【書評】『長生きしたけりゃ肉を食べるな』(若杉友子)
お薦めの本の紹介です。
若杉友子さんの『長生きしたけりゃ肉は食べるな』です。
若杉友子(わかすぎ・ともこ)さんは、野草料理研究家です。
30年以上にわたり、「日本人にとっての正しい食事とは何か」を研究・実践されています。
現在、76歳の若杉さんですが、とてもそんなお歳には見えないほど若々しく見えます。
これまで病氣知らずでいたって健康。
病院に行ったこともなく、健康診断すら受けたことがありません。
白髪もないし、歯も丈夫で、老眼もなし。
一般的にいわれている老化現象とも無縁の生活を送っているとのこと。
若杉さんは、自身の健康の秘訣は「食べ物」にある、と述べています。
若杉さんの目からみると、現代人は食べ物に無関心なのだそうです。体によくないものを食べているから、病氣になるのだ、と強調しています。
本書の中で「気」ではなく、「氣」という漢字を使っています。
若杉さんは、「气(きがまえ)」のなかは「〆(ぺけ)」ではなく、「米(こめ)」の字だと思っているからです。
それだけ日本人にとってお米と健康は切り離せない関係にあります。
若杉さんは、日本人は「お米」を食べることで「氣」を食べている、とも述べています。
本書は、若杉さんが長年の経験と独自の食養学から導き出した、日本人に適した健康法について分かりやすくまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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日本人に肉は合わない
日本人が元来食べてきたもの。
それはごはんを中心とした「一汁一菜(いちじゅういっさい)」でした。
一汁の「汁」はみそ汁のことで、一菜の「菜」は煮物や和え物などの野菜料理のことをいいます。 ところが、太平洋戦争の敗戦後、西洋の栄養学が入って来て、「肉を食べろ」「卵を食べろ」「牛乳を飲め」の大号令のもと、多くの国民がタンパク質至上主義に洗脳されました。 その結果、ガンや心臓病、脳梗塞、さらに糖尿病、高血圧等の生活習慣病が増えたとのこと。
日本では、いまだに「タンパク質が体の細胞をつくっている」と多くの人が信じています。
しかし、若杉さんは、それをきっぱり否定します。
たとえば肉というのは、実は、お腹のなかで大変な悪さをします。西洋人はもともと狩猟民族で肉を食べていたため腸が短く、肉は消化されると、すぐに体外に排出されますが、日本人は農耕民族で穀物菜食をしていたため腸が長く、消化に時間がかかります。 そのため、肉のカスが腸内に長く残り、腐敗してしまうのです。 そして、さまざまな毒素が発生し、血液が汚された結果、内蔵や細胞の機能がうまく働かなくなり、炎症を起こしてしまいます。その炎症が細胞のガン化なのです。 肉にかぎらず、卵や牛乳などの動物性タンパク質はみな同じような作用があり、腸内環境を悪化させて、毒素を発生します。 それが血液を汚し、全身をめぐることによってガンだけではなく、さまざまな病氣を次々と引き起こします。 (中略) 日本人に便秘症の人が多いのも、肉を食べる生活をしているからです。腸のなかで腐ったものが宿便となって詰まり、ぜん動運動ができなくなって便秘になっています。 いま国内で飼育されている豚や牛、鶏などの家畜のほとんどは、成長ホルモン剤や抗生物質といった添加物が入った合成飼料で育てられています。短期間で無理やり大きく育てるために、不健康な家畜が量産されているのです。
『長生きしたけりゃ肉を食べるな』 第1章 より 若杉友子:著 幻冬舎:刊
若杉さんは、健康的に育てられた家畜の肉でも、「日本人には適していない食べ物」、と切って捨てます。 それでは、日本人に適した食事とは何なのかというと、昔ながらの「お米を中心とした食事」だと強調しています。
白米より玄米のほうが身体にいいわけ
私たちがふだん食べている白いごはんは「白米」といいます。
籾から籾殻だけを取り除いた玄米を精米し、糠や胚芽を取り除いたものが白米です。
昔は、お米に麦などの雑穀を混ぜて炊くのが普通で、白いごはんだけというのは、とてもぜいたくでした。
玄米食の優れている点は以下の通りです。
けれども栄養面からみると、白米は玄米より栄養価が低くなります。白米にするために取り除いた糠や胚芽に栄養分が多く含まれているからです。玄米の栄養は白米の4倍もあるといわれ、タンパク質や炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。人間に必要とされる栄養素の大半を玄米だけでとれるのです。まさに完全栄養食といえます。現代栄養学がとなえる1日33品目など必要ありません。あれこれ食べなくても、玄米を食べるだけで、玄米を食べるだけで、ほとんんどの栄養素がとれてしまうのです。しかも、玄米にはフィンチ酸という物質が含まれ、水銀や鉛などの重金属と結合して、体内の有害物質を排出する働きもあるのです。
現代人は食品添加物の入った食べ物をとったり、環境ホルモンなどの有害物質に囲まれて生活していますから、フィチン酸のような解毒作用のある物質は、とても有用だといえます。『長生きしたけりゃ肉を食べるな』 第2章 より 若杉友子:著 幻冬舎:刊
玄米は体を温める作用もあります。
冷え性や低体温で悩んでいる人は、雑穀を入れると、さらに体が温まります。
精製塩は「塩」ではない
塩分は身体になくてはならないものです。 しかし、国が認可・許可して売られている食塩や精製塩は、海水などの原料塩を電氣分解して、にがりを取り除いた、塩化ナトリウム99%の化学塩です。ミネラルがほとんど含まれていない化学物質だから、とりすぎると逆に体調が悪くなるとのこと。
