【書評】『ノマドワーカーという生き方』(立花岳志)
お薦めの本の紹介です。
立花岳志さんの『ノマドワーカーという生き方』です。
立花岳志(たちばな・たけし)さん(@ttachi)は、プロ・ブロガーです。
「ブログ」で人生を劇的に変える!
立花さんのブログのタイトル、『 No Second Life 』は、「二度目の人生はない」という意味です。
一度しかない人生を後悔のないよう、力いっぱい生きたいという自分へのメッセージ
とのこと。
当時、39歳の普通のサラリーマンだった立花さんは、仕事や家庭や健康、それにお金の面でそれぞれトラブルを抱えて行き詰りました。
「人生を劇的に変化させたい」
その強い思いを抱いた立花さんが辿りついた結論。
それは、「ブログを書くこと」でした。
生活の中でのブログの位置づけを「本業と同等」の最高レベルに置き、3つの分野(IT関連記事、書評、ランニングによるダイエット)の話題を中心に1日に3記事のペースで書き続けます。
2008年12月から本格的に始め、こつこつと記事を更新、その結果、わずか2年ほどの短い期間で、月間160万PV(ページビュー、記事が読まれた回数のこと)を集める人気ブログに成長します。
立花さんのブログのスタンスは、自分を高めることができて、しかもそれが良い情報になること
です。
読み物としてエッセイ風のブログというのも存在します。たとえば日々パチンコをやって、その結果を報告するというブログもあるでしょうし、今日はこんな失敗をしちゃいました、というお笑い風のトーンもアリだと思います。
ただ、僕の場合はブログのミッションが「人生を劇的に変化させるためのサポートツール」なわけですから、大前提として自分を高めてくれる必要がありました。
でも独りよがりでは無意味で、自分を高めてくれた結果を、いかに簡単かつ有効な方法で読者の方達にシェアできるか、また逆に、自分の失敗体験をいかにうまく分析して説明することによって、読者の方が同じ失敗を経験せずに済むようにできるか。そういったスタンスが大切だと感じていました。
(中略)
ブログを始める時にはテーマ選びに頭を痛める方も多いと思いますが、自分が興味を持てない分野だと続けていくことが難しいと思いますし、読者の方も面白いと思わないでしょうから、「自分が今興味を持って取り組んでいること」について書いていくというのは良い方法だと思います。『ノマドワーカーという生き方』 Chapter2 より 立花岳志:著 東洋経済新報社:刊
ただ、お金が稼げればいい、自分のスキルアップになればいい。
そういう考えでは、ここまで大きなブログになることはなかったでしょう。
当たり前のことですが、書き手と読み手、どちらにも役立つ「WIN−WIN」の関係だったから、短期間で多くの読者を集められたということです。
本書は、立花さんが会社を退職しノマドワーカー(場所や時間を選ばないで働く人々のこと)という働き方に至るまでの経緯や、フリーのブロガーとして働く方法やマネジメントを具体的にまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
良質な「セミナー」への参加の勧め
立花さんは、ブログを始めて間もなく、二つのセミナー(「自分軸セミナー」と「出版セミナー」)を立て続けに受講しました。
そして、その二つのセミナーが自分の人生を決定づけた
と述べています。
私自身が40歳になるまで一度も参加していなかったので良く分かるのですが、セミナーに参加した経験がない方は、積極的にセミナーに参加する人を異次元の存在と観ているかもしれません。「宇宙人」や「宗教」みたいに思う人もいるでしょう(僕がかつてはそうでした)。
ただ、良質のセミナーは読書を遥かに凌駕する濃密で良質の情報を短時間に吸収することができる最高の手段です。
出版の決意ももちろんですが、ブログやTwitter、Facebookを活用してのブランディングに本格的に取り組むことになったのは、この二つのセミナーに参加したおかげでした。
それ以来良さそうなセミナーがあれば、積極的に参加して知識を吸収するようにしています。そして、僕自身も定期的にセミナーを開催するようになりました。2年前では考えられなかったことです。こうして振り返ると不思議な気がします。『ノマドワーカーという生き方』 Chapter2 より 立花岳志:著 東洋経済新報社:刊
講義の内容もさることながら、セミナー参加者のモチベーションの高さに「クラクラ」し、大いに刺激を受けた
そうです。
決して安い参加費ではありませんが、情報収集や人とのつながりなどを考えれば、十分に元が取れるものなのでしょう。
興味のあるテーマや気になる講師が見つかったなら、試しにセミナーに参加してみるのもいいかもしれませんね。
「5年後の自分の姿」を描くこと
企業にも「事業計画」があるように、個人でも将来の計画、「ミッション」を定義することが大切です。
立花さんが実際に実行し、勧めている方法は、『自分の「5カ年計画」を作ること』です。
