本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『青い象のことだけは考えないで!』(トルステン・ハーフェナー)

 お薦めの本の紹介です。
 トルステン・ハーフェナーさんとミヒャエル・シュピッツバートさんの『青い象のことだけは考えないで!』です。


 トルステン・ハーフェナー(Thorsten Havener)さんは、世界的に有名なマインド・リーダーです。ステージショーの他、講演会やセミナーを開催し、テレビやラジオにも多数出演し、絶大な人気を誇っています。

 ミヒャエル・シュピッツバート(Michael Spitzbart)さんは、予防医学がご専門の医学博士です。

人間は「暗示」にかかりやすい生き物

 「青い象のことだけは考えないで!」

 そう言われると、ほとんどの人は「青い象」のことを思い浮かべてしまいます。
 それだけ、人間の思考は、暗示にかかりやすく、一つの方向に誘導されやすいことを示しています。

 この例のように、人間の考えは、視野の狭い限定的でなものになりがちです。
 ハーフェナーさんは、「思考の枠」を取り払うことで、ものごとをありのままに受けれることで僕たちは自由になることができると指摘します。

 私たちが何を考えるのかということが、健康や人生の充足感に決定的な影響を与える。
 それは、まぎれもない事実であり、科学的にも証明されています。

 大切なのは、どうすれば思考を自分の意図する方向に誘導できるかということです。

 本書は、マインドリーダーとしての体験から得た、思考を自由にするためのトリックやメソッドを科学的観点から解説し、それらを応用するための方法を解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

人は1日に「6万種類」のことを考えている

 人間は1日に約6万種類のことを考えているのだそうです。

 ハーフェナーさんは、この6万種類の思考は、僕たちが世界をどのように見ているのか、そして僕たちがどれだけ幸せなのかに左右されると指摘します。

 しかし、この数には、ひとつの問題があります。

 心理学者によると、思考の95パーセントは昨日と同じものである。つまり、新しい思考は3000件しかないそうだ。
 これは控えめに言ってもとても少ない。
(中略)
 レゴブロックで建物をつくることところを想像してほしい。建物は6万個のブロックでつくられる。そして毎日、あなたは3000個のブロックを交換することができる。古いブロックを取り除いた後、まったく同じ位置に同じブロックをはめたとしたら、あなたは一生、新しい建物を手に入れられない。建物は以前とまったくおなじに見える。
 それなら、その瞬間に、新しいブロックをもっとも重要で有意義だと思う位置にはめるほうが、価値があるのではないだろうか。
 もちろん、妙な位置にブロックをはめて、全体がくずれるようなことは避けなければならない。だが時間をかければすべてのブロックを完全に入れ替えることはできるし、十分に時間があれば、まったく新しい建物ができあがるだろう。もとの建物とはまったく違う建物だ。そうやって好きなように、ブロックや建物の形を変えられる。これこそが自由というものだ!

 『青い象のことだけは考えないで!』 第1章 より  トルステン・ハーフェナー、ミヒャエル・シュピッツバート:著 福原美穂子:訳 サンマーク出版:刊

 人が1日に6万種類のことを考えていることにはびっくりです。
 さらに、新しい思考がその中の5%程度しかないのは、それにも増しての驚きです。

 この事実は、習慣の力がいかに大きいか、考え方を変えることがいかに難しいかを示していますね。

「思考」という巨大な建物を変える、日々少しずつブロックをはめ替えていくしか方法はありません。
 そのための努力は怠らないようにしたいですね。

「絶対当たる予言」とはどんなものか?

 他人が自分のことをどう思っているか。
 それをずっと考え続けていると、さまざまな影響が表れてきます。

 実際にはそうでなくても、自分が考えていたために、それが現実になるいうこともあります。

 この現象を、有名な心理学者のポール・ワツラウィックは、「自己成就的予言」と呼んでいます。

 ある出来事を回避しようとしたからこそ、まさにその出来事を引き寄せることもある――それは、僕たちが、役に立たないことを思ったり考えたりしているからだ。
 ワツラウィックは、「自己成就的予言」の三つの前提条件を挙げている。

 ①あることが起きるとき、あなたはそれが起きることを期待していたか、あるいは起きるのではないかと疑っていた。そうした期待や疑念は、あなた自身の考え方や思いから生まれたか、あるいは、ほかの人があなたに示唆したものかもしれない。
 ②そんな考え方や思いが止まらないくなる二つ目の条件として、疑念や想像が事実であると考えるようになる。疑念や想像は事実だと考えたそのときから、あなたは自分が考え出した事実に対抗するための防衛策をとるようになる。
 ③三つ目の条件は、事実で判断したことを、あなたが他の人に伝えることだ。

 たとえばあなたは、職場の同僚があなたの陰口を叩き、隠れてひどい冗談を言っていると感じたとする。この疑念が頭の中でふくらんで、あなたはそれが事実だと判断する。この時点から、陰口を言われていることは事実であり、もう疑念ではなくなる。これが、あなたの頭の中を誤った方向に導く第一段階である。

