本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『自由な働き方をつくる』(常見陽平)

 お薦めの本の紹介です。
 常見陽平さんの『自由な働き方をつくる 「食えるノマド」の仕事術』です。


 常見陽平(つねみ・ようへい)さん(@yoheitsunemi)は、作家であり、人材コンサルタント、大学講師です。
 大学卒業後、大手出版社や玩具メーカー、人材コンサルティング会社を経て独立されて、現在はフリーで「若者×働く」をテーマに執筆や講演などを行うなど幅広くご活躍中です。

本当に「食えるノマド」とは、どのようなものか?

 最近、大きな注目を集めている、「ノマド」という言葉。

 もともとは、「遊牧民」という意味の単語です。
 転じて、最近では、「所属する組織や働く場所、時には住む場所にもとらわれない自由な働き方、生き方」を総称した言葉として捉えられることが多いです。

 フリーランスで働く人々は、いつの時代にも存在していました。
 そのような人々と、「ノマドワーカー」は何が違うのでしょうか。

 常見さんは、様々な角度から考察を行った結果、結局、ノマドというのは、自由な生き方、働き方の2010年代型スタイルの代名詞だという結論に達します。

「ノマド」に注目が集まれば集まるほど、それらに対する批判や疑問の声が増えたのも事実です。

 自らも何度かの転職を繰り返しながらも15年間のサラリーマン生活を経て、フリーランスに転向した常見さん。
 そんな常見さんも、牧歌的な匂いのする「ノマド」に対して批判的な立場を取っていた一人です。

 本書は、「ノマド」について、今までの議論を整理しつつ、本当にノマドで食べていくための仕事術をまとめた一冊です。
 その中から印象に残った部分をいくつかピックアップしてご紹介します。

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会社から逃げ出したい人は、本当は少数派

 ノマド熱が高まっている理由のひとつとしてよく挙がるのが、「会社にしがみついていても先が見えない」と考える、独立志向型の人が増えたことです。

 常見さんは、みんなが会社にしがみつかなくなっているというのは大嘘だと述べています。
 実際、政府系研究機関の調査では、終身雇用、組織との一体感、年功賃金といった日本的な雇用の特徴と言えそうなものの支持が増えています。

「それを支持するのは中高年だろ?」というツッコミが聞こえそうですが、「どの世代においても高い」というのが真相です。さらに言うならば、20代、30代の支持率は年々伸びています。大卒の若者は3年で3割強が退職しているのが現実ですが、みんなが終身雇用を望んでいるのはどうやら事実のようです。
「会社なんてものは終わりだ」という意見もありつつも、実際はみんな、ますます会社にしがみついているように見えます。

 また、「これからは会社が潰れても生き残る人材の時代だ」「どこに行っても通用する人間になれ」という意見もよく耳にしますが、実際は下の表のように生涯のキャリアを1社のみで形成したいという人が5割です。しかも、独立自営キャリアを選ぶ人はますます減っているというのも現実です。
 このように、「みんな会社から離れたがっている」「みんなが会社の未来に希望を失っている」というのはデータを見る限り、正しい認識ではないと言えそうです。
 もちろん、雇用不安が常態化している世の中であるがゆえにみんなが保守化しているとも言えますし、だからと言って実際このように安定して働けるとは限りませんが。

 『自由な働き方をつくる』  第1章 より  常見陽平:著  日本実業出版社:刊

 実際にノマドワーカーの増加を後押しするもの。
 それは、「自由に働きたいと思う人にとって、自由に働くことができる環境が整った」ことです。

 フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアの普及。
 エバーノートやドロップボックスなどのオンラインストレージサービスの普及。
 駅やカフェなどでの無料Wi-Fiスポットの整備。

 それらによって、ノートパソコン一つで、場所を選ばずに仕事する環境が整ってきました。

 世界的な不景気はいつ終わるか想像もつきませんし、IT技術の進歩は日進月歩で進んでいきます。

 今後は、さらに、「会社にしがみつきたい」と考える人たちと、「ノマド的に働きたい」という人たちの二分極化が進むことでしょう。

今いる会社は最高の「ビジネス・スクール」

 常見さんは、もし、自由な働き方をしたいなら、そういう人ほど、今の会社、今の仕事を大事にするべきだと強調します。
「会社は最高のビジネス・スクールであり、ソーシャルネットワークだから」です。

 会社は学校ではありませんが、とはいえ、実務を通じて自分のスキルを上げることもできますし、経験も積むことができます。少し大きな会社なら、いやベンチャー企業でも人材育成に熱心な企業なら研修も充実しています。会社という枠組みではできないこともあるのは事実ですが、会社に勤めているから、会社員だからできることもないこともあるのは事実ですが、会社に勤めているから、会社員だからできることもあります。ヒト、モノ、カネ、情報という会社のリソースを活用するからこそ可能な仕事もあるわけです。
 また、会社がどう回っているのか、どうやったらお金を稼ぐことができるのか、儲け方の仕組みを学ぶことだってできます。仕事を通じて、人脈を構築することだってできるでしょう。
 ぜひ、小さな成功体験で構わないので、最初の会社で「名刺代わりになる仕事」をしてください。こういう仕事の経験がないと、会社を辞めても何か後ろめたいものです。どんなに小さな成功体験だとしても、あなたの仕事ぶりというものを伝える材料にはなるものです。

