【書評】『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい!』(石川貴康)
お薦めの本の紹介です。
石川貴康さんの『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい!』です。
石川貴康(いしかわ・たかやす)さんは、企業改革コンサルタント、不動産投資家です。
「プライベートカンパニー」で豊かな生活を!
長引く景気の低迷で、私たち日本のサラリーマンの給料は頭打ちです。
一方、税金と社会保険料の負担は増え続けています。
今後ますます苦しくなるであろう、この現実を変える武器が、「プライベートカンパニー」です。
石川さんは、忙しいサラリーマンでも、不動産とプライベートカンパニーと税金の知識をうまく使いこなせば、10年間で300万から500万の資産を築くことができる
と述べています。
今後、サラリーマンの所得控除が減らされる中で、課税所得をコントロールできることのメリットは限りなく大きい。課税所得をコントロールできれば、手元に残るお金は増える。可処分所得が増えれば、必ず豊かさを実感できる。豊かな生活とは給料の多い生活ではない。自由に使えるお金が多い生活、それこそが豊かな生活だ。
妻子持ちのサラリーマンはもちろん、中高年のお一人様サラリーマンも、共働きカップルにとっても、自分の会社と不動産で資産を築く方法は、将来への有効な手立てである。
思い返せば、私が子どもの頃、地方の私の家の周りでは、サラリーマンはどちらかといえば少数派であった。自ら事業を興し、独り立ちしている人の方が高く評価されていたものだ。事実、商売をしている人の方がお金を稼ぎ、豊かさを満喫し、地域に貢献して、お金をよいことに使っていた。いつから「サラリーマンになること」「サラリーマンであること」が人生の目的になり、被雇用者の立場だけに甘んじるようになったのだろう。
被雇用者は、資本主義社会において、もっとも不自由な身分だ。自分のお金を自分でコントロールできない哀しい身分だ。
だが、サラリーマンとしての立場を活かしつつ、プライベートカンパニーを立ち上げれば、哀しく不自由な身分から、お金を自らコントロールできる立場にシフトできる。サラリーマンとしての「安定的な立場」を維持しながら、豊かな生活を実現できるのである。
サラリーマンよ、今こそお金をコントロールするための有効な道具であるプライベートカンパニーを立ち上げよう。小規模でもいい、事業を始め、複数の収入を実現し、お金をコントロールするのだ。私たちは資本主義の世界に生きている。プライベートカンパニーのオーナーとなって、資本主義を最大限に満喫しようではないか。プライベートでいいのだ。小規模でいいのだ。サラリーマンのままでかまわない。カンパニーを起こし、お金をコントロールし、小なりとはいえ、資本主義の主人公となって、お金を使いこなす身分になろうではないか。
本書にはそれだけのノウハウが記されている。存分に活用してほしい。『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい!』 はじめに より 石川貴康:著 東洋経済新報社:刊
本書は、「プライベートカンパニー」を武器に、節税効果を目一杯活用して、確実に資産を築くノウハウをまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「貯金」という金融資産が「不動産」という資産に変わった
石川さんは、中高年のお一人様サラリーマンでも、ローリスクで資産を持ち、プライベートカンパニーでお金をセーブし、将来に備えることはじゅうぶんに可能
だと述べています。
実際の例として、40歳サラリーマンAさんの場合を見てみましょう。
中堅企業に勤めるサラリーマンのAさんは、先行きに不安を感じ、不動産投資にチャレンジした。チャレンジの中身は、ワンルームマンションを購入し、家賃7万円で賃貸に出すという方法だ。
Aさんのスペックは以下の通り。年齢 40歳
月給 35.6万円(税込)
年収 427.2万円(税込)
課税所得 239.7万円
貯金 800万円Aさんは、毎月約3万円、年間にして約40万円をこつこつ続け、40歳までに貯蓄額を800万円にまで増やした。
しかし、このまま働き続けたとしても将来が安心・安全だとは思えない。そこで、不動産投資を思いたった。購入したのは、神奈川県川崎市のワンルームマンションだ。価格は750万円。オーナーチェンジのため、すぐに月8万円の家賃が入り始めた。決済したのは6月30日のため、その年は家賃収入が入ったことになる。
