【書評】『大人げない大人になれ!』(成毛眞)
お薦めの本の紹介です。
成毛眞さんの『大人げない大人になれ!』です。
成毛眞(なるけ・まこと)さん(@makoto_naruke)は、86年に日本マイクロソフト社に入社、91年からは同社代表取締役社長を務められています。 2000年に退社後、投資コンサルティング会社を設立し、大学の客員教授なども務めて活躍の場を広げられています。
なぜ、「大人げなさ」が必要か?
成毛さんは、今、大人たちに必要とされているのは、「我慢」や「努力」ではなく、子どものような「大人げなさ」なのではないか
と指摘します。
突出した成果をあげている人物は、大人げない人ばかりだったと、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏やソフトバンクの孫正義氏、ライブドアの元社長の堀江貴文氏、さらには、ノーベル賞級の功績を残した偉大な科学者などを引き合いに出します。
彼らは、その「大人げなさ」によって、常人では思いつきもしない新たなものを創造し続けています。
成毛さんは、創造性とは、どれだけ平均的な発想から逸脱できるか
だとしています。
そして、自分の好きなものをひたすらに貫き通すことのできる大人げない人こそが、平均からかけ離れることができる
と強調します。
本書は、「大人げない」人物や企業を具体的に取り上げて、その「大人げなさ」のエッセンスを抽出した一冊です。
その中から印象に残ったものをいくつかピックアップしてご紹介します。
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「グーグル」を世界一の検索エンジンにした原動力は?
成毛さんは、大人げない企業の一つとして、「グーグル」を挙げています。
グーグルは、ご存じの通り、ウェブサイトの検索エンジンを運営している会社です。
成毛さんは、グーグルが「検索エンジンの分野において最も高度な技術を持つ会社」という共通認識が作り上げられる過程では、「客観的な評価だけではない何か」が後押しをしたのではないか
と考えています。
それは、グーグルの持つある種の純粋さに引き寄せられ、「この会社はすごい」「これこそが世界最高の検索エンジンだ」と叫びだした人たちの声だったのではないだろうか。
グーグルが広く一般に知られるようになる前のことだが、当時、グーグルの語り部とも思われるような人たちが、確かに存在したように思う。彼らは技術を理解する素養を持ち、グーグルを技術面から評価し始めたが、すぐにそれを超えてこの会社のファンになった。「世界中の情報を組織化する」と臆面もなく語る創業者の若者二人に、心酔してしまったのだ。
この支援者たちが、ことあるごとにグーグルについて語り、周囲を巻き込み、さらにメディア露出のきっかけを生み出していったことは容易に想像できるだろう。彼らにとってグーグルは、人に話さずにいられない会社だったのだ。
そして彼らを惹き付けた純粋さとは、もちろんグーグル自身が掲げる「世界中の情報を組織化する」という使命に対するものだろう。小さなガレージで生まれたグーグルという会社。そこから発信された若者たちの壮大な夢は。いまなお多くの技術者をとらえてやまないのだ。『大人げない大人になれ!』 chapter1 より 成毛眞:著 ダイヤモンド社:刊
子供のような純粋な夢や希望を語る人や企業は、いつの時代も周囲の人々を強烈に惹きつけます。
彼らの不可能を可能にするエネルギーに溢れる姿やチャレンジ精神が熱狂的なフォロワーを呼び込み、自らの成長の推進力としてきました。
閉塞感漂う今の日本にも、そんな「大人げない」人や企業がもっと必要なのでしょう。
「あまのじゃく」の価値観
成毛さんの性格を一言で表すならば、「あまのじゃく」です。
それも、「子供の頃の反抗期が延々と続いているイメージ」というくらいですから、その“大人げなさ”は筋金入りです。
成毛さんがマイクロソフトの社長を辞任したのも、当時ITバブルの絶頂期にあり、全ての人が「IT」の二文字を叫んでいたので、それに嫌気がさしたからだそうです。
成毛さんが、こうした姿勢を崩さないのは、何も意地になっているわけではなく、徹底的に逆のことを言うからこそ見えてくることが必ずある
と考えているからです。
否定的な考えを持つためには、物事に対して「なぜ」と問い続けることが必要である。子供が「なぜ人を殺してはいけないのか」と問うのは、ある意味であまのじゃく的な発想だ。子供に常識という言葉は通じないから、別の方向から説明を試みなければならない。
この別の方向からの説明、つまり見方を変えるということが重要である。そうすると、今まで無意識に正しいと考えていたことに根拠がないことがわかってくる。これをどんどん突き詰めていくと、いつの間にか周りには、あまのじゃくな人間だと思われているはずだ。あまのじゃくの考えは、あえて否定することで意見対立の核心に迫っていくから有用なのである。これは物事の本質と言い換えてもよい。
あまのじゃくな人は、「わざと」相手の意見を否定するのだから、なかなか大変なものである。「なぜ」を生み出すためにはそれなりの発想力がいるし、相手に嫌われてしまう可能性がるから勇気が必要だ。しかし私が思うに、常になぜと考え続けることで奇抜な発想が生まれてくる。そして、こういった考えは、多くの人に嫌がられるかもしれないが、1割ぐらいの人は必ず面白がってくれるものなのだ。こうした変わった人たちを味方につけるのが、私の戦略なのである。確実にこうした1割の方が、より自分にとって付き合って楽しい集団だと断言できる。『大人げない大人になれ!』 chapter2 より 成毛眞:著 ダイヤモンド社:刊
