【書評】『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』(ケリー・グリーソン)
お薦めの本の紹介です。
ケリー・グリーソンさんの『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』です。
ケリー・グリーソン(Kerry Gleeson)さんは、ビジネス・テクノロジー協会の創設者であり、同会の会長を務められています。
能率向上プログラムの考案者として有名な方です。
「PEP」が仕事の生産性を二倍にする!
時間が限られているのに、やることが多すぎる。
自分のやりたいことをやる時間がない。
多くの人が、そのような状況に陥るのは、実際にオフィスで働くための基本を教わったことがないから
です。
グリーソンさんは、自分個人の仕事をどうやって効率よく処理するか。これこそ、現在の教育に欠けている要素
だと指摘しています。
聡明かつ有能で、専門的知識もあるビジネスパーソンであっても、『仕事を効率的に処理する』という部分ができていないために、ストレスに満ちた生活を送っていることも少なくないとのこと。
この仕事のサイクルにおける“失われた環(ミッシング・リンク)”を補ってくれるのが、『能率向上プログラム(PEP)』と呼ばれる手法です。
グリーソンさんは、PEPの手法を取り入れることで、一般的なビジネスマンなら、現在の生産性を、三倍とはいかないまでも、二倍にすることができると確信している
と述べています。
本書は、能率向上プログラム(PEP)をベースに、個人が仕事において問題点を能率よく処理する方法を解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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書類、メールは「すぐに」処理する
望ましい結果を確実に生むための唯一の手段。
それは、『“すぐ”を座右の銘にして、それを実行すること』です。
グリーソンさんは、これを「能率向上のための『すぐやる』方式」と呼んでいます。
『すぐやる』方式では、“すぐに”も、敵ではなく味方となる。散らかったデスクは、どうすればいいか。
すぐに片づけよう。この方法なら、今よりはるかに片づけ上手になる。時間、場所、方法を、しっかり管理できるようになる。自分自身についても、自分の仕事についても、ずっといい気分でいられるようになる。『すぐやる』ことが、能率向上プログラム(PEP)における第一の教えなのだ。
あなたは、以下のようなシナリオになじみはないだろうか。
オフィスに着き、腰をおろし、デスクの上に広がった書類を見て、そのうちの一枚を手に取る。メアリからだ。
「そうだ、メアリに電話しなくちゃ」と口に出す。そしていつもどおり、デスクの上のどこかに、“書類の山をつくり始める”。メアリからの書類は、その山に入れられる。
別の書類を一枚つまみあげる。顧客からきた苦情の手紙。「返事を出さなきゃな」。そしてこれも山の上に置く。三枚目の書類には、処理すべき問題のあらましが書いてある。「このことをボスに話さなきゃいかん」。そうつぶやいて、山に載せる。
それから四枚目を手に取って言う。「こいつはたいしたことない。あとでやればいい」。
高くなるいっぽうの山のとなりに、あと回しの書類をまた積み上げていく・・・・
結局は、あちこち積み上げた書類をぱらぱらとめくっても、もとの山に戻るまでに、それぞれの書類をもう一度読むことになる。つまり、仕事を二回やって時間を浪費しているのだ。拘束時間は二倍、実りはほとんどなし。
書類を二回めくるだけならまだいいが、実際に取りかかるまでに、三回、四回、五回と目を通す人もいる。本来なら一回ですむところを、四倍から五倍の時間がかかってしまう。
個人の能率を向上させる第一のルールは、これだ。
初めて触れたり読んだりしたときに、取りかかること。
これは、すぐにできないこととか、すぐにやってはいけないことについてではない。できること、するべきこと、しかもあなたがやっていないことについて言っているのだ。
あなたが毎日顔をつき合わせるお決まりの書類仕事やEメールなどのことだ。初めて手にしたときか読んだときに片づけられれば、結局は時間をたっぷり節約できる(しかも書類を始末することにもなる!)はずだ。
メアリに電話する。Eメールにただちに返事を書く。顧客の苦情に応える。問題点について上司に相談する。すべてを『すぐやる』ことだ。実際やってみれば、それがいかに時間のかからないものか、そしてやり終えたとき、いかに気分がいいものか・・・・。きっとあなたも驚くはずだ。『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』 1 すぐにやる! より ケリー・グリーソン:著 楡井浩一:訳 PHP研究所:刊
優先順位の低い仕事は、どうしても後回しになってしまいます。
とはいっても、いつかはやらなければならないことには変わりません。
優先順や、今やるかやらないかを悩むくらいなら、できることはその場でさっさと終わらせる。
