【書評】『自分を「ごきげん」にする方法』(辻秀一)
お薦めの本の紹介です。
辻秀一先生の『自分を「ごきげん」にする方法』です。
辻秀一(つじ・しゅういち)先生は、日本体育協会公認、日本医師会公認のスポーツドクターです。
応用スポーツ心理学を基本としたメンタルトレーニングによるパフォーマンス向上をご専門とし、年間200回以上のセミナーや講演をこなされるなど、多方面でご活躍中です。
幸せな人生は「心のあり方」で決まる
スポーツ選手は、身体のトレーニングと同じくらい「心を整える」ことに注意を払います。
その理由は、心のあり方が自分の行動に大きな影響を与えるということを、体感としてよく知っているから
です。
「心のあり方」が大事なのは、スポーツ選手に限ったことではなく、すべての人に当てはまります。
心が行動に影響を与える。
ならば、よりよく生きるためには、「よい心の状態」でいることが大切です。
辻先生は、よい心の状態を総称して、「ごきげん」呼びます。
そして、いつでもごきげんでいる生き方を、「ごきげん道」と名づけています。
本書は、スポーツ心理学に基づき、“自分を「ごきげん」にする方法”についてまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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自分のきげんは自分でとる
「ごきげん道」でいちばん大事なこと。
それは、人の態度に振り回される損な生き方をやめること。
つまり、「自分のきげんは自分でとる」ということです。
辻先生は、「ごきげん道の達人」として、剣道の世界チャンピオンの栄花直輝さんを紹介しています。
栄花さんは、優勝候補ながら、日本代表を決める試合でしばしば敗退していました。
なぜ、大事な試合で負けてしまうのか・・・。
自分を見つめ直し、目先の結果ばかりを気にして、外側で起こる出来事に自分のきげんを持っていかれてしまっていた
ということに気づきます。
栄花さんは、自分の心を磨くために、毎朝誰よりも早く道場に来て、ひとり黙々と雑巾がけを始めます。
やがて、栄花さんは日本代表になり、最終的に世界チャンピオンにまで上りつめました。
なぜ彼は世界一になれたのでしょう。
早起きしたからでしょうか?雑巾がけをしたからでしょうか?
そうではありません。早起きして、雑巾がけをしながら、自分の心を見つめたからです。
「あいつに勝ちたい」とか「なんであいつは試合に出て、自分は控えなのか」とか「相手はどんな作戦で来るのか」とか、そんな外側の出来事に自分の心を持っていかれるのではなく、ゆらがず、とらわれず、いつも自分が最高のパフォーマンスが出せるように、きげんのいい心の状態を自分でつくる努力をしたのです。
日本代表を決める大事な日、栄花さんはごきげんな心で、試合に臨むことができました。前年、自分を倒した相手と戦い、見事に会心の一撃で相手を倒します。
外の世界にゆらがず、とらわれず、きげんがいい状態を自分自身でつくりだしたことによって、自然に体が動き「結果」がついてきたのだと思います。『自分を「ごきげん」にする方法』 序章 より 辻秀一:著 サンマーク出版:刊
「ごきげん道」は、歩けば歩くほど、自分が磨かれます。
そして、人間力がついてきて、ごきげんになっていくもの。
気づけば、「結果」や「健康」もおまけとしてついてきます。
自分のきげんは、自分でとる。
周囲の出来事に惑わされない。
つねに自分の心が「ごきげんな」状態であるように、目を配っておきたいですね。
気づくだけで、心は変わる
脳の働きのひとつに、「認知」があります。
認知とは、自分の周囲の状況や出来事に意味づけし、判断して内容を決定し、行動をうながす働き
です。
認知の脳は、危険とか恐怖を察知しやすいようにできています。
使えば使うほど、マイナス面やウィークポイントが見えてきます。
心は、認知の脳の影響を受けて、つねに「不きげん」に傾きやすい状態にあります。
認知の働きにより、脳は勝手に意味づけをします。
辻先生は、意味づけに気づくことさえできれば、ごきげんを持っていかれてしまうのを防ぐことができる
と指摘します。
「朝早くていやだな」と思っても、「早くていやな朝」などというのはそもそもなくて、すべて自分が意味づけしているのだということに気づくのです。
どうして気づくことがこんなに大切かというと、気づくだけで、“接着”された意味が少しはがれるからです。これが「気づき」の効能です。
そうすると、いやな気分がちょっとだけごきげんのほうに傾きます。心の針を、ほんの少しだけ「ごきげん」のほうに動かせるのです。持っていかれた心が自由になる感じです。
それを積み重ねていくことで、外側の出来事に翻弄(ほんろう)されて、すぐ不きげんになる状態からうまく抜け出せるようになってきます。