「大人げない」ということは、世の中の常識に逆らうということでもあります。
つまり、大人げない人になればなるほど、世の中の常識ではあり得ないような突拍子もないアイデアを思いつく可能性が高まるということですね。
好奇心や遊び心を忘れずに、9割の「常識的な大人」ではなく、残り1割の「大人げない人」を目指したいですね。
自分を変えるなんて無理
成毛さんは、自分のことをいい加減な人間であることも、ふざけた性格であること自覚しています。
それでも、自分の性格を変えようと思ったことは、これまでに一度もありませんでした。
そもそも人間は、意識的に自分を根本から変えることは無理だと考えている
からです。
もちろん、「不屈の精神」を持っていれば成功の可能性は高いのかもしれない。しかし、これを鵜呑みにして、今から「不屈の精神」を手に入れようと努力することは、むしろ成功への遠回りをすることになる。成功者の要素ばかり追いかける人の目の前には、次々と新たな要素が持ち込まれ、これらを手に入れようとする努力だけで一生が終わる。きっと「不屈の精神」の次には、「果敢な行動力」でも身につけようとするのだろう。こんなものはいくらでも出てくるのだ。
目的と手段を履き違えるとはこのことである。
こうした努力をするよりも、「不屈の精神」を持っている人には持っている人なりの、持っていない人にはそれなりのやり方がある、と考えるべきだ。すぐに物事に飽きてしまう人も、どんどん切り替えて新しいことができれば、「不屈の精神」を持っている人と同じくらい成功に近いはずである。「不屈の精神」を持っていたばかりに、芽の無いことを諦めきれずに失敗するということも沢山あるだろう。『大人げない大人になれ!』 chapter3 より 成毛眞:著 ダイヤモンド社:刊
キュウリの種は成長しても、キュウリにしかなれません。
自分にないものを求めても、結局はムダに終わるということです。
自分の生まれ持ったものをそのまま活かして生きていく。
それが「大人げない」生き方です。
「こういう人間にならなくては」
そう考えてしまう時点で、「常識的な大人」です。
「こういう人間で生きていくには、どうしたらいいか?」
そのような視点で人生を考えてみたいですね。
子供ころの趣味を維持しよう
平日は仕事に忙殺され、休日はぼんやりと過ぎていく。
そんな状況に陥っている大人は多いです。
しかし、このような生活を何十年と送ったところで、果たして豊かな人生と言えるかは疑問です。
成毛さんは、そんな人たちは、今すぐに、自分が子供の頃に夢中になっていた趣味やスポーツに再挑戦するべき
だと述べています。
残された時間は案外短い。
人間が趣味や好きな事に没頭している時には、脳内で多くの化学物質が分泌されるのだという。ドーパミンと呼ばれるこの物質は、脳が「喜び」を感じたときに、脳の中心部である中脳から分泌される神経伝達物質の一種である。ドーパミンは、人間の意欲や動機、学習といったものに強い影響力を持つと言われている。
脳科学の本を読めばわかるが、このドーパミンが分泌され始めると、脳はより効率的に分泌作業を行うべく、ニューロンという神経細胞をつなぎ変えようと活動する。ニューロンとは、脳の情報処理・伝達を司る要の細胞であり、このニューロン同士のつなぎ目がシナプスと呼ばれる。この脳内で起こるニューロンのつなぎ変えこそが、学習そのものなのだ。こうして脳は快感を覚え、さらなるモチベーションが引き出されるのだという。
私自身の感覚では、ドーパミンが分泌されている状態とは、いつしか時を忘れ、目の前のことに没頭している時間を指すのではないかと思う。集中が途切れ、ふと一休みした時には、心地よい疲労が体に残っている。『大人げない大人になれ!』 chapter4 より 成毛眞:著 ダイヤモンド社:刊
成毛さんは、このような時間をできる限り長くもつことこそが、人生を豊かにする最も重要な方法だと考えています。
好きなことに夢中になっている時間こそが、人生を豊かなものにし、創造性の土壌を肥やしてくれる
とも述べています。
自分のやりたいことをやるのが、「大人げない」自分になる第一歩です。
是非とも、生活の中に取り入れていきたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
日本ではこれまで、周囲の空気を読み、周囲に違和感なく溶け込む「常識的な大人」になることが求められる社会でした。
しかし、今は価値観の多様化が進み、「みんなと違うこと」が求められる時代です。
今まで「幼稚だ」として、振り向きもされなかった「大人げないこと」。
それも、大きな武器になりえるということです。
成毛さんは、「大人げなさは、大人げなさを呼ぶ」とおっしゃっています。
「自分の周りが常識的なつまらない人ばかりだ」
そう嘆いている人は、自分もそのような人である可能性が大です。
本書を読んで、ただの「常識的な大人」を卒業し、成毛さんのように魅力的な「大人げない人」を目指したいですね。
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