本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『整腸力』(辨野義己)

 お薦めの本の紹介です。
 辨野義己先生の『整腸力』です。

 辨野義己(べんの・よしみ)先生は、腸内環境学、微生物分類学がご専門の農学博士です。
「うんち博士」として、テレビや雑誌などでもご活躍されています。

腸内細菌の詰まった便は、体からの“お便り”

 40年以上にわたって人のうんちを集め、そのなかの腸内細菌を研究対象にしてきた辨野先生は、腸内細菌の情報がたっぷり詰まった便は、まさに体からの“お便り”なのだと強調しています。

 歳を重ねると人の体が老化するように、腸も加齢とともに老化し、腸内環境が悪化していきます。 
 辨野先生は、とくに50歳を過ぎたころからさまざまな病気に罹(かか)りやすくなるのは、腸内環境が悪化することで、腸内細菌の構成パターンが大きく変わるからだと指摘しています。

 年齢に負けずに良い腸内環境を保つには、以下の6つがとても大事です。

  1. プロバイオティクスの摂取
  2. バランスのいい食事
  3. 食物繊維の摂取
  4. 規則正しい生活
  5. 水分を多く摂ること
  6. 運動と睡眠

 本書は、腸を“健康の発信源”に変える「排出する力」を蓄える具体的な方法を解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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なぜ肉ばかり食べるとよくないのか?

 現在、日本人の死因のトップは「がん」です。
 その中でも、「大腸がん」で亡くなる人は急激に増え続け、1960年から2010年までの50年間で人口10万人に対する死亡率をみると、男性は10万人中5人から40人と約8倍、女性は10万人中5人から30人で約6倍に急増しています。

 日本人に大腸がんが増えている大きな原因のひとつが、肉類、加工肉の消費量の増加です。
 食生活でもっとも変化したのが肉類の消費量で、この50年間で6倍近くに増加しました。

 辨野先生は、その理由を以下のように説明しています。

 大きな原因はタンパク質ではなく脂肪、つまり動物性脂肪にあります。
 動物性脂肪を摂ると、人体中では栄養分として脂肪酸に分解するために胆汁(たんじゅう)が分泌されます。胆汁が脂肪をグリセリンと脂肪酸に分解して、栄養分にするのです。
 ところが、肉類を摂りすぎると、胆汁(一次胆汁酸)が過剰に分泌されます。小腸(十二指腸)に排泄(はいせつ)された胆汁の大部分は小腸(回腸)末端から再吸収され肝臓に戻りますが、その一部は大腸に流れていってしまいます。
 発がんは発がん物質と発がん促進物質の相互作用によって起こります。
 この胆汁を特定の腸内細菌が発がんを促進する物質、二次胆汁酸に変えてしまうのです。
 これが動物性脂肪を過剰に摂取すると、大腸がんを発症しやすくなる原因となります。
(中略)
 動物性脂肪を摂りすぎると、ほかにも悪玉コレステロールを増やすなど、さまざまな悪影響を人体に与えますが、複合的に健康を害する結果をもたらすことになるのです。
 また、胃や小腸で消化しきれない動物性脂肪が大腸にいき、悪玉菌のエサになって腸内環境を悪玉菌優勢にして免疫力を弱めるという悪循環を生んでいるとも考えられます。
 一方、同じ動物性脂肪でもサバやイワシ、ニシンなどの青魚に含まれるものに糖尿病や高血圧のリスクを下げる効果があるとされます。これはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)など、体によい働きをする不飽和脂肪酸が入っているからです。

  『整腸力』 第一章 より 辨野義己:著  かんき出版:刊

 大腸がんを防ぐには「肉より魚」。
 普段の生活から気をつけたいところですね。

 辨野先生は、大腸がんを引き起こすその他の原因として、以下のことを挙げています。

  • 野菜の摂取不足
  • 運動不足
  • アルコールの摂取過多

快便こそ「健康に生きること」の基本

 便秘は腸内環境悪化させて、整腸力を落とす最大の原因です。
 悪玉菌を増やして大腸がんを引き起こすなど、確実に健康に悪影響を与えます。
 辨野先生は、便秘の大きな原因になるのは、偏った食事、運動不足、ストレス、ダイエットだと指摘しています。

