本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『人は「そとづら」が9割』(三枝理枝子)

 お薦めの本の紹介です。
 三枝理枝子さんの『人は「そとづら」が9割』です。

 三枝理枝子(さえぐさ・りえこ)さんは、ビジネスコンサルタントです。
 全日空(ANA)に入社、国内線、国際線のチーフパーサーを長年務められました。
 現在は、最上級のサービス・ホスピタリティを人や組織に定着させる「ホスピタリティマネジメントコンサルタント」としてご活躍中です。

「そとづら」をよくするだけで、すべてがうまくいく!

「そとづらがいい」
 そういうと、“お調子者”や“八方美人”など、どちらかというと悪いイメージがあります。

 三枝さんは、そのような感じ方を変える必要があり、「そとづら」のよさを推奨しています。
「そとづら」をよくすることは相手を不快にさせず、むしろ相手を心地よくさせますし、心と心をつなぐ「おもてなし」に通じると思うからです。

 人を家に例えると、「そとづら」とは、「玄関」のようなもの。

 明るくきれいな玄関の家は、人に「中に入ってみたい」と思わせます。
 逆に、薄暗く、乱雑な感じの玄関だと「ちょっと遠慮しようかな」と感じてしまいますね。

 三枝さんは、いい関係を築こうと思うなら、やはり迎え入れる側には、それなりの玄関にしておく準備が必要だと強調しています。

 本書は、いい「そとづら」を作ることで、人付き合いを良好にし、チャンスに恵まれ、毎日を楽しく充実した人生を送るための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「私は」となるべく言わない

 初対面では、相手に失礼がないように会話するのは当然ですが、案外難しいもの。
 ならばせめて、穏やかに話すことを心がけたいですね。

 三枝さんは、「穏やかに話すためのコツ」を以下のように説明しています。

 穏やかに話すというのは、まず、争わない、戦わないこと。ひとつの話題を深刻に受け止めて議論してはいけません。
 感情的になるのもNG。興奮して、大声を出し、思いつくままのことを口にするのは大人げないことです。
 早口もダメ。自分の得意分野の話題になると、つい早口になってしまいがちです。聞いているほうは、疲れてしまいます。

 それと、あまり自分を主語にしすぎない。「私は」や「僕は」を主語にした言葉遣いは、自己主張が強くなりがちです。「私は」より「◯◯さんは・・・」と相手を主語に会話を進めていけば、相手も話を聞いてくれてどんどん会話に心を入れてくれるようになります。
 ただ、どうしても自分が伝えておきたい主張もあるでしょう。そんなときは、主張の表面にある「棘(とげ)」を抜いてみてはどうでしょうか。「棘」の抜き方の一例をご紹介しましょう。
「こんな場合があるらしいですね」
「私の知り合いでこんなふうに考える人がいます」
「誰でも思っているようですが・・・・」
「私」を脇に置いて、一般論にしてみたり、自分の意見を他人に置き換えるなどワンクッションを入れてみる。これだけで、穏やかに相手に伝わるものです。

 『人は「そとづら」が9割』 第1章 より 三枝理枝子:著 アスコム:刊

 日本語は、英語などのように主語をはっきりさせる必要のない言語です。
 周囲との関係性を重視し、「和の精神」を尊ぶ日本人の精神性が反映されているのですね。

「敬語」についても同様です。
「主語を控えめに、ゆっくりとはっきりした口調で」話すこと。
 日本人ならではの「おもてなし」、しっかり身につけたいものですね。

「ながら動作」は人に不快感を与える

 人はハキハキした受け答え、キビキビした立ち居振る舞いに惹かれるものです。

 美しい動作を維持するためのポイントは二つあります。
「ながら動作をしないこと」「焦りを見せないこと」です。

 人と応対しているときの「ながら動作」は、自分が感じている何倍も相手に不快感を与えます。

 CAの仕事は、時間との戦いになることが少なくありません。離陸までに、お客さまのご案内と荷物の確認、さらには飛行機の安全確認を短時間でやらなければなりません。
 離陸後も、狭いギャレー(機内の台所)の中での作業は、常に時間との戦いになります。何かをしながら次にする作業のことを考えなければならない状況というのは、どうしても出てきてしまいます。

 ギャレーでは、うちづらを発揮して、迅速に、機敏に行動します。当然、ながら動作ばかり。この姿は乗客の方にはお見せしたくありません。
 しかし、ギャレーから一歩、キャビンへと出たら、優雅さが大事。どんなに焦っていても、一つひとつの動作を丁寧に。洗練された振る舞いが求められます。
 どんなに忙しくても、そういうときこそ、一つひとつの仕事をきっちりと片づけてから次の作業に移ることが大事です。複数のことを同時にこなそうとすると、どうしても作業そのものが雑になってしまいます。やり直したり、気ばかりが焦ってしまい、結局、一つずつしっかり片付けていくよりもはるかに多くの時間を費やすことになるのです。
 また、そういうときの姿というのは、一見、テキパキと動いているように見えるのですが、よくよく観察してみると、無駄な動きやミスが多く、かなりだらしないのです。すべての作業が雑で、とても格好のいい行動姿勢ではありません。

