本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

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【書評】『世界トップリーダー1000人が実践する時間術』(谷本有香)

 お薦めの本の紹介です。
 谷本有香さんの『世界トップリーダー1000人が実践する時間術』です。

 谷本有香(たにもと・ゆか)さんは、経済キャスター、ジャーナリストです。
 日経CNBCキャスターとして、世界の1000人を超える著名人にインタビューした経験をお持ちです。

トップリーダーは、いかに「時間」を味方につけたのか?

 これまで数多くの著名人のインタビューをしてきた谷本さん。
 世界を舞台に活躍する「トップリーダー」には、共通点があることに気づきました。
 それは、「時間」という概念についての考え方です。

 さて、ここでみなさんに質問です。
「Time is Money =時は金なり」

 これは、「時間はお金と同じくらい大切なものだから、大切に使わなくてはならない」という意味のことわざです。一般によくいわれることですが、果たしてそうでしょうか。
「トップリーダー」たちもそう考えていると思いますか?

 現実には、時間をお金で買うことはできませんし、「ちょっと借りるよ」と他人から拝借することもできません。
 もちろん、有能な人を雇う、タクシーを利用する、便利なアイテムを使うなどの手段で「時間短縮」をして、自分のために使える時間を見かけ上、「買う」ことはできます。しかし、それでも「1万円で1時間が買える」というような確実な取り引きではありません。時間はお金と同じように簡単にやりとりできるものではないということです。
 時間はその人の命と同じ。
 ある意味、お金よりも価値があるのです。

 ところが彼らは、「時間を支配するのは自分だ」と考えています。
「トップリーダー」の時間に対するスタンスを端的に表現するなら、

「Time is on my side =時間は常に私の味方だ」
 という表現がぴったりです。 忙しくしていると、私たちはつい時間に追われるように行動してしまいますが、彼らは決して時間に追われることがありません。「時間を支配できる、味方につけられる者だけが、自分のすべきことを成し遂げられる」と信じているからです。「Time is Money」を超えているのです。

 『世界トップリーダー1000人が実践する時間術』 はじめに より 谷本有香:著 KADOKAWA:刊

 時間を味方につけられる者だけが、自分のすべきことを成し遂げられる。
 それは、トップリーダーだけに限ったことではなく、すべての人に当てはまることです。

 本書は、谷本さん自身が見聞きしてきたトップリーダーの「自分の時間を有意義に使う」方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「今はなんのための時間なのか」と常に意識する

 トップリーダーには、「無駄な時間」が一切ありません。
 ここでいう無駄な時間とは、無自覚に、無意味に使われる時間のことです。

 無駄な時間をなくすために必要なのは、「時間を意識的に使う」というマインドセットです。より具体的にいうなら、「今はなんのための時間なのか」を常に意識し続けるということ。行動は今までとほとんど同じでも、考え方を少し変えるだけでいいのです。
 たとえばトップリーダーは、家族とのバカンス休暇を「仕事に備えてリフレッシュしている」「楽しい時間を共有することで、家族の『自分をサポートする力』を養っている」と考えます。
 パーティーに参加するのは、「長く続けられるビジネスの相手と、信頼関係を醸成するために必要だから」です。
 帰宅してから1人、軽くお酒を楽しむ時間は、「アイデアを生み出すために自分と対話する時間」。眠る時間でさえ、「仕入れた情報を脳に定着させるための時間」「朝一番から効率よく仕事を進めるために必要な休息時間」と捉えます。
 つまり、普通の人が「休暇だ」「飲み会だ」「睡眠時間だ」としか感じない、一見すると意味のない時間にも、意識的に意味を与えているのです。後づけだともいえますが、自分の意図したとおりに行動することで、結果的にすべての時間が無駄ではなくなります。
「今はなんのための時間なのか」と常に意識することを習慣づけるだけで、休み、飲み、楽しむという普通の行動をしていても、結果はまるで違ってくるということです。
(中略)
 常に「今はなんのための時間なのか」を自分に問う習慣がつくと、まずは「本当に無駄な時間」を削れるようになります。
 たとえばパーティーに参加する場合、「これは、ビジネスパートナーと信頼関係を醸成するための時間だ」と定義したなら、相手とある程度有益な会話ができれば、その場の目的は達せられたことになります。すると、再度「今はなんのための時間なのか」を自分に問うことになります。
 その後もその場にとどまって別の経営者と談笑すべきなのか、早めに家に帰って家族とのコミュニケーションをはかったり、明日の仕事に備えて休息時間を長くとることに時間を使うべきなのか。
 もしその場に、自分の目標とも関わり合いのある新しい情報を豊富に持った経営者がいたなら、パーティーに参加し続けるべきだということになるでしょう。「人生のゴール」という長いスパンで見て、それこそが今しかできないことだからです。