トータルで考えると結局、それが一番効率的で、ストレスも溜まらない方法だということですね。
仕事の効率を上げる「デスク整理」
『すぐやる』習慣を自分のものにするためには、まず身のまわりの整理から。
グリーソンさんは、オフィスとデスクまわりが乱雑なままでは、効果的に仕事をするのは難しい
と指摘します。
乱雑さは、人が仕事と人生の双方にどう取り組んでいるかの象徴である。人となりについて、何かを語っている。世の中には、乱雑さを思考の糧になるとか、創造的な効果が増すとか言って、正当化しようとする人も多い。
以前、わたしの同僚の女性が、おもしろい話を聞かせてくれた。その女性が、ニューヨークに住む画家を初めて訪ねたときのことだ。
訪問の前に、本物の芸術家の家とはどんなものか、彼女はイメージをふくらませた――アヴァンギャルドで、ひどく散らかっていて、隅のほうに絵が積み重なっている、創造のエネルギーを刺激するものであふれたアトリエ。
ところがその画家の家に足を踏み入れ、あたりを見回してみると、きちんと整っているではないか。たぶん、来客に備えてきれいにしたのだろうと思ったが、夕方アトリエに入ってみると、そこも完璧に整えられているのがわかった。絵筆はすべて順序よく並べてあり、絵の具の缶も、きちんと整理してラベルが貼ってある。
女性は自分の目を疑った――画家の仕事ぶりとはどういうものかについて、予想を裏切られたからだ。
その画家の話によると、彼は大学で美術の勉強をしているときに、そういうことを学んだらしい。一回使うたびに洗浄しないと、絵筆がだめになることを知っている。
さまざまな絵の具に残らずラベルを貼っておくのも、そうしておかないと、調合した絵の具がどれだかわからなくなってしまうからだ。
もしあなたが効率よく働きたいのなら、この画家のように、いつでも使えるように、ものを整理すること。清潔できちんとした状態にあるものは、そうでないものより使い勝手がいいのだ。
自分の視界から外れたものは、文字どおり頭のなかから消えてしまう、と恐れる人たちがいる。こういう人たちは、業務や任務を忘れてしまうことを恐れ、思い出すためのものをデスクに置いたり、目に入るところに付箋(ふせん)を貼りつけたりする。
あらゆるものを見えるところに置いておくというのが、この人たちの解決策だ。
ごもっとも。見えなくなる、すなわち忘れてしまう、というのは実によくある話だ。わたしは、こういう人たちから相談されると、思い出すためのシステムをつくることを提案する。
さらに、手をつけることができないものを、すべて思い出す必要はないと伝える。今できない物事を思い出しても、“あとでやる”という悪い習慣を増長させるだけだ。
さまざまなメモをデスクやオフィスのまわりに貼りっぱなしにしたまま、それを役に立つと信じている人は多いが、その手のものがあると、第一に気が散るし、たいていはストレスを生むもとになるだけである。
わたしからのアドバイスは、「ものの置き場所をつくること」、「デスクには現在手をつけているものしか置かないこと」、「できのいい予定表のシステムを利用して、自分がほんとうにやるつもりになったときに、何をすべきか思い出せるようにすること」だ。『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』 2 すぐに整理する より ケリー・グリーソン:著 楡井浩一:訳 PHP研究所:刊
仕事のできる人のデスクは、整理整頓が行き渡っているものです。
頭の中が整理整頓されている証拠といえますね。
使い終わったら、元あった場所にすぐ戻して、いつでも整理整頓された状態にする。
それが『すぐやる』習慣を身につけるためのコツですね。
「優先順位」をつけるより、端から「機械的に」こなす
仕事は、発生したと同時に『すぐにやる』のが基本ですが、延期しておいてあとで処理する方が効率的なものもあります。
郵便物を開封して読む、Eメールを処理する、返事の電話をする、などですね。
『すぐにやる』仕事と、後でまとめて処理する仕事。
この両方を手際よくさばく対処のしかたには、コツがあります。
グリーソンさんは、そのコツを『あとで、すぐやる』方式と呼び、以下のように説明しています。
実行の準備ができていないうちは、仕事を目にしてはいけない。実際に目にしたときは、取りかかるときだ。『あとで、すぐやる!』のだ。
何かをやり終えたいなら、予定に入れる。保留トレーの業務は、最重要でもないし、優先事項とみなされることもまれなため、いつまでたっても終わらない。緊急業務が常に存在し、重要な業務に取りかかるのを遅らせる。
緊急かつ重要な業務は、まちがいなく書類仕事やEメール処理の邪魔をする。あなたが優先順位をつけ続けるかぎり、重要度の低い書類仕事やEメール処理という業務には、まず行き着けないだろう。しかし、書類やEメールを放っておくと、手に負えない状態になってしまう。
もしあなたが、顧客への電話連絡と、未処理トレーの整理を選ばなければならないとしたら、顧客のほうを選ぶのではないだろうか? 未処理トレーのほうは未処理のまま。あなたは、絶えず選択を迫られるような立場から逃れることを願っている。これは、あなたの人生を必要以上につらいものにするだろう。