私が「塩」といっているのは、自然塩のことです。海水を煮詰めてつくられるため、自然塩にはナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウムなどの天然おのミネラルが含まれています。これらのミネラルは、人間の身体にとって、なくてはならないものです。 たとえばカルシウムは骨の成分になるだけでなく、細胞内の神経伝達や細胞分裂、酸素の送り出し、酸素の活性化といった体内の調整機能に関与しています。 カリウムはタンパク質の合成になくてはならないものだし、ナトリウムは消化液の成分になったり、体液を弱アルカリ性に維持したります。また、カリウムは細胞内の浸透圧を維持する一方、ナトリウムは細胞外の浸透圧が細胞内の浸透圧と同じになるように働きます。これらの相反する作用が同時に含まれていることで、体調が安定するのです。 マグネシウムは300種類以上もの酵素が活性化するのに必要な成分で、タンパク質の合成を調節する働きもあります。
『長生きしたけりゃ肉を食べるな』 第4章 より 若杉友子:著 幻冬舎:刊
自然塩には微量のミネラルとして鉄、亜鉛、マンガン、銅が含まれているほか、セレン、モリブデン、クロム、コバルトといった超微量のミネラルも含まれていています。 体を温めたり、抵抗力を高めたり、胃の働きをよくする作用もあるそうですね。 料理に欠かせない調味料でもある「塩」を変える。
そこから健康志向を高めていく方法も効果的ですね。
食べ物の「陰性」と「陽性」の見分け方
若杉さんの提唱する「食養」とは、食べ物によって病氣を治し、病氣にならない人の道のことです。 食養の根本には、東洋に古くから伝わる「陰陽」の考え方が反映されています。 女性が陰なら男性は陽、夜が陰なら昼が陽、月が陰なら太陽は陽、というように、「この世のすべてのものは陰と陽で成り立っている」という考え方です。 「食養」では、これを食べ物に当てはめています。 食養の創始者、石塚左玄は「カリウムが多く含まれる食べ物を陰性、ナトリウムが多く含まれる物を陽性」と定義しました。 カリウムの多い陰性の食べ物は、血管や腸管をゆるめて体を冷やす働きをします。したがって、カリウムの多い陰性の食べ物を食べている人は体温が低く、ゆるく陰性体質となります。 一方、ナトリウムが多い陽性の食べ物は、血管や腸管を締めて身体を温める働きをします。したがって、ナトリウムの多い陽性の食べ物を食べている人は体温が高く、引き締まって陽性体質ということになります。 若杉さんは、陰性の食べ物と陽性の食べ物の見分け方について、以下のように説明しています。
まず、味からみていきましょう。陰性の食べ物は、「甘い」「酸っぱい」「辛い」「えぐい」「渋い」「苦い」といった特徴があります。たとえば、果物がそうです。甘くて酸っぱい味がします。レモンやゆず、すだちも陰性だし、ワラビやゼンマイなどの山菜も陰性の食べ物になります。 次に、栽培される土地をみてみましょう。暑い地域、暑い季節に育つものは陰性の食べ物です。たとえば、パイナップルやバナナなどの南国の果物がそれに当たります。 また、成長の早いもの、形の大きいもの、水分が多いもの、体を冷やすもの、土のなかで横に根を張り、地表では上に向かって成長するものも陰性となります。たとえば、たけのこがそれに当たります。 一方、陽性の食べ物は、寒い地域、寒い季節に育つものです。たとえば、寒い時期が旬のダイコンやニンジン、レンコンなどは陽性の食べ物になります。 また、成長の遅いもの、形の小さいもの、水分が少ないもの、身体を温めるもの、土の中ではまっすぐに伸び、地表で横に広がるものは陽性になります。たとえば、ゴボウやニンジンなどがそれに当たります。 さらに、色で見分けることもできます。 たとえば、雨上がりに空に浮かぶ虹は、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の順番で並んでいます。 このうち、赤というのは赤外線の陽性エネルギーで、もっとも強い極陽性を意味します。そこから橙、黄と少しずつ陽性のエネルギーが少なくなり、緑色がちょうど中間で、中庸を意味します。 そこから先はだんだん陰性のエネルギーが強くなり、青、藍と移行し、極陰性の紫になります。 これを食べ物に当てはめてみてください。 たとえば、リンゴ。最初は緑色で、黄色、赤と熟すにしたがって色が変わっていきます。つまり、中庸から陽性へと性質が変わっていくのです。
『長生きしたけりゃ肉を食べるな』 第7章 より 若杉友子:著 幻冬舎:刊
トマトは例外で、赤い色ですが、なかがやわらかく、水分が多いので、陰性の食べ物です。
色や味などで簡単に見分けることができるので、普段の食材選びに利用していきたいですね。
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「医食同源」という言葉があります。
『病気を治療するのも日常の食事をするのも、ともに生命を養い健康を保つために欠くことができないもので、源は同じだという考え(kotobank.jp「医食同源」より)』です。
若杉さんは、まさにこの「医食同源」を地でいったような方です。
まずは無関心だった食べ物や飲み物について意識を高めて、身体に悪いものを口に入れない努力をするべきなのでしょう。
日本人には、日本人に合った食事を。若杉さんのように、幾つになっても「病氣にならない身体」を目指していきたいですね。
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