本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『腸が寿命を決める』(澤田幸男、神矢丈児)

 お薦めの本の紹介です。
 澤田幸男先生と神矢丈児先生の『腸が寿命を決める』です。

 澤田幸男(さわだ・ゆきお)先生は、消化器内科がご専門の医師です。

 神矢丈児(かみや・じょうじ)先生は、消化器外科がご専門の医師です。

すべての病気は、「毒素」から生じる

 著者は、病気になる基本的なメカニズムはきわめてシンプルに説明できると述べています。

 病気は、ふつう、次のふたつのケースで起こります。

 ①からだの外から侵入してきた毒素に、からだが侵される
 ②からだのなかで発生した毒素に、からだが侵される

 ここでいう「毒素」とは、病原菌やウイルス、有害な化学物質、腐敗物、異常細胞など、わたしたちのからだに有害、有毒であるものすべてを指します。

たとえば、風邪の場合にあてはめて考えてみましょう。
 風邪をひくのは、食べ物や吸気(吸った息)にまじって、からだの外から侵入してきた風邪のウイルス(毒素)にからだが侵されるからです。
 次は、O157やノロウイルスの場合です。主に食べ物にまじって、体外から侵入してきたこれらの病原菌やウイルス(毒素)にからだが侵されるものです。
(中略)
 いずれも先ほどの①のケースにあたりますね。
 では、ガンの場合はどうでしょうか。
 ガンは、からだのなかで発生した異常なガン細胞(毒素)にからだが侵されてしまうということです。
 では最後にもうひとつ、わたしたちはなぜ糖尿病になるのでしょうか?
 からだのなかで発生する毒素のほとんどは、ガン細胞と、腸内で発生する腐敗ガスや腐敗毒素です。糖尿病になる遠因として、腸のなかで発生した膨大な量の毒素(後述しますが、特に悪玉菌によって大量に作られる腐敗ガスや腐敗毒素)が全身をめぐって、さまざまな場所で細胞や組織が炎症を起こすことが考えられています。すると、炎症を起こした細胞はインスリンに反応しにくくなって血液中に糖があふれ、高血糖状態が続いて糖尿病が発症します。
 またこの毒素が体内に大量に蓄積されると、わたしたちのからだの免疫システムに異常が起こり、わたしたちのからだを守るための免疫細胞が、逆にインスリンを作るすい臓の細胞を破壊してしまい、インスリンが絶対的に不足してしまうことも糖尿病の原因と考えられています。
 つまり、ガンも糖尿病も②のケースといえます。
 このように、わたしたちの病気のほとんどは、先ほど述べた①か②のメカニズムによって引き起こされていると考えていいでしょう。

 『腸が寿命を決める』 序章 より 澤田幸男、神矢丈児:著 集英社:刊

 まとめると、風邪やインフルエンザや食中毒などの感染症は、①のメカニズムによって引き起こされます。
 一方、ガンや糖尿病などの生活習慣病は、②のメカニズムによって引き起こされます。

 このふたつのメカニズムを正常に保つために最も重要な働きをするのが、「腸」です。

 本書は、腸が健康に果たす役割、腸と病気の関係を具体的にわかりやすく解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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便の80%は水分からできている

 大腸のもっとも重要な役割は、食べ物の残りかすを体外へ出すこと。
 つまり、「排泄」です。

大腸で残りの水分と栄養素をしっかり吸収された食べ物の残りかすは、最終的に口から取りこんだ食べ物の10分の1以下にまで減ります。
 大腸にも、消化器官特有の「蠕動(ぜんどう)運動」があります。この働きによって、食べかすが大腸の最終部分である直腸まで送られ、最後に肛門から排出されます。
 ご存じのように、これが「便」です。
 便は「すべて食べ物の残りかす」と思っているかたが多いかもしれませんが、実はそうではありません。
 小腸や大腸の粘膜の細胞は新陳代謝が非常に激しく、特に食べ物からの栄養素の大半の吸収を毎日休まずしている小腸の粘膜細胞は、一日ないし一日半ごとに新しい細胞に入れ替わるといわれています。
 前述のように、小腸の管の内側をおおっている粘膜全体の表面積は、テニスコート約一面分にもおよぶので、たった一日だけでも、死んでいく粘膜細胞の数と量は膨大なものになることが想像できると思います。
 また、大腸には約100兆個もの腸内細菌が棲みついているといいました。役目を終えて死んだ腸内細菌もまた膨大な量です。
 意外に思われるかもしれませんが、健康な人の場合、便の80%は水分です。残りの固形成分のうち、小腸と大腸で消化しつくされたあとの食べ物の残りかすは3分の1程度で、残りの3分の2は、これら、はがれ落ちた腸の古い粘膜細胞や腸内細菌、そしてからだに有害な病原菌やウイルスの死骸、さまざまな有毒化学物質といわれています。
 大腸がになう「排泄」は、体内の不要物や老廃物、病原菌、化学物質など、有害な「毒素」をできるだけ早く外に出すことでからだの正常な機能をつねに保つ、きわめて大切なシステムなのです。