ここで、初年度の収支をまとめてみよう。初年度:物件の購入代価750万円
不動産収入:48万円(家賃8万円×6ヶ月)
経費 :登記費用:20万円
:不動産取得税:7万円
:施設管理費(管理運営費+修繕積立金):6万円(1万円×6ヶ月)
:不動産管理費(家賃×5%×6ヶ月):2.4万円
:減価償却費:7.8万円(15.6万円の半年分)
:合計:43.2万円不動産収入から諸経費を差し引くと、初年度は4.8万円の黒字である。
わずか4.8万円の黒字だが、初年度から収支が生まれたわけだ(減価償却費については話を簡単にするためここでは割愛)。
ワンルームマンションの購入費用として750万円を支払ってはいるが、これは投資であり、キャッシュアウト(お金が出て行くこと)して資産が増えている。つまり、貯金という金融資産が不動産という資産に変わったのである。
(中略)
Aさんの場合、翌年度から家賃収入が年間を通して入ってくるので、生活は一気に楽になる。翌年度の収支をまとめてみた。不動産収入:96万円(家賃8万円×12ヶ月)
経費:施設管理費(管理運営費+修繕積立金):12万円(1万円×12ヶ月)
:不動産管理費(家賃×5%×12ヶ月):4.8万円
:減価償却費:15.6万円
:合計:32.4万円不動産収入から経費を差し引くと63.6万円となる。
収入は、サラリーマンとしての給与収入427.2万円と不動産収入96万円を合わせて、523.2万円だ。『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい!』 第1章 より 石川貴康:著 東洋経済新報社:刊
預金の金利がないに等しい、今のご時世。
750万円の投資で、年間約65万円、月にすれば約5.5万円の利益となるのは、かなり魅力的ですね。
日常のちょっとした延長上に、小さな“事業”を付け足す。
その利便性が「プライベートカンパニー」のメリットです。
「収入」と「所得」の違いを知る
手元に残すお金を増やす。
そのためには、自分の富の貯水池へ流れ込む川(収入)をいかに増やし、貯水池からこぼれだす川(支出)をいかに減らすか
が重要になります。
石川さんは、「富の貯水池」は二つあると考えています。
一つは「課税所得の貯水池」。もう一つは「可処分所得の貯水池」だ。水量の多い「可処分所得の貯水池」とは、手元に残るお金が多い状態を指す。
「課税所得の貯水池」には、川から水が流入してくる。サラリーマンにとって、この貯水池に流れ込む水とは、給与にほかならない。手取りではなく給料の額面の金額であり、源泉徴収票の「支払金額」の項目に記されている数字のことだ。
「課税所得の貯水池」は「可処分所の貯水池」につながっている。このとき「課税所得の貯水池」からは、税金という水が流れ出ていく。この水は支払い義務のある金額だ。食費は減らせても、決められた税金を払わない、あるいは減額して払うという選択肢はない。貯水池の水量によって、税金の量は決まってくる。いざ支払いという段階で、税金にあたる水量を勝手に調整する権利はあなたにはない。定められた水量を払うだけだ。
ただし「課税所得の貯水池」の水量を調整し、税金の量を減らすことはできる。狙うべきはここだ。
「課税所得の貯水池」水量の調整とは、税に関わる費用(控除)を意味している。
サラリーマンには現金支出は伴わないまでも、収入を減らしてくれる費用(控除)がある。これを適用すると、課税所得の額が減り、税金が減る。結果として「可処分所得の貯水池」に多くの水をたたえることが可能になるのだ。
可処分所得を増やすために、給与収入を増やすというのはどうだろう。実は、給与が増えると税金が増えていく。思ったほど可処分所得は増えない。日本は累進課税のため、収入が増えると税金が増える構造なのだ。
可処分所得が少なければ、豊かさは実感できない。逆に、収入が少なくても、可処分所得が多ければ経済的な自由度は増す。
「可処分所得の貯水池」の水量イコール手元に残るお金の量だ。手取り、手残りといってもいい。この貯水池の水が豊富であれば、もう心配はいらない。その池には、誰の指図も受けることもなく、完全にあなただけが自由に使えるお金がたっぷりと蓄えられているのだから。
目指すべきは、手元に残る現金を最大化すること。そのイメージを頭に刻み込んでほしい。
『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい!』 第2章 より 石川貴康:著 東洋経済新報社:刊
