。
刺激と反応の組み合わせは、意図的に作り出すことができます。
その組み合わせを作ることを、「アンカリング」(anchoring)といいます。
アンカリングは自分の中にスイッチを作るようなものです。アンカリングによって、勉強するときは集中力のある状態、人前で話すときは自信のある状態というように、いつでも自分の理想の状態になることができます。
バッターボックスで特定のしぐさをすることによって集中力の高い状態を作り出すプロ野球選手がいますが、これもアンカリングの一例です。
特定の反応を起こす引き金となる刺激のことを「アンカー」(anchor)といいます。アンカーは「碇」という意味です。碇をおろしたときのように、自分の状態が固定化されるものです。
視覚、聴覚、体感覚といった五感の刺激がアンカーになります。
(中略)
また、部屋や席などの空間がアンカーになることもあります。いつもの席に座ると居心地がいい、というのは空間アンカーです。
アンカーは体験によって作られます。梅干しを見たことがない人は梅干しを見ても何も感じません。梅干しを食べたらすっぱかった、という体験を繰り返すことで、梅干しを見るだけですっぱいという感覚が起きるようになるのです。
同じように、理想の状態で特定の刺激を繰り返すと、その刺激がアンカーになります。
気合の入った状態でガッツポーズすることを繰り返すと、今度は、ガッツポーズすると気合の入った状態になるのです。
アンカーは強い感情が伴っているときは一度の体験でできることもありますが、繰り返し体験することでより強力になります。『NLPの教科書』 Part5 より 前田忠志:著 実務教育出版:刊
効果的なアンカリングのポイントは、以下の四つです。
- ピークの直前のタイミング
- 強い状態
- 独特ではっきりしたもの
- 正確に繰り返すことができるもの
必要な場面に応じて、使い分けられるようにしたいですね。
[ad#kiji-shita-1]
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「相手の立場に立って考えろ」
「相手は変えられない。自分を変えろ」
よくいわれる話ですが、どうすればいいのかよくわからないのが実情です。
NLPは、そんな疑問に答えてくれる便利なツールです。
自分の脳のプログラミングを変えることで、自分自身の考え方のクセを変える力を持っています。
取り入れやすいスキルから始め、他人や自分とのよりよいコミュニケーションを目指したいですね。
【書評】『仕事と勉強を両立させる時間術』(佐藤孝幸) 【書評】『ゼロ』(堀江貴文)