 『青い象のことだけは考えないで!』 第2章 より  トルステン・ハーフェナー、ミヒャエル・シュピッツバート:著 福原美穂子:訳 サンマーク出版:刊

 ハーフェナーさんは、このようなことは誤った無意味な推論から起きることが多い。間違えた考え方にもとづいて、「そうに違いない」と考えたからこそ、それが現実になると述べています。

 思い込みというのは恐ろしいものです。
 それが事実であろうとなかろうと、思い続けると現実になってしまいます。

 いずれにしても、邪推は自分にとっていいことは何もありません。
 どうせ思い込むのなら、マイナスではなくプラスの思い込みにしたいですね。

「潜在意識」に染み込ませる

 ハーフェナーさんは、思考を三つのレベルに分ける捉え方を紹介しています。
 三つのレベルとは、「意識(顕在意識)」「潜在意識」「無意識」です。

 私たちの知覚し得る「意識」の下には、知覚することができない「潜在意識」があります。
 さらに深いレベルには、「無意識」があります。

 潜在意識には、あらゆる記憶や経験、印象や考え方が保存されています。

 意識(顕在意識)は、ほんの一瞬のうちに、そのとき受けたあらゆる印象の中から、その時点で関わりのある項目をフィルターにかける。だからこそ、一人ひとりがとらえている世界が違うのだ。
 僕たちが学習することはすべて、まず意識のレベルで扱われる。学習したことが繰り返されると、潜在意識や無意識にも保存されることになる。
 (中略)
 高速道路を時速180キロで走りながら、片方の手でラジオのチャンネルを切り替え、同時に「前を走る車は、なんて運転が下手なんだろう」と考えることもできる。もちろん、運転にしっかり集中しなければ危険だが。
 僕たちがこんなふうに自動的に動けるのには運転経験を積むことで、運転に必要な能力が、意識の領域から潜在意識の領域へ移ったからだ。
 だから音楽家は、考えなくても自動的に決まった指使いができるよう、何度も何度も繰り返し練習する。
 ある動作を十分にトレーニングすれば、その動作は無意識の領域に染み込んで反射的な動きになる。

 『青い象のことだけは考えないで!』 第3章 より  トルステン・ハーフェナー、ミヒャエル・シュピッツバート:著 福原美穂子:訳  サンマーク出版:刊

 無意識の領域に染み込み、反射的な動きになるまでには、通常、1万5000回繰り返す必要があると言われています。

 ハーフェナーさんは、とにかく、考えなくても動けることが大切だと述べています。
 とにかく反復あるのみ、ですね。

ポジティブな声は「左」から聞こえる

 脳科学の研究が進み、ポジティブな思考もネガティブな思考も、脳のさまざまな領域が関わっていることが明らかになってきています。

 左目の斜め上あたりにある左側の前頭葉には、ポジティブな感情や思考の中枢があります。
 反対側の右側の前頭葉には、ネガティブな感情や思考の源があります。

 これまでの人生で、なんでもポジティブな側面を見つけるようにしてきた人は、おもに左の前頭葉が心の声に影響を与えている、とのこと。

 おそろしいことに、この心の中の対話は気づいていないときにも行われ、分刻みで私たちに影響を与えている――とくに、私たちが机の前に座って何かを決断しようとしているときは、耳の中に小人がいて、左側か右側から話しかけてくるようなものだ。
 左側からはどちらかといえば応援の声がする。「いいぞ、そのまま続けて、君ならできる!」。右側からだったら、「気をつけろ、うまくいかないぞ、どうせ失敗する!」といった言葉で話しかけてくる。――あなたはどちらのタイプだろうか?
 実際には、ネガティブな対話を心の中でしている人が多いだろう。そういう人は、いつも揚げ足をとり、結果が出る前にすでにうまくいかない理由を挙げている。だが、それを変えることはできる。だからこそ可塑性という。私たちは脳の領域を変化させることができるのだ。
 大事なのは、問題を自覚して、ポジティブな側面を見つけることだ。
 ネガティブなことの存在感を弱めれば、つまり新聞や、ラジオやテレビのニュースを見たり聞いたりする時間を減らして、よく考え、ときどき自分に合うものに積極的に取り組めば、脳の中枢がプログラミングをやり直すだろう。そうすれば、ネガティブな領域は縮み、ポジティブな領域が成長する。日に日に、心の声は前向きなものになっていくだろう。

 『青い象のことだけは考えないで!』 第4章 より  トルステン・ハーフェナー:著 福原美穂子:訳  サンマーク出版:刊

 刺激が繰り返されたことで、脳の特定の領域が変化することを、「脳の可塑性」といいます。
 脳の可塑性のおかげで、人間はいくつになっても考え方を変化させることができます。

 ネガティブな情報のインプットを減らし、ポジティブな心の声に耳を傾けられるように心掛けていきたいですね。 

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 人間の思考は、自分が思っている以上に、いい加減で騙されやすく、制約されたものである。
 そのことが、本書を読むとよく分かります。

 しかし、だからこそ、自分自身でポジティブな方向に誘導することも可能です。

 人間の感覚が不自由なものであることを自覚すること。
 そのうえで「ものごとをありのままに受け入れる」意識を忘れないこと。

 騙されやすい脳の性質を上手く利用して、自分の思考をいい方向に変えていきたいですね。

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