本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』(ジェレミー・ドノバン)

 お薦めの本の紹介です。
 ジェレミー・ドノバンさんの『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』です。

 ジェレミー・ドノバンさんは、リサーチ・アドバイザリ企業のマーケティング担当副社長です。
 TED×イベントのオーガナイザーも務められ、自らプレゼンを行う講演家でもあります。

普通の人でも、感動のスピーチができる!

 TEDとは、テクノロジー、エンターテイメント、デザインの3つの分野から感動や衝撃をもたらすアイデアを紹介し、広めていくことを目的とした非営利組織(NPO)です。
 TEDの事業の中でも広く知られているのが、会員だけが参加できるカンファレンスと、プレゼンテーション動画のインターネット無料配信です。
 配信されたTEDトークの動画再生回数が2013年の時点で10億回を超えるなど、世界的な人気を博しています。

 ドノバンさんは、TEDのステージに立つという栄誉を与えられたプレゼンターには、2つのまったく異なるタイプがある、と指摘しています。

 第1のタイプは、驚くべき偉業を達成した人たち、あるいは並外れた才能に恵まれた人たち。
 第2のタイプは、自分の身に起こった驚きのストーリーを語ってくれる人たち。
 普通だけれど「普通ではないストーリー」をもった人たちのこと。
 
 ドノバンさんは、「人に語れるほどのストーリーなんてもっていない」と思っている普通の人も彼らと同じように、印象的で人々を勇気づけるようなプレゼンテーションを行うことは可能だと指摘します。

 普通の人生にも、ところどころに普通でない瞬間が訪れています。
 あとは、感情に訴える力を充分に発揮してストーリーを伝えられるようになればよいだけです。

 本書は、人気の高いTEDトークを徹底的に研究し、その結果をもとに、聴き手にインスピレーションを与えるスピーチのハウツーを紹介する一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「核となるひとつのアイデア」で勝負!

 感動を呼ぶプレゼンのためには、今までの古い意識が新しい考え方へと変わっているような、あるいは何か行動を起こす意欲が湧いているような、そんなインスピレーションの種を一粒蒔いておくことが目標となります。

 はじめに、トピック(スピーチのテーマ)をひとつ選びましょう。そこで重要なのは、自分の心の中をじっくり観察してみることです。どんなTEDトークもストーリーが軸となりますが、だからといって、「私が人に語れるいちばんすてきなストーリーって何だろう?」と、いきなり自問してもはじまりません。まずは、自分自身を発見するための問いかけからはじめてみましょう。
 たとえば、「これまでの人生で得たいちばんの大事な教訓は何だろう?」、「いちばん喜びを感じた経験は?」、「いちばん辛かった経験は?」、「この世に生まれた私の使命とは? 使命を果たすための“聖戦”に協力してもらうにはどうすればいいだろう?」
 核となるアイデアが見つかったら、こんどはストーリーと事実を積み重ねながら、聴衆を主体にしたトークを組み立てていきましょう。たとえば、「いちばん大事な教訓」をテーマに選んだとしましょう。その教訓を得たのはいつのことか、何がきっかけで、どんな出来事を通して学んだことなのか。こうした要素を積み重ねることによってストーリーはできあがっていきます。
 ここで大事なポイントを一つ。「誰からその教訓を得たのか」――これが必須要素です。自分以外の誰かをヒーローにすることが、人の心を動かすストーリー作りのコツなのです。トークを組み立てている最中は、つねにいじわるな聴き手を演じるもうひとりの自分を用意しましょう。「だからどうなの?」「いったいそれが私にどう役立つの?」こんな質問攻勢が、すばらしいスピーチを作るために必要なのです。

 『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』 第2章 より ジェレミー・ドノバン:著 中西真雄美:訳 新潮社:刊

 2011年末の時点で、動画の視聴数がトップ10に入るTEDトークのうち、7つは「聴衆に自分自身を変えるきっかけを与えようとするもの」です。

 この7つのトークの中心的コンセプトは、人の心の内側にあるもの、つまり心の病、創造性、リーダーシップ、幸福、モチベーション、成功、自尊心といったものでした。

 誰にでも当てはまることだからこそ、共感されて勇気づけられます。

アイデアは「短いキャッチフレーズ」で伝えよう

 多くのTEDプレゼンターたちは、核となるアイデアを基本フレーズやパワーバイト(強いインパクトを与える端的な言葉)に転換し、聴衆の心に深く刻み込まれるまで繰り返し口にすることによって、自分たちのアイデアが広く伝わるようにしています。

 ドノバンさんは、英国の作家・サイモン・シネックの「Start with Why(Whyからはじめよ)」、バラク・オバマ大統領の「Yes,We Can」などの印象的なキャッチフレーズを例に挙げ、以下のように解説しています。

