【書評】『カエルにキスをしろ!』(ブライアン・トレーシー)
お薦めの本の紹介です。
ブライアン・トレイシーさんとクリスティーナ・トレイシー・スターンさんの『カエルにキスをしろ!』です。
ブライアン・トレーシー(Brian Tracy)さんは、米国の著名な講演家であり、ビジネスコンサルタントの権威としても有名な方です。
「カエルにキスする」と、人生が変わる!
昔のおとぎ話に、醜いカエルと王女の話があります。
ある時、王子が意地悪な魔女によって醜いカエルに姿を変えられてしまいます。
魔女の呪いは、カエルの言葉を信じ、勇気を振り絞った王女にキスによって解け、カエルは元の王子の姿に戻って二人は結婚し、ずっと幸せに暮らしました・・・、というお話です。
人生の大きな目的は、幸せと平安を得ることです。
人はみな、愛情、喜び、満足感、そして達成感といったポジティブな感情を味わいたいと思っています。
幸せになるために最大の障害となっているのが、自分自身と他人に対するネガティブな姿勢です。
トレーシーさんは、それを「キスをする必要があるカエル」と表現しています。
トレーシーさんは、「カエルにキスをする」ことを学び、あらゆる人との出来事の中、たえずポジティブで有意義なことを探し、見つけることを習慣づけることができれば、きっと幸運への可能性を拓ける
と述べています。
本書は、「カエルにキスをする方法」、すなわち、幸せを妨げる障害物を消し去り、人生のあらゆる問題から逃げずに立ち向かうため方法についてまとめられた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
いろいろな意味で、「あなたは重要だ」。
トレーシーさんによると、あなたにとって「自然な状態」とは、幸せで、心安らかで、楽しく、興奮に満ちて生きていること
なのだそうです。
さらに、最大の可能性を拓く第一歩は、あなたは「本当はすでに王子または王女なのだ」ということを知ることであり、そのためには自分に関する「隠された7つの重要な事実」を知る必要がある、と述べています。
その中のひとつが、『いろいろな意味で、「あなたは重要だ」』という事実です。
まず、あなたは自分自身にとって重要だ。あなたの世界は、個人としてのあなたを中心に回っている。あなたは自分が見たり聞いたりするものすべてに意味を与えている。あなたが与える意味以外、あなたの世界に意味を持つものは何もない。
あなたは、両親にとってとても重要だ。あなたの誕生は彼らの人生にとって意義深い瞬間であり、成長の過程であなたがすることほぼすべてが、彼らにとって意味がある。
あなたは、自分自身の家族、パートナーまたは配偶者、子どもたち、そして社交グループのメンバーたちにとって、重要だ。あなたの言葉や行動には、彼らに重大な影響を及ぼすものもある。
あなたは、あなたの会社、顧客、同僚、そして地域社会にとって重要だ。あなたがすること、またはしないことは、ほかの人の生活と仕事に多大な影響を及ぼすことがある。
自分をどれほど重要だと感じているかどうかによって、あなたの生活の質がおおむね決まる。幸せな人、成功した人々は、自分を重要で、価値があると感じている。そのように感じ、行動するからこそ、そのとおりになる。
不幸な人、欲求不満な人々は、自分は重要ではなく、あまり価値がないと感じている。苛立ち、つまらない人間だと感じている。「私はあまり立派ではない」と感じてしまった結果、世間に八つ当たりをし、他人や自分自身をも傷つけるようなふるまいをする。
彼らは、自分が王子や王女になれることがわかっていないのだ。『カエルにキスをしろ!』 第1章 より ブライアン・トレーシー、クリスティーナ・トレイシー・スターン:著 門田美鈴:訳 ダイヤモンド社:刊
「自分をどれほど重要だと感じているかによって、あなたの生活の質がおおむね決まる」
つまり、幸せも不幸せも、その人の心の持ちよう次第ということ。
自分は、自分の思った通りの自分になります。
周りの人が、ではなく、自分が自分自身を重要で価値があると認めること。しっかりした自己肯定感をもつことが幸せになるためのカギですね。
カエルという「事実」と向き合う
ときには、キスをするためにカエルを「抱き締め」、ぬるぬるして、冷たく、醜いことを受け入れようと心を決めなければならないこともあるかもしれません。
自分の人生からカエルをなくす方法はたくさんあります。
大事なことは、カエルという「事実」にしっかり向き合うことです。
心理学の世界では、人の性格は二種類に分かれる。「立ち向かう人」と「逃げる人」だ。「立ち向かう人」とは、つまり恐怖心と向き合い、現実に立ち向かい、人生で出会う人々や問題に、誠実にまっすぐに対応する人々だ。当然ながら、彼らは「逃げる人」よりもずっと幸せで、望ましい結果を出すことができ、自信を持つことができる。
立ち向かう人は、立ち向かうことへの恐怖を知りつつ、向き合う。彼らは自分の感情をコントロールする。逃げる人は、未知のものを恐れ、前進する必要がある自分自身を信じていない。
幸い、「キスする前に、カエルに向きあう」ことによって、あなたはもっと強く、前向きな人間になることができる。現状から逃げたり、問題を抱えていることを否定するのではなく、誠実に事態と取り組むことを習慣づけることによって。『カエルにキスをしろ!』 第3章 より ブライアン・トレーシー、クリスティーナ・トレイシー・スターン:著 門田美鈴:訳 ダイヤモンド社:刊
解決すべき問題は、怖いからといって逃げ回ったとしてもどこまでも追いかけてきます。
まずは、その問題と向き合う勇気を持つこと。
冷静に見つめることで、問題の本質が見えてきます。
