【書評】『「なりたい人」になるための41のやり方』(窪田良)
お薦めの本の紹介です。
窪田良さんの『「なりたい人」になるための41のやり方』です。
窪田良(くぼた・りょう)さんは、起業家・会社経営者です。
緑内障原因遺伝子「ミオシリン」の発見者として有名な方です。
2002年に自ら会社を設立、「飲み薬による失明の治療」を目指し、さまざまな眼科治療薬を開発されています。
いざ、「なりたい人になる」旅へ!
窪田さんは、10歳のときに「なりたい人になる旅」に旅立とうと決心します。
そして、「研究者」と「臨床医」という大きな冒険を経て、「バイオベンチャー企業の創業社長」という三度目の冒険にチャレンジ中です。
CEOを解任されるなど、たしかにアクシデントがなかったわけではないが、正直なところ、楽しいから続けられたというよりも、そのアクシデントも含めて旅のすべてがあまりにも楽しいのでやめられなかった、というほうが実感に近い。
「なりたい人になる旅」は、お菓子の宣伝文句ではないが、「やめられない、とまらない」、本当に楽しいものなのだ。
だって考えてみてほしい。夢に描いた「なりたい人」に自分が日々近づいていくのだ。これが楽しくないはずがない。
江戸幕府を開いた徳川家康は、「人の一生は重き荷を負うて遠き道を行くが如し」といったという。
この言葉のように、人生はつらいものだと思っている人は多いのではないだろうか?
世界にそういうつらい人生があることは事実だ。だが、眉間にしわを寄せて歯を食いしばって歩くだけが人生のすべてではない。人生は雨が降る日もあれば晴れる日もある、雨が降るからこそ晴れる日の喜びもひとしおだ。荷物がちょっと重くても、道が遠くても、心から楽しいといえる人生があることをわたしは知っている。
楽しくてついついやってしまう。
楽しいからやめられない。
そんなことを続けることで開ける人生もあるのだということを、わたしは本書を通して知ってほしいと思っている。『「なりたい人」になるための41のやり方』 はじめに より 窪田良:著 サンマーク出版:刊
「世界から失明を失くす」という、とてつもなく大きな夢を抱く窪田さん。
ときどき大きく進路を変えつつ、自分が心からやりたいことをやりながら、最終目的地を目指す。
本書は、そんな窪田さんの「なりたい人になる旅」を通じて、「なりたい人になる」方法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「限界だ」と決めつけているものを取っ払う
窪田さんは、「リミッター(限界意識)を外す」ことで、さまざまな問題を乗り越えてきました。
人間の能力の本当の限界は「もう限界」と思った先の先にある
ものです。
とはいっても、すべてのリミッターを外す必要はありません。
窪田さんは、頑張りが必要なところのリミッターだけ部分的に外せばいい
と述べています。
日本人は「頑張れ!」といわれると、休日返上で、夜も寝ないで頑張ってしまう人が多い。しかし、精神的リミッターはすべて外してしまわないほうがいい。
能力の限界を引き上げたいところのリミッターを外し、他のリミッターは残しておく。実はこうしたメリハリの利いた外し方が、もっもと安全なうえ、もっとも効率もいいのだ。目指してほしいのは、必要なところでベストを尽くしつつ、どこかに余力を残している状態を維持すること。
わたしの場合は、リミッターを外すという意識もないままに外れてしまうところがあるので、逆に忙しいときほど、意識してリラックスする時間を持つようにしている。
実際、網膜にかかわる病気の原因遺伝子を見つけるという冒険を行っていた研究者時代、人が驚くほど実験回数を重ねていたが、その間には、長期休暇をとってアメリカのIMGニック・ボロテリー・テニス・アカデミーのキャンプに参加し、本格的にテニスに没頭する日々を送ることもあった。
六年にわたる研究の末、私は幸運にも緑内障の原因遺伝子「ミオシリン」を発見することができたが、結果が出るまで努力し続けることができたのは、メリハリの利いた日々を過ごしていたからだと思う。
そんなわたしの会社では、今みんなが「Play hard, work hard/全力で遊び、全力で働く」といい合っている。そうしてスタッフには、自分の都合に合わせて長期休暇をとり、しっかりとリフレッシュすると同時に、仕事をするときにはリミッターを外して思いっきり働いてもらっている。
冒険の旅では、いつどんなアクシデントが起きるかわからない。
つねにメリハリなく頑張ってしまっていると、いざというときに、それ以上の頑張りが効かなくなってしまう。いつ、どんなことが起きても対処できる「余力」を持ちつつ、自ら設けた限界を一つずつ外していく。イノベーションは、そうして限界を外していった先に起きるものなのだ。『「なりたい人」になるための41のやり方』 4 より 窪田良:著 サンマーク出版:刊
