本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『仕事と人生で成功するために本当に必要なこと』(新将命)

 お薦めの本の紹介です。
 新将命さんの『仕事と人生で成功するために本当に必要なこと』です。

 新将命(あたらし・まさみ)さんは、日本を代表する会社経営者です。
 シェル石油、日本コカコーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど、グローバル・エクセレント・カンパニー6社で、社長職を3社、副社長職を1社経験されています。

40歳、どうしたら、納得のいく人生を築けるのか?

 新さんが、今の日本社会において気がかりなこと。
 それは、感覚的には80パーセント以上の40代、50代の中高年の部長、課長クラスに元気がないことです。

 働き盛り、人生で一番脂(あぶら)ののっている年代であるはずのこの世代に元気がない理由とは何か。実際に声を聞いてわかったのは、彼らを大きな不安に陥れている原因の一つは、将来に対する不安だったということである。現に40〜44歳の86.9%は将来の経済的蓄(たくわ)えに関する不安を感じているという数字もある。
(中略)
 だが、忘れていけないのは、40代、50代とて、人生はまだまだ先が長い、ということである。例えば40歳の人が80歳まで生きるとすれば、今はちょうど半分の曲がり角だ。さらに、ビジネス人生を40年とすれば、これまたまさに半分である。もしあなたが、40歳ならば、いわゆる定年までのアクティブなビジネス人生は残り、約20年ほどだということを意味している。
 80歳まで生きるとなれば、その先にさらに少なくとも20年というアフタービジネス人生の長い長い時間が待ち構えているのである。つまり、

 60(定年)ー40(現在の年齢)=20(アクティブ現役としての持ち時間)
 80(寿命)ー60(定年)=20(定年後の持ち時間)

 アクティブ現役としての持ち時間は20年、定年後の持ち時間も20年である。
 この時間をどう使い、どう生きるか。先の人生を見据えて今から準備をしておくべきなのだ。

 これからの自分の価値は何か。それを意識して40代以降の人生の後半戦を生きることこそ、先の
「どうしたら、そのような人生が送れるのでしょうか」
 という問いに対する私の答えだ。

 『仕事と人生で成功するために本当に必要なこと』 はじめに より 新将命:著 ダイヤモンド社:刊

 本書は、新さんが自らの経験から得た、「40代からの人生を充実させるための原理原則」を説いた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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目標達成を最短化するための具体的な方法

 新さんは、32歳のときに、「45歳までには社長になる」という長期目標をつくりました。
 そして、その目標通り、45歳のときにジョンソン・エンド・ジョンソンの社長となります。

 なぜ私がほとんどの目標を達成できたのか。私が実行したことにヒントがあるとすれば、それは、「紙に書く」ということだ。私は33歳のときから、毎年、手帳の最後のページに目標を書き記していた。この「紙に書く」ということが、極めて重要である。「頭に入れたこと」は、2週間を過ぎると80パーセント以上忘れてしまうという紙に書けば忘れない。忘れても思い出すためのリマインダーとなる。
 あまりたくさん書くとすべては追えないし、かといって1つでは寂しいので、ちょうどいいころあいの6つか7つの目標を手帳の左側に書き、さらにそれぞれの目標を達成するために何をやるのか、という行動計画をその右側にごく簡単に書いておいた。

「目標を紙に書くのに、1年で一番良い日はいつでしょうか?」と質問すると、「正月!」と答える人がいる。「誕生日!」と叫ぶ人もいる。私の場合、最初に書いたのは元旦だった。先ほどの質問に「正月!」と答えた人のように、1年の計は、と言いたいところだが、実はたまさか思い立ったのが元旦だったという偶然の賜物である。
「正月!」と答えた人は今日が2月1日だったらあと11ヶ月待つのだろうか。「誕生日!」という人は、あと364日も待つのだろうか。そう考えると、目標を立てるのに1年で最善の日は「今日」なのである。
 そして1年後に、クリアしたものがあれば削除する。これはまだまだだ、と思うものがあれば継続。そして、新しい目標が生まれたらさらにそれを追加していく――。必要があれば目標や行動計画を修正することもある。削除、継続、追加、時には修正の繰り返しである。
 私は毎年、何十年にもわたってこれを続けてきた。実は今もやっている。
 過去の手帳は、言ってみれば私の人生の記録でもある。以前、保管しておいたものをダンボールから引っ張りだして眺め、すべてチェックしてみたことがある。40数年の間に、累積的に見て、書き上げた納得目標の達成率は約85パーセントというところだった。

