【書評】『行動の科学』(マイケル・ボルダック)
お薦めの本の紹介です。
マイケル・ボルダックさんの『行動の科学――先送りする自分をすぐやる自分に変える最強メソッド』です。
マイケル・ボルダック(Michael Bolduc)さんは、カナダの目標達成コーチです。
すぐやれない人など存在しない
夢や目標、抱えている問題などは人それぞれです。
しかし、多くの人の障害となっていることには、いくつかの共通点があります。
そのひとつが、「先延ばし」「先送り」です。
「めんどくさい」「明日やればいいや」「ほかにやることがある」「忙しいしお金もないからやっぱり無理」・・・・・。
人間なら誰しも、こんなことを考えたり、やるべき課題をほったらかしにしてしまったことがあるのではないしょうか。(中略)
ただし、もしあなたが先送りをして、即行動ができないことで悩んでいたとしても、あなたの性格、ましてや人格に問題があるわけではありません。自分自身に失望したり、否定する必要はまったくありません。
「すぐにやれない人など存在しない」ということをまずあなたにお伝えしたいと思います。
すぐに行動に移せないことで困っている人がいるとすれば、その人はただ、すぐやれない状態にあるだけなのです。私たちの行動は、私たちの感情が原因となって決まります。つまり、行動できないという結果は、行動できないような感情が原因となって生まれているのです。
行動に向かっていけるような感情をデザインし、行動できる状態をつくれば、誰でも見違えるようにアクティブになれます。『行動の科学』 第1章 より マイケル・ボルダック:著 吉田裕澄:訳 フォレスト出版:刊
ボルダックさんは、成功の80%は心理面であり、20%が方法である
と述べています。
すぐに行動したいのにできない。
その裏には、心理的、感情的な「何か」が、障害物となっていることがほとんどです。
逆にいえば、それらを取り除ければ、誰でも「行動できない人」を卒業できるということです。
本書は、「すぐやる人」になるための、ものの見方や考え方、具体的な方法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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子どものようになれる人ほど行動する理由
「すぐに行動する人」に共通すること。
それは、子どものように素直
な姿勢です。
私に学びに対する姿勢を最初に教えてくれたのは、空手の黒帯だった叔父でした。7歳のとき、空手に憧れていた私は叔父をとても尊敬しており、その指導を受けていました。ところが、トレーニングはたいへん厳しいもので、空手の型の反復練習を500回も課されることもありました。
まだ子どもだった私は500回も繰り返す前に飽きてしまい、途中からいいかげんに練習しました。叔父はそんな私を見つけ、次のように言いました。
「500回やることが目的ではない。回数だけではなく1回1回に真剣に取り組むことが大切なんだ」
1回1回のクオリティを追求すると、もっと足の踏ん張りが必要ではないか、腕の角度がすぐ下がる癖があるのではないか、などとそのたびに身体全体でフィードバックを受け、上達速度が高まります。
しかし、真剣であればあるほど、その繰り返しに終わりがないことに気づきます。新たなフィードバックは尽きることなく見つかるからです。500回というのは終わりなき学びの道を子どもに気づかせるためのものであること、叔父のようなマスターと呼ばれる人でも毎日修練を欠かさない理由が、幼心にも理解できました。
その後、私は叔父の指導に真剣に取り組んだことで空手を上達させました。これが生徒としてのあるべき姿勢の一つとして心に刻み込んだ、私の最初の成功体験でした。
あなたにも、誰かに何かを教わって成長した体験があるはずです。ぜひ、そのときの気持ちを思い出してください。『行動の科学』 第1章 より マイケル・ボルダック:著 吉田裕澄:訳 フォレスト出版:刊
生徒として、誰かから学ぶときに大切なこと。
それは、先生を信頼すること、全力で参加すること、そして実践すること
です。
学ぶことへの積極的な心構えと、教えてくれる人へのリスペクト。
つねに忘れないようにしたいですね。
自己規律によって「快適領域」を広げていく
ボルダックさんが、人間が即行動するために必要な本質的な要素
として挙げているもの。
それは、「自己規律」です。
喜びを遅らせる能力、つまり長期的快楽を得るために短絡的な犠牲を払うことのできる能力が成功への秘訣であると、私たちは全員わかっています。
筋肉質の身体をつくることを考えてみましょう。そのためには、もうこれ以上は動けないぐらい負荷を肉体にかけてウエイトトレーニングをするという日々の規律を守る必要があります。そうすることで筋肉の発達を促すのです。
筋肉が耐えうる限界までウエイトトレーニングをすると、短期的には不快感を覚えるのですが、長期的に運動をする習慣がつくられるとその報酬は何倍にもなって返ってきます。
成功を収めた人は、快楽を遅らせることに長けており、自己規律を守れる人です。彼らは長期的な成功を収めるために必要な日々の行動、そして、短期的な快楽を放棄するのに必要とされる日々の行動を継続的にすることによって自身が何よりも求めるゴールを達成するのです。
しかし、受け入れることができる短期的な不快感、不快適さにも個人差がや段階があります。いきなり自分が快適と感じることができる領域を大きく越えて不快なことに挑戦すると、その行動が習慣になる前にやめてしまいます。習慣にならなければ、本来得たかった結果を手にすることはできません。
