本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『免疫力をあなどるな!』(矢崎雄一郎)

 お薦めの本の紹介です。
 矢崎雄一郎先生の『免疫力をあなどるな!』です。

 矢崎雄一郎(やざき・ゆういちろう)先生は、免疫治療がご専門の医師です。
 免疫治療を行う全国の医師や研究者とともに研究会を発足し、がん治療の発展に取り組まれています。

健康にとって最も大切なのは「免疫力」

 私たちの身体には、生まれながらに健康を維持するための機能が備わっています。
 それが、「免疫」です。

 免疫は、体内に侵入してくるウイルスや細菌など、さまざまな“外敵”から私たちを守る働きをしています。
 風邪にかかりやすいのは、免疫力が低下している証拠で、もっと恐ろしい病気にもかかりやすくなっている、という意味でもあるとのこと。

 矢崎先生は、免疫力とは身体が本来持っている、病気にならないための「予防する力」であり、身体が病気になったときに健康を取り戻す「回復する力」でもあると述べています。

 これまで謎が多かった免疫のメカニズム。
 しかし、近年のバイオテクノロジーの躍進と開発により、免疫力を高めるためのポイントはたったひとつの「ある細胞」にあることがわかりました。
 矢崎先生は、その細胞のことを免疫機能をあやつる「司令官(ボス)」のような存在であることから、「ボス細胞」と呼んでいます。

 病気を予防し、健康になるためには、ボス細胞の働きが低下するのを防ぎ、かつ、機能を高めるための生活習慣を取り入れることが重要です。

 ボス細胞を活性化させる方法は、次の3つです。

  1. 「ボス細胞」を活性化させる食事を摂る
  2. 運動は「汗をかく前」にやめる
  3. 「ストレスフリー」な環境を整える

 本書は、免疫機能を高めて健康的な生活を送るための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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疲れたときほど「逆のこと」をするといい

 矢崎先生は現代人の暮らしが、どんどん身体機能を低下させる生活習慣になっていると危惧しています。
 何かひとつのこと熱中する人は、それと逆のことを“しなさすぎる”のが問題とのこと。

「働きすぎ」の人は、もっと休まなくてはいけない。
「頑張りすぎ」の人は、時には肩の力を抜く必要があるということです。

 これまでの私たちには自然とできていたはずのことですが、今では多くの人がどちらか一方にかたよってしまい、その結果、「身体のバランス」が崩れてしまっているのです。それが、本来であれば正常に働くはずのさまざまな機能を低下させ、風邪や病気、そして不健康を招くのです。
 やはり、「最適なバランス=中庸」が肝心です。
 こういうと、ものすごく当たり前で、平凡なことを言っているかのように聞こえるかもしれません。「中庸」というと、まるでいちばん無難な真ん中のところにいる平均的でおもしろくない人のように感じてしまうからです。
 しかし、たとえば内臓であれば1ヶ所でも悪くなれば、その臓器の機能を補うためにほかの臓器にも負担がかかり、内蔵全体の機能が低下してしまいます。
 この例からもわかるように、私たちの身体は心臓なら心臓、肺なら肺、肝臓なら肝臓が独立して機能しているわけではありません。血液が全身をめぐって健康を維持しているように、全体が相互に関係し合って成り立っているのです。
 くり返しますが、本来「最高の健康状態」を維持するように身体の機能はバランスを保っています。
 その貴重な“財産”を、私たちはふだんの生活で無理をしたり、ちょっとまちがったことをしたりすることで、失いつつあるのです。
 しかし、私たちの身体のすごいところは、機能が低下したならば、その機能が再び低下しないように元に戻してあげることができる、という点にあります。
 さらに、正常な状態に戻したあとも、その機能を「強化」することができる、という点にあります。
 つまり、いつでも私たちは弱った身体を元気にし、ふつうの人以上に健康にすることができるということです。

 働きすぎたら休む。
 頑張りすぎたら肩の力を抜く。

 ごくごく単純なことですが、まずは一方にかたよっていると感じたら、必ず「逆のこと」をしてバランスをとることからはじめてほしいと思います。それを意識することができれば、忙しい人でも頑張りすぎる人でも、必ず今よりもずっと健康な身体を手に入れることができるのです。

 『免疫力をあなどるな!』 第1章 より  矢崎雄一郎:著  サンマーク出版:刊

「過ぎたるは及ばざるが如し」
 なにごとも、ほどほどにするのがいいということですね。
 どんなにすごい健康法あっても、やり過ぎると逆に身体に負担をかけ過ぎて逆効果になります。