 よく、“起き抜けのコップ一杯の水が快便の秘訣”といわれますね。
 これには理由があります。

 眠っている間に空っぽになった胃に水分や食べ物が入ってくると伸び広がり、その刺激によって横行結腸(けっちょう)、下行結腸、S状結腸にぜん動運動が起こります。
 すると、結腸にたまっていた食べ物の残りかすが一気に直腸へ送られて、便意を催(もよお)すのです。
 具体的なメカニズムでいうと、胃に何かものが入ると、ガストリンというホルモンが分泌されて、小腸と大腸の境界部にある回盲弁という弁膜が開き、小腸から大腸へ食べ物の残りかすが運ばれていくのです。
 胃・大腸反射と呼ばれる神経反射の一つで、この動きで便意を感じます。
 しかし、ここで排便を我慢してしまうと、習慣性の便秘を起こしやすくなります。
 起床してきちんと朝食を摂り、排便のための十分な時間をとってから出勤するという習慣が大事だといわれるのはこのためです。
 また、神経質な人や環境が変わることなどでストレスを感じやすい人では、胃・大腸反射が起こりにくくなったり、毎食後に便意を催したり、下痢になりやすくなったりします。
 胃・大腸反射をコントロールしているのは、自律神経の副交感神経です。副交感神経はリラックスしているときに働くため、緊張や興奮をしやすい昼間よりも、寝起きのリラックスしている時間が排便には向いているのです。
 一日一回の排便が基本ですが、私の場合、朝7時半ごろと午後4~5時ごろ、毎日二回うんちをしています。観察してみると、朝は前日の朝食と昼食、夕方は前日の夕食がもとになっているようです。
 快便の秘訣としては、便意を催したら、そのチャンスを逃さないことです。
 腸管運動の働きとして 大きな便意は一日二~三回しか起こりません。
 ただ、便意を催しやすい朝に限って慌ただしかったり、寝坊をしたりすると、貴重なトイレタイムのチャンスを逃してしまいます。
 家族にトイレを使われていたりして、我慢しているうちに便意は収まってしまいます。外に出かけたりすると、便意を感じても排便はなかなかままならないので、家で毎朝、排便をする習慣をつけたほうがいいでしょう。
 たとえ排便がなくても、規則正しい生活のなかで毎朝トイレに行き、便座に座ることが大事です。

 『整腸力』 第二章 より 辨野義己:著 かんき出版:刊

 毎朝、忙しいから便座に座らない。
 便意を我慢しているうちに、便意が起こらなくなる。
 便意が起こらないから、便座に座らない。

 そんな悪循環が便秘を悪化させます。

 ストレスを溜め込まないこと。
 毎朝トイレに行き、便座に座ること。

 健康維持のためには、欠かせない大切な習慣ですね。

「生きたまま腸まで届く」が意味すること

 最近、よく目にするようになった言葉に「プロバイオティクス」があります。
 プロバイオティクスとは、生きたまま腸に届く体によい働きをする微生物やそれを含む製品のこと。
 具体的には、乳酸菌やビフィズス菌など善玉菌が入ったヨーグルトや乳酸菌飲料、ぬか漬け、納豆、味噌などの発酵食品です。

 辨野先生は、腸内細菌は腸のなかで定住しているものですから、プロバイオティクスを摂ってもその微生物がそのまま腸内に定住するわけではないと指摘しています。

 それでは、なぜ生きた微生物が整腸効果など健康にいい働きをするのでしょうか?
 まず考えられるのは、前述のように生きた乳酸菌、ビフィズス菌が代謝を行い、乳酸、酢酸を産生することです。
 乳酸、酢酸は腸壁に刺激を与え、ぜん動運動を活発にするので、定期的な排便を促すことになります。すると便秘が解消され、善玉菌が優勢になります。
 さらに、乳酸、酢酸により腸内が酸性に傾くことでアルカリ性を好む悪玉菌を少なくする効果も期待できます。
 また、プロバイオティクスで摂った生きた微生物は腸に定着できませんが、何日かは腸のなかにいます。それだけでももともと常在している乳酸菌、ビフィズス菌の菌数は増えますし、その分、多くの乳酸、酢酸を産生してくれることになるのです。
(中略)
 プロバイオティクスは便秘や下痢などの便性の改善や免疫の活性化だけでなく、腸内バランスを整えて善玉菌を優勢にし、悪玉菌を減少させることによって有害物質を産生することを抑えるため、さまざまな効果があるとされます。
 たとえば、花粉症などアレルギー疾患の抑制をはじめ、抗がん、血中コレステロール低下、血圧降下、内臓脂肪の減少のほか、胃がんの原因になるピロリ菌の増殖阻止、炎症性腸炎の緩和、腎臓結石形成阻止、病原性大腸菌などの有害菌の腸壁への付着防止・・・・と、多岐にわたります。
 薬品や抗生物質のような劇的な効果はさほど望めないのですが、病原性大腸菌などの有害菌が腸に付着することで生じるさまざまな病変への予防効果は大きいといえます。