 『世界トップリーダー1000人が実践する時間術』 第1章 より 谷本有香:著 KADOKAWA:刊

 同じ「休む」「飲む」「楽しむ」という時間でも、本人の意識によって価値は違ってきます。

 無駄な時間がないという意識が、「時間を支配している」感覚につながる。
 そして「時間を支配している」感覚が、より効率的に時間を使う意識を高める。
 そのような好循環をつくることが、「時間の達人」になる秘訣です。

「何もしない時間」をつくること

 トップリーダーは、つねに忙しく、分刻みのスケジュールをこなしている人がほとんどです。
 その一方で、「何もしない時間」をあえてつくることを心がけています。

 トップリーダーにインタビューを申し込んでも、「15分」など非常に短い時間しかもらえないのはよくあることです。彼らの時間に余裕がないということは、ある意味、真実です。
 とはいえ、ビジネスに長けた彼らは「投資」の必要性も知っています。お金を増やすためには、単に自分が頑張って働き、稼ぐだけでは不十分。稼いだお金を投資して、お金にも「働いてもらう」ことで、効率的にお金を増やすことができるのです。それは「時間」にもいえることです。
 投資とは、本来「余力のお金を使ってするもの」だとされていますが、彼らには余力の時間などありません。そのため、忙しいスケジュールの中から絞り出すようにして「バッファ」の時間を捻出することになります。
 忙しいときこそ、あえて「何もしない時間」を作ること。それが彼らの考える「未来への投資」なのです。

「何も仕事をしない時間」とは、彼らにとってのクリエイティブなシンキングタイムであり、リフレッシュタイムです。目の前にある仕事からいったん離れて、仕入れた情報を整理したり、AとBの情報を組み合わせたり。イノベーティブなアイデアをひねり出し、ビジネスのヒントが降りてくるのを純粋に待つ時間といってもいいでしょう。
 本業とは関係ない本を読んだり、映画を観たりすることで、雑学的に知識を増やしたり、トレンドに触れたりする人もいます。
 手を動かして、決められた作業を進めるわけではないので、一時的には作業効率が悪くなったように感じるかもしれません。
 しかし、バッファの時間に得たアイデアは、必ず未来に生きてきます。今1時間を使うことで、将来何倍もの利子がついて自分に返ってくるのです。そう考えれば、「利回りのいい、確実な投資」といえるのではないでしょうか。実際の投資では、こうはいきません。

 逆にいえば、バッファの時間をとらずに目の前の仕事をこなしていくだけでは、手持ちのアイデアを補充もせずに消費し続けているようなもの。
 今はよくても、ある瞬間になんのアイデアも出なくなって途方に暮れることになります。
 トップリーダーの中には、若い頃に時間を投資せずに働き続けて、一度抜け殻のようになる経験をした人も多いようです。その手痛い失敗によって、身をもってバッファの大切さを学んだ人もいます。

 『世界トップリーダー1000人が実践する時間術』 第2章 より 谷本有香:著 KADOKAWA:刊

 車のハンドルは、「遊び」があるからこそ、自由に車の動きをコントロールできます。
 仕事のスケジュールも、つねにギチギチに詰め込むと、こなすだけで精一杯になってしまいます。
 何かトラブルが発生したときに、回らなくなるリスクもあります。

 バッファの時間をとることは、「未来への投資」。
 さまざまなメリットを生み出してくれるのですね。

トップリーダーが実践する「時短テク」

 トップリーダーは、時間を捻出するために、さまざまな時間短縮のテクニックを利用しています。
 谷本さんは、「何もしない時間」を作るために、日常的な作業や動作を極限まで効率化していると述べています。

 たとえばトップリーダーは、あまりノートパソコンを持ち歩きません。代わりに彼らが愛用するのは「タブレット」です。末川久幸氏(資生堂の前代表取締役社長)などもその1人。
 両者の違いは、カバーの開閉時間と起動までのスピードです。スピードを重視する彼らにとっては、ハイスペックなノートパソコンでも不十分。トップリーダーは、そのわずか数秒の無駄を許しません。

