本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『脳が冴える15の習慣』(築山節)

 お薦めの本の紹介です。
 築山節先生の『脳が冴える15の習慣―記憶・集中・思考力を高める』です。

 築山節(つきやま・たかし)先生は、脳神経外科がご専門の医師です。

良い習慣が脳を生まれ変わらせる

「最近、何となく脳が冴えないなぁ」

 そうと感じた経験を持つ人は、多いのではないでしょうか。

 人から話しかけられたときなどに、パッと反応できない。
 思考がすぐに途切れてしまう。
 集中力が続かない。

 そんな衰えた脳を回復させるために大切なのは、「ごく基本的なこと」を生活に取り入れることです。
 つまり、脳にとって良い習慣を身につけることです。

 本書は、脳の使い方を改めることにより、記憶力や集中力、思考力、意欲などを高める方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「脳の基本回転数」を上げること

 何か問題を解決しなければならないとき、ぐっと集中力を高めて、速く的確な判断ができる力量。
 それを「脳の基本回転数」と呼びます。

 脳の基本回転数を上げるには、時間の制約を掛ける意識を持つことが必要です。

 何時までに、これだけの仕事をしなければいけない。
 何個の問題を解かなければならない。

 そういう状況を与えられていないと、脳の基本回転数は上がりません。
 ただ漠然と時間をかければ、多くの仕事ができるわけではありません。

 築山先生は、「一度脳の基本回転数を上げると、その状態がしばらくは続く」と指摘します。

 誰でも経験があると思いますが、短時間で集中してこなさなければならない仕事を終わらせた後は、他の仕事も勢い良く片付けられると思います。むしろ、基本回転数が落ちるまで、何か作業をしたり、人と話したりしていないと落ち着かないはずです。
 仕事を効率良く片付けるには、この性質を利用することが有効と考えられます。
 つまり、まずは脳に準備運動をさせて、基本回転数が上がりやすい状態をつくっておく。次に、時間の制約がある中で仕事をし、集中力、頭の回転の速さを高めます。この時間の制約というのは、長くても2時間が限度でしょう。それ以上長くすると、時間と仕事の量の関係が意識しづらくなってしまいます。それでは緊張感が生まれません。
 時間の制約がある「試験を受けている状態」が終わったら、すぐに休むのではなく、基本回転数が上がっている状態を利用しましょう。それまでやっていた作業を見直して改善を加えてもいいですし、面倒な雑用をこの時間に片付けておくのもいいと思います。
 時間の制約がない中でそういう仕事をしていると、だんだん基本回転数が落ち、また脳が疲れてくるので、休憩を挟みましょう。脳に休養を与えたら、再びウォーミングアップ→試験を受けている状態→基本回転数が落ちるまで仕事・・・・を繰り返します。
 仕事がよくできる人たちは、そういうリズムを持っているものではないでしょうか。あるいは、会社や上司がそういう働かせ方をしているのではないかと思います。

 『脳が冴える15の習慣』 習慣2 集中力を高める より  築山節:著  NHK出版:刊

 時間によるプレッシャーを受ける状態、いわば「試験を受けている状態」を一日に何回つくるか。
 そういう方向に意識を切り替えないと、いつまでも脳を上手く使えるようになりません。

