【書評】『100歳まで切れない詰まらないタフな血管をつくる! 』(高沢謙二)
お薦めの本の紹介です。
高沢謙二先生の『100歳まで切れない詰まらないタフな血管をつくる! 』です。
高沢謙二(たかさわ・けんじ)先生は、心臓などの循環器系がご専門の内科医です。
日本循環器学会など多くの学会で評議員を務めるなど、その道の権威として著名な方です。
「血管年齢」を下げて健康的な体に!
私たちの生命を維持するために必要な血液。
その血液を体の隅々まで運んでいるのが、血管です。
血管が機能しないと、各臓器に酸素と栄養が運ばれず、病気や不調が起こります。
血管の老化は、ほとんど自覚症状なく進行します。
心筋梗塞や脳梗塞で倒れて初めて、動脈硬化が進行していたことに気づくことも多いといいます。
血管の健康状態を知る方法として最近注目されているのが、「血管年齢」です。 血管年齢は、「脈波」によって推測します。
心臓は収縮と拡張を繰り返して血液を送り出しますが、この脈拍のリズムを波形として描き出したのが脈波です。
脈波は、加速度脈波計という装置で簡単に調べることができます。
この装置は、心臓から送り出された血液が、全身の血管壁にぶつかり跳ね返ってくる反射波の大きさと速度を測定し、デジタル処理によって波形として描くものです。 高沢先生は、脈波から動脈硬化の進行具合を推測できる理由について、以下のように説明しています。
心臓から血液を送り出すときには、血管に圧力がかかります。一般的な血圧は、この圧力を指しています。一方、送り出した血液が血管に当って心臓に戻ってくるときには、心臓に圧力がかかります。これを反射圧といい、反射圧が高いほど動脈硬化が進んでいることがわかるのです。
わかりやすい例を挙げましょう。ゴムボールを高いところから落としたとき、下が硬い床ならポーンと跳ね返ってきます。反射圧が高いということです。でも、下が軟らかい座布団ならボールはあまり弾みません。つまり、反射圧が低いのです。それと同じで、血管が硬いと反射が強く、軟らかければ反射が弱くなります。
心臓は、筋肉を収縮させて血液を送り出した後、弛緩して一瞬休息しています。そこに、硬い動脈に当たった血液が跳ね返ってくると、心臓はダメージを受けます。つまり、動脈硬化は血管だけの問題ではなく、心臓の健康状態にも悪影響を及ぼすのです。『100歳まで切れない詰まらないタフな血管をつくる!』 第1章 より 高沢健二:著 マキノ出版:刊
血管年齢は、基本的に加齢とともに高くなっていくのが普通です。
実年齢よりも血管年齢が高かった場合の原因は、血管の素材そのものを阻害する「器質的原因」と、血管の機能を阻害する「機能的原因」とに分けられます。
器質的な原因としては、加齢の他、脂質異常症、糖尿病などがあります。
一方、機能的な原因としては、高血圧やストレス、喫煙、不眠などが挙げられます。
血管年齢は、器質的硬化と機能的硬化の両方を勘案して推測します。
高沢先生は、血管年齢が高く算出されても、機能的硬化の原因である生活習慣を改善することで、血管を若返らせることは十分に可能である
と述べています。
本書は、血管を若々しく保つための食事や運動、生活習慣の秘訣を、数多く紹介した一冊です。
取り上げられているものは、すべて、国内外の第一線で活躍する医師や、医学研究者などによる最新の研究をもとにしたものです。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「一口30回かむ」で肥満・動脈硬化予防に!
沖縄の離島での医療機関でご活躍中の渡辺信幸先生は、「カムカムダイエット」という方法を提唱しています。
この健康法は、一口30回かむだけのシンプルなものです。
なぜ、「よくかむこと」で体重が減り、健康になれるのか。
渡辺先生は、以下のように説明しています。
肥満の原因は食べすぎです。脳の満腹中枢は、反応するまで20分かかるといわれます。かまずに飲み込むと早食いになり、満腹中枢が反応する前に多く食べてしまうのです。しかし一口30回かむと、食べるのに時間がかかり、食事中に満腹中枢が働くので、食べすぎることがありません。よくかめば、少量の食事で満腹感を得られます。
また、早食いをすると、一時的に満腹になっても、すぐにおなかがすきます。これは、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンの作用です。早食いをして急激に血糖値が上がると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンも一気に大量分泌され、血糖値が急降下します。そのため、短いサイクルで空腹感を覚えるようになり、いくら食べても満たされないのです。『100歳まで切れない詰まらないタフな血管をつくる!』 第2章 より 高沢健二:著 マキノ出版:刊
「かむこと」のメリットは、他にもあります。
咀嚼で分泌される唾液成分には、「パロチン」という成長ホルモンの一種が含まれています。
パロチンは、若さを保つホルモンといわれ、20代半ばまで盛んに分泌されますが、加齢とともに減っていきます。
「かむこと」によって、このパロチンの分泌を増やすことができるために、ダイエット効果だけでなく若返りの効果も期待できます。
忙しい現代人ですが、健康のためにも食事のときはゆっくりとよくかんで、味わって食べる余裕が必要ですね。
「タマネギ」で血液をサラサラに!