 また、トップリーダーの中には常にボイスレコーダーを持ち歩いている人も多いもの。原田泳幸氏(ベネッセホールディングス代表取締役会長兼社長)も、常にボイスレコーダーを持ち歩いていました。
 会議などで議事録的にメモを取るというよりは、何かアイデアがわいたときや、出先でアポイントが入ったときに録音して、メモ代わりに使うためです。
 ペンとノートをカバンの中から取り出して、メモを書きつける・・・・・という一連の作業よりも、思いつくたびポケットから出して録音したほうが手っ取り早いのです。
 そのため、寝室にまでレコーダーを持ち込み、枕元に置いている人もいるほど。就寝前の読書で得た重要な情報や、起き抜けにわいてきたアイデアを逃さず録音して残すためです。そして、ボイスメモは秘書などのスタッフに文字起こししてもらい、改めて見返して内容を精査します。

 また、アイマスクも彼らにとっては必需品です。人間は、本能的に暗くて静かな環境のほうが安心して眠れるようにできています。アイマスクをすることで、眠るまでの時間を短縮することができ、短時間でも質の高い眠りが実現できるというわけです。
 ちなみに、アイマスクだけでなく耳栓を併用するトップリーダーもいます。光を遮るだけでなく、余分な音も遮ることで、さらに質の高い眠りを追求しているのでしょう。

 『世界トップリーダー1000人が実践する時間術』 第3章 より 谷本有香:著 KADOKAWA:刊

 1回に数十秒しか違わない動作でも、繰り返し行うと大きな差となって現れてきます。
 トップリーダーはその数十秒にこだわり、「時短」しているということ。

 まさに、「塵も積もれば山となる」。
 彼らの時間を大切にする姿勢は、私たちも見習いたいですね。

「決断力」を鍛えること

 トップリーダーを語るうえで欠かせないのが、「決断力」です。
 決められた時間のなかで、膨大な量の仕事をさばいていけるのは、決断が早いためです。

 では、彼らの並外れた決断力は、どのように鍛えられたのでしょうか。

 彼らのジャッジが早いのには、いくつかの理由があります。
 1つ目は、彼らがすべての選択を30年後、50年後という人生のゴールと照らし合わせて決めているからです。「ゴールからみて、今の自分はどの段階にあるか」と時間にズームイン&ズームアウトすることで、今すべきことを瞬時に把握できるのです。
 2つ目は、彼らが自分の判断に自信を持っているからです。
 トップリーダーはあらゆる局面で常に決断を迫られるので、決断の経験が豊富です。これは何にでも当てはまることですが、絶対的な「量」はやがて絶対的な「質」につながります。彼らは、「決める」という経験を積むことで決断に慣れ、その決断で得られた成果によって「自分の決断は正しい」と自信を育てているのです。若い方に関していえば、もう少し経験が必要かもしれません。
 3つ目は、「悩むことが一番の無駄」という彼らの主義によるものです。
 トップリーダーは、「悩む」ことと「考える」ことはまったく別物だと考えています。決断を迫られたとき、「やるべきか、やるべきではないか」と迷うのは、考えることではなく悩むことです。
 状況をきちんと把握していれば、迷う必要はありません。数字に則って、すぐに「GO」を出せばいいのです。そこで迷うということは、状況を把握できていない=勉強不足なのか、結果に自信がないのかどちらかです。
 結果に自信がなくても今やるべきなのか、撤退したほうがいいのか。状況によって判断は変わってくるかもしれませんが、自分が設定した人生のゴールと照らし合わせれば、すぐに決断できるはず。もし勉強不足なら、勉強すればいいだけです。どちらにしても、悩む必要はありません。

 『世界トップリーダー1000人が実践する時間術』 第4章 より 谷本有香:著 KADOKAWA:刊

 私たちも、身近な決断をスピードアップさせることで、決断力を鍛えることができます。
 たとえば、今日のランチは何を食べるか、などですね。

 谷本さんは、小さな成功体験は、自分の決断力に対する自信につながっていくと述べています。
 できることからコツコツと実践したいですね。

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「時間」は、誰にでも平等に与えられ、自由に使える資源です。
 ただ、あまりにも身近すぎて、その大切さを忘れがちです。
 トップリーダーの方々は、時間の貴重さを身にしみて感じ、大切に使ってきたからこそ、今の地位を築いたのでしょう。

 谷本さんは、一番大切なのは「時間と向き合う」というマインドだとおっしゃっています。
 目の前の一瞬一瞬を味わい、楽しみ、使い尽くすこと。充実した時間か積み重なった結果、なんらかの成果が現れ、私たちの人生はもっと充実したものになっていくとのこと。
 私たちも、トップリーダーが実践する時間術から学び、時間を味方につけ、充実した人生を送りたいものです。

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