本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『心を静める』(藤平信一)

 お薦めの本の紹介です。
 藤平信一先生の『心を静める』です。

 藤平信一(とうへい・しんいち)先生は、合氣道家です。
 お父様は、心身統一合氣道創始者として知られる藤平光一先生。
 現在は、お父様の後継者として、世界24ヶ国、約5万人が学ぶ心身統一合気道の会長を務められ、合氣道の普及に尽力されています。

「心を静める」ために必要なこと

 大事な場面であればあるほど、実力を発揮できる人がいます。
 逆に、実力を発揮できなくなる人もいます。

 その違いは「大事な場面で心を静めることができるか」です。
「心を静める」ことで、持っている実力を存分に発揮し、望む成果が得られます。

 大事な場面で心を静めることは、決して簡単なことではありません。
 意識して心を静めようとすればするほど、心は乱れてしまうものです。

 藤平先生は、心を静めるには、心と身体の関係を正しく理解した上で、日頃から訓練をしておくことが重要だと強調します。

 本書は、「心を静める訓練」で、大事な場面で実力を発揮するための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「心」の向け方

 心と身体が一つになっている状態を、「心身一如(しんしんいちにょ)」といいます。
 逆に、心と身体が別々になっている状態を、「心身分離(しんしんぶんり)」といいます。

 つねに、対象に心を向けて行動し、心身一如を保つこと。
 それが、持っている能力を最大限に発揮する秘訣です。

 藤平先生は、人と話をするときの相手への「心の向け方」を、以下のように説明しています。

 日本では、「人と話をするときは相手の目を見て話をしなさい」と言われています。しかし、実際に相手と向かい合った状態で、相手の目をじっと凝視すると、とても疲れやすく、また相手の目以外が見えなくなってくることがわかります。氣が弱い人や対人恐怖症の人にとっては、相手の目を見るのは拷問に等しいことです。
 また、氣まずさや照れ臭さを感じて、相手の目を見ることができない人も多くいます。「目は心の窓」と言います。目は心の状態を最も表している場所で、力のある場所です。お互いに目を見つめ合うことは、その力と力がぶつかり合うことです。
 これでは、相手に心を向けることはできません。しかし、実際には良い方法があります。それは、「相手の鼻のあたりを見る」ことです。うっかりした人は、これを聞いて鼻を見てしまいます。実際にやってみるとわかりますが、お互いに鼻を見つめ合うと、鼻を隠したくなるような何とも変な感じがします。相手の鼻のあたりを見る状態とは、「相手の顔全体が映っている」状態を指します。しかも、相手の視線とぶつかることもありません。さらに、相手には、まっすぐ見ているように見えています。これならば、疲れることなく相手に心を向けることができます。

 『心を静める』 第1章 より 藤平信一:著 幻冬舎:刊

 忙しいと、つい相手から視線を離して、そっぽを向きながら話しかけてしまいます。
 それでは、相手もこちらに心を向けて聞かなくても仕方がないですね。

 目を見て話すのが苦手な人は、「相手の鼻のあたりを見る」。
 それだけでも、相手に自分の言いたいことがより伝わるようになります。
 ぜひ、実践したいですね。

「臍下の一点」を意識する

 お臍(へそ)かなり下に、力を入れようとしても力が入らない点があります。
 藤平先生は、それを「臍下(せいか)の一点」と呼びます。

 臍下の一点は、「形のある点ではなく、意識が定まるための無限小の一点」です。
 心が静まっている状態では、意識は自然に臍下の一点に定まります。

 ポイントは、心が静まっている状態では、意識は「自然に」臍下の一点に定まっているということです。常に臍下の一点を意識したり、臍下の一点に心を留めたりすることは間違いです。
 心が乱れているとき、意識は上がり、姿勢も不安定になっています。その結果、本来使うべきことに心を使うことができなければ、思うように身体を動かすこともできません。
 心が静まっているときは、自然に臍下の一点に意識が定まっていて、姿勢も安定しています。その結果、本来使うべきことに心を使うことができ、思うように身体を動かすことができます。
 心が一つのことに執着している状態を、心の「停止状態」と言います。心が停止状態になると、使うべきことに心を使えなくなります。誰かに悪口を言われると、それが氣になって他のことに氣が回らない人がいます。上司から叱られると、それが氣になって目の前の仕事に氣が向かない人もいます。
 それに対して、心が一つのことに執着せず、使うべきことに自在に使うことができる状態を、心の「静止状態」と言います。
 臍下の一点を常に意識するということは、心が停止状態になるということです。

