本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『成功脳と失敗脳』(茂木健一郎)

 お薦めの本の紹介です。
 茂木健一郎先生の『成功脳と失敗脳』です。

 茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)先生(@kenichiromogi)は、脳科学者です。
 ご自身のご専門に留まらず、幅広い分野で活躍されています。

成功者たちの脳に隠された、驚くべき真実!

 茂木先生は、成功者になれるかどうかは、実はちょっとした脳の使い方で決まると指摘します。
 つまり、成功者は、成功すべくして成功する「成功脳」を持っているということ。

 成功脳とは、「成功体験を積み重ねるのがうまい脳」のことです。

 成功脳の持ち主になるための秘訣、それは、「どんな些細な成功でも、自分を褒めてあげる」ことです。

 ほんの些細なものですが、私自身が今でも覚えている成功体験があります。
 それは、小学校のときに、縄跳びの二重回しを200回連続でやれたことでした。
 最初はなかなかうまく二重回しができなくて悩んでいました。しかし、決して諦めずに練習して、できるようになったときの喜びは今でも忘れることはありません。
 おそらく、縄跳びができたこと自体は、人生を左右するような成功ではないでしょう。
 それでもそのとき、喜びや達成感に満ち溢れたときに放出されるドーパミンの放出方法を学んだ気がしています。
 たとえ失敗を積み重ねても、それでも諦めないでやっと成功するという体験は、本書のテーマとなる「成功脳」「失敗脳」を考える上では、とても重要なポイントになってきます。
 つまり、成功体験を積み重ねて神経伝達物質であるドーパミンをいかに出せるかが、「成功脳」を持つ大きなきっかけになっていくというわけです

 『成功脳と失敗脳』 はじめに より 茂木健一郎:著 総合法令出版:刊

 脳は、実はすべてパターンで回路が働いています。
 つまり、成功脳、失敗脳というのは、成功脳のパターン、失敗脳のパターンがあるということ。

 本書は、「成功脳」のパターン手に入れ、さらに強化するための方法についてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「脳の安全基地」をつくろう!

 成功脳への近道は、少し厳し目の評価を自分に課し、それ積み重ねることです。
 問題は、脳の「安全基地」がないために、「自分にダメ出しをする」ことを極度に恐れてしまう場合があることです。

 脳の安全基地というのは、脳科学上の考え方で、それがあるから(安全な場所があるから)「安心して自分にダメ出しができる」あるいは「新しいことにチャレンジできる」というものです。
 この脳の安全基地というのは、親の育て方や周りの人との人間関係などが、その形成に非常に大きく関係しているといわれています。
 子どもの頃から親に認めてもらえず、「おまえはダメだ」「おまえは何もできない」といわれて育ってきた人は、自分の中に「根拠のない自信」という安全基地がないため、失敗してしまったときに、それが直視できなくなってしまいます。
 そして、「できれば不確実性から逃れたい」「安全な所に逃げたい」と考えてしまったり、ついつい自分を甘やかしてしまったり、他人からの批判に耳を傾けることができなくなったりします。

 そこで、自分にダメ出しができないという不安を抱えている人は、今一度、自分はどんな安全地帯を持っているのか見直してみるといいかもしれません。
 私たちにとっての安全基地とは、親からの承認以外にも、人生の中で培ってきた「経験、価値観、人脈」といったものからもたらされる「自信」からも形成されるものだからです。
 そして、その自信と不安とのバランスをうまく取ることができるようになることが大きなポイントになります。すなわち「確実なものと不確実なものをうまく受け入れるバランスを保つ」ことが大切になってくるということです。
 それができるようになれば、自分の評価も厳しくできるようになったり、不確実性に適応することができるようになったりするものです。
 やはり人間というのは、自尊心を持たないと成長できません。
 ここでいう自尊心の本質というのは、「自分にダメ出しができる」というプライドを持つことなのです
 これは、イチロー選手でも宮﨑駿(みやざきはやお)監督でも、世界で成功している人はみんな持っているものです。

 『成功脳と失敗脳』 第1章 より 茂木健一郎:著 総合法令出版:刊

 成功した人は、その裏で数え切れないほど多くの失敗を重ねているものです。
 茂木先生は、「失敗は成功の準備」だと思えば、設定した目標に向けた努力を継続できると述べています。

「根拠のない自信」という安全基地。
 いざというときのために持っておきたいですね。

「人を夢中にさせる仕組み」ゲーミフィケーション

 成功脳を活性化させるための手法として有効なのが、「ゲーミフィケーション」です。
 ゲーミフィケーションとは、ゲームの持つ「楽しさ」や「人を夢中にさせる仕組み」を仕事や勉強に取り入れようという考え方のこと。

