【書評】『いま、決める力』(徳谷智史)
お薦めの本の紹介です。
徳谷智史さんの『いま、決める力 ワクワクする未来をつかむ「決断筋」の鍛え方』です。
徳谷智史(とくや・さとし)さん(@tokuchan1016 )は、実践心理学をビジネス領域に融合させた「決断支援」のプロフェッショナルとして、セミナーやコンサルティングを行なうなど、活躍の場を広げています。
人生は「今までしてきた決断の積み重ね」
私たちの人生は、「決断する」ことによって成り立っています。
就職、転職、結婚、引越しなどの大きなイベントから、食べるもの、着るものを選ぶなどの日常の小さなこと。
意識的にも無意識的にも、生まれてからずっと決断とともに生きてきました。
言い換えれば、「人生は、自分が今までしてきた決断の積み重ね」だということです。
徳谷さんは、僕たちの人生は、「決断→行動→結果」サイクルのくり返しによって成り立っている
と指摘します。
最初に「決断」ありき。
決断のない人生は、ただ惰性でモヤモヤした時間が流れるだけの、充実感とは程遠い人生です。
徳谷さんは、決断力とは一種の筋肉のようなもので、酔決断を継続的にしていかないと、どんどんたるんでしまい、ブヨブヨになってしまう(=決断できなくなる)
と指摘します。
逆に、「決断の仕方」を学び、日々使っていけば、決断力は誰でも手に入れられるスキルです。
本書は、「決断のプロ」による、「決断筋」を鍛えて「決断」ができるようなるためのトレーニング方法や考え方をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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決断をすれば、新しい未来が開かれていく
「決断をする」ということは、何らかの結果が出るということです。
決断の結果が、いつも「吉」と出るとは限りません。
一時的には、大変なこともあるかもしれません。
しかし、決断することから逃げてはいけません。
徳谷さんは、どんな状況であっても、決断をすることで必ず新しい未来が開かれていく
と強調します。
ある決断をして、すぐにうまくいくこともあれば、なかなかうまくいかないケースもあるでしょう。しかし、うまくいかない場合は、その経験を糧にまた次の決断をすることができます。
恋愛でもビジネスでもまったく同じです。
告白を決断して失敗するケースもあるでしょう。その瞬間だけ見れば、間違った決断だったと思うこともあるでしょう。しかし、その決断によって間違いなく新しい経験ができるわけです。そして、その経験があって初めて、その後によりよい決断ができるようになるのです。
このように、小さい決断を少しずつでも行なうことが「決断筋を鍛える第一歩」なのです。決断をすればするほど自分の可能性が広がり、新しい未来が開かれていくのです。
まさに、「決断なくして人生なし」なのです。『いま、決める力』 第1章 より 徳谷智史:著 日本実業出版社:刊
何よりも、「自分のことは自分で決める」という強く意識することが求められます。
どんな問題でも、「こうする」と決めてさえしまえば、少なくとも越えるべきハードルが何かが明確になります。
決断できない人は、自分が本当にしたいことは何なのか、自分に本当に必要なものは何かが見えてこないということです。
決断をすればするほど、決断筋は鍛えられていく
決断できない人は、決断筋が退化して、「決断メタボ」になっていきます。
逆に、些細なことでも自分で決断をくり返していると、どんどん決断筋が鍛えらます。
徳谷さんは、筋肉ムキムキの赤ちゃんがいないように、決断筋もまた生まれ持ってのものではなく、後天的に身につくものだ
と述べています。
つまり、決断は、才能で行なうものではなく、トレーニング次第で身につくものです。
みなさんはこれまで何かしらの決断をしてきたことがあると思います。
思い出してみてください。生まれて初めての決断よりは、過去の経験があるほうが決断しやすかったはずです。たとえば人生初めてのデート経験を重ねたあとでは、後者のほうがデート先は決断しやすいでしょう。仕事も同じだと思います。何度か小さい決断をしているうちに、だんだん決断しやすくなっていくのです。
初めての決断は、誰にとっても大変なことです。でも、決断をすればするほど、決断に対する心理的抵抗感が下がり、決断しやすくなっていきます。決断力のある人は、日頃から決断をして、一歩踏み出す経験を人より多くしているだけなのです。決断するほど決断筋は鍛えられ、決断力が高まるのは抵抗感が減るからだけではありません。じつは仮に間違った決断だったとしても、より多くの決断をすればするほど、次によりよい決断ができるようなるのです。