 『人は「そとづら」が9割』 第2章 より 三枝理枝子:著 アスコム:刊

 たくさんの作業を同時にこなすのは、効率がいいようにみえて、実はそうではありません。
 おまけに、注意力が分散されますから間違いも多くなります。

 やることがたくさんあるときこそ、一つひとつ確実に。
 集中して、気持ちを入れて完了させること。

 それが「そとづら」をよくし、着実に作業するためのポイントです。

相手の存在に感謝すれば、相手を尊重する心も芽生える

 日本の武道や芸事では、「残心(ざんしん)」という言葉が昔から使われています。

 残心とは、「一つの動作を終えた後でも、その緊張感をすぐに解かずに心に残していなければならない」という意味です。

 物事を進めていけば、それが終わって心を緩めたりくつろぎたくなることもあるでしょう。でも、物事の終止符の打ち方にちょっとした「名残惜しさ」を働かせることが、いい「そとづら」には欠かせない要素です。
「終わったからといってすぐに忘れてしまうのではなく、心を残しながらゆっくり余韻を楽しむようにする。それが「残心」という言葉の意味です。
 たとえば日常的なシーンで、よくこんなことがあります。
 駅のホームで人と別れるときに、そんなに親しい間柄の人ではないけれど、その人の乗った電車が走り去るとき、私なら軽く手を振ります。あるいは、電車が見えなくなるまで見送ることも。
 逆にそうされた時のことを考えてみてください。心がホッと温かくなりますね。

 また、職人さんの世界では、仕事が終わった後に「さあ、終わった」とすぐに帰ろうとすると棟梁(とうりょう)や親方から叱られるそうです。道具をきちんと片づける、明日の仕事に備えて手入れをすることも職人としての仕事の「流れ」と位置づけられているからです。
 そのことを忘れると、師匠から「残心をわかっていないヤツだ」という言葉で躾(しつけ)られるのだそうです。

「何にても 置き付けかへる 手離れは 恋しき人に わかるると知れ」
 千利休が残した歌です。この歌にあるように、お茶の世界では、茶道具を置くときに、ぞんざいに手離れをするのではなく、恋しい人と別れるときのように余韻を持たせなさいと教えています。

 『人は「そとづら」が9割』 第3章 より 三枝理枝子:著 アスコム:刊

 同じく茶道から生まれた言葉に「一期一会(いちごいちえ)」があります。
 その意味は、以下のとおりです。

『あなたとこうして出会っているこの時間は、二度と巡っては来ないたった一度きりのものです。だから、この一瞬を大切に思い、今出来る最高のおもてなしをしましょう』(wikipedia より抜粋)

 真心ほど、人の心を打つものはありません。
 どんな時にも、最後の最後まで、気を緩めずに人と接したいものですね。

「そとづら」をよくすれば、長所を見つけるのもうまくなる

「そとづら」をよくすることは、相手への印象をよく見せる以外にも、さまざまなメリットがあります。

 そのうちのひとつが、「相手のいい面を見つける能力が磨かれること」です。

「そとづら」のいい人は、いろいろなシーンでの物事の「いい面を見つける能力」を自然に身につけていますし、「悪い面を見逃してしまう能力」も身につけていると言えます。

  • 無口な人→物静かな人
  • 冷たそうな人→感情的にならない人
  • 口数が多くてうるさい人→場を盛り上げるムードメーカー
  • 優柔不断な人→思慮深い人
  • 軽率な人→スピーディな行動派
  • 融通が利かない人→信念のある人

 他人の悪い面ばかりを見るよりは、いい面に光を当てて見つめていたほうが、付き合いは楽しいに決まっています。
 逆に悪い面ばかりを見ていれば、知らず知らずのうちにその部分だけに焦点を合わせて見るくせがつくことになりかねません。そんな付き合いが楽しいはずもありませんよね。

「君子は人の美を成す」(論語)
「立派な徳のある人は、人の美点・長所を探し、それを成就させる」という意味です。
「いい面を見つける能力」と「悪い面を見逃してしまう能力」を磨くこと。それが、いい「そとづら」を磨くことにもつながります。

 『人は「そとづら」が9割』 第4章 より 三枝理枝子:著 アスコム:刊

 人は誰でも、自分の短所や弱点を指摘されるのは嫌なものです。
 逆に、長所や得意なことを褒められるのは嬉しいもの。

 悪いところに目をつむる度量の広さと、良いところを本人の前で口にできる素直さ。
 「そとづら」のよさは、それらを身につけることで磨かれます。

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 よく、「人の内面は、外面に表れる」といいます。

 外面だけ取り繕っても、内面がともなっていなければ、すぐに馬脚を現わします。
 人の「考え」と「行動」は、それだけ密接な関係があるということ。

「自分を磨く」というと、心や精神などの内面の部分だけに焦点を合わせてしまいがちです。
 しかし、逆もまた真なり。
 外面を磨くことも、内面を磨くことにつながります。

「そとづら」は、自分でも目に見える部分なので、わかりやすいです。
 効果を確かめながら取り組めるという利点がありますね。

 ちょっとした努力で、人間関係を良くして幸運を呼ぶ「そとづら」のよさ。
 ぜひとも、身につけたいものですね。

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