【書評】『人生確率論のススメ』(勝間和代)
お薦めの本の紹介です。
勝間和代さんの『人生確率論のススメ』です。
勝間和代(かつま・かずよ)さん(@kazuyo_k)は、経済評論家です。
ワークライフバランスや、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野でご活躍中で、若者を中心に高い支持を受けておられます。
人生は「運」ではなく「確率」である!
世の中では、よく「運がいい」とか「運が悪い」といいます。
実際に、人智を超えた力が働いたとしか思えないできごとも多く起こっています。
勝間さんは、こうした「運」は、「特定条件の下での確率のばらつき」であり、自分が有利になる条件にすべく適切な努力を適切なタイミングで行っていけば、非常に高い確率で運を支配できる
と述べています。
心理学者リチャード・ワイズマン博士の研究によると、次の四つの行動・思考習慣がある人は、統計上優位に運がよく、そのような行動習慣をつけることで、後天的にも運が良くなることが確かめられています。
- チャンスを最大限に広げる
- 虫の知らせを聞き逃さない
- 幸運を期待する
- 不運を幸運に変える
つまり、「条件を理解すること」と「行動や思考を選択すること」の繰り返しで、ある程度結果のばらつきを「より良い結果が出る」ように変化させることができる
ということ。
本書は、「運」とは「確率」であり、努力次第で高められることを論理的に解説し、そのための具体的な方法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「ランダム」が、見せかけの「運」をつくっている
株価、宝くじ、電車や飛行機の事故、それに天気など。
多くの人が、「運」だと思っているそれらのほとんどは、「ランダム」という事象です。
ランダムとは、偶発でなんら規則性がないこと。
私たちは、これらの事象に対してなんの影響も与えることはできません。
起こる確率はいつも同じであり、遭遇する確率もすべての人に同じだけ与えられています。
私は、運の正体は基本的にはばらつきだと思っています。
良いことも悪いことも、晴れも雨も、どちらも起こります。良いことだけが起こる人、悪いことだけが起こるという人はいません。短いスパンで見ると、良いことばかり、悪いことばかりという人はいますが、一生の間に平準化してしまうと、みんな同じように起きているのです。
電車に乗るときのことを考えると、イメージしやすいでしょう。電車が来るまでにホームで5分待つときもあれば、ホームについたらすぐに電車が来るときもありますよね。毎回5分待たされることもなければ、毎回すぐに乗れるということもありません。
運というのは、それと同じようなものです。
ただ、運がいいと思っている人は毎回待たない気がしていて、運が悪いと思っている人は毎回待たされているような気がするだけ。実際は、絶対に同じです。
「信号で止まる・止まらない」「踏切で止まる・止まらない」もよく言われますが、これも同じです。どちらをより強く記憶しているかというだけの問題なのです。『人生確率論のススメ』 第1章 より 勝間和代:著 扶桑社:刊
3日連続で電車がすぐにきたから、「自分は運がいい」と考えてしまうのは早合点です。
もっと長い期間で統計を取れば、だいたい平均的な数値に落ち着くでしょう。
『真実のほとんどは「ランダム」』
冷静に考えれば、当たり前のことですが、ついつい忘れてしまいがちですね。
「全体のなかの自分」という構図を持とう!
運をつかむ確率を上げるためのキーワードのひとつが、「社交性」です。
その理由は、人付き合いの輪が広がると、それだけで目の前にやってくるチャンスが増えるから
。
人付き合いで大事なのは、出会いの「数」を増やすこと以上に、付き合いの「質」を高めること。
付き合いの「質」を高めるため重要なのは、以下の三つを意識することです。
- 自分の相対化
- 利他力
- 嘘をつかない
勝間さんは、その中のひとつ「自分の相対化」について、以下のように説明しています。
端的に言えば、主観と客観を上手に使い分けるということです。自分という存在は、世の中のパーツの一部であることを理解し、「全体の中の自分」という発想を持てるかどうか。
その発想を持てる人は、人との付き合いがうまいので、いいチャンスが得られやすい。つまりは、運が良くなります。フェイスブックの書き込みを見ていても、「この人、運がいいな」「この人、運が悪いな」という予測は、だいたいつきます。
自分のことや自分の興味のあることばかりを書いて、その情報が他人に興味があるかどうかなんてまったくもって無視している人と、ちゃんと他人とのかかわりを意識して書いている人に、明らかに分かれるのです。当然、意識して書いている後者の人のほうが、運がいいはずです。
つまり、「全体のなかの自分」という構図を、フェイスブックにおいてもちゃんと理解しているということです。
あるいは、会合に出たときにも、よくわかります。たとえば、5人のメンバーがいたとして、自分が何割話すのが適当かということを、その場その場で判断できるか。私は「タイムシェア」と呼んでいるのですが、少なすぎるとつまらないし、多すぎてもうっとうしいですよね。
臨機応変に状況判断できるようになるには、常に、自分がいるグループや状況において自分を相対化するという癖をつけることだと思います。「メタ認知」という言葉もあります。認知している自分を認知する、もう一人の自分が自分のことを見ているような意識を持つということです。
もちろん、自然にふるまってみんなに受け入れられる人はまったくかまわないのですが、テクニックとして、そういうことを意識しておくと、運がつかみやすくなります。『人生確率論のススメ』 第2章 より 勝間和代:著 扶桑社:刊
チャンスの多くは人を介してやってきます。
周りに気遣いのできる人には、人も幸運も引き寄せられます。
私たちも、人に頼みごとをするときには、自分勝手な人は避けますよね。
運は、このようなことでも、ある程度コントロールできるということですね。
不要なものは、とにかく減らそう
勝間さんは、運を左右する要素というのは、自分の努力は2%くらいで、残りの98%は自分以外の環境
だと指摘しています。
スキルやノウハウを自分の中に積み上げることも大切です。
しかし、何でもかんでも積んでいけばいい、ということではありません。
自分の中で取捨選択をすることが重要です。
積み上げれば積み上げるほど、不要なものが出てきますから、同時に、『できるだけ「減らす」』ということを心がける必要があるということです。
減らすことは、増やすことよりも勇気がいります。しかし、たとえば今、多くの日本の家電メーカーが一斉に赤字になっています。今も栄える多くの老舗のお店と、いったい何が違ったのでしょうか。
やはり、積み上げてきた中で「不要なもの」を減らしていく勇気を持っていなかったのではないでしょうか?
