本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『頭が良くなる思考法』(吉永賢一)

 お薦めの本の紹介です。
 吉永賢一さんの『東大家庭教師が教える 頭が良くなる思考法』です。

 吉永賢一(よしなが・けんいち)さん(@yoshinagakenich)は、家庭教師・作家です。
 教師としての指導歴は18年、その間に指導した生徒は1000人を超えるベテランです。

問題解決のための「良い思考法」とは?

 仕事、恋愛、勉強、お金、人間関係・・・・。
 人生ではさまざまな難問が次々と降りかかってきて、私たちを悩ませます。
 そんなモヤモヤを消し去る方法があれば、とても助かりますね。

 吉永さんは、20代のはじめの頃、本を読んだり、勉強したりして新しい知識を学んだりしたけれど、それだけでは「越えられない壁」があることを痛感します。
 そして、がんばろうとしたとき、結果がほしいときにかぎって、自分自身の心、つまり、「思考」が邪魔をしていることに気づきました。

 吉永さんは「悪い思考ではなく、良い思考をする」、つまり、思考を整え、適切にしていくためにさまざまな努力をして、「問題解決」のための思考法を編み出しました。

 本書は、ベテラン家庭教師である吉永流「問題解決のための思考法」を解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「コントロール外のこと」には手を出さない

 吉永さんは、世の中すべてのものに対して、ひとつの分類をすることを勧めています。
 それは、「コントロール内/コントロール外」という分類です。

 コントロール内とは、「自分の意志で操作することができること」
 コントロール外とは、その逆で「自分の意志ではどうすることもできないこと」

「がんばっているのに、うまくいかない」という場合、ほとんどが、「自分のコントロール外」のことをどうにかしようと懸命になっているときです。
 例えば、職場の後輩にいろいろ指示をするものの、自分の期待した通りに動いてくれない。「なんで!!」と腹立たしく思うかもしれませんが、しかし、それは仕方がありません。なぜなら他人は基本的にコントロール外だからです。こちらがどんなに強く念じようが、命令しようが、他人はこちらの100%思い通りには動いてくれないものです。
「自分のコントロール外」は自分の力ではどうにもできません。それをどうにかしようというのは、ひたすらエネルギーを消耗するだけで、問題は未解決のままです。
 なので、「これをなんとかしたい!」と思ったときには、まずそれが自分のコントロール内なのか、コントロール外なのかを探ることです。そして、コントロール外のことに着手しようとしている自分に気づいたら、それをコントロール内のことから、間接的にコントロールしようとしていくのです。
(中略)
 つねに「自分のコントロール内」のことをやっていく!

 これをこれからのあなたの思考の大前提にしてください。
「コントロール内/コントロール外」の見わけは、最初のうちは見誤ってしまうこともあります。私自身もそうでした。ただ、慣れるにしたがって、習熟していきますので、安心してください。
 まずはこの視点を持つことであなたの思考が変わりはじめるのです。

 『東大家庭教師が教える 頭が良くなる思考法』 第1章 より 吉永賢一:著 中経出版:刊

「努力すれば、夢は必ず叶う」と言う人も多いです。
 しかし、それは「自分のコントロール内」のことについての努力に限るということですね。

 自分以外の人の考えを変えて、その人を自分の思い通りに動かそう。
 そう考えても、しょせん、無駄なことなのでしょう。

 力の入れどころを間違えないためにも、「コントロール内/コントロール外」の分類は、あらかじめしっかり検討したいですね。

「消したい悩み」と「手に入れたいもの」を考える

 吉永さんは、「思考のプロセス」を以下の3つのステップにわけています。

  • 見抜く
  • 決める
  • やる

「見抜く」とは、いまの自分の持っている「問題」を見抜いていく作業です。
「問題」がわかったら、次の「決める」の段階で、それを解決するための方法を選びます。
 最後の「やる」の段階では、「決める」で見つけた方法を実践していきます。

「見抜く」について。
 最初にすべきは、『いまの自分にとっての「問題」を書き出していく作業』です。

 最初に何をするのかというと、いまのあなたにとっての「問題」を書き出していく作業です。問題は「消したい悩み」と「手に入れたいもの」との2つにわけて書き出していきます。
 このとき、書き出しのための時間をしっかり設けてください。「ながら作業」は厳禁です。なぜなら、これは非常に重要な作業なので、片手間で行なうべきではないからです。腰をすえてとりかかってください。

 準備するのは、次のものです。

  • 用紙2枚以上
  • 筆記用具
    (黒いボールペンや、シャープペンシルなどあなたが使い慣れているもの。あとは、赤い太ペン)
  • タイマー

 用紙のそれぞれの頭に、「消したいことリスト」と「手に入れたいことリスト」と書いてください。これは、赤い太ペンで書いてください。そうしたら、タイマーをセット。タイマーをセットするのは、書き出すことに集中するためです。はじめのうちは、15~30分くらいの設定にします(慣れてきたら、さらに長い時間を確保しましょう)。
(中略)
さあ、これで準備は完了です。思いつくままに、手書きで「消したい悩み」と「手に入れたいもの」を書き出していってください。
 項目が混乱しないように、箇条書きにして、項目間を1行くらい空けるようにして書きます。文字は、大きめで、ハッキリと、しっかりと。
 細かい表現にこだわる必要はありません。内容が重複したってかまいません。というより、最初は頭が混乱しているから、重複するのが当然です。気にせず書き尽くしていってください。

 『東大家庭教師が教える 頭が良くなる思考法』 第2章 より 吉永賢一:著 中経出版:刊

 吉永さんは、この書き出し作業を実際にやってみるかどうかで、この本の価値が大きく変わってくると述べています。
 それだけ、重要な作業だということですね。
 集中して、思いつく限り、書き出してみましょう。

