本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『腸をダマせば身体はよくなる』(辨野義己)

 お薦めの本の紹介です。
 辨野義己先生の『腸をダマせば身体はよくなる』です。

 辨野義己(べんの・よしみ)先生は、腸内環境学、微生物分類学がご専門の農学博士です。
 ビフィズス菌・乳酸菌の高い健康効果を訴える「うんち博士」として、テレビや雑誌などでご活躍されています。

10年前の食事が、今の腸年齢を決めている!

「大腸は第二の脳」
 そう言われるほど、最近、大腸やそこに棲む腸内細菌の重要性が注目されています。
 とはいえ、まだまだ誤った知識が世の中の常識としてまかり通っています。

 辨野先生は、腸や腸内細菌に関する正しい知識がないと「腸にダマされて」大変なことになると警告を発しています。

 免疫細胞の約70%が腸に集中していることから考えても、人間にとって腸は大切な臓器です。当然、腸内環境が悪くなって善玉菌が減り、悪玉菌が増えると免疫力は低下します。悪玉菌がつくりだす有害物質が大腸の腸壁を傷めたり、大腸から吸収されて血流に乗り、時間をかけて身体を蝕んだりするのです。
 とくに50歳を過ぎた頃から、いろんな病気にかかりやすくなるのは、腸が老化して腸内環境が悪化することで、腸内細菌のパターンが悪いほうへと大きく変わるからです。免疫力も20歳をピークに下降していき、40代後半では、ピーク時の3分の1ほどにまで落ちてしまいます。
 なかでも大腸がんの増加は深刻で、自覚症状が出たときにはすでに末期状態、といったことがめずらしくありません。気づかないうちに進行していき、命を脅かされてしまうのです。まさに腸にダマされた!という状態です。
 若い人も安心していられません。実年齢は若いのに、腸年齢だけが老化している人が急増しているからです。実際、腸年齢が実年齢プラス20歳の人は、少なくありません。なかには実年齢プラス50歳くらいの人もいます。
 つまり、若くして40〜50代と同じようなリスクを抱えている人が、たくさんいるのです。まさかここまでひどいとは・・・・・と信じられない人もいるでしょうが、この点でも、腸にダマされているのです。これは若い人ほど、腸内環境を悪化させる原因となる動物性脂肪が多く、食物繊維が少ない食事を好む傾向があるからです。

 『腸をダマせば身体はよくなる』 序章 より 辨野義己:著 SBクリエイティブ:刊

 普段の生活では、自分の腸の中の状況を知ることは難しいです。
 それだけ、人は自分の腸にダマされやすいということ。

 辨野先生は、「10年前の食事が、今の腸年齢を決めている」と述べています。
 腸にダマされずに健康的に歳を重ねるには、すぐにでも生活習慣を変える必要があります。
 自覚症状が出てしまってからでは、遅すぎるということですね。

 本書は、腸内細菌のバランスの整え方や腸内細菌がよろこぶ生活習慣など、正しい腸内環境の改善を行い健康的な生活を送る方法について解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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最大勢力の「日和見菌」を味方につける

 快便の人の腸内細菌の割合は、善玉菌が20%、悪玉菌が10%、日和見菌が70%くらいです。

 腸内環境を良好に保つには、最大勢力である「日和見菌」を味方につけることが重要です。

 日和見菌の多くは選挙の浮動票みたいな菌で、常に優勢なほうにつく性質があります。つまり、善玉菌が優勢になると善玉菌につき、腸内を発酵に導くのです。逆に、悪玉菌が優位になると悪玉菌につき、腸内を腐敗させます。風向き次第で、いい働きもすれば、悪い働きもするのです。
 日和見菌でもっとも有名なのは大腸菌です。なかでも新聞や雑誌、テレビなどで時々目にする、O―157(腸管出血性大腸菌)の恐ろしさを知っている人は多いでしょう。ただ、O―157のように病原性のある大腸菌は少なく、ほとんどの大腸菌は非病原性です。善玉菌が優勢なときはじっとしているのですが、悪玉菌が優勢になると腐敗に加勢するが特徴です。
 大腸菌のように有名ではありませんが、日和見菌のなかで最大勢力を誇るのはバクテロイデスで、腸内細菌の40%以上を占めています。
 大腸菌はよく知られている日和見菌ですが、勢力からするとかなり小さいといえます。たとえば、ウンチ1グラム中、ビフィズス菌は100億〜1000億個もいるのです。非病原性の大腸菌は1000万〜1億個くらいしかいません。
 日和見菌は腸内細菌のなかで最大の勢力ですが、腸内細菌で性質がよくわかっていない未知の菌がまだ70%もいるの? という人もいるでしょう。
 それでも、1990年代後半から導入された細菌の16rRNA遺伝子を用いた遺伝子解析法によって、培養が困難だった菌種が正確に同定できるようになったのです。そのため、腸内細菌の研究が大きく進歩し、腸内細菌がつくりだす物質が、健康や病気、若さや寿命をも左右することがわかったのです。さらに研究が進めば、日和見菌の性質が次々と解明されていくかもしれません。
 なお、大腸菌を発生源とする病気を防ぐには、日和見菌が悪玉菌につくのを阻止し、腐敗が起こりにくい腸内環境にする必要があります。そのためには、まずは善玉菌が優勢になるよう、動物性脂肪が少なく食物繊維が多い食事を摂ったり、適度な運動をしたり、ストレスを解消したりするなどの生活を心がけるといいでしょう。