未処理トレーの中身と、ほかの日常業務をまとめて処理する予定を組もう。その業務に取りかかるときが来たら、割り当てた時間を使って片づけ、それから重要な仕事に移ればいい。
あなたは朝、歯を磨く。そのとき歯を磨くことについて考えるだろうか? 優先順位をつけているだろうか? 「今、歯を磨こうか、それともコーヒーを飲もうか」などと迷うだろうか。たぶん、迷わない。
それはあなたが習慣の一部として身につけた、無意識の日常業務のひとつだからだ。そのことについてあれこれ考え、負担に感じるようなことではない。事実、ほとんど何も考えてはいないはずだ。
意識的に判断をくだすという手順を、習慣の力を借りて省いている。ただ機械的にやっている。これが、まとめた業務を扱うコツだ。『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』 3 機械的に行なう作業を決める ケリー・グリーソン:著 楡井浩一:訳 PHP研究所:刊
Eメールが来るたびに中身をいちいち確認して返事をしていると、大きな時間のロスになりますね。
今やっている作業を中断しなければなりませんから、思考や集中も途切れてしまいます。
やらなけれならない作業ではあるけど、最重要ではない。
そんな仕事は、一日◯回、◯時間おきというように、頻度や時間を決めて、それ以外の時間は一切やらないという割り切りが大事です。
『あとで、すぐやる!」方式、ぜひ取り入れたいですね。
効率を上げたいなら、すべてを覚えようとしない
グリーソンさんは、効率の向上や成功は、ほとんどの場合、自分の目標に、どれだけ執着できるかで決まる
と述べています。
目標とそれを実現するための計画手順をしっかり決めてしまえば、他の細かい部分については覚える必要はありません。
わたしが話をする人々は、やるべきことを“ひとつ残らず”覚えているという能力を、少なからず自慢にしている。それは頭のなかで興じるゲームだ。
ある時代には、そんなゲームも通用したかもしれないが、今日では、職場でも家庭でも、生活の速度が増し、できる行動、あるいは追いつくべき行動も増え続けているため、予定事項リストの一番から千番までを覚えておこうとするのは、現実的とは言いがたい。
もちろんあなたは、やるべきことを覚えているのだろうが、それを思い出すのは、いちばん都合のいいときでも、効果のあるときでもないはずだ。たとえば午前三時、ベッドのなかで起き上がって考える。「そうだ、あれをやらなくちゃ・・・・」。
こんなふうに、やるべきことを絶えず考え続け、予定を確認し続け、ひとつ残らずあとを追いかけて――結局は、何をしていいかわからなくなってしまう。
仕事量を増やす何百もの細かいこと。そんなことを覚えておくための能力を、あなたは必ずしも強化したいとは思っていないはず。
いっそのこと、忘れるべきことはすべて忘れてしまうのだ、と考えたほうがいい。言いまちがいではない。忘れてしまうのだ。
大切なのは、ふさわしいシステムをすぐ使えるようにしておいて、無数の細かいことを、必要なときに、いや、必要なときだけ、思い出すようにすることだ。
常軌(じょうき)を逸しているとお思いだろうか。そんなことはない。
かのアルベルト・アインシュタインは、自宅の電話番号を覚えていなかったと言われる。その理由を尋ねられ、こう返事をした。「必要がないからだよ。電話帳を見ればわかることだ」。『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』 5 再確認と仕上げ より ケリー・グリーソン:著 楡井浩一:訳 PHP研究所:刊
目的地へのルートを設定し、それ通りに進もうとしても、途中で変更を余儀なくされる。
そんなことは、よくあることです。
細かすぎる手順は、目標達成の手助けになるどころか、障害にもなりかねません。
今必要でないこと、忘れるべきことはすべて忘れること。
そうすることによって、よりよいアイデアが生まれる可能性が高まります。
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本書に書かれていることは、誰にもできることばかりで、難しいことはありません。
PEPの手法を身につけて、生産性を二倍、三倍にできるか。
それは、私たちが実行するかどうかにかかっています。
どんな行為でも、続けているうちに習慣となります。
習慣にさえなれば、意識するまでもなく、自然とできるようになります。
今までのやり方を捨てて、新しいやり方を取り入れる。
それは、勇気のいることですし、心理的な障壁もあります。
しかし、それを乗り越えなければ、何も変えることはできません。
「やってみよう」と思ったその時が、それを始めるベストタイミングです。
『すぐやる!』思考を身につけて、スムーズで快適な人生を送りたいものですね。
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