 私自身、すでに子どもの頃から、勉強にしても遊びにしてもゲーム化して夢中で楽しむという知恵を自然と身につけていました。
 私が小学生のときにやっていたのが、読んだ本をグラフにすることでした。
 このように、視覚化するというのは非常に重要な要素であって、「今年になって何冊の本を読むことに成功した」というのがグラフになっているというのは、やはり脳にとって大きな励みになります。
 また、マラソンにしても「連続何日走ることができたか」という記録をつけるのが好きでした。
 子どもながらにそういったゲーミフィケーションをしていたことが、大人になった今でも役に立っていることは、いうまでもありません。

 このゲーミフィケーションにおいて欠かせない要素というのは、「目標設定をして計測する」ということです。
 私の場合でいえば、原稿を執筆するときに「何時までに終わらせたら成功!」としたり、「今日は英文を1000字書けなかったから失敗」としたりしながら、ゲーム感覚で取り組むことでゲーミフィケーションの効果を得られています。
 そして、このゲーミフィケーションを楽しむためには、まず成功と失敗を自分で定義するということが大事なポイントになってきます。
 そうでなければ、そもそもゲーミフィケーションが成立しないからです。
 成功と失敗の分岐を自分でしっかり定義して、自分で自分の報酬構造を決めるというのが、ゲーミフィケーションにおける極めて重要なテクニックになるということです。
 そのように成功と失敗の分岐を自分でしっかり定義する、すなわち自分でゴールを決めて、達成したときの満足感を得ることで、毎日の仕事や勉強における成長のスピードも大幅に変わってくるはずです。

 実際に、遊び感覚を持っている成功者というのは、脳のやる気も維持しやすくなるという特徴があります。
 実は、このゲーミフィケーションには脳をやる気にさせるという側面もあるのです。真面目な動機を持っていないとしても、そういうゲーム的な観点から自律的な行動につながっていきます。
 というのも、脳の報酬物質であるドーパミンが働くには、抽象的な報酬で十分だといわれているからです。
 ですから、仕事でも勉強でも抽象的な報酬でいいのです。ちょっとうれしいくらいの成功体験でも脳は十分満足するのです。
 抽象的な報酬というのは、自分でいくらでもつくり出せるはずです。

 『成功脳と失敗脳』 第2章 より 茂木健一郎:著 総合法令出版:刊

 重要なのは、クリアすべき目標を難しすぎず、簡単すぎずの程度のレベルに設定することです。

「勝つか負けるか、五分五分」の勝負が一番熱くなるもの。
 そんなゲームをつくるには、現時点での自分の実力をしっかり把握しておくことが必要です。

 どうせやるなら、楽しんでやらなければ損です。
 ゲーミフィケーション、ぜひ、取り入れたいスキルですね。

成功脳に必要不可欠な「フロー」を手に入れよう!

 成功脳を強化していくには、目の前の仕事にどれだけ集中できるかが重要となります。
 そのカギを握るのが、「フロー理論」です。

 フロー理論とは、ハンガリー出身でアメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱している概念で、脳がとてもリラックスしている状態にもかかわらず、最高のパフォーマンスが発揮できている状態のことをいいます
 私がこのフロー体験において、わかりやすい好例としてよく挙げるのが、長野オリンピックのスピードスケートで金メダルを獲得した清水宏保(しみずひろやす)さんのものです。
 清水さんは、世界新記録を出したときのレースを振り返り、次のように語ってくれました。
「世界新記録が出るときには、むしろ『流している』感覚に近いほど、リラックスしているんです」
 つまり、本当の意味で集中したフロー状態というのは、ただがむしゃらにやるということとはまったく違うということがいえるのです。
 時間を忘れるほどやっていることが楽しい、あるいは自分の得意なことをリラックスした状態でやっている。そのときこそ最高のパフォーマンスが発揮されるのです。
 ただこのとき、スキルよりも課題が上だと不安になり、スキルのほうが課題より上だと退屈を感じてしまいます。
 最も理想的なのは、スキルと課題がともに少しずつ、右肩上がりに上昇していく状態です。
 仕事において最高のパフォーマンスを発揮するとき、あるいは勉強で深い学びができているときというのは、集中していて時間の経つのを忘れ、まるで木もれ日の中にいるようなリラックス感があるはずです。
 つまり、フロー体験の階段を上るためには、自分自身によい意味での負荷をかけながら、課題とスキルを一致させる必要があるのです。

 『成功脳と失敗脳』 第3章 より 茂木健一郎:著 総合法令出版:刊

 集中していると、ドーパミンやβエンドルフィンといった脳内物質が分泌されて、ある種陶酔した状態になります。
 重要なのは、質の高いパフォーマンスを上げる状態と幸せを感じる状態を一致させること。