 『腸をダマせば身体はよくなる』 第1章 より 辨野義己:著 SBクリエイティブ:刊

「腸内環境を変える」といっても、腸内の細菌のバランスをがらっと変える必要はありません。

 善玉菌の割合を数%でも増やし、悪玉菌の割合を数%でも減らすこと。
 そして、善玉菌と悪玉菌の割合を2:1の比率に近づけることが重要です。
 そうすれば、残りの70%を占める日和見菌の働きが変わり、腸内環境が一気に改善されます。

 善玉菌が優勢となる“臨界点”まで、生活習慣を変える努力を続けることができるか。
 それがカギになりますね。

「オリゴ糖」が腸内環境を改善する

 最近、ダイエット用甘味料としても人気の「オリゴ糖」
 腸内環境をよくするためにも、オリゴ糖は有効とのこと。

 オリゴ糖は、消化しきれずに大腸まで達してビフィズス菌のエサになり、ビフィズス菌を増殖・活性化させ、腸内環境を改善する効果があります。

 腸内環境の改善、ダイエット用甘味料として注目されているオリゴ糖ですが、血中のコレステロール値を下げたり、アトピー性皮膚炎を改善したり、虫歯を予防したりする効果もあります。
 このオリゴ糖について説明すると、まず語源はギリシャ語の「oligo=少ない」に由来します。つまり、「糖の数が少ない糖」という意味です。
 さらに説明すると、人間の主なエネルギー源である食物繊維と糖質の総称、オリゴ糖が属する炭水化物の大きさは、三つに分けられます。
 この炭水化物のなかでもっとも小さいのは、ブドウ糖や果糖、ガラクトースで、単糖と呼ばれています。逆に、もっとも大きな炭水化物は、単糖類が数10〜数1000個結合した多糖類です。多糖類には、でんぷんや食物繊維のセルロース(繊維素)、イヌリンなどがあります。
 そして、これらの中間の大きさの単糖類が2〜10個結合した炭水化物が、オリゴ糖と呼ばれているのです。
(中略)
 なお、オリゴ糖が多く含まれている主な食品は、次のとおりです。参考にして、積極的に摂るようにしてください。

 ガラクトオリゴ糖・・・牛乳や乳製品
 フラクトオリゴ糖・・・ニンニク、アスパラガス、ネギ、タマネギ、ゴボウ、大豆
 大豆オリゴ糖・・・大豆や豆乳、味噌や醤油などの大豆製品
 乳果オリゴ糖・・・ヨーグルト
 キシロオリゴ糖・・・トウモロコシ、タケノコ
 イソマルトオリゴ糖・・・ハチミツ
 ラフィノース・・・キャベツ、ブロッコリー、アスパラガス
 ラクチュロース・・・牛乳や乳製品
 グルコン酸・・・ハチミツ、ローヤルゼリー、大豆、米、シイタケ、発酵食品

 『腸をダマせば身体はよくなる』 第2章 より 辨野義己:著 SBクリエイティブ:刊

 オリゴ糖は、「食物繊維」「ヨーグルト」とともに摂ると、さらに効果が期待できます。

 辨野先生は、これらを合わせて、“腸内環境改善三兄弟”と呼びます。
 普段の食事から意識して摂りたいですね。

大腸がんのリスクを高める「動物性脂肪」

 最近、「肉を食べると、腸内環境が悪くなり、体に悪い」という専門家も多いです。
 悪玉菌は、肉に含まれるたんぱく質や脂肪をエサにして有害な物質をつくりだすからです。

