本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『一流の男は「気働き」で決める』(高野登)

 お薦めの本の紹介です。
 高野登さんの『一流の男は「気働き」で決める』です。

 高野登(たかの・のぼる)さんは、米国にて数々の一流ホテルでマネジメントを経験され、90年にリッツ・カールトンに入社されています。
 リッツ・カールトンでは、サンフランシスコやシドニーなどの開業のサポートや日本支社の立ち上げを手がけられます。
 09年にリッツ・カールトンを退社、現在は、“ホスピタリティの伝道師”としてセミナーや講演、研修などで全国を飛び回られるなど、精力的にご活躍されています。

今の時代に求められる「気働き」とは?

「気づかい」と「気配り」。
 このふたつは、どちらも豊かな人間関係を築くうえで欠かせない、大切なものです。

 大きく変化する現代の社会においては、さらにもうひとつ、必要とされている要素があります。
 それが、「気働き」です。

 高野さんは、細やかな「気づかい」と骨太な「気働き」。この両方を身につけてこそ、「できる人材」で終わることなく、「胆力の備わった人物」になれると指摘しています。
 
 高野さんは、「気働き」という言葉を、全方位的に心のアンテナが働く様子を指す。厳しさ、しなり強さ、やさしさ、ユーモアなど、その時々に応じて臨機応変に周りの心に寄り添い包み込む、大人が持つべき感性のことだと定義しています。

「気働き」には、気によって物事を大きく動かし働かせようというダイナミズムを感じます。

 本書は、高野さんがこれまで出会った「気働きな人たち」のエピソードを交えながら、気働きを身につけるためのヒントをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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自分の「器」と「間」を知ること

 高野さんは、仕事とどう向き合うかを考えたとき、「がんばれば必ず何でも達成できる」と思わないことだと述べています。

 みんながスーパースターになれるわけではありません。
 自分の「器」と謙虚に向き合い、どのステージで戦えるかを考えてみることも大切です。

 私が言いたいのは、自分の「器」を知り、等身大の自分の仕事の仕方を見極めることもまた、気働きではないかということです。

 そのうえで自分の人生のペース配分は、自分できちんと決めたほうがいいでしょう。
 ペースを配分するわけですから、そこには必ず「間」が必要です。音楽の演奏者が大事にする「間」は余韻です。人生における「間」は、遊び心といえるかもしれません。遊び心とは、奥ゆかしいゆとり、余裕のことです。
 ちなみに、この「間」という時間を表す感性は、日本人が大事にしてきたものです。たとえば、「間」を使った表現には次のようなバリエーションがあります。

 間が抜ける
 間が悪い
 間に合う
 間を持たす

 仕事は大事、でも自分はもっと大事。自分を大事にしてこその仕事である。そう考えて、自分にとってちょうどいい「間」のある仕事観を身につけることも、プロとしての気働きと言えるのではないでしょうか。

 『一流の男は「気働き」で決める』 第1章 より 高野登:著 かんき出版:刊

 人生はマラソンのようなものです。
 最初から最後まで、つねに全力疾走をしていては、ゴールまでたどり着けません。

 余力を残してピッチを刻みながら、ここぞという勝負どころではアクセルを全開にする。
 そんなメリハリが人生をより豊かなものにするのでしょう。
 そのためにも自分の「器」、つまり100%の自分の実力を把握することが重要だということですね。

信頼されることで主体性が生まれる

 リッツ・カールトンでの働き方は、信頼に基づく真摯(しんし)で誠実な対応が基本となります。
 従業員同士が信頼しあい、主体性を発揮できる環境をつくることが欠かせません。

 主体性とは、事態を自分で判断し、洞察し、決断する感性のことです。

 高野さんは、従業員にこの感性を身につけてもらうには、信頼をエンパワーメントに変えていく仕組みが必要になると述べています。

 エンパワーメントはよく権限移譲と訳されますが、その根底にはトップの従業員に対する100%の信頼がなくては機能しません。リッツ・カールトンがスタッフに与える一人一日2000ドルまでの決済権は、相互に尊厳と信頼がなければ成り立たないのです。
 すなわち、トップが社員を信頼し切ることができるかどうかがカギとなるのです。
 エンパワーメントがもたらす効果は、論理的にも証明されています。一つには、自分は信頼されていると感じている社員は、そう感じていない社員に比べて、成長が著しいということです。信頼されることで主体性が生まれる。そこから仕事に対するやりがいが生まれる、ということでしょう。
 次に、たとえば苦情の対応にかかるコストを見てみると、迅速に対応することでトータルコストを大きく削減できるというメリットもあります。
 苦情の対応は、時間とともにコストが膨らんでいきます。対応にかかる時間は、そのままリーダーやスタッフの労働時間だからです。最初の段階でケーキやコーヒーをお出ししたら解決できたものが、話をこじらせてトップが直接対処しなければならなくなった場合、無料で宿泊を提供する、などというケースが実際にあります。
 エンパワーメントにより、現場の従業員はお客様と良い人間関係を作っていると信じる、そして効果を信じて任せる、ということが重要なのです。
 スタッフの心に寄り添う繊細さ、論理的な思考のバランスを保ちながら、勇気ある決断を下す。これもまた一流のプロが示すべき気働きではないでしょうか。