お化けが怖いのは、正体が分からないからです。
僕らが「キスする必要のあるカエル」も一緒です。しっかり目を近づけて見てあげれば、意外と愛嬌のある顔と思えるかもしれません。
ネガティブな感情の解毒剤は「責任を認めること」
ネガティブな感情を引き起こし、人を動けなくする要因は、主に五つです。
「正当化」「一体化」「神経過敏」「あら探し」「自己弁護」です。
これらは最悪のカエルたちで、感情の沼の暗い深淵を泳いでいます。
派生したネガティブな感情は、遅かれ早かれ、すべて一つのものに行き着きます。
それは「怒り」です。
怒りは究極のネガティブな感情で、恐怖、疑念、嫉妬、ねたみなどはすべて、結局は怒りに変わります。
怒りの根元にあるのは、非難し、責める気持ちです。
あらゆるネガティブな感情を抱き、表すときは必ず、自分自身や他人がしたことを責める気持ちが働きます。
トレーシーさんは、ネガティブな感情の解毒剤は「責任を認めること」だ、と述べています。
では、どうすれば責任を認めることができるだろう? ただこう言えばいい。「私には責任がある!」。
どんな理由であれ、腹が立ったり惨めになったりしたときはいつでも、繰り返し自分にこう言い聞かせる。すると、即座にその感情を処理することができる。ネガティブな感情が消え失せるまで「私に責任がある! 私に責任がある! 私に責任がある!」と言うのだ。これは、実践する人すべての人生をすっかり変えてしまう、驚くべき発見である。
「置換の法則」から、人の心は一度に一つの考えしか持つことができない。義務感というポジティブな感情を持つこともできるし、怒りや非難というネガティブな感情を持つこともできる。しかし、両方を持つことはできない。そして、どちらにするかは常にあなたしだいなのだ。
この世界で唯一、あなたがコントロールできるものは、あなたの考えだけである。あなたを惨めにするネガティブな考えよりも、「私に責任がある」というポジティブな考えを持つことにすれば、すぐに前向きで楽観的になり、心は完全に自分の思うままになるだろう。『カエルにキスをしろ!』 第5章 より ブライアン・トレーシー、クリスティーナ・トレイシー・スターン:著 門田美鈴:訳 ダイヤモンド社:刊
トレーシーさんは、この解毒剤は圧倒的に簡単で効果的な方法だとし、「私に責任がある!」という強力な決断によって、どんなネガティブな感情を即座に処理することができる
といいます。
是非とも試してみたい方法ですね。
「称賛」と「ねたみ」の違い
人生は不公平で、しかもそれは誰かのせいだと感じて、常に不満を抱いている人は少なくありません。
これは、最悪のネガティブな感情のうち二つ「ねたみ」と「恨み」を引き起こし、それは常に、罪を犯したと考える誰かに向けられます。
ねたみと恨みは、自分自身の力不足を意識し、劣等感に悩んでいることが原因です。
この二つは、双子のように一緒に連れ立って動き回り、お互いを餌にして増強し合う、と述べています。
「称賛」と「ねたみ」は似ているようにみえて、まったく別のものです。
トレーシーさんは、両者の違いについて以下のように説明しています。
人が努力の末に手に入れたり、成し遂げたりしたことを称賛するのは、ねたみとは違う。他の人が持っているものを欲しいと願うのは、もっと頑張ろう、もっと腕をみがこうという気持ちを起こす、むしろ望ましいことなのだ。より素晴らしい成功や成果への願望があれば、あなたのよい部分が引き出される。精神的な「引き寄せの法則」として、あなたにできる最良の行いの一つは、ほかの人の成功や成果を称賛することだ。それによって、プラスのエネルギーが働く地場がつくられ、成功と同時に、その道に秀でるようになるチャンスが引き寄せられる。
一方、精神的な「反発の法則」から、あなたがなしうる最悪のことの一つは、他人をねたみ、恨むことだ。そうすることで、あなたの人生から成功や幸福を追い払い、寄せつけない負のエネルギーが働く磁場をつくってしまう。この基本的な概念を正しく理解していないことが、多くの人々の挫折感や失敗、不幸の一大原因になっている。他人にネガティブな考えを抱くことで、実は、自分自身にダメージを与えているのだ。『カエルにキスをしろ!』 第10章 より ブライアン・トレーシー、クリスティーナ・トレイシー・スターン:著 門田美鈴:訳 ダイヤモンド社:刊
同じ事実でも、受け取る人の考え方によって、自分を傷つけ不幸な方向へ導く場合と、逆に自分を勇気づけ、幸せな方向へ導く場合があるということです。
幸せを感じられないということは、ネガティブな感情を生み出す大元の原因が自分の中にあるということです。それを見つけ出さないことには前に進みません。
「カエルにキスをする」ためには、自分の心の中にカエルが潜んでいることを認めることが最初のステップになりますね。
[ad#kiji-shita-1]
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
人は誰でも醜いものから目を背けてしまいがちです。
ましてや、自分自身の中に醜いものがあるなんてことは考えたくもないものです。
しかし、自分の幸せを妨げているものは自分の中に存在していることは紛れもない事実です。
自分の心の中の「醜いカエル」を認めて、向き合い、キスをする勇気を持つことが、幸せを邪魔する障害物を消し去る唯一の方法なのでしょう。
本書を読んで、自分の中の「キスする必要のあるカエル」をじっくり見つめ直し、幸せな人生への一歩を踏み出したいですね。
(↓気に入ってもらえたら、下のボタンを押して頂けると嬉しいです)
【書評】『勝ち続ける意志力』(梅原大吾) 【書評】『一流の習慣術』(奥村幸治)