 問題なのは、「肉の摂り過ぎで動物性脂肪の過剰摂取になる場合」です。

 動物性脂肪を摂ると、胆汁が分泌され、脂肪をグリセリンと脂肪酸に分解して栄養分にします。ところが、摂り過ぎると胆汁(一次胆汁酸)が過剰に分泌されるのです。十二指腸に排泄(はいせつ)された胆汁の大部分は回腸の末端から再吸収されて肝臓に戻りますが、胆汁が過剰に分泌されると、その一部が大腸に流れてしまうのです。この胆汁を、特定の悪玉菌が、発がんを促進する物質、二次胆汁酸に変えてしまうのが問題なのです。
 動物性脂肪の摂取量が多い地域ほど、大腸がんだけでなく、乳がんのリスクも高まる、という研究結果もあります。
 また、胃や小腸で消化しきれなかった動物性脂肪は大腸に送り込まれます。こうなると、悪玉菌が、優勢になるため免疫力を弱める、とも考えられています。
 ただし、サバやイワシ、ニシンなどの青魚に含まれる動物性脂肪は、糖尿病や高血圧のリスクを下げる効果がある、といわれています。これは身体によい働きをするEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの不飽和脂肪酸が含まれているからです。
 これらの不飽和脂肪酸は、イクラやタラコ、カズノコなどの魚卵にも多く含まれています。ところが、魚卵には痛風を悪化させるプリン体や、動脈硬化を招くコレステロールが多く含まれているため摂らないほうがいい、という人も少なくありません。
 たしかにそうなのですが、プリン体はそれほど多く含まれているわけではありません。コレステロールは善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールです。過剰に摂り過ぎない限り、むしろ身体にとってはいいのです。

  『腸をダマせば身体はよくなる』 第3章 より  辨野義己:著  SBクリエイティブ:刊

 辨野先生は、動物性脂肪の悪影響を軽減するには、肉:1に対し、野菜:3の割合で摂るといいと述べています。
 肉が好きだからといって、肉ばかり食べていては、体に悪いということ。
 普段から、野菜中心のバランスのよい食事を心がけたいものです。

断食や腸管洗浄では、腸内細菌のバランスは改善しない

 便秘も、腸内環境の悪化が原因で引き起こされるものです。
 最近では、宿便を取るための民間療法に断食や腸管洗浄をする人も多いです。

 辨野先生のような腸内細菌の研究者からすれば、断食や腸管洗浄をすることに意味があるとは思えないとのこと。

 腸内をきれいにするということは、善玉菌が多く、悪玉菌が少ない状態にすることです。そのため、断食や腸管洗浄することで腸がリセットされ、腸内細菌のバランスがよくなるのでは、と考える人がいます。ところが、断食や腸管洗浄をしても、悪玉菌だけを排除できるわけではありません。

 以前、私は腸管洗浄をするために、経口腸管洗浄剤を30分以内に4リットル飲んだことがあります。その後、30分ごとに排便したものを全部サンプリングしたのですが、すべて透明度の強い水様便でした。この水様便のなかには1000〜1億個の腸内細菌がいました。
 腸管洗浄をすると、一時的に腸内細菌が減りますが、食事をすれば水様便は有形便に戻ります。同時に腸内細菌も増殖し、元の状態の腸内細菌のバランスに戻ります。つまり、腸管洗浄で腸内環境を改善することはできないのです。
 断食で胃腸を休め、腸内環境を改善する、という考えがありますが、腸は自律神経で動く臓器です。つまり、断食しても腸が休まることはないのです。腸内環境をよくするには、むしろ積極的に腸を動かして揚げることが大切なのです。
 また、断食によって、食べかすを腸に送り込まないようにすると、腸内環境は悪化します。腸のなかの食べかすがなくなると、腸内細菌は腸粘膜を分解し、壊してしまうこともあります。プチ断食などのダイエットがよくないのは、このためなのです。断食によるストレスも、腸内細菌を悪化させる原因となってしまいます。

 『腸をダマせば身体はよくなる』 第4章 より 辨野義己:著 SBクリエイティブ:刊

「腸内をきれいにするということは、善玉菌が多く、悪玉菌が少ない状態にすること」です。
 腸の中を洗浄したり、断食で腸に送り込む食べ物の量を減らしても、腸内細菌のバランスは変わらないどころか、悪化することもあるのですね。まさに、

「腸内環境の改善は一日にしてならず」

 日々の食習慣や生活のリズムを変えていくことが、一番の早道だということです。

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 腸内環境の健康に与える影響の大きさが社会に認知され始めたのは、ここ数年のこと。
 今では多くの人が、腸内環境をよくするための方法について語ったり、本にしたりしています。

 辨野先生も、今や腸内細菌の研究は医療研究のトップランナーで、21世紀は腸内細菌の時代、といっても過言ではないとおっしゃっています。

 知っているつもりで、まだまだ謎だらけの「腸」の世界。
 これから、さらに私たちの健康に役立つ新事実が次々と解明されていくのが楽しみですね。

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