「最適なバランス=中庸」
 免疫力を高めるためにも、つねに意識して生活していきたいですね。

「腸」は最も大きな免疫器官

 人間の身体は60兆個の細胞からできていますが、そのうちの約2兆個が免疫細胞です。
 免疫細胞が最も多く分布しているのは、「腸」です。

私たちの健康を日々維持している免疫細胞は、じつに全体の70パーセントもの数が腸に存在しているのです。
 そもそも、皮膚の面積と腸の粘膜の面積では広さのスケールが違います。
 説によって違いはあるものの、人間の身体を覆う皮膚の面積は、成人男性でもせいぜい1.5平方メートルなのに対し、腸管粘膜の面積は約400平方メートル、なんとテニスコートよりも広いのです。
 その大きな面積を有する腸の粘膜は、外来物である食物を消化吸収することで常に膨大な量の抗原と接触しています。腸管は体内にありながら、外界と直接触れあっているということになります。
 腸内にいる免疫細胞は、食物として摂取されたさまざま栄養素とともに、最も多くの細菌やウイルス、化学物質などの異物にさらされています。そのような環境で、彼らは人体に必要な栄養と害になる病原菌などを正確に見分け、栄養を取りこみ、害があると判断したものを正確に排除していかなければなりません。
 食べ物に対する過剰反応が起きて下痢や腸炎が起きないように、免疫を抑える役割も果たしています。
 だからこそ、全体の約7割にもおよぶ免疫細胞が腸内に集まっているというわけです。いわば、腸は消化器官であると同時に、最も大きな免疫器官でもあるのです。
 細菌やウイルスなどの抗原の多くは、たんぱく質や脂質など、食品とほとんど同じ成分でできています。それをきちんと識別することができるのですから、免疫細胞の能力はすごいものです。
 こうした判断能力を腸内にいる免疫細胞が備えているのは、外来物である食べ物からたくさんの刺激を受けることで、より元気に、より有能になっていくことができるからです。
 特に子どものうちにできるだけたくさんの外来物に接して、腸内の免疫細胞の認識能力を磨くことができれば、それだけ大人になってからの免疫力も高まります。
 だから、50種類の食物しか摂取しない人より、その10倍となる500種類もの食物を摂る人のほうが、当然ながらより多くの刺激を腸内の免疫細胞に与えることができるので、免疫力を高めることができるわけです。

「好き嫌いなど偏食をしてはいけない」
「一日30品目を食べるのが理想」

 よく言われるこれらの食の常識も、「細胞レベル」で健康を考えると、なるほどと納得できるのではないでしょうか。「腸内環境が大事」といわれるのも、ちょうが最大の免疫器官であり、私たちの健康を大きく左右する器官だからです。

 『免疫力をあなどるな!』 第2章 より  矢崎雄一郎:著  サンマーク出版:刊

 最近、「腸内環境改善」の重要性が叫ばれていますが、腸が最大の免疫器官であることも、その大きな理由のひとつです。
 矢崎先生は、免疫力を上げるということは、腸内の免疫細胞をバランスよく活性化させることだと指摘しています。

不健康でも、あなたの身体そのものは悪くない!

 免疫細胞の中でも、「樹状細胞」は、他の免疫細胞に外敵を教える能力(=抗原提示能力)が優れています。
 樹状細胞にはすべての免疫細胞を総動員させる力があります。

 矢崎先生は、この「樹状細胞」こそが免疫システムの司令塔の役割を果たす「ボス細胞」だといえると指摘しています。
 免疫力が低くて不健康になっているときでも、身体そのものが悪いわけではなく、たんにボス細胞の活性が低いために、そのシステム全体がうまく回っていないだけとのこと。

 ボス細胞はウイルスなどの外敵が体内に侵入してきたときに、まっさきに「警報」を鳴らして他の免疫細胞を一斉喚起します。さらに自らウイルスを食べて分解し、その情報を「攻略法」のように獲得細胞に手渡して、攻撃すべき敵の特徴を知らせる。ボス細胞の活性が低下してしまうと、この「警報」と「攻略法」の機能が働かなくなってしまいます。
 警報が鳴らなかったり音が小さかったりすれば、ほかの免疫細胞たちの士気は上がらず、闘う気が起きなくなってしまう。そうなると、外敵に対する攻撃力が弱まり、強い防衛力を発揮することができなくなってしまうのです。
 逆に、この警報が出すぎてしまっても問題が起こります。なんらかの原因でこのアクセルの機能が暴走し、攻撃を命じる物質(サイトカイン)が過剰に出てしまうことがあります。
 このような免疫の過剰反応が起きてしまうことを「サイトカインストーム」といいます。その症状は、血中のサイトカイン量が異常に高くなることです。その作用が全身に広まって光熱が出ることにより、体力は奪われ血液も凝固してしまいます。この影響は臓器にもおよび、多臓器不全を起こすなどの激しい症状を引き起こします。
 まさにサイトカインストームは死に至ることさえある恐ろしい「死の嵐」です。
 つまり、ボス細胞は警報を出しすぎても出さなすぎてもいけないということ。ここでも「アクセル」と「ブレーキ」のバランスが重要になってくるのです。
(中略)
 このようにボス細胞の機能低下は大変恐ろしい結果をもたらしますが、じつは、その「警報」と「攻略法」の機能を高めることは誰でも簡単にできます。ボス細胞を鍛え、体内の環境を働きやすいものに変えてやればいいのです。
 私たちが自分の身体そのものを鍛えて変えようと思うと、きついトレーニングなどが必要になりますが、ボス細胞の「警報」と「攻略法」の機能を強化するためには、何もそんな特別なことは必要ありません。
 ボス細胞をケアすること――。
 何かを新しくはじめる必要はありません。日常でちょっと意識すればいいことなので、誰でも手軽にはじめることができるのです。