 自分自身で時間制限を設けて、脳に負荷をかける意識を常に持っていたいものです。

7つ以上の要素を同時には処理できない

 脳の力を最大限に発揮させる。
 そのためには、取り組む問題をできるだけ限定し、それに集中できる環境をつくることが大切です。

 個人差があるにしても、一度に一人の人間ができる仕事の量は限られています。

「書くこと」は、とても大切です。
 脳の中で組み立てようとしている情報を視覚化し、前頭葉の仕事を助けることになります。

 人間の脳には「マジック7」と呼ばれる性質があり、同時に脳の中で保持したり、系列化したりできる要素は、多い人で7つ、少ない人で3つの5±2が標準的と言われています。それ以上の要素を一度に頭に入れようとすると、どうしても忘れてしまう。
 それを補うには、情報を書いて目に見える状態にしておくか、どこかでまとめをすることが不可欠です。
 まとめをするというのは、たとえば、A→B→C→D→E→F→G→H→Iという要素があるとしたら、それをA~C=1、D~F=2、G~I=3という三段階に大まかに分けて考え、それを把握してから細部に目を移していく。あるいは、まずA→B→Cというプロセスをしっかりと記憶に定着させてから、それ以降を考えていく。そういう考え方をすると、脳の中に7つよりずっと多くの要素を並べておけるようになります。そのまとめをするのにも、書いて視覚的に捉えられるようにすることが有効です。

 『脳が冴える15の習慣』 習慣5 問題解決能力を高める より  築山節:著  NHK出版:刊

 忙しくなると、つい「あれもこれもやらなければ」と、いろいろな仕事に手をつけがちです。
 結果、どれもが中途半端になってしまい、ミスが出てしまう。
 そんなことも、往々にして起こります。

「人間の脳が同時に処理できるのは7つまで」

 頭の片隅に入れておきたいですね。

目のフォーカス機能を使おう

 現代人の脳を取り巻く環境のなかで、十年前と比べてもっとも変わったこと。
 そのうちの一つは、「小さな平面を見ている時間が長くなった」ことです。

 テレビやパソコンなどから入ってくる情報は、「平面に映し出された情報」
 景色を見たり、花の匂いをかいだり、動物に触れたりする。
 そのときの質感が、圧倒的に欠けています。

 築山先生は、「平面に映し出された情報」だけを見ている生活を何年も続けていると、脳機能を維持するのは難しいと指摘します。
 問題は、「目を動かして立体的な情報をキャッチしているか」にあります。

「目」は、人間にとって、最大の情報の入口です。

 目を動かして、積極的に情報を取ろうとしている。
 そのとき、脳の情報をとらえようとするフォーメーション全体が、ダイナミックに切り替わります。

 築山先生は、目と脳の機能を高めるために、以下のような方法を勧めています。

 一つは非常に簡単なことですが、1時間に1回は、目をよく動かすことです。このとき、上下左右斜めに動かすだけでなく、目のフォーカス機能を使うことを意識しましょう。
 窓から遠くのビル群を眺めたり、その上に浮かぶ雲を見たり、飛行機に焦点を合わせてみたりする。現代人は、小さな平面を見すぎているという以前に、狭い空間で至近距離を見すぎていますから、ときどき意識して、思い切り遠くを眺める必要があります。
 遠くを見て想像力を働かせたら、今度は思い切り小さな世界に焦点を合わせてみましょう。観葉植物の葉脈を観察したり、土の上を歩くアリの精密な動きを観察してみたりするのも面白いかも知れません。そうやってダイナミックに目を動かしていると、脳のフォーメーションもダイナミックに切り替わり、思考に柔軟さが出てきます。
 時間があるときには、できるだけ外を散歩するようにするともっといいです。歩いているとき、人は安全を確保するために、目をキョロキョロと動かそうとします。1日に1時間歩くだけでも、目の動きは十分に確保されるようになるでしょう。
 このとき、携帯型音楽プレイヤーで音楽を聴きながら颯爽(さっそう)と歩くのもいいですが、時にはそれを外して、耳から入ってきた情報をきっかけとして目が動く場面をつくると、もっといいと思います。