ですからまずは無理のない範囲で快適な領域を出て自分に負荷をかけ、それに慣れたらさらに快適な領域を出て、また自分に新しい負荷をかける。これを繰り返していけばいいのです。
少しずつ自分に負荷をかけ、段階的にその負荷を大きくしていくことで、自分の快適領域を広げていくのです(下の図5参照)。
習慣として取り組み、気がついたときにはすっかり快適領域は広がっていて、以前は受け入れることができなかった不快な行動も、簡単に受け入れることができるようになっているでしょう。『行動の科学』 第2章 より マイケル・ボルダック:著 吉田裕澄:訳 高野内謙伍:監 フォレスト出版:刊
図5.時間の経過で見た快適領域のイメージ
(『行動の科学』 第2章 より抜粋)
中国の故事に、「朝三暮四」という言葉があります。
その言葉の通り、人は短期的な視点で、物ごとを判断してしまいがちです。
努力を続けられる人は、遠い将来を基準に、今現在の判断を下せる人。
前提として、「今より良くなっている自分」をつねにイメージすることが必要となります。
可能性はいつも「フィフティ・フィフティ」
行動しようとしても、なかなか第一歩を踏み出せない。
そのとき、私たちの足にしがみついているのは、「ビリーフ」です。
ビリーフとは、信念であり、確信の度合いの高い思い込み
のことです。
失敗や挫折などがもとで、「私には無理だ」「どうせできない」と思い込んでしまう。
ボルダックさんは、このような自らの可能性を閉じてしまうようなビリーフ
のことを、「リミティング・ビリーフ」(自分を制限する思い込み)と呼びます。
リミティング・ビリーフを打ち破り、目標に近づく一歩を踏み出す。
そのための手段のひとつが、「大きく考え、大きなゴールを設定する」ことです。
(前略)ゴールが大きいほど、進捗する度合いもあなたの成長への歩幅も大きくなります。これこそが私が大きなゴールの設定をすすめる本質的な理由です。
人は賞金100万円よりも1000万円のレースの優勝を目指すときのほうが、本気になります。大きいゴール=大きいモチベーション
小さいゴール=小さいモチベーションしかし、大きいゴールのほうが大きなモチベーションを得られるからとはいえ、非現実的なあまりに大きすぎるゴールを設定するのも問題です。
65歳の運動経験のない男性が、次回のオリンピックの100メートル走で金メダルを獲る、というゴールを設定したとしたらどうでしょう? もし達成すればオリンピック史上最高齢の快挙達成です。客観的に見ても実現は困難です。同様に本人も実現の可能性をあまり信じていないのなら、モチベーションは起こりません。この男性はこのゴールに向けて何の行動もすることはないでしょう。
では、ゴール設定をする際の最適な基準はどれぐらいなのでしょうか?
ゴール設定は、極端に高すぎず、低すぎず、50%程度の確信度を感じるレベルで設定することです。
仮に年収300万円の人がいて、この人が1年間で年収を315万にする、というゴールを設定したとします。そしてこのゴールを達成する確信を90%持っていたとすると、このゴールにワクワクして、大きなモチベーションを感じるでしょうか。
反対に、1年間で年収を1億円にするというゴールを設定し、その達成に5%しか確信していなかったとしたら、大きなモチベーションを感じるでしょうか。
どちらの例も行動を起こすことは先送りされ、実際に行動を起こすことはまれでしょう。
仮にこの人にとって、1年間で年収を500万にする、というゴールへの確信がちょうど50%に感じられるところだとすると、それはちょうどいいゴールだといえます。
50%程度の確信度の目標というのは、達成できれば今の自分からすると大きな成果といえますし、そのためには今の自分から大きく成長することが必要になります。このくらいの基準でゴールを設定することがポイントです。成功確率50%、失敗確率50%という快楽と痛みの狭間で両方の感情を持つことができる究極のバランスが、私たちに自然とモチベーションを与えてくれます。
正しいゴール設定が行動をスムーズにし、結果を得るためのカギです。『行動の科学』 第3章 より マイケル・ボルダック:著 吉田裕澄:訳 フォレスト出版:刊
ゲームでも、スポーツでも、「勝つか負けるか、五分五分」の状態が一番盛り上がります。
目標もそれと同じで、「頑張れば何とか達成できる」というものに対して、最もモチベーションが上がります。
ゴールは小さすぎてもだめ、大きすぎてもだめ。
そのさじ加減が、目標達成のカギを握ります。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
ボルダックさんは、成長しつづけることは、「なりうる最高の自分」に近づく最も尊い、価値ある行為
だとおっしゃっています。
達成すべき目標は、そのためのツールにすぎないとのこと。
達成した結果も、もちろん大事です。
しかし、それ以上に、目標達成に向けて日々研鑽し続けることの方が、ずっと重要です。
どんなに素晴らしいアイデアを思い描いても、それを実行に移さなければ、意味がありません。
まさに、「絵に描いた餅」ですね。
本書は、すぐに行動するために必要なツールがたくさん詰まった“道具箱”です。
自分に合ったやり方で「すぐやる人」になって、フットワーク軽く人生を歩みたいものです。
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