 『腸が寿命を決める』 第一章 より 澤田幸男、神矢丈児:著 集英社:刊

大腸内での食べかすの流れ P61第一章
 図1.大腸内での食べかすの流れ (『腸が寿命を決める』 第一章 より抜粋)


 便の80%が水分で、食べかすは残りの20%の固形分のわずか3分の1でしかないのですね。
 食べ物の栄養を効率よく、しかも短時間で取り込むことができる人の体の機能の素晴らしさを示しています。

「虫垂」は、免疫細胞が集まった強力な免疫組織

 私たちの体は、巨大な「ちくわ」のような構造しています。

 私たちの体は、外側を覆う皮膚で外界と接しています。
 一方、口、のど、食道、胃、腸といった体の内部の消化器官の表面、つまり、粘膜でも、外界と直接接しています。

 内側の消化器官の表面は、食べ物から栄養を取り込んだりする、非常に繊細な部分。
 その繊細な粘膜を細菌やウイルスから守っているのが、「粘膜免疫」と呼ばれる免疫システムです。

 粘膜免疫は、体全体の免疫システムの70〜80%を占めています。
 そして、その大部分を担うのが、大腸や小腸の「腸管免疫」呼ばれる免疫系です。

 これまで、「不必要な器官だ」といわれてきた盲腸(虫垂)。
 最近の研究では、免疫システム上、重要な働きがあることがわかってきました。

 盲腸炎(正確には「虫垂炎」)になる部位である「盲腸」の名前を知らない人はいないでしょう。
 盲腸は、大腸の一部分です。小腸の最後のパーツである回腸のすぐ先、大腸(上行結腸)がはじまる部分にあり、下が閉じた袋状になっています。
 そして、この袋にぶら下がるひものようにくっついているのか「虫垂(ちゅうすい)」です。
 前に、「昭和40〜50年代ごろ、扁桃腺肥大になりやすい子どもがいると、お医者さんは免疫システムとしての扁桃腺がいかに大切かを理解せず、簡単に切除してしまった」といいましたが、この虫垂も、以前は進化から取り残された前世紀の遺物のようなもの、要するにからだにとっては不必要な器官と考えられ、邪魔もの扱いされてきました。
 しかし、実はこの虫垂も、前述の扁桃腺やパイエル板と同様、リンパ組織に富んだ非常に重要な免疫組織であり、病原体などからからだを守るために必要不可欠な器官であることがわかってきたのです。
 盲腸の周辺や虫垂の内部には非常に多くのリンパ節があります。つまり、ここではさまざまなリンパ球が無数に集まっていて、つねに活発に活動しているのです。
 ここに集まっているリンパ球は、小腸からの食べかすに潜んでやってきた病原体や有害物質を、いったんここで厳しくチェック・撃退する働きをしていると考えられています。そういう意味でも、病原菌などの侵入をまず最初の入口でチェックする免疫組織である「扁桃腺」の役割とよく似ています。
 また、虫垂には消化器官としても重要な役割があるという説もあります。それは、象徴で消化できなかったもの、特に食物繊維をここでできるだけ分解しておくという働きです。
 小腸から来た食べかすは、まず虫垂にたまります。
 虫垂を含む大腸には、前述したように100兆もの数の腸内細菌が棲みついています。大腸がきれいで腸内フローラのバランスが正常であれば、未消化の食べかすは、通常ここで善玉菌の助けを借りて分解され、発酵します。食物繊維なども、大腸の粘膜から吸収されやすいように、この虫垂でほどよく分解されるとも考えられています。
 悪玉菌の存在によって、この分解・発酵のプロセスからは、有害な物質や毒素も生まれてきます。盲腸、特に虫垂に非常に多くのリンパ球が集まっているのは、それをできるだけ無害にするためでもあります。

 『腸が寿命を決める』 第二章 より 澤田幸男、神矢丈児:著 集英社:刊

虫垂の位置と役割 P114第二章
 図2.虫垂の位置と役割 (『腸が寿命を決める』 第二章 より抜粋)


