【書評】『体を壊す10大食品添加物』(渡辺雄二)
お薦めの本の紹介です。
渡辺雄二さんの『体を壊す10大食品添加物』です。
渡辺雄二(わたなべ・ゆうじ)さんは、フリーの科学ジャーナリストです。
雑誌や新聞などに食品、環境、医療、バイオテクノロジーなどの諸問題を提起する記事を数多く執筆されています。
がんの原因となる「食品添加物」
「飽食の時代」と言われ、いつでもどこでも食べ物を手に入れられる現代社会。
コンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、たくさんのお弁当やおにぎり、パスタ、焼きそば、サンドイッチなどの食べ物が売られています。
それらには、食品添加物がたっぷりと使われていることを忘れてはいけません。
渡辺さんは、発がん性等の添加物の人体への影響を懸念し、添加物使い放題の日本の食品事情に警鐘を鳴らします。
添加物の中でも、石油製品などから化学合成された合成添加物は危険性が高いです。
とくに自然界にまったく存在しない化学合成物質、つまり人間が人工的に作り出したもの。
それらには、「自然界に存在しないがゆえに、人間の体内で消化・分解されないものが多い」と指摘します。
現在、使用が認められている合成添加物は、431品目(2013年2月時点)にも上ります。
すべての合成添加物を避けるのは無理でしょう。
ただ、危険性が高い「10大添加物」を避けるだけでも、健康被害を防ぐことができます。
本書は、「10大添加物」の危険性と、それらの含まれている食品の見分け方を具体的に示した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「明太子」が胃がんの発生率を高める
食塩摂取量の多い男性ほど、胃がんの発生率が高いです。
国立がん研究センターの調査によると、「たらこや明太子などの塩蔵魚卵を頻繁に食べている人はほとんど食べていない人の二倍以上と高い」とのこと。
食塩を多く取って荒れた胃の粘膜が再生する際、何らかの発がん性物質が作用することで、がんができやすくなります。
発がん物質として注目されるのが、「亜硝酸Na(亜硝酸ナトリウム)」です。
主に明太子に発色剤として使用されている亜硝酸Na。
反応性が高く、明太子の原料のたらこに含まれる「アミン」という物質とも反応します。
アミンは窒素を含む物質で、植物や動物の体内(とくに魚卵、魚肉、食肉)に含まれています。
アミンには、化学構造によって第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンがあります。
これらのうちの第二級アミンと亜硝酸Naが反応すると、ニトロソアミン類という化学物質に変化するのですが、これには強い発がん性があるのです。
ニトロソアミン類は10種類以上知られていて、いずれも動物実験で発がん性が認められています。とくに代表的なN−ニトロソジメチルアミンの発がん性はひじょうに強く、わずか0.0001〜0.0005%をえさや飲料水に混ぜてラットに与えた実験では、肝臓や腎臓にがんが認められています。
厚生労働省もこのことは十分承知していて、たらこに添加できる亜硝酸Naの量を厳しく制限しています。しかし、明太子中にニトロソアミン類ができるのを完全に防ぐことはできません。
また、ニトロソアミン類は酸性の条件下でできやすいので、胃酸が分泌される胃の中でできやすくなります。実際に亜硝酸塩(亜硝酸Naは亜硝酸塩の一種)と第二級アミンを同時に動物に投与した実験では、胃においてニトロソアミン類が生成して、がんが発生することが確認されているのです。
明太子おにぎりは、多くのコンビニやスーパー、弁当店で売られていますが、具の明太子にはいずれも亜硝酸Naが使われています。したがって、それらを毎日食べていると、胃がんになる確率はどうしても高まってしまうことになると考えられます。『体を壊す10大食品添加物』 第1章 より 渡辺雄二:著 幻冬舎:刊
亜硝酸Naは、コンビニおにぎりだけではなく、パスタやサンドイッチの中に入っているハムにも含まれている
ので、注意が必要ですね。
どうしてもコンビニおにぎりを食べたいのなら、亜硝酸Naが入っていない可能性の高い、「鮭(紅鮭)」「梅」「こんぶ」などがお勧めです。
食品原料と添加物の見分け方
1991年に旧・厚生省は添加物の物質名表示の義務化を行いました。
現在では、原材料名の記載欄を見れば、使用したすべての添加物がひと目で分かります。
渡辺さんは、添加物を簡単に見分ける方法を、「缶コーヒー」を例に挙げて説明しています。
図.缶コーヒーの原材料名の例 (『体を壊す10大食品添加物』 P148 より抜粋)
上の図は、缶コーヒーの原材料名です。最初のほうに書かれているのが食品原料で、使用量が多い順に書くことになっています。この製品の場合、「牛乳」が一番多く使われているので、それが一番前に書かれています。
次に「コーヒー」「砂糖」とありますが、二番目と三番目に多く使われているということです。そんな感じで食品原料が続いて、「デキストリン」で食品原料は終わりです。デキストリンはブドウ糖がいくつも結合したもので、デンプンを分解してつくられていて、食品に分類されています。