 『整腸力』 第三章 より 辨野義己:著 かんき出版:刊

 プロバイオティクスの効果は生きた微生物によるものだけではないとのこと。

 辨野先生は、乳酸菌やビフィズス菌は生きている、いないにかかわらず、腸内に細菌が運ばれると、菌体成分(その菌を構成している成分)が免疫細胞を刺激して免疫が活性化し、体全体の恒常性を保とうとして免疫機能が高まることが期待できると述べています。

 腸内環境の改善のため、プロバイオティクスを毎日摂る習慣をつくりたいですね。

効果的なヨーグルトの選び方

 腸内環境を語るうえで欠かせないのが、そこに生息している「腸内細菌」です。
 腸内細菌のなかで機能がわかっているものは三割程度。
 そのうち、二割が善玉菌、一割が悪玉菌、残りの七割が日和見菌です。

 辨野先生は、できる限り悪玉菌を少なくし、体にいい働きをする善玉菌を優勢にして、日和見菌をいかに味方につける暮らし方をするかが、健康に生きるための一番大切なポイントになると指摘します。

 食事や生活習慣、ビフィズス菌の摂取などで排便をしっかりする習慣をつけることで、日和見菌を味方につけ、腸内環境をコントロールできるとのこと。

 ビフィズス菌の摂取といえば、「ヨーグルト」です。
 ヨーグルトの選び方には、何かコツはあるのでしょうか。

 日本で販売されているヨーグルトは7500種類以上あるそうです。
 使われている善玉菌はさまざまですが、私たちの腸内細菌のパターンは人それぞれまったく違います。日本の人口は約1億3000万人ですが、腸内細菌のパターンもそれだけあると言っていいのです。そして、腸内細菌のパターンが違うと、ヨーグルトなどで摂る善玉菌の働きも違ってきます。
 腸内環境に合った善玉菌は人それぞれです。
 ですから、同じヨーグルトを摂るにも、自分の腸内環境に合った善玉菌が使われているものを選ばないと、あまり効果がありません。
 ヨーグルトのなかには寒天培地で乳酸菌が1ミリリットル当たり1000万個以上生きているように、厚生労働省の乳等省令で定めています。まずは一週間、毎日100~300gのヨーグルトを食べてみてください。いろいろな種類のヨーグルトを食べてみることをおすすめします。
 その結果、便通がよくなったり、うんちの性質が変わったりしたものが、自分の腸内環境に合った善玉菌が使われているヨーグルトです。
 なお、トクホは商品ごとに指定されますので、たとえば同じ成分のものでも含有量が違うだけで指定を受けているものといないものがあります。これはトクホ指定には手間と費用がかかるからで、同じ効果が期待できます。

 『整腸力』 第四章 より 辨野義己:著 かんき出版:刊

 一口に「ヨーグルト」といっても、使われている善玉菌によって千差万別なのですね。
 いろいろ試してみて、自分に合ったヨーグルトを毎日食べるように心がけましょう。

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 多くの人は、食べることには大きな関心を寄せます。
 しかし、それを排出することにはあまり気に留めません。
「とにかく、出せばいい」くらいにしか思っていない人が大半なのではないでしょうか。

 昔から「食べることは生きること」はよく理解されています。
 辨野先生は、むしろ「出すことこそが生きること」だと強調されています。

 辨野先生がおっしゃるように、「きちんと排便することが生活の基本」です。
 生活が乱れている方や体調に不安を感じる方は、本書を読み、まずは腸内環境を整えて「しっかり出す」ことから生活習慣の改善を始めてみることをお勧めします。

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