 『脳が冴える15の習慣』 習慣7 注意力を高める より  築山節:著  NHK出版:刊

 仕事が忙しくても、ときどき、外の風景を眺めたり、一歩外に出て周りの様子を観察する。
 目を動かすことが、脳の機能の衰えを防ぐためには大切です。

 気分転換も兼ねて、デスクから離れると同時に目を動かして色々なものを観る。
 是非、習慣づけたいものです。

クリエイティブな才能は脳の総合力

 現代は、何でもインターネットで簡単に情報を調べられるようになりました。
 しかし、それはあくまで、「他人の知識」です。

 知識を自分で使える記憶にする。
 そのためには、脳の中で保持し、解釈する。
 それを通して覚えるという作業が、どうしても必要です。

 築山先生は、「これだけやれば簡単にひらめき人間になれる」という方法はないと知り、早くから地道な努力を続けることが結果的に創造力を高める最善の方法だと指摘します。

アイデアを生み出しやすくする方法のポイントは、次の三点に集約できます。

  • 何の役に立つのか」より「誰の役に立つのか」を重視して考える
  • アイデアは情報の組み合わせと考える(無から有は生み出せない)
  • 書くことによって情報を脳に刻み込み、まとめをしながら考える

 築山先生は、この三つのポイントをより強化するために有効な習慣を一つ挙げると「活動をマルチにする」ということだ、と述べています。

 いろいろな場面で、いろいろな世代・職業の人たちと交流し、コミュニケーションの中で相手の身になって考える。そういう機会を日常的に持っていると、「この世代の人たちにこういうサービスを提供したら喜ばれるんじゃないか」「この業界にこういうシステムがあったら便利なんじゃないか」といったことが掴みやすくなると思います。
 また、活動をマルチにしていると、同じ業界の中で一つの活動をしているだけではなかなか出会えない、意外性のある「Z軸にある情報」も自然に得やすくなるでしょう。本業とは一見関係のない情報でも「これは使える」「そういうことがあるんだな」と直感的に思ったものを拾っておいて、本業でアイデアを求められたときにパッと組み合わせてみせる。発想の豊かな人は、そういうセンスに長けているものだと思います(また、そういう人は、話を聞くときにも本を読むときにも、よくメモを取っているものでしょう)。
 その才能は、仕事だけを一生懸命やっていても磨かれていかないものです。仕事熱心であるのは良いことですが、同時に、日頃から活動を多面的にしている必要もあります。
 活動を多面的にすると言っても、無理に興味のないことまでする必要はありません。「仕事以外の時間も大事にした方がいい」という程度に考えて下さい。趣味を持っている人は、仕事が多少忙しくなってきても、何とか時間をやりくりして、できるだけその活動を続けましょう。時には家族や友達の趣味に付き合うのも楽しいものです。その中でできる人の輪を大切にして、交友範囲を広げていけるともっといいと思います。
 クリエイティブな能力を高めるために大切なのは、「興味を持って何でもやってみること」「人生を積極的に楽しもうとすること」と言ってもいいかも知れません。何歳になっても創造的な活動を続けている人は、そういう生き方をしているものではないでしょうか? 無理のない範囲で、そこに近づいていけるとすばらしいと思います。

 『脳が冴える15の習慣』 習慣14 創造力を高める より  築山節:著  NHK出版:刊

 自分の仕事に関係のないことでも、興味があることは何でもやってみる。
 好奇心を忘れないことが、クリエイティブな脳を作り上げるということ。

 アイデアの種は、思わぬところに転がっているものです。
 それに気づけるよう、アンテナの感度を高く保ちたいですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 人生は、追い風に恵まれている時期ばかりではありません。
 向かい風の時期や、壁にぶつかって前に進めなくなる時期が必ずやってきます。

 人は立ち止まったときに何もしないと、脳機能が低下します。
 すると、意欲を高めるきっかけもなくなり、次に動き出すことがより難しくなります。

 築山先生は、そういうときのためにも大切なのが、脳にとって良い習慣を身につけておくことだと強調されています。

 脳も、他の器官と一緒で使わないと、機能が衰えてしまいます。
 脳の衰えは、やる気の衰えにつながります。

 脳の力を最大限に発揮し、健康的な生活を続ける。
 そのためにも、脳を怠けさせない習慣を身につけたいですね。

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