 『一流の男は「気働き」で決める』 第2章 より 高野登:著 かんき出版:刊

 社員が主体性を発揮する環境を整える第一歩は、トップが社員を信頼し切ること。

 たいていの問題は後になればなるほど、こじれてややこしくなっていくものです。
 現場での早めの対応が肝心ですね。

「慣れ」が感性を鈍麻させる

 一流のビジネスパーソンを目指すには、『「感性」を鍛えること』が必要です。

 高野さんは、感性を鍛えるための方法として、知らない場所に身を置くことを勧めています。

(前略)慣れない場所では、自分で情報を取りに行く必要があります。レーダーがオンになるのです。そして、入ってくるさまざまな情報を受け取らなくてはなりません。アンテナが大きく開く瞬間です。
 知らないホテルや宿に泊まると、そこの快適さや利便性、改良点などが見えてきます。人は自分のことはともかく、人の欠点や特徴はすぐに気がつくものです。そういう視点で自分の目を鍛えることも大事なのです。
 こうしたすべての気づきが、「眠っている気を働かせて感性を豊かにする」ためにとても大きな効果があるのです。
 おそらく旅行から戻って自分の仕事場に足を踏み入れたときには、すぐに三つ四つと改善すべき点が見えてきます。新鮮な視点と感性のスイッチがオンになっているからです。あとは、どうやって変えたらいいのかを仲間と考えればいいのです。
 自分の職場であるホテルの絨毯(じゅうたん)にシミがある。部署の入り口にあるコピー機が汚れている。ロビーの隅に荷物カートが置きっぱなしになっている。レストランの壁際に、下げてきたお皿が積んである。エレベーター内の壁にひっかきキズがある・・・・・。
 これらが「いつも見慣れた景色」になってしまうと、その不自然さに気がつかなくなります。

 『一流の男は「気働き」で決める』 第3章 より 高野登:著 かんき出版:刊

 気働きを高めるために、大きな障害となるのが「慣れ」です。

 いつもと同じ場所で、いつもと同じ人と、いつもと同じ仕事をする。
 そんな毎日の繰り返しが、心のアンテナの感度を鈍らせます。

 これまで行ったことがない場所に行き、会ったことがない人に会う。
 日頃から、そのような機会を作るよう意識して心掛けたいですね。

「澄んだ空気」を呼びこむ効果的な方法

 会社は生身の人間の集まりです。

 その場の空気感は、その場にいる人が作り出すもの。
 いつも澄んだきれいな空気ばかりが流れるというわけではありません。
 時として険悪な空気や重苦しい空気などが流れることもあります。

 高野さんは、そんなときこそ、チームメイトや組織を活性化させ暗いムードを一転させる、リーダーの気働きが必要だと述べています。

「ここの社員は、収入は満足していても、幸せとは思えない顔で働いている」
「ここでは、給料など多少の不満があっても、幸せそうに働いている」

 その違いをどこで感じるかというと、やはりそれは、あいさつと笑顔の質なのです。幸せだから気持ちのよいあいさつと笑顔が出てくる。これは事実だと思います。
 しかし、あいさつと笑顔が、幸せな気持ちを生み出してくれることもまた真実なのです。「幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せになれる」。これは働き方においてもそのまま当てはまるのではないでしょうか。
 そうであるなら、リーダーがなすべき気働きは明白です。あいさつと感謝を習慣にするということです。

「おはようございます」
「有難うございます」
「いつも助かるよ」
「それはいいね」
「ずいぶんと成長したね」

 淀んだ空気を一掃して、澄んだ空気を呼びこむこんな言葉を、リーダーが自ら使い始めることで、周りにやる気が充満していきます。その結果、職場に「お互いを認めあう」という場の空気感、すなわち風土が根づいていくのだと思います。

 『一流の男は「気働き」で決める』 第4章 より 高野登:著 かんき出版:刊

 人の作り出す空気は、周囲に敏感に伝わるもの。
 ギスギスした場の雰囲気を変えるには、明るいあいさつと感謝の言葉が重要です。

 それらを率先してやり、淀(よど)んだ空気を一掃するのがリーダーの役割です。
 空気をあえて読まずに打ち破る、そんな勇気が求められますね。

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「気」というものは、目には見ることはできませんが、確実に存在します。

 気を利かす、気を入れる、気を吐く。
 「気」の働きを示す言葉はたくさんありますね。

 本物のリーダーは、近くにいるだけでそれとわかる圧倒的な存在感があります。
 その人の醸し出している空気だけで、相手を動かしてしまうような説得力。
 それも「気働き」の力のなせる業でしょう。

 私たちも、日々感性を磨いて、周りから頼られる「気働きな人」を目指したいですね。

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