全力で取り組みながらも、力を抜けるところは抜く。
そんなメリハリの効いた取り組みが、結局は、もっとも効率がいいのですね。
必要なリミッターは外しながらも、「余力」は残しつつ前進する。
省エネ運転で、人生の長丁場を乗り切りたいですね。
「あきらめが悪い人」になる
窪田さんは、自他ともに認める「あきらめの悪い人」です。
解決不可能に思えるような大変なトラブルに直面した。
窪田さんは、そんなときでも、最善の道へ進める可能性がゼロでなければ、ベストを尽くす前にあきらめてはいけない
と述べています。
わたしはいつ死んでも「まったく後悔はない」といい切れる人生を生きている。
なぜなら、自分なりに「ベストを尽くした」といえるように生きているからだ。
そういう意味では、方向修正もまた、わたしにとってはベストを尽くした結果にほかならない。
ベストを尽くすのに必要なのは、先入観を取り払って、瞬間瞬間のフィードバックを加味して、自問自答して最善の道を探すことだ。
だから、決してあきらめない一方で、物事に固執する必要もない。
それまでにそうすることが最善だと思っていたとしても、状況は刻一刻と変わっている。その変わり続ける状況のなかで、自分が考えている最善が、今この瞬間も本当に最善なのか、それはつねに自問自答する必要がある。
状況が変われば最善もまた変わる可能性があるからだ。
このときも感情に振り回されないように注意しなければならない。自分の感情は遮断し、集めた情報をもとに冷静に、そして客観的に「最善」を判断しなければならない。
そうして選んだ「最善」なら、あとは持てるかぎりの力でベストを尽くすだけだ。
文字通り、死ぬまでやり続けて、途中で息絶えたら「ああ、それまでの人生だった」というだけのことだ。それに後悔はない。成功も失敗も大切なのはプロセスだといったが、人生も同じだと思う。
なりたい人になるために、最善を選び続けるプロセス自体に価値があるのだ。『「なりたい人」になるための41のやり方』 11 より 窪田良:著 サンマーク出版:刊
ある方法でやってみたら、うまくいかなかった。
すると、多くの人は「やっぱりダメだ」とあきらめてしまいます。
しかし、成功する人は違います。
あきらめず、成功するまで、何度でもチャレンジします。
「トライアル・アンド・エラー」の繰り返し。
それ以外、成功にたどり着く道はないということです。
経験から生まれた「直感」こそ大事にする
誰もやったことがないことを成し遂げる。
「0」から「1」を生み出す道には、わかりきった正解はありません。
当然、多くの苦渋の決断を迫られることになります。
窪田さんは、そうした状況下で決断するとき、指針となったのは自分の「直感」
だったと述べています。
わたしは自分の「直感」の力を信じている。
なぜなら「直感」とは、自分の経験にもとづく無意識による意思決定だと思っているからだ。
成功の秘訣は、実は「意識しないところ」にあるのではないだろうか。
スポーツのトップ選手を見ていると、つくづくそう思う。
彼らはとてつもなくすごいことを「何気なく」やっている。いや、むしろ何気なくやっているときのほうが、動きはスムーズでまったくムダがない。
ああやって、こうやってといちいち考えていたら、あれだけ洗練された動きをあれだけのハイスピードで行うことは不可能だ。彼らは、意識レベルに上らない形で体を動かすことができているからこそスーパープレイができるのである。
では、どうすれば考えなくても体が動くようになるのか。
答えは一つ、「練習」しかない。
よく「体に叩(たた)きこむ」とか「体が覚えている」といった表現がされるが、スポーツ選手は、意識しなくても体が動くようになるまでハードな練習を繰り返し行う。
だから、その状態というのは、体が勝手に動いているようだが、実は無意識の領域で瞬間的に情報処理が行われ、最善の判断が下され、その結果が体の動きに反映されているのである。
経営の場で求められる決断力も、スポーツと同じ方法で高めることができると、わたしは考えている。
(中略)
経験が豊富であればあるほど、直感の精度も増していく。そういう意味では、経験の少ない人が最初から「直感」を信じるというのは、少々危険だといえる。
最初は、やはり情報をもとに合理的に考えて判断することが望ましい。そうして意識的に考え、トライアル・アンド・エラーを繰り返しているうちに、その経験が信頼に足る「直感」をもたらしてくれるようになる。わたしは人より記憶力が悪い。そのため、自分が過去にどのような判断をもとに決断してきたのか、細かくは覚えていない。
そんなわたしでも、直感力が研ぎ澄まされてきているという実感があるので、経験はたとえ忘れてしまったとしてもムダにはならないようだ。
おそらく、記憶を引き出しに収めた書類にたとえるなら、思い出せないというのは引き出しが開きにくくなっているだけで、引き出しのなかにはさまざまな書類(経験)が詰まっているのだろう。