図1.二つの貯水池
(『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい!』 第2章 より抜粋)
手元に残すお金を増やすには、ただ収入を上げるだけでは不十分です。
貯水池へ流れ込む川(収入)をいかに増やし、こぼれだす川(支出)をいかに減らすか。
お金の流れの上流から下流まで、トータルでデザインし、管理することが大切です。
「プライベートカンパニー」は、「課税所得の貯水池」からこぼれだす川の水量を調整する“ダム”の役割を果たすということですね。
「特定支出控除」で経費を計上
サラリーマンが受けられる控除は、大きく「所得控除」と「税額控除」の二つです。
所得控除とは、所得額から一定の金額を差し引くことができる制度
のこと。
社会保険料控除、医療費控除、生命保険控除などが、これに相当します。
税額控除は、税額(課税対象額×税率で算出された税額)から、直接一定の金額を差し引くことができる制度
のこと。
住宅ローン控除、配当控除などが、これに相当します。
石川さんは、正しい知識をもっておきたい控除、あまり知られていない控除
のひとつとして「特定支出控除」を挙げています。
特定支出控除とは「仕事をする上で必要」な金額が多い場合に控除される制度。正確には所得控除のカテゴリーには入らないが、わかりやすくいうと、給与所得控除額を超えて経費を使った場合に限って、その超えた部分が所得からマイナスされる。
以前は、①通勤のための交通費(通勤費)
②転勤に伴う引っ越し代(転居費)
③仕事で必要な技術を得るための研修の費用(研修費)
④仕事に必要な資格取得のための費用(資格取得費)
⑤単身赴任で勤務地から自宅へ帰宅するまでの交通費(帰宅旅費)の5項目しか認められなかったが、平成24年度の改正を機に、新しく次の三つの項目が追加された。
⑥仕事で必要な書籍や定期刊行物を購入するための費用(図書費)
⑦仕事で必要な衣服の購入費用(衣服費)
⑧得意先に対する接待や贈答などの費用(交際費)①〜⑤は、会社が負担するケースがほとんど。⑥〜⑧の項目がプラスされたことで、控除のハードルは一気に下がった。
営業マンであれば、商談の際に必要なスーツも特定支出控除の対象になる。仕事上必要な図書類や得意先への接待に要した飲食費も同様だ。
また、仕事の上で必要になりそうな資格、例えば、公認会計士、税理士、弁理士、行政書士、MBAといった資格の取得に要する費用も特定支出の対象となる。資格の学校に通っているサラリーマンや、参考書や問題集を買い込んで独学しているサラリーマンは、受講費や参考図書費を一定金額まで経費に算入することも可能だ。ただし、青天井というわけにはいかない。
⑥〜⑧の項目をすべて合わせて、上限は65万円と設定されている。それ以上は認められない。
では、特定支出控除の具体的な金額は、どう算出すればいいのか。
特定支出控除は、特定支出に当たる支出が給与所得控除の半分を超える場合が対象(ただし、年収が1500万円を超える場合には125万円を超えたとき)で、算出式は次の通りである。特定支出控除=特定支出ー給与所得控除の2分の1
給与収入500万円のサラリーマンの場合、給与所得控除は154万円(=収入×20%+54万円)。その2分の1は77万円となる。
つまり、特定支出が100万円あるサラリーマンの場合の特定支出控除は、100万円ー77万円=23万円 と導き出すことができる。23万円まで控除できるというわけだ。
特定支出控除は、給与所得控除の半額を「超えた」金額に限定されているので、このケースでいえば77万円を超えなければ意味がない。
また、確定申告と同様、領収書の添付が必須となる上に、会社から「そのお金は仕事で直接必要だった」という証明書を発行してもらわなければならない。あなたが勝手に「必要だった」とみなして申告することはできないのだ。
このようにいろいろな制約がある控除ではあるものの、使えるものを使わない手はない。課税対象となる金額をできるだけ減らすのが、手元に残るお金を増やす早道。自分が使っているお金が特定支出控除の対象になりそうなのかどうか、普段から意識してお金を使おう。『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい!』 第3章 より 石川貴康:著 東洋経済新報社:刊
石川さんの言うとおり、使えるものを使わない手はありません。
新たに項目が追加されて、控除のハードルが下がった「特定支出控除」。