東海大学名誉教授の西村弘行先生は、動脈硬化や高血圧に脅威に対して、薬に勝るとも劣らない薬効を持つ食品として紹介しているのが「タマネギ」です。
タマネギには、含硫アミノ酸(硫黄を含むアミノ酸)や、調理・加工によって生じる含硫化合物が豊富に含まれています。これらのうち、セパエン類などの含硫化合物には、血栓(血液内にできる血液の塊)ができることを防ぐ働きや、血小板が凝縮して血液がドロドロになるのを防ぐ働きがあります。
アテローム性動脈硬化は、LDLに活性酸素が作用して起こることは、先ほど説明しました。タマネギなど、ネギ属の植物が持つ含硫化合物は、その抗酸化作用によって活性酸素を取り除き、LDLの酸化を阻止することで、アテローム性動脈硬化を防ぎます。私たちが行った研究で、玉ねぎの含硫アミノ酸やトリスルフィド類という成分に、LDLの酸化を抑制する作用があることが判明しました。
さらに、タマネギにはケルセチン類というフラボノイド(植物に含まれるポリフェノールの一種)が豊富に含まれています。ケルセチンは、タマネギの皮の色素のもとで、可食部にはケルセチン配糖体という形で豊富に含まれています。このケルセチン及びその配糖体にも、強い抗酸化作用のあることが明らかになっています。『100歳まで切れない詰まらないタフな血管をつくる!』 第3章 より 高沢健二:著 マキノ出版:刊
タマネギの薬効を、より効果的にとるポイント。
それは、タマネギを切ってからすぐに調理するのではなく、室温で30~60分ほど放置することです。
酵素による化学反応が、より活発に行われるようになります。
「足首回し」の体操で、足の血流を良く!
「みらいクリニック」の院長として薬を使わない独自の治療法を続けている、今井一彰先生は、「足首回し」の体操を紹介しています。
やり方は、足の指の間に、反対側の手の指を入れて、足首をグルグル回すだけです(下図参照)。
体の中でも細い部位である首、手首、足首はとりわけ血管が収縮しやすく、冷えやすい部位です。その冷えやすい足首をグルグル回して温め、血管が開けば、全身の血流や動脈硬化(血管が硬くなった状態)にも好影響をあたえるはずです。
そして、その影響を直接的に受けるのが、ふくらはぎを流れる静脈血です。足に下がった血液は、重力に逆らって心臓へと戻されます。その際、血液が逆流しないのは、静脈内に逆流を防ぐ弁が設けられているためです。そして、ふくらはぎの筋肉が血管に圧力をかけることによって弁が開き、血液が流れる仕組みになっています。
実際、このふくらはぎの働きを補う最も簡単な方法が、足首回しかもしれません。足首を回すと、同時にふくらはぎもよく動くのがわかります。その刺激によって、足に停滞していた血液が流れ、心臓の血流量が増加するのです。『100歳まで切れない詰まらないタフな血管をつくる!』 第4章 より 高沢健二:著 マキノ出版:刊
(『100歳まで切れない詰まらないタフな血管をつくる!』 P187 より抜粋)
今井先生は、特に、ふだんからふくらはぎがむくみやすい人、足が冷えている人は、足首回しによる高血圧・動脈硬化の改善効果が大いに期待できる
と述べています。
是非、試してみたい健康法ですね。
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血管は、「沈黙の臓器」といわれるほど、自覚症状のない臓器です。
定期的に「血管年齢」を測定して、血管の健康状態をチェックすることが大切になりますね。
しかし、それ以上に大事なことは、生活習慣を改善させることです。
喫煙やストレスを極力減らし、血管や心臓にかかる負荷をできるだけ減らすことが必要です。
本書のさまざまな健康方法を全部やろうとするのは無理があります。
興味のあるもの、続けられそうだと思ったものを選んで試してみて、自分に合った健康法を探すのが、本書の一番賢い使い方でしょう。
血管によい生活習慣を身につけて、体の中からキレイになり、健やかな人生を歩みたいですね。
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