ガラケーが使いにくさの極致になったのは、積み上げ、積み上げ、また積み上げてきて、すっかり操作がわからなくなったからです。炊飯器やパン焼き器も見れば見るほど、積み上げです。
でも、本当に必要な機能、たとえば、IHでしっかりと温度管理ができるようなものはなぜ開発されないのでしょうか?
(中略)
ゴルフのレッスンでも、水泳のレッスンでも、コーチは同じことを私に言い続けます。
「とにかく、余計な動きを減らしてください」
積み上げるということは、ノウハウを積み上げること、すなわち、そのノウハウの中には本当に必要なことだけを残して、取捨選択することです。「捨てる」「減らす」ということが、積極的に含まれているわけです。
新しいことを積み上げることと同じくらい、不要なことを減らすことには価値があります。不要なものはとにかく減らす、減らす、減らす、です。繰り返しになりますが、多ければいいということはありません。不要なものはすべてにおいて、パフォーマンスを低下させます。
減らすことは勇気、減らすことは技術、です。『人生確率論のススメ』 第3章 より 勝間和代:著 扶桑社:刊
新しいものを手に入れるためには、まず古いものを減らして空いた空間を作る必要があります。
「不要なもの」で周りが埋め尽くされている状態は、「運」を自ら遠ざけているということですね。
「時間割引率」を意識しよう
運をよくするためには確率的に考えて、より賢い選択をすることが重要です。
そこで必要となるのが「算数」や「数学」の知識です。
勝間さんは、何かを選択したり、将来を予測したりしようとするときに、見ているものを即座になんらかの形で「数字」に置き換えて、加減乗除をすることができるようになれば、より有利な生活が営める
ことになると述べています。
数学の能力は、運動能力と同じように「人並み以上」程度まで鍛えることは誰でも可能です。
普段から、日常のさまざまな事象を定量化して数値に落とし込む意識づけをすること
が重要となります。
その具体的な方法のひとつが、「時間割引率」という概念です。
例えば、『今日一万円もらえるのだけれど、一年後まで待つともらえる金額が一万一千円になる』という場合を想定したとき、
- 今日の一万円を選ぶ人は、時間割引率が高い
- 一年後まで待つ人は、時間割引率が低い
つまり、目先の利益を優先させる人ほど、時間割引率が高いということです。
多くの人は、将来の利益を“割り引いて”評価してしまうからです。
時間割引率は、その人が目標を達成できるかどうかを左右する要因の一つになります。
わかりやすいのがダイエットでしょう。目の前に美味しそうな、ですがカロリーが高いケーキがあります。時間割引率が高い人は、どうしても目の前のケーキの誘惑に負けてしまいがちです。
一方で、時間割引率の低い人は、たとえば、このケーキを食べたら、そのぶんのカロリーを消費するのにどれだけの運動をしなければいけないのかなどを考えるわけです。そしてその結果、「やめておこう」と我慢することができるのです。
どちらがダイエットに成功しやすいかは、言うまでもないことでしょう。『人生確率論のススメ』 第5章 より 勝間和代:著 扶桑社:刊
時間割引率を低くするための思考のポイントは、「長期的な視点を持つ」ことです。
目先の利益だけではなく、「それにより、将来どのようなメリットやデメリットが想定されるのか」まで考えてから判断すること。
普段から習慣にしたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
自分で原因を説明できないことや理由がわからないことを、私たちは「運」で片づけてしまいがちです。
「何か“自分以外の力”が働いた」とすれば、自分のせいではなくなるので、何かと都合がいいということもありますね。
しかし、勝間さんがおっしゃるように、「人生は運ではなく確率であり、その確率は自分のやり方しだいで上げていくことができる」となると、そうもいかなくなります。
昔から、「運も実力の内」といいます。
本人とは関係のないような幸運も、その裏には、必ず本人の努力が隠されています。
本書の内容を実践し、人生の確率を高めて「運の良い人」を目指したいですね。
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