「いきなり5年後の自分の姿なんて描けない」と思う方も多いと思います。僕も最初は戸惑いました。
この時に参考になるのが、渡辺美樹さんが提唱している「人生の6つの柱」に沿って5年後のビジョンを描いていくことです。
6本の柱とは、「仕事」「家庭」「教養」「財産」「趣味」「健康」をそれぞれ指します。
それぞれの項目に「5年後になっていたい自分」を書き込んでいくのですが、ここで非常に重要なポイントがあります。
それは、「想像力を妥協しない」ことです。
目一杯欲張りな夢を描くことです。
ある資産家の方が講演会でおっしゃっていたのですが、自分が描ける夢以上の成功を掴むことは人間滅多にできないのだそうです。「3LDKのマンションに住みたい」と思っている人は3LDKの家しか買えず、6LDKと思い描いている人は、6LDKの家を手に入れる可能性が高くなるのです。
これは神秘的な話でもなんでもなくて、夢を描くことで6LDKのマンションを購入するためにはいくらかかるのか、そのためには自分がいくら稼ぐ必要があるのかなど、具体的に情報を収集し前に進むようになるためです。『ノマドワーカーという生き方』 Chapter4 より 立花岳志:著 東洋経済新報社:刊
思いっ切り背伸びをして、できるだけ具体的にたくさん書き込むことが大事です。
遠慮は無用です。
まずは、頭の中の「自分自身の限界」を突き破るところからですね。
立花さんは、A4用紙3枚にも及ぶ「5カ年計画」をこまめに更新し続け、それをプリントアウトし、毎朝見返すようにしているそうです。
「ライフログ」を残すことの意義
ここ数年、「ライフログ」という言葉が脚光を浴びています。
ライフログとは、「人生(ライフ)」の「記録(ログ)」という意味です。
写真を撮ってアルバムに貼る、日記帳をつける。
それらもライフログといえます。
昨今のデジタル化で、ライフログは以前と比較にならないほど簡単かつ多様に取得できるようになりました。
立花さんは、スマートフォンなどを駆使し、できうる限りのライフログを取り続けています。
その理由は、ライフログを「記憶を失わせないための装置」だと考えているからです。
ライフログを意識的に残すことで、自分の記憶を呼び戻すための「鍵」を自分の手に入れることができる
としています。
ジョギングの記録、訪問先、写真、食べた場所・食べたもの。
それらは、もちろん、ミクシィでの日記やツイッターでのつぶやきも、すべてライフログになります。
この「ライフログを見返す時間」は何よりも楽しく豊かな気持ちになれます。「楽しかったこと」「充実したこと」に集中してログを取っていますので、見返せばいつもそこには楽しい世界が待っています。
実際にはログを見返せば、死んでしまった飼い猫の元気な頃の写真が出てきて悲しくなったり、今では疎遠になってしまった旧友とのやり取りが出てきて切なくなることもあります。
でも、それも含めて記憶なのだと僕は思っています。死んでしまった猫との楽しかった日々を思い出すことで、今では一緒に遊べなくなってしまった猫のことをいとおしく思うことも良いことだと思いますし、疎遠になった友達には、思い切ってこちらか連絡を取るきっかけにもなります。
毎日ライフログを取ることは、未来の自分に向けて手紙を書くようなものです。そして過去のライフログを見返すことは、昔の自分からの手紙を受け取ることです。
義務感にならずに楽しみながら収集できると、とても素敵だと思います。『ノマドワーカーという生き方』 Chapter4 より 立花岳志:著 東洋経済新報社:刊
インターネットを通じて、個人の購買記録や検索記録などの膨大な情報が日々記録されている「総記録社会」ともいわれる現代。
個人においても、自分の人生のすべてを記録する時代が、近いうちにやってくるでしょう。
技術の進歩の速さを実感します。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
本書を読むと、独立してブログだけで生活をする。
そんな夢のような話も、技術の進歩などにより可能になったんだなと改めて実感します。
立花さんも、「ノマドワークスタイル」というのは、決して一部の裕福な人や資産家などの成功者だけに許された特殊なものではなく、ごく普通のサラリーマンだった人間にも有効な働き方の一つになった
と強調されています。
もちろん、それなりの準備と戦略が必要ですが、時間と場所に縛られない働き方というのは、大きな魅力です。
自分の進むべき道を模索していくなかで、「ノマドワーカー」という選択肢もあり得る。
そのことを頭の片隅に入れておくのは、可能性と選択肢を広げるという意味で大事なこと。
いずれにしても、『No Second Life』、一度きりの人生です。
自分なりに、悔いのない充実した人生を送っていきたいですね。
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