そして、この引き出しは、意識的には開けることができないが、無意識の領域ではスムーズに開き、中の書類も必要に応じて活用されているのではないだろうか。
スポーツ選手が、意識して考えるとできない動きを、無意識で軽々とできてしまうのと同じように。
何事も経験に勝る学習はない。決断力を向上させる最善の方法は、多くのトライアル・アンド・エラーを経験し、自分の直感を信じられる人になることなのだ。
『「なりたい人」になるための41のやり方』 16 より 窪田良:著 サンマーク出版:刊
直感は、何の根拠もない「ひらめき」ではありません。
多くの思考や練習を重ねて、体や頭に沁みこんだものが、そのベースにあります。
直感の精度を高めるためには、ただただ、練習あるのみ。
無意識でも、体が動くくらいに反復して繰り返す。
スポーツでも、ビジネスでも、それは一緒だということですね。
自分の決断を努力で正解にする
二者択一を迫られたときの、窪田さんの選択の基準。
それは、そのときに得られている限られた情報をもとに考えて合理的なほうを選ぶ
です。
もっとも大事なのは、「どんな決断をしたか」ではありません。
どんな決断をしたとしても、自分の決断を正しいと信じ、それを正しいものにしていく努力をする
ことです。
あらゆる価値観は相対的なものであって、絶対ではない。
人間はみな、いつかは死ぬ、ということは絶対的なことかもしれないが、視野を広げれば広げるほど絶対といえるものは少なくなる。
たとえば、多くの人が絶対だと思っている「人を殺すのはよくない」という価値観でさえ例外はある。
理不尽な暴漢から身を守る「正当防衛」の場合はどうだろう。
人質をとって立て籠もっている凶悪犯を狙撃する場合はどうだろう。
「正解」はその人が置かれている立場によって変わるものなのだ。
私が正しいと思っていることを、他の人は正しいと思わないかもしれない。でもそれは、人それぞれの置かれた立場が違うのだからしかたがないことなのだ。
だからわたしは、自分にとって正しいと思ったことを正しいと信じることは、何も迷うことなく、すべきことだと思っている。
たとえば、わが社は大手製薬企業と大きな契約を結び、2014年2月には日本の株式市場に上場した。このときなぜナスダックではなく、東証マザーズで上場したのか。契約を結ぶ相手も、なぜ他の製薬会社ではなくそこに決めたのか。
答えは「わたしが、それを正しいと思ったから」でしかない。
たしかに選択肢はいくつもあった。正しい答えはほかにもあったかもしれない。まわりにはわたしとは違う考えの人もいただろう。
それでも、わたしは自分のした決断こそ、自分にとっての正解だと信じて、結果を出すための努力をしている。
自分が正しいと思ったことをするのに遠慮はいらないし、他人にどうこういわれる筋合いもない。
何より、自分が正しいと思ったことをしないと、自分がマイナスだと思う結果になったとき、必ず「なぜ、あのとき自分の判断を信じなかったんだ」と後悔する。
後悔したくなければ、まわりの人に理解してもらえないことがあることも覚悟したうえで、自分の判断を信じるしかない。
ただし、ここで絶対に忘れてはいけないのは、相手には相手の正解があるのだから、自分が理解できない決断を相手がすることも許容しなければならない、ということだ。
自分に、自分が正しいと思ったことを信じて行う権利があるように、人にもその人が信じた正解にしたがって生きる権利がある。正解が相対的なものである以上、それを認め合うことが公正というものだ。
正解は一つではない。
「正しいと思ったことを正しいと信じる人」はそのことを心に刻んでおいてほしい。『「なりたい人」になるための41のやり方』 18 より 窪田良:著 サンマーク出版:刊
あらゆる価値観は相対的なものであって、絶対ではない。
人を殺すことでさえ、「正義」になり得るということ。
絶対的な基準がない以上、最終的には、自分の判断を信じて突き進むしかありません。
「正しいと思ったことを正しいと信じる人」でいたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「世界にインパクトを与える人になりたい」
そんな思いを抱きながら、自らの信じた道を歩き続ける窪田さん。
山あり谷ありの旅でしたが、多くの人の支えられながら、困難を乗り越えてきました。
「世界から失明を失くす」という世界に貢献する大きなビジョン。
それに向かって、ひたすらに突き進む情熱。
窪田さんの「本気」が、周囲の人々に伝わり、多くの力を得ることができた結果でしょう。
どんなに不可能に思えることでも、信じて続けることで、必ず突破口が見つかる。
窪田さんの生き方は、「チャレンジし続けること」の大切さを私たちに教えてくれます。
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