 どんなことでも、リラックスして前向きに楽しむ。
 そして、目の前のことだけに集中して取り組む。

 フロー状態を体験し、成功脳を強化していきたいですね。

「意識高い系」は典型的な失敗脳

「意識高い系」という言葉があります。
 この言葉は、ネット上で自分の経歴や人脈を過剰に演出していて、一見すごい人のように思えるのですが、実際の経歴や活動はたいしたことがない人々を指しています。

 茂木先生は、意識高い系の人というのは、勝つか負けるかという五分五分の勝負をしていないのではないかと指摘します。

 意識が高いというのは、本来素晴らしいことだと思うのですが、努力する方向が間違っていたり、地に足が着いていないということは、すなわち「負け癖」がついてしまっているといわざるを得ません。
 これはまさに、失敗脳の典型的な例です。
 本当に意識が高く、常に真剣勝負をしている人というのは、目の前の課題に集中して取り組んでいるので、あまりそういった浮ついたことはいわなくなるものです。
 常に真剣に勝つか負けるかの勝負をしている人が、最後に成功脳を手に入れるのです。そこが、意識高い系と本当に意識が高い人の違いなのです。

 そこで、イチロー選手の言動を参考にしてみてはいかがでしょうか。
 今もメジャーの現役で真剣勝負を毎日繰り広げているイチロー選手は、本当に意識が高い人だと感じます。
 イチロー選手は自分がやるべき目の前の課題がわかっているからこそ、あまり大きなことをいうことはありません。常に、謙虚な姿勢で努力を続けています。
 そんなイチロー選手でさえ、3割しかヒットを打てません。それでも常に、目の前1打席1打席のための準備を怠りません。この姿勢は、私たちビジネスパーソンも見習うべきではないでしょうか。
 失敗を重ねてしまう人は、もしかすると1割しかヒットを打つことができないかもしれません。
「もっと自分は成長したい」と思っているのに、結果として負けが多くなってしまうことだってあります。
 しかし、たとえ1厘でも打率を上げるために、毎日五分五分の勝負をしているのでしょうか。
 自分の失敗癖、負け癖を、成功癖、勝ち癖に変える努力をしているのでしょうか。

 まずは、謙虚な姿勢で「本当の意味で自分にダメ出し」をしてみてください。
 繰り返し述べますが、失敗というのは誰でもするものです。イチロー選手だって三振することもあるのと同じです。
 失敗の内容を自分自身でしっかり把握することが極めて重要であって、同じパターンで失敗していても意味がありません。
 違うパターンで良質なトライアンドエラーを繰り返さなければ、そもそも失敗とはいえないということです。
 例えば、自分の仕事のやり方にしても、勉強のやり方にしても、「自分はこういうやり方でやってきた」というのは、それはそれで一つの財産になっていますが、それが見方を変えると不良資産になっている場合もありますし、そのやり方自体が自分の限界になってしまっている場合もあります。
 それを正確に把握するためには、自分を外側から客観的に見る視点が必要になってきます。それを脳科学の世界では「メタ認知」と呼んでいます。
 たとえ負け続けていても、やり方を変えながら挑戦していれば、より自分を客観視できる習慣が身についてくるはずです。

 『成功脳と失敗脳』 第4章 より 茂木健一郎:著 総合法令出版:刊

 メタ認知は、自分の思考や行動そのものを対象として、客観的に把握し認識することです。
 自分の実力を正確に認識するためには、欠かせない能力です。
 これがないと、できるかできないか、五分五分の目標を設定することもできません。

 メタ認知の能力は、「トライアンドエラー」を繰り返すことで磨かれます。
 失敗からこそ、大きな学びを得ることができます。

 失敗を怖れずチャレンジする勇気。
 失敗を客観的に振り返ってダメ出しする勇気。
「意識高い系」のイタい人にならないよう、つねに持っておきたいですね。

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 成功する人と失敗する人の違い。
 それは、頭(脳)の性能というよりも、使い方にあります。
 成功する人には成功を呼び込む思考の回路が、失敗する人には失敗を呼び込む思考の回路が、それぞれ働いているということ。

 脳を喜ばせ、報酬(ドーパミン)を出させることができるか、できないか。
 それが「成功脳」と「失敗脳」の分かれ道になります。
 ただ必死になって考えこんだり、悩んだりするだけではだめ。
「遊び」や「ゲーム」の要素を取り入れて、楽しみながら取り組むがポイントです。

 人間の脳には、「可塑性」があるので、いくつになっても変えることができます。
 私たちも、脳の特徴を理解して使いこなし、「成功脳」を強化していきたいですね。

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