 まず大事なことは、短い言葉に収めること。理想は3語(ワード)ですが、12語(ワード)までならOK。ここで、もう一度オバマ大統領を思い出してください。
 頭に焼きついて離れない、彼の印象的なメッセージ――「Hope and Change」、「Pass This Bill」、「We Can’t Wait」、「Yes,We Can」――はすべて3語(ワード)でできていますね。これでおわかりでしょう。
 キャッチフレーズの第二の特徴は、人に行動を起こさせる力をもっていることです。「Start with Why」はその代表例です。
 O・J・シンプソン事件で弁護人を務めたジョニー・コクランは、陪審員を前にこう言いました。
「If doesn’t fit you must acquit([犯行に使用されたと思われる手袋が]彼の手に合わないなら、無罪とすべきだ)」
 この言葉は、15年以上経ったいまでも、人々の意識に残っています(結果的にこの手袋がシンプソンの手に合わなかったこともあって、シンプソンは無罪の判決を受けた)。陪審員に向けたコクランの言葉や、「People don’t buy what you do,…(人は「何を」ではなく・・・・)」というサイモンの見解は、ともにパワーバイトの第三の特徴をそなえています。
 ほぼ韻を揃えたことで音楽を聴いているようなリズムのよさが生まれ、これが人々の心をとらえ、覚えやすくなっているのです。ほぼ韻を揃えるという特性をきちんと理解するには、少し文法のレッスンが必要です(けっして難しいものではありません)。あるフレーズを音楽のように耳に心地よいものにするには、単語やフレーズを、連続する節のはじめの部分(首句)で繰り返せばよいのです。

 『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』 第3章 より ジェレミー・ドノバン:著 中西真雄美:訳 新潮社:刊

 語呂のいい単語を並べて、覚えやすいフレーズを作り、繰り返し口にすること。
 そうすることで、聴衆に強いメッセージを与えられます。

 自分の言いたいことを「短く、簡潔に」まとめたキャッチフレーズ。
 プレゼンテーションの際に、それを効果的に使うことを心掛けたいですね。

「えーっと」「あのー」を防ぐには?

 多くの人が陥りやすいスピーチの傾向として、言葉の間(ま)を埋める言葉、いわゆる「間もたせの言葉」(filler words)を多用することがあります。

 一般的なのは、フレーズの頭につける、「えー」「えーっと」「あのー」といった言葉です。
 このような言葉は耳障りで話の内容を聴きとりにくくするばかりではありません。

 話し手の未熟さが露呈するばかりではなく、内容が不確かだという印象を与えてしまいます。

「間もたせの言葉」の蔓延を防ぐには、“一気に話し、適度に間を置く”テクニックが有効です。間を置くことで、話の流れに区切りをつけます。間を上手に取ると、「間もたせの言葉」が減るだけでなく、自制の利いた人物というオーラが醸しだされます。わずかな沈黙によって、次に話すべき考えをかき集め、それを組み立てる時間が生まれます。
 話し手のメリットばかりでなく、間を置くことによって、聴衆にはいま聞いた内容を頭の中で整理する時間が与えられます。少し長めの間を置くと、ちょっとした(だけど力強い)感嘆符がついたように、話した内容がドラマチックに強調されます。間が、聴衆の注意を引きつけるのです。間は、いつでも享受できる贈り物なのです。

 『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』 第9章 より ジェレミー・ドノバン:著 中西真雄美:訳 新潮社:刊

 大勢の前でしゃべるのは、「つねに何か言葉を口にしていなければならない」というプレッシャーになります。
 そのため、「間もたせの言葉」を使ってしまいがちです。

 適度な間は、話し手にとっても、聴き手にとっても、話の内容を整理する上で必要です。

 ひとつの内容を一気に話し、ちょっと休む。
 無理に言葉を繋ごうとしないこと。

「間」を味方につけて、話の内容に聴衆を引き込むプレゼンをしたいですね。

「両腕を楽にして身体の脇に下ろしておく」のが基本姿勢

 プレゼンでは、視覚の部分、つまり、話す態度や体の動きも重要です。
 話しかけるとき、「両手を楽にして身体の脇に下ろしておく」のがいちばん無理のない姿勢です。

 ドノバンさんによると、スピーチの場でも、これが最も有効な基本姿勢とのこと。

 多くの人は、両手を脇に下ろしておくのではなく、つねに両手は腰より高く上げておくのが正しい基本姿勢だと思っています。両手を合わせている人もいれば、離している人もいます。こうしていれば間違いなく立派なプレゼンターとみなされるでしょうが、少々不自然です。一日中こうして歩きまわっている姿を想像してみてください。自然な態度にも見えなければ、自信に満ちているようにも見えません。
 覚えておいてください、つねに両手を腰より上げた状態で大切な誰かと会話することなんてできません。なぜなら、そこにバリアが生まれてしまうからです。少し離れていても、同じバリアを聴衆とのあいだに作ってしまうのです。どんな基本姿勢を選ぶにしても、左右対称の状態を保てる姿勢でないといけません。そうでないと、あなたの不安定な緊張感を聴衆が感じ取ってしまいます。

 『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』 第11章 より ジェレミー・ドノバン:著 中西真雄美:訳 新潮社:刊

 絶対に避けたほうがよい基本姿勢は、以下のようなものです。

  • 局部を隠すような姿勢(自信がなくおどおどして見えるから)
  • ポケットに手を突っ込む姿勢(無気力で関心がないようにみえるから)
  • 腰に手を当てる姿勢(挑戦的で傲慢な態度に見えるから)
  • 腕組みする姿勢(何かを拒否するような挑戦的な態度に見えるから)

 人前に出て話すときには気を付けたいですね。

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 社会人になると、人前に出て話す機会が多くなります。
 仕事でのプレゼンや飲み会の場での挨拶などなど。

 組織の中での立場が上になるほど、大勢の前でのスピーチを求められるようになります。
 いつまでも「自分は人前で話すのは苦手だから」といって断り続けるわけにはいきません。
 
 せっかくならば、その場の雰囲気を盛り上げる、印象に残るトークにしたいですね。
 私たちも、TEDの有名人たちのノウハウを盗み、「トークの達人」を目指しましょう。

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