自分が控除の対象に該当する可能性があるのか、調べてみるといいかもしれませんね。
プライベートカンパニーの損を給与所得と相殺できる「損益通算」
事業所得で赤字が出たら、給与所得から引いて、税金を減らす。
プライベートカンパニーを作ると、そのようなテクニックを使うことができます。
これを「損益通算」といいます。
プライベートカンパニーが得た事業所得、不動産所得、総合課税の譲渡所得で出た損失を、給与所得などの他の所得と相殺すること、これを損益通算という。赤字の額を、他の黒字の所得から控除できる。つまり、サラリーマンは給与と合算して確定申告をすることができるのだ。
厳密にいえば、2種類以上の所得がある場合、片方が赤字、ほかが黒字のときには、この赤字と黒字を一定の順序で差引計算する制度である。ただし、何でも損益通算の対象になるわけではない。対象となる所得は以下の通りだ。
①不動産所得
②事業所得
③譲渡所得(総合課税)
④山林所得①〜④の所得のいずれかが赤字だった場合、他の種類の黒字所得と相殺できる。損益通算や損益相殺をしてもまだ赤字が残ったら、青色申告書を提出している年分の純損失の金額として赤字分を翌年以降に繰り越すことだって可能だ。
ただし、配当所得、一時所得、雑所得の損失は、損益通算の対象にならないので要注意。反復継続をして事業性があれば事業所得となることをしっかりと覚えておきたい。
例えば、趣味の品をeBayで仕入れ、ネットで販売するプライベートカンパニーを立ち上げて、継続的にビジネスを展開していたとしよう。そこで200万円の損失を出してしまった場合、あなたの給与所得が1000万円であれば、あなたの所得は800万円となり、損失200万円分に相当する税金が戻ってくる。サラリーマンの給与は源泉徴収されている。先に所得税を払っている形なので、払いすぎた税金分が還付されるのだ。
不動産投資においても同じである。損益通算で20万円の還付金が入れば、それをもとにキャッシュフローの赤字を埋め、さらに現金収入を生み出すことができる。
不動産所得のマイナスの金額が給与所得より大きくなった場合にも、打つ手がある。個人事業主なら3年、繰越控除が可能だからだ。
青色申告の個人事業主の場合は期限内に損失申告書を提出し、その後連続して確定申告書を提出すれば、翌年から3年間にわたって今年残った損失を繰り越すことができる。
注意点としては、不動産所得が赤字になったとしても、土地を取得するためにかかった借入金の利子は損益通算できないということだ。これは頭に入れておきたい。
損益通算は個人事業主にとって大きな特典だが、その分、手続きは面倒といえば面倒。一定の条件・基準があり、各所得の損失を規定の順序通りにに差し引き計算しなければならないからだ。
しかし、損益通算は、数ある副業の中でも、とりわけ不動産投資のプライベートカンパニーに向いている。面倒な手間をかけてでもチャレンジする価値はある。『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい!』 第4章 より 石川貴康:著 東洋経済新報社:刊
図2.損益通算とは
(『いますぐプライベートカンパニーを作りなさい!』 第4章 より抜粋)
事業を始めれば、順調なときばかりではないでしょう。
思わぬ事態が起こって、赤字になることも想定できます。
そのようなときに頼りになるのが、この「損益通算」です。
事業規模が大きくなり、赤字幅が大きくなればなるほど「損益通算」適用の効果は大きくなります。
もしものときのために、ぜひ、覚えておきたい制度ですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
ひとつの会社に忠誠を尽くして働き続ければ、一生安泰。
そんな時代は、すでに過ぎ去っています。
リストラに遭ったり、給料やボーナスの大幅減額にあう。
不本意な転勤や出向を余儀なくされる。
そんなことが、いつ自分に起こってもおかしくない、不安定な時代。
だからこそ、自分の人生を自分自身の手でコントロールすることが大切になります。
これからは、会社で働いている、働いていないにかかわらず、個人事業者としての意識が必要です。
会社の給料とは別の収入源を持ち、「お金の貯水池」になみなみと水をたたえる。
「プライベートカンパニー」は、自由で豊かな生活を実現するための切り札となります。
皆さんも、ぜひ、検討してみてはいかがでしょうか。
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