決断は、一時的には成功することも、失敗することもあります。その瞬間だけ見れば、間違った決断だと思うかもしれません。しかし、仮に失敗した場合でも、その経験を次の決断に生かすことができるのです。『いま、決める力』 第3章 より 徳谷智史:著 日本実業出版社:刊
決断することも「慣れ」だということです。
普段から人前で歌う経験を多くしている人は、人前で歌うことはまったく苦痛とは感じないでしょう。
小さなところから、コツコツと。
その場ですぐに決断する習慣を身につけたいですね。
『ファースト「だけ」アクション』
決断をしようと思いながら、なかなかできない。
その大きな理由の一つとして、決断による変化を恐れてしまうことがあります。
いわゆる「決断恐怖症」で、これも決断筋が不足して起こる症状です。
徳谷さんは、「決断恐怖症」を克服するための具体的なトレーニングの一つとして、『ファースト「だけ」アクション』という方法を挙げています。
ファースト「だけ」アクションとは、どういうことかと言うと、文字通り、決断したことに関するアクションをとにかく最初の一歩「だけ」を踏み出してみるということです。
みなさんは今までの人生で、新しい環境に行くときや新しい決定をするときに不安に思ったことはないでしょうか。学校で新しい学年の新しいクラスになるとき、仕事やバイトの初日など、不安や恐怖があったかもしれません。
でも、実際に一歩だけでも踏み出してみたあとはどうでしたか?思っていたほど、怖いことはなかったのではないでしょうか。じつは、恐怖というものは行動しているうちに消えていくのです。
まったく同じことが決断にも当てはまります。決断する前は色々と不安が多いのですが、まず決めて、一歩だけでいいので踏み出してみる、そうそうると恐怖は消えていくのです。だまされたと思って最初の一歩「だけ」を踏み出してしまいましょう。大丈夫。きっと新しい素敵な世界が待っています。
『いま、決める力』 第4章 より 徳谷智史:著 日本実業出版社:刊
たしかに、不安だったり、怖かったりするのは、決断するまでの話です。
実際に行動に移してしまうと、大したことがなかった。
そういうことがほとんどです。
「案ずるより産むが易し」
先延ばしにせず決断し、とりあえず一歩でも踏み出してみる。
その意識を忘れないようにしたいですね
相手に決断させるには「3つの円」で考える
相手に決断させる場合、相手の「3つの円」を考えるという方法が有効です。
3つの円とは、「MUST(すべき)」と「CAN(できる)」と「WILL(したい)」という円です。
図.決断をうながす3つの円 (『いま、決める力』 P174 より抜粋)
この3つの要素がクリアできれば、他人に決断してもらうことが可能になります。
正論だけ言っていても、他人に決断をしてもらえるわけではないのです。
MUSTに問題があるときは、なぜすべきなのかを相手の立場に立ってしっかりと論理的に説明することが求められます。
CANに問題があるときは、できない理由をつぶして、どうすればできるかを考えて提示する、もしくは実際にできることを自分や事例で示していもよいでしょう。
WILLに問題がある場合は、しっかりと相手とコミュニケーションをとりながら、決断をしなかったらどんな悲劇が待っているのか、逆に決断をすればどんな素敵な未来が待っているのかを感情に訴えかけるとよいでしょう。『いま、決める力』 第8章 より 徳谷智史:著 日本実業出版社:刊
まずは決断させるべき相手は誰なのかをしっかり把握すること。
そして、その相手の世界観を理解すること。
そのうえで、目指すゴール、判断基準・制約条件などを、MUST(すべき)とWILL(したい)とCAN(できる)で整理して、アプローチすることで相手は決断に近づきます。
いろいろな場面で応用できそうなアイデアですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
人生は、「すごろくゲーム」に例えることができます。
進んだ先で思いもかけない落とし穴があったり、同じ道を何回も周り続けることもあります。
ゴール直前で振り出しに戻されることさえあります。
ひとつだけ、確実に言えること。
それは、「サイコロを振り続けない限り、ゴールにはたどり着けない」ということです。
サイコロを振った回数は、人生では決断した回数に当たります。
今、決断したことが、将来の自分を創ります。
「決断筋」を鍛えて、振ったサイコロの出た目の先に何が待ち受けているのか、楽しみながら人生を歩んでいきたいですね。
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