 この経験から私が学んだのは、人生というのは、考え方とやり方によってはけっこう自分の思う通りになる、ということである。私のように、とりわけこれといった才能がない平凡な男であっても、1つのことを「削除・継続・追加・修正」で続けていくだけで、人生を大きく変えられたのだ。そのための方法論こそ、短期と長期の納得目標を追い続ける、ということだったのである。

 『仕事と人生で成功するために本当に必要なこと』 第1章 より 新将命:著 ダイヤモンド社:刊

「思い立ったが吉日」という言葉もあります。
 自分にとってためになることをやるのに、早すぎることはありません。

 長期の目標は、いわば「目的地」です。
 人生という旅路を有意義なものにするためも、欠かすことができません。

 それを紙に書いたものは、「地図」です。
 目的地を、よりはっきりとイメージすることかできますね。

会社員にとっての「幸せの三条件」

 新さんは、自らの経験的な信念から、人間、とりわけビジネスパーソンには「幸せの三条件」があると述べています。

①「自分がやりたいことをやっている」
 やっていて面白い。ワクワクする。自分で納得できる。「ヤッタルデ!」という、押しつけ型ではないチャレンジ精神が持てる。これが何かは、それこそ人生いろいろ人いろいろで、個々別々である。仕事の面で言えば営業かもしれないし、経理かもしれない。製造かもしれないし、企画かもしれない。広報かもしれないし、法務かもしれない。これは、人によって違う。人には個性や適性というものがあるからだ。しかし、どの仕事であれ、自分が本当に「やりたいこと」をやっているのは幸せなことだ。
 もし私が学校を出て、経理部に配属されていたら1週間で辞めていたかもしれない。もちろん、経理の重要性は認める。経理がなければ、会社は立ち行かない。ただ、自分の個性には合わないし、得意分野でもない。やはり、営業やマーケティングが自分には合っていた。ピーター・F・ドラッカーの言葉に、

 “Accentuate the positive. Eliminate the negative” (強みを伸ばし、弱みを排除せよ)

 とある。優先順位としては強みを伸ばすほうが先に来る。好きなことは得意なことである。やっていて楽しいことをめいっぱいやることが肝心だということだ。

②「自分がやっていることが、評価され、感謝される」
 評価・感謝というのが、2大キーワードだ。
 世のため、人のため、あるいは会社のため、同僚や上司のため。自分がやっていることが人から評価され、感謝される。いいね、と言われる。やりたいこと、やっていることが人に迷惑をかけているのでは、幸せ感は湧いてこないだろう。

③「自分がやりたいことをやり、人から評価・感謝され、しかもそれが自分に納得のいく収入に結びつく」
 1つ目と2つ目が成立したとしても、例えば40代で月給が10万円では生活がなり立たない。納得のいく収入が必要だ。人はパンのみにて生きるものにあらず、と言うが、同じパンなら、馥郁(ふくいく)たる香りの漂うフランスパンのほうが、硬いコッペパンよりも旨いし、高い。納得のいく収入に結びつけば、美味しいパンを手に入れることができる。
 ただし、納得のいく収入とはいくらか、ということは特定できない。個人差がある。年収300万円でハッピーという人もいれば、最低でも1000万円は欲しいという人もいる。1億円を求める人もいる。そこは、個々人の価値観とライフスタイルの問題である。

 いずれにしても、「やりたいことをやっている」「評価・感謝される」「納得のいく収入に結びつく」、この3つがビジネスパーソンの幸せの三位一体なのだ。

 『仕事と人生で成功するために本当に必要なこと』 第2章 より 新将命:著 ダイヤモンド社:刊

 まずは、自分のやりたいことをやる。
 長所や強みを伸ばせ、ということです。

 その上で、それを世の中のニーズや収入にどう変えていくかをを考える。
 そうすれば、答えは自ずと見えてくるということでしょう。

 ビジネスパーソンの「幸せの三条件」。
 頭の片隅に入れておきたいですね。

「過去」と「未来」は切り分けて考える

 将来の自分とは、今日からの自分の結果です。
 新さんは、今日から何を考え、何をやるかによって、将来の自分が決まると述べています。

 昨日より今日、今日より明日。
 将来に向けて成長し続けるのに重要なのは、「PDCサイクルを回す」こと。
 すなわち、『P:計画する(Plan)、D:実行する(Do)、C:評価・改善する(Check)』のサイクルを回すことが重要です。