 逆算の発想で、未来から現在に向けて考える

「決める」について。
 行動方針を正しいものにするために厳守すべきことは、次の4つの条件です。

  1. コントロール内のことを行なう
  2. 達成までの期限が長いものは、それを分割する
  3. ハイリスクなものには手を出さない
  4. 長期的に利益が確保できるものを行なう

 行動方針は、この4つの条件すべてをクリアできていることが重要です。
「達成までの期限が長いものは、それを分割する」とは、以下の通りです。

 達成条件の中には、達成するまでに1カ月、あるいは1年や3年と、長くかかってしまうものもあります。この場合、期限を細分化し、それぞれの段階での「手に入れたいもの」と「そのためにすること」も設定していきましょう。
 例えば、「1年後に手に入れたいもの、それまでにすべきこと」「1カ月後に手に入れたいもの、それまでにすべきこと」「1週間後に手に入れたいもの、それまでにすべきこと」と、逆算の発想で、未来から現在に向けて考えていきましょう。
 このように時系列順に検討することで、あなたが決めた達成条件が現実的かどうかを確認することができるのです。
 例えば、「1カ月後の2010年10月に、5泊7日でロンドンに遊びに行く」という達成条件を設定したとします。しかし、「3週間後」→「1週間後」→「明日」→「今日」までに何を達成していればいいのか、そのためにどうすればいいのかをまったく検討できないようであれば、この達成条件はいまのあなたにとっては非現実的なものとなります。実際、「この1カ月間はものすごく忙しい」という状況があれば、1カ月後の海外旅行の実現も難しいということがわかると思います。
 細分化は、「いますぐ実行可能な次の一手」にたどりつくまでつづけます。そして、その一手は、「これを実行し、達成できたら、私は『以前よりも良くなった!』と実感できる」と確信できるものであることが重要です。
「良くなった!」と思えることで、やる気が高まり、あなたは行動をつづけることができます。
「次の一手」は、例えば「ダイエットをする」という達成条件であれば、「現在の体重を量る」くらいに、カンタンなもので構いません。どんな小さな一歩でも、「実行したぞ!」と達成状態を実感できる試みであれば、「次の一手」と考えてOKです。

 『東大家庭教師が教える 頭が良くなる思考法』 第3章 より 吉永賢一:著 中経出版:刊

 どんなに遠い道のりも、一歩一歩の積み重ねでしか到達できません。
 その中でも、最も重要で難しいことが「最初の一歩を踏み出す」ことです。

「今すぐ実行可能な次の一手」を導き出すまで、期限の細分化をしっかりと検討したいですね。

ニュートラルな状態にする「4つの感情」

 吉永さんは、思考を整えていくには、そのベースとなる「心」も整え、ニュートラルな状態にしていく必要があると述べています。

 思考をする際の大きな障害となるもののひとつに「感情」があります。
 感情をうまく処理することが、理性的な判断を下すためには欠かせない条件となります。

 感情処理とは、何らかの出来事によって強い感情が起こると、それが思考を妨げてしまうので、そうした事態を回避するために行なうのです。
 なので理想は、どんな出来事に遭遇しても、感情が大きく揺れない状態をつねに維持することです。つまり、つねに穏やかな心、ニュートラルな気持ちでいつづけられることです。
 そのための訓練も、ぜひ、日々の生活の中にとり入れていただければと思います。
 その方法は、いたって単純です。
 ふだんから、「望ましい感情」を心に広げておくように心がけておくこと。それだけです。
 この「望ましい感情」には、次の4つがあると私は考えています。

  1. 苦しみをとり除いてあげたいという感情
  2. 喜びを与えてあげたいという感情
  3. 苦しみや喜びを、よく理解してあげたい感情
  4. 最高の達成をしてほしいと願い、助けたい感情

 この4つの感情は、プラスでもなければ、マイナスでもありません。いってみれば、ニュートラル。しかも、プラスの働きを持っている感情です。
 ふだんから、この4つの感情をなるべく保とうと心がけることで、あなたの感情は、自然と改善されていきます。
 さらに、こうした「望ましい感情」が心につねにあることで、心にマイナス感情が出てきてしまった場合でも、それが拡散するペースを遅くすることができます。その結果、「身体感覚でとらえる」などの方法を使うための時間稼ぎができ、感情処理がしやすくなります。
 逆に、ふだんからイライラカリカリしていると、そこに怒りの感情が加わった途端、導火線に火がつくように、心の中に一気に怒りが広がってしまいます。これでは、感情処理をする時間がありません。すぐに暴力をふるったり、泣き喚いたりといった行動にいってしまいます。

 『東大家庭教師が教える 頭が良くなる思考法』 第5章 より 吉永賢一:著 中経出版:刊

 感情をつねにニュートラルに保っておく。
 そうすることで、多少のトラブルや問題でも、対処する「余裕」を持つことができます。

 普段から、この4つの「望ましい感情」を心に広げておくように心がけたいですね。

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 吉永さんもおっしゃっていますが、「知識」と「知恵」は違います。

 知識は、人から教わったり、自分で学んだりして覚えたこと。
 知恵は、思考することで、自分自身の中から出てくるもの。

 知識は、知恵を得るための資源になる大事なものです。
 知識ばかり集めて、自分で考えることをおろそかにすると、逆に、知恵を得るうえで知識が邪魔します。

 インターネットの普及などで、知識が大量に簡単に手に入るようになった今の世の中。

「知恵」を得ること、つまり「自分の頭で考える」こと。
 その重要性がますます高まってくることは間違いありませんね。

 本書にある「問題解決の思考法」は、人生を歩んでいくための「コンパス」のようなもの。
 ぜひ、モノにして活用していきたいですね。

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