 『心を静める』 第4章 より 藤平信一:著 幻冬舎:刊

 心が波立っている状態は、「意識の位置が頭の方に上がっているために起こる」ものです。

 例えば、怒ると「頭にくる」と言うのは、意識が「頭にくる」から。
 また、緊張することを「上がる」と言うのは、意識が「上がる」という意味です。

「氣の呼吸法」について

 心が静まっている状態では、自然と呼吸も静かになります。
 逆に、呼吸が荒いのは、心の状態が荒いことを表しています。

 訓練によって、呼吸を静かに保つことができます。
 そのためには、正しい姿勢、正しいリラックス、臍下の一点が必要です。

 藤平先生は、心を静める「氣の呼吸法」の基本について、以下のように説明しています。

 まず初めに行うのは、息を静かに吐くことです。ここではまず、口から息を吐いてみましょう。目を閉じてもかまいませんが、その際は先にお伝えした通り、目のあたりに力を入れずに、臍下の一点に心が静まった状態で目を閉じてください。ときどき、驚くほど眉間にシワを寄せて呼吸法をする方がいます。氣の呼吸法は苦しいものではないので、これは間違っています。
 口の形は「あいうえお」の「あ」の形で、「ハァ~」という静かな音で息を吐きます。このとき、長く吐くことや上手に吐くことを目的にすると力が入ってしまうので、ただ静かに楽に吐くことを心懸けて吐いてみましょう。健康な方で姿勢が安定さえしていれば、10秒以上は軽く吐くことができるはずです。息を吸う方はまだ行いません。息を吐くだけでかまいませんので、静かに吐くことに慣れましょう。
 このとき、注意点があります。
 息を吐くとき口を小さくすぼめる方がいますが、そうすると息を吐きにくくなります。「あ」の口の形で息を吐くのには意味があります。それは、最も息を吐きやすいからです。また、目の前を目標に息を吐く方がいますが、氣持ちをもっと遠くに向けると、息を楽に吐くことができます。何度も繰り返して慣れましょう。
 何度繰り返しても苦しくなってしまう方は、息の吐き方に問題があります。特に息の吐き終わりが重要です。

 『心を静める』 第5章 より 藤平信一:著 幻冬舎:刊

 無理な力を入れずに、静かで深い呼吸を心がけること。
 それがもっとも重要だということです。

 いつでもどこでもできるのが、呼吸法の素晴らしいところです。
 時間を見つけて繰り返し練習したいですね。

素直であること

 藤平先生は、学ぶ姿勢の究極と言えるのが「素直であること」だと指摘します。

 物事を身につける上で最も重要なのは「素直さ」です。素直さとは、人に対して従順であることではありません。また、人の言いなりになることでもありません。相手が伝えることを、自分なりの考えや解釈ではなく、そのままを理解する姿勢です。特に自分が価値を認め学ぶことを決めたことは、素直に学ぶことが上達の秘訣なのです。
 今まで育成してきた内弟子の中にも、素直な内弟子と、素直でない内弟子がいます。周囲からは、この素直でない内弟子のことも「素直なお弟子さんですね」と言われます。しかし、それは「素直」ではなく「素直そう」の間違いです。世の中にはこの「素直そう」が多いのです。見た目がそのまま中身とは限りません。
 例えば、私が「この本を読んだ方がいい」とすすめます。素直な内弟子は「今すすめられるということは何か意味があるのだろう」と考え、私の意図を知るためにすぐ読みます。そして成長します。素直でない内弟子は、「今は忙しい」とか「今読んでいる本が終わったら読もう」と何らかの理由をつけて怠ります。結局は読まないか、時間が経過してから読むので、私の意図を理解することはできず成長しません。
(中略)
 何を学ぶにも、今まで自分が得た経験・知識は、いったん、どこかにしまって、真っさらにしておくことです。学ぶときは、「自分がどのように考えるか」よりも、「相手が何を伝えたいか」を理解することが大切です。相手が伝えることをまっすぐに受け取った結果、それが役に立たなければ捨てても遅くありません。繰り返しますが、相手の言いなりになるのが素直ではありません。相手の言いなりになることを洗脳と言います。

 『心を静める』 第6章 より 藤平信一:著 幻冬舎:刊

「自分はすでに知っている」とか「自分には必要ない」と自分で勝手に判断する。
 そのことが、何よりも自分自身の成長を妨げるということです。

「相手が何を伝えたいか」を理解することが大切。
 まずは、言われた通りに試してみる「素直さ」は持ち続けたいですね。

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 現代人は、身の回りに様々なストレスの原因を抱えています。
 そのため、ちょっとしたことでイライラしたり、落ち込んだりしてしまいがちです。

 本書によると、「心」は本来静まっている状態が自然なので、それ以外の状態はすべて「不自然」な状態とのこと。

 どんな状況でも、心を静めた状態をキープすることができるかどうか。
 それは、訓練次第ということです。

 周りに左右されず、いつも落ちついた静かな心を持ち続けられるよう、普段の意識の持ちようから心掛けたいですね。

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