 過去を変えることは、絶対にできない。なぜなら、もう終わっているからである。
 ただし、過去からできることが1つある。いや、1つしかないと言ってもいいだろう。それは、「学ぶ」ということだ。過去から学んで、学んだことを肥やしとして、材料として使いながら、より良い将来をつくっていくために学ぶのである。
 ここでビジネス的な感覚が、実は生きてくる。先に書いたPDCである。計画・実行・評価のステップだ。過去を評価し、そこから学び、より良い未来をつくっていく。より良い将来を作っていく。
 変えることができない過去から学ぶことができれば、過去を変えることができなくても、過去からの学びを将来に活かすことができる。だから、過去から何を学ぶかが重要になるのだ。
 しかし、PDCを回していくには、計画がなければいけない。だから、まず、自分の将来はどういう将来にしたいのか、という目的と目標をつくることが重要になるのだ。これをつくり、実行に移しして追い続ければ必ず成就できる、達成できる、という保証はないが、何も考えないで、フラフラと成り行き的に生きている人よりは、望むゴールに近づける可能性は遥かに高くなる。
 これは先にも書いたが、自分にとって会社よりもダントツに大切なのは、自分の人生だ。会社というのは、自分にとって幸せな人生を設計するための極めて重要な手段だが、手段はあくまで手段であり、会社そのものが人生の目的ではない。
 重要ではあるけれど、たかだか手段に過ぎない会社にPDCが必要なら、会社よりもダントツにかけがえのない重要な自分の人生に、PDCがないほうがおかしいのではないか。理屈に合わないのではないか。
 だから自分の人生計画をつくり、実行に移し、終わったら評価してそれを肥やしにして、新しい人生をつくっていくことだ(それを年末年始に私はやっている)。正しいPDCのサイクルを自分の人生の経営にも回すべきなのである。自分の人生の経営ができない人に、会社の経営ができるはずがない。

 卒業式のことを英語で、グラディエーション・セレモニーと言う。しかし、もう1つ英語に卒業式を意味する言葉がある。「commencement」である。コメンスメントとは、始まる、という意味だ。日本では、卒業は終わり、というイメージが強いが、実は欧米では「始まり」をイメージすることが多い。
 過去は過去で過ぎ去ったこと。新しい未来はこれからが始まり、ということだ。
 そう言えば、私の好きなこんな英語表現がある。

 “Today is the first day of the rest of your life”
 (今日はあなたに残された人生の初日である)

 40歳の人にとっての人生は、今日が最初の日なのだ。
 いつなんどきも、「人生、今日が初日」という気持ちで胸を張って前に進んでいただきたい。
 定年後の人生で、自立できる人は、現役の間に自律できる人である。

「世の中で一番大切なことは、自己を律すること、である。自己を律することができなければ、人格は形成されない。人格が形成されなければ、進歩はない」

 これはマリオットホテルの創業者J・ウィラード・マリオットの言葉である。

 『仕事と人生で成功するために本当に必要なこと』 第3章 より 新将命:著 ダイヤモンド社:刊

 成功に近道はありません。
 正しい方向へ、一歩一歩、着実に歩みを重ねていくこと。
 それが大切だということです。

「人生、今日が初日」

 かけがえのない「今日」この日を、精一杯生きていきたいですね。

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 優良外資系企業を渡り歩き、経営者として、数々の成功を収めてきた新さん。
 その経験と知識に裏づけされた言葉には、多くの含蓄があります。

「仕事」で成功すること、そして、「人生」で成功すること。
 一見、相反することのようにも思えますが、そうではありません。

 仕事での成功法則は、人生にそのまま当てはまることが多い。
 そして、「逆もまた真なり」です。

 仕事を「人生」の一部としてとらえる視点。
 自分を「会社」に見立て、経営者の視点。
 その二つの視点を持つことが、充実した、ハリのある生活を楽しむための秘訣です。
 人生の後半戦に向かう私たちも、日々、心掛けたいですね。

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