そして次の「カゼインNa」からが添加物となります。添加物のなかでは、カゼインNaが一番多く使われているので、最初に書かれています。そして多い順に、「乳化剤」「香料」「酸化防止剤(ビタミンC)」と続き、「甘味料(アセスルファムK)」で終わりです。なお、カゼインNaは、牛乳に含まれるたんぱく質のカゼインにNa(ナトリウム)を結合させたのもので、粘性を持たせるためなどに使われています。乳化剤は、水と油を混じりやすくする目的で使われています。
食品原料と添加物の表示の仕方は、どの製品でも基本的にはこれと同じです。つまり、まず食品原料が多い順に書かれて、それが終了したら、次に添加物が多い順に書かれるということです。したがって、どこからが添加物かを見極めることがポイントです。それさえできれば、添加物をすべて容易に知ることができます。『体を壊す10大食品添加物』 第2章 より 渡辺雄二:著 幻冬舎:刊
加工食品は、一般的に、乳化剤や加工デンプン、調味料(アミノ酸等)などが量的に一番使われることが多いので、それらが書かれている部分から添加物という見方
ができます。
買い物カゴに入れる前に、原材料名記入欄を確認する習慣をつけたいですね。
肝臓や腎臓はダメージを受けやすい
渡辺さんは、添加物の危険性のひとつとして、「臓器へのダメージの心配」を挙げています。
とくに、毒性物質を解毒する器官である肝臓や人体に不要な物質をろ過し排出する器官である腎臓へのダメージが懸念される
とのこと。
通常、化学合成物質は、体内入ってきて、消化・分解されずに吸収された場合、体内を異物となってグルグルめぐり、肝臓で処理されることになります。ところが、それは肝臓にとって負担になりますし、処理できない場合は肝臓の細胞がダメージを受けることが考えられるのです。
肝臓の場合、細胞が壊れるとGPTなどの酵素が増えるため、その量を調べることで、ダメージを受けているかどうかを知ることができます。
(中略)
また、腎臓に対する影響も心配されます。腎臓はひじょうに繊細な臓器で、一度組織が壊れると、元に戻ることがありません。したがって、一度腎臓機能を失った人は、一生人工透析を受け続けるか、腎臓移植をするかしかないと生命を維持することができないのです。
体内に入ってきて、消化・分解されずに吸収されて、体内をグルグルめぐった化学合成物質は、やがて腎臓に達して、尿とともに排泄(はいせつ)されます。その際に、化学合成物質が腎臓の本体といえる糸球体や尿細管などにダメージを与えることはないのか心配されるのです。『体を壊す10大食品添加物』 第3章 より 渡辺雄二:著 幻冬舎:刊
いくら「無害だ」といっても、体にとっては「異物」には変わりありません。
このような微量の添加物の健康被害は、何十年も先に現れてくるもの。
リスクを極力減らすようにしたいですね。
「狂気の細胞」を生み出すものは?
添加物の影響で最も恐ろしいことが、「がん」への影響です。
がんは、悪性化した細胞がどんどん増殖し、正常細胞を侵食していき、臓器全体の機能を失わせてしまうくらいに増えてしまうことによって生成した腫瘍です。
正常細胞をがん化させるのは、「放射線、ウイルス、化学物質」です。
渡辺さんは、そのなかでも化学物質の影響が大きいと考えられる、と述べています。
添加物のほかにも農薬や合成洗剤、抗菌剤、殺虫剤、トリハロメタン、ダイオキシン、揮発性有機化合物(VOC)、排ガスなどおびただしい数の化学物質が環境中に放出され、空気や水、食品とともに体内に入り込んできているのです。それらのなかには発がん性のものがたくさんあります。したがって、遺伝子に作用して突然変異を起こさせていることは十分考えられるのです。ちなみに、化学物質が体内に入り込んできて、その影響が蓄積してがんが発生するという考え方を、「がん加算説」といいます。
それらの化学物質は、分解されることなく腸や肺から吸収されて、異物となって血液中をめぐるのです。そして、細胞や遺伝子を傷つけ、また、体を維持する免疫やホルモンなどのシステムを乱していると考えられます。
その結果、がんになったり、ほかにも化学物質過敏症(シックハウス症候群)やアレルギーが発症しているのです。さらに、先天性障害や不妊などとも関係していると考えられます。おそらく今、私たちの体は悲鳴をあげているのでしょう。その表れが、がんやアレルギー、化学物質過敏症なのだと思います。ですから、これらの化学物質を減らしていく必要があるのです。『体を壊す10大食品添加物』 第4章 より 渡辺雄二:著 幻冬舎:刊
渡辺さんは、化学物質のなかでも、とくに食品添加物の影響が大きいと述べています。
添加物はほとんどの食品に混じっており、毎日、口から確実に入ってきます。
当然といえば、当然でしょう。
渡辺さんは、個人でできる防御策として、「安全性の不確かな化学物質はできるだけ摂取しない」という「予防原則」にのっとって生活していく必要性
を強調します。
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いつでもどこでも食べ物が手に入る、便利で快適な生活。
その裏には、添加物の大量使用という負の一面もあります。
世の中が、添加物などの化学物質であふれている以上、すべてを防ぐことは不可能です。
しかし、危険性の高い添加物が見分けて、できるだけ買わないことは誰にでもできます。
自分の身は自分で守るしかありません。
できるだけ、体に有害なものを水際で食い止める。
そんな意識で、買う前に添加物確認の一手間を習慣づけたいものです。
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