ですから、「ごきげん道」の基本は、本来は意味のついていないものに、意味づけしている自分に気づくことなのです。気づくだけで心はずいぶん認知に引っ張られなくなります。
こんなふうに、じつは気づきの効能はあなどれないのです。
それをぜひ知って、体感してほしいと思います。『自分を「ごきげん」にする方法』 第1章 より 辻秀一:著 サンマーク出版:刊
周囲の状況や人間、それ自体が、心の状態を決めているわけではありません。
それらに意味づけしている自分自身、つまり、認知の働きが、心の状態を左右します。
「脳には勝手に意味づけしてしまうクセがある」
そう気づくことが、「ごきげん」に生きる、最初のステップです。
「感情のリストアップ」を習慣化しよう
「ごきげん道」を歩いていく。
そのためには、自分の「心の状態そのもの」に気づくことが大切です。
辻先生は、「感情に気づく力」を高める練習として、以下のような方法を紹介しています。
自分の気分や感情、気持ちを、言葉にして片っぱしからノートに書き出していくのです。さきほども言いましたが、「眠い」とか「おなかがすいた」など体の状態を書いてはダメです。「お金がほしい」や「仕事をやめたい」も願望や考えなのでダメ。
感情に気づく練習なので、いい答えとか悪い答えとはありません。とにかく今の自分の感情を言葉化していく。
この練習で大事なのは、感情そのものには、プラスやマイナスなどの意味をつけないこと。感情に意味はありません。どんな感情も“ただそこにある心の状態”です。機械的にどんどん書き出していくのがコツです。
「イライラ」は、イライラであって、そこに「イライラは不快」「イライラはやめなければいけない」とマイナスの意味づけをし、その意味づけで行動を考えてしまうのが認知です。
この練習で、感情に意味をつけたがる認知の脳の働きに気づいてほしいのです。そして、感情をよく観察して、いろいろな種類や幅があることを知ってください。「こうならなければいけない」という枠がなくなると、感情はよりごきげんのほうに傾けやすくなります。さらに、感情に気づいただけでごきげんになっている自分にも気づくはずです。『自分を「ごきげん」にする方法』 第2章 より 辻秀一:著 サンマーク出版:刊
感情は「ただそこにある、心の状態」です。
感情自体に、いいも、悪いもありません。
感情に意味づけする「認知の働き」に気づく。
そのために、ぜひ、試してみたい方法ですね。
「自分が主役の人生」を生きる
辻先生は、どんなことでも「自分で決める」と考えれば、人間関係はずっと楽でシンプルになると述べています。
人生の主役は自分。自分の人生なんだから、どんな選択をしたっていい。これが真実の世界
だとして、自分で決めることの重要性を強調しています。
「自分で決める」というのは、自分を大事にすると同時に、まわりの人を大事にしましょうということなのです。それこそが「ごきげん道」の自分と他者に対する根本的な考え方です。
「自分を大事に」と言うと、必ず「それは単なる自己中じゃないですか」と反論する人がいます。自己中は自分のためにしか行動しないことを言います。でもほんとうに自分を大事にしていて、きげんがよければ、人のためにいろいろなことがやれるようになるはずです。それが人間だからです。
自分自身の人生を自分が主役になって生きることは、人のためでもあるのです。「ごきげん道」では、自分のためこそが、人のためになるのです。
それなのに、「自分で決める」ということをみんなが不安に思うのはなぜでしょう。みんな、自分が人生の主役になることに恐怖を感じています。ずっと誰かに決めてもらう人生だったからです。ちょうど、ずっと脇役だった女優さんが、急に主役に抜擢(ばってき)されて困っているのと似ているかもしれません。
主役を演じるということには、練習が必要なのです。ごきげん道は、自分が主役の人生を歩む助けにもなります。『自分を「ごきげん」にする方法』 第3章 より 辻秀一:著 サンマーク出版:刊
人生の主役は、自分以外にいません。
それでも、周りの人の意見に左右されるのは、認知の働きが強すぎるのでしょう。
自分で決めたことは、失敗しても後悔は少ないし、結果に納得できるもの。
「ごきげん道」は、本当の自分の感情に忠実な生き方です。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
世の中には今、「不きげん」な人があふれています。
しかし、辻先生は、それでも人間は本来ごきげんで楽しい生きもの
だとおっしゃっています。
「ごきげん」は、人間に生まれながらに、遺伝子のように組み込まれています。
自分のきげんは、自分でとることができる。
自分の心のあり方は、自分次第。
そういわれると、もう言い訳はできませんね。
自分自身と向き合って「ごきげん道」を実践し、幸せな人生を歩んでいきたいものです。
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