 人間の細胞の数は、約60兆個と言われています。
 大腸には、それよりもはるかに多い細菌が棲みついているのですね。

 腸内細菌の巨大な集団である「腸内フローラ(腸内細菌叢(そう))」は、『からだのなかにある、もうひとつの独立した臓器である』という学者もいます。

 腸内細菌までも、自らの免疫機構に取り込んでしまう。
 人間の体の神秘には、驚かされます。

腸内の「腐敗毒素」が慢性疾患を発症させる

 大腸が担う「栄養吸収システム」と、小腸・大腸が担う「腸管免疫システム」
 腸に備わったこの二つのシステムを乱す最大の原因が、「大腸の汚れ」です。

 大腸の汚れは、生活習慣の乱れ、とくに、「食生活、食習慣の乱れ」が主な要因です。

 肉類、乳製品の過度の摂り過ぎ、パンや白米、砂糖などの糖質の摂り過ぎ、野菜の摂取不足。
 食習慣の乱れは、真っ先に腸の粘膜表面を汚します。

 大腸の粘膜表面が汚れると起こるのが、「便秘」です。

 蠕動運動によって食べかす体外(肛門の方向)へスムーズに押し流すため、大腸の粘膜からはたえず大量の粘液(腸液)がしみだしているといいました。この粘液は、ちょうどクルマのエンジンのピストンの潤滑油のような役割を果たします。
 ところが、粘着性物質によって大腸の粘膜表面がふさがれてしまうと、潤滑油の役目をする腸液が十分に分泌されないために食べかすがうまく流れなくなり、大腸内にとどまる時間が長くなります。
 そのために食べかすがどんどん固くなっていき、「便秘」が起きてしまうのです。
(中略)
 腸内で発生した大量の腐敗ガスと腐敗毒素が血流に入り込み、それが全身をめぐることで、からだのさまざまな部分の細胞や細胞組織で損傷や炎症が起こります。また、慢性化すれば、全身のさまざまな部分で毒素の蓄積が起こります(医学的に「腸性自家中毒」といいます)。そして、ついにはさまざまな疾患を発症するのです。
 便秘により腐敗が進んだ食べかすは、大腸に棲む無数のバクテリア、病原体、悪玉菌の格好のエサになり、その増殖も引き起こします。前に、虫垂の役割のところで述べたように、大量の有害ガスや有害化学物質によって、当然、からだ全体の免疫システムを支えている大腸内の免疫細胞や腸内細菌の善玉菌も大きなダメージを受けます。その結果、からだの免疫力が徐々に低下していくため、感染症などにかかりやすくなります。
 また有害ガスや有害化学物質は大腸の粘膜に直接作用して、表面を損傷したり炎症を起こす原因になります。それによって、潰瘍(かいよう)性大腸炎をはじめとするさまざまな炎症性の大腸疾患や大腸ガンを引き起こす危険性が高まります。
 いっぽう、粘膜の傷口から有毒ガスや有毒物質、さらには増殖した病原体が体内の細胞組織に直接刺激を与えたり、侵入したりすることも考えられます。
 また、大量の腐敗ガスや腐敗毒素が、大腸の粘膜から毛細血管に入りこんで全身を循環していきます。
 前述したように、血管には多数の免疫細胞が存在していて、病原体や有害化学物質などの毒素に対して防御を行います。また通常であれば、肝臓が体内の毒素を解毒し、排泄のサポートをしてくれます。しかし、一度に大量の毒素が侵入してきたり、毒素の侵入が慢性化すれば、免疫細胞の抵抗も肝臓の解毒機能も破綻(はたん)してしまいます。

 『腸が寿命を決める』 第三章 より 澤田幸男、神矢丈児:著 集英社:刊

大腸の汚れと病気の関係 P150第三章
 図3.大腸の汚れと病気の関係 (『腸が寿命を決める』 第三章 より抜粋)


 慢性的な生活習慣病のほとんどは、「腸の汚れ」が大きな原因です。
 いかに、人間の健康が腸の粘膜表面の状態に左右されているか、その重要性がよくわかります。

「たかが便秘」と軽く見ていると、取り返しがつかないことになります。
 早めの対処を心掛けたいですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 胃から運ばれてくる食べ物を消化し、栄養分を吸収し、残り分を排泄する。
 さらには、免疫システム全体の8割を担う。

 そんな重要な働きを24時間休まず、黙々と続けてくれている「腸」。
 健康に生きるために、最も重要な臓器といっても過言ではありません。

 腸の粘膜の細胞には、痛みを感じる神経がなく、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。
 そのため、自覚症状が出てからでは、手遅れなことも多いです。

 日頃から、腸の負担を減らす食習慣を心がけた生活を心掛けたいですね。

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