本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『人を動かす心理学』(渋谷昌三)

 お薦めの本の紹介です。
 渋谷昌三先生の『人を動かす心理学』です。

 渋谷昌三(しぶや・しょうぞう)先生は、心理学者で文学博士です。
「空