 『免疫力をあなどるな!』 第3章 より  矢崎雄一郎:著  サンマーク出版:刊

 免疫細胞は、私たちの身体を守る“軍隊”です。
 さまざまなタイプの兵隊が二重三重の防御ラインを張り、外敵を待ち構えています。
 その軍隊の総司令官が、「ボス細胞」です。

 戦いの勝敗は大将の能力が多くを占めます。
 ボス細胞を活性化させることがいかに健康にとって重要かがわかりますね。

「朝食」はバランスを整える“最強ツール”

 ボス細胞を活性化させるうえで最も重要な要因は、「食」です。
 免疫機能を高めるためには、『毎朝しっかりとした「朝食」をとること』は必須とのこと。

 朝の食欲低下は決して見過ごしてはいけません。朝食には一日の状態を左右する重要な働きがあるからです。
 朝食を摂ることで身体はしっかり目覚めて、夜の間に下がっていた体温が徐々に上昇し、交感神経へとうまくスイッチを切り替えることができます。ところが、朝食を抜いてしまうと、身体はしっかりと目覚めきることができないので交感神経との切り替えがうまくできません。
 ただでさえ副交感神経優位の「リラックス状態」になりきれていないうえに、交感神経にしっかりと切り替えることもできない――朝食抜きの人に限って、午前中ずっとボーっとしているのはそのためです。
 朝食には自律神経のスイッチを切り替えるだけでなく、排便のリズムを整えるという働きもあります。朝食を摂ると、その刺激を受けて腸が目覚め活発に動きはじめます。このように排便を促すことで便秘の防止にもなり、理想的な腸内環境を維持できるようになるのです。
 私は朝食と排便を「朝の2大リラックスイベント」と呼んでいます。このふたつのイベントを習慣づけることで、自律神経や腸内環境のバランスをしっかりと保つことができるというわけです。
 ボス細胞の活性化には自律神経のバランスがとれていること、そして善玉菌優位の腸内環境であることが欠かせません。まさに朝食は一日の免疫バランスを整え、ボス細胞にとって理想的な体内環境にしてくれる最大のチャンスなのです。朝食を摂らない人はみすみすそのチャンスを捨てているようなもので、とてももったいない話です。
 起きたときにきちんと食欲がわくような状態にするためには、夜のうちに熱すぎない風呂に入り、高ぶった神経を鎮めて、頭をクールダウンさせておくことが重要です。言ってみれば、これも身体のバランスを整える工夫であり、「一日の中で“逆のこと”をする方法」のひとつです。
 そうやって副交感神経にスイッチを切り替えてから睡眠をとれば、翌朝はおなかがすいて目が覚めるはずです。

 『免疫力をあなどるな!』 第4章 より  矢崎雄一郎:著  サンマーク出版:刊

 忙しい現代人は、朝食をおろそかにしがちです。

 出勤するギリギリまで布団の中にいて、飛び起きて身支度をしながらパンをほお張る。
 それでは、自律神経の切り替えどころではないし、リラックスもできないですね。

 健康的な生活リズムは、ゆっくりと朝食をとるところから。
 習慣にしたいですね。

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 健康は、身体(フィジカル)の強さとは無関係です。
 毎日鍛えているスポーツマンが病気にかからないかといえば、そうではありませんね。
 逆に、運動らしい運動をしていなくても、風邪ひとつひかない人もいます。
 それを説明してくれるのが、「免疫力」です。

 起きている間も、寝ている間も、それこそ24時間、365日、侵入者に目を見張らせています。
 その優秀な警備システムが弱って、外敵が入り放題になってしまったら一大事です。

 免疫力を弱めるのは、ストレスや不規則な生活、乱れた食習慣など。
 心当たりのある方は、少しずつでも改善して、ウイルスや細菌に負けない“免疫バリア”を身につけたいですね。

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