 『自由な働き方をつくる』  第2章 より  常見陽平:著  日本実業出版社:刊

 自由な働き方をするということは、ある意味、「自分が会社になる」ということ。

 自分で仕事を取らなければ生活ができないし、利益を生まなければ給料も出ません。
 健康保険や国民保険にも、自分で加入しなければなりません。

 つまり、今まで会社が肩代わりしていたことも、すべて自分でやらなければならないということ。

 会社という組織に属している間に、学べることはすべて学んでおけということです。
 会社に属していることを最大限に活かそうという意識で、仕事に対する意欲も自然と高まりますね。

「MUST」「WANT」「NEGATIVE」を明確にする

 何か新たに始めるときに、ぜひ取り組みたいのが、仕事、職場に関しての「MUST」、「WANT」、「NEGATIVE」を明らかにすることです。

 常見さんは、具体的には以下の3項目を書き出すことを勧めています。

  • MUST・・・絶対に必要だと考えること
  • WANT・・・できれば、実現したいこと
  • NEGATIVE・・・絶対に避けたいこと

 最初は妄想レベル、情熱モードで、次に現実レベル、冷静モードで、という2段階で行うと効果的です。

 2段階目では、現実的に冷静に考える必要があります。
 しかし、あまり現実的に、冷静に考えると、すべての可能性の芽を摘んでしまう危険性があります。

 芽を摘んでしまわないために、次の2点から考えるとよいでしょう。1つは、本当に実現できないかどうかを考えることです。誰かを巻き込むことや、他のやり方を考えることで実現できないか。あるいは、無理をすることか、少しの妥協で実現できないかを考えてみるといいでしょう。
 もう1つは、今すぐ実現しようとは考えずに、短期・中期・長期で考えることです。短期ではダメでも、中期、長期で考えると実現できることもあるでしょう。短期的には優先順位を落としても、中長期で実現することを目指しましょう。
 実際、やりたくてもできなかったことが、イノベーション、規制緩和、新しい出会いなどによって、ある日突然できるようになることがあるのです。チャンスは突然やって来ます。でも、そのような環境の変化に気づけないと、みすみすチャンスを逃してしまうのです。

 『自由な働き方をつくる』  第3章 より  常見陽平:著  日本実業出版社:刊

 自由な働き方②

  (『自由な働き方をつくる』 日本実業出版社刊 P46 より抜粋)

 NEGATIVE項目については、冷静になってからさらに、「本当に我慢できないこと」「短期的に我慢できること」に分ける必要があります。
 このように、自分のMUST、WANT、NEGATIVEを明確にすると、頭の中がすっきりします。

「こんなはずじゃなかった」

 あとでそうならないように、一度試したいですね。

1つひとつの仕事を「テスト」だと考える

 仕事を引き受けるときには、必ず顧客からの「期待値」というものがあります。

 顧客の満足度は、期待値とのギャップによります。
 同じパフォーマンスでも、期待値が低ければ、より大きな満足を与えることができます。

 フリーで働くにあたって、この「期待値」の調整が、より大事になります。

 期待値を調整した後、結果を出すことももちろん重要です。自由な働き方ほど、信用が命です。せっかくいただいた仕事なのですから、実際には期待以上の成果を出さなければなりません。
 特に意識していただきたいのは、仕事とは「テスト」だということです。1つひとつが自分に課せられた「テスト」だと思ってください。決められた時間もあれば、規定もあります。そして、冷徹にジャッジされます。「使えない」と思われたら、もう二度と依頼が来ません。大事なことなので何度でも言いますが、あなたの代わりは、いくらでもいるのです。
 さらに仕事は、特に自由な立場でやるときこそ、アフターフォローが大事です。仕事を終えたらその後はどうだったのか、広がりはあったのかなど、成果をヒアリングしてみましょう。フォローするという行為自体が喜ばれますし、ここでさらに深いニーズを聞くことができるわけです。
「期待値」というコンセプトを理解していると、仕事の満足度が驚くほど上がります。ややずるい言い方をするなら、期待値を知ることで、絶対に外してはいけない部分と、サボったり手を抜いたりしていい部分が分かるわけです。これこそ、自由な働き方を実現するポイントですから、意識しておきましょう。

 『自由な働き方をつくる』  第4章 より  常見陽平:著  日本実業出版社:刊

 お客さんは、自分に何を、どの程度望んでいるのか。
 それを正確に見極めて、それ以上のパフォーマンスを与えることが、何よりも大事になります。
 もちろん、アフターフォローも大切ですね。

 個人の信用が、そのまま仕事の信用になる。
 それが、ノマドワークスタイルの魅力でもあり、怖いところでもあります。 

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 常見さんは、「自由な働き方」は、自分自身が日々の仕事の中で、意識し、頭を使い、汗をかいて、一生懸命つくり上げるものだとおっしゃっています。

 努力なしに、自由な働き方を手に入れることはできません。
 逆にいうと、実力を付ければ付けるほど、働く場所や時間、仕事の内容などの自由が得られる時代になったということ。

 もちろん、「ノマドワーカー」として働くというワークスタイルも、その中の選択肢に含まれます。

 そのように考えると、ノマドで働く、働かないということよりも、まず、自分の仕事の実力を上げることが先決である。
 そういう当たり前だけれど、至極当然の結論に行き着きます。

 ただ、将来、自由な働き方をしたいのなら、今から意識を切り替えないと、世の中の流れに間に合わなくなります。
 まずは、組織に依存する甘えを完全に断ち切る必要がありますね。

 本書は、「ノマド」で働くことの厳しさを知り、「ノマドワーカー」としての自分の可能性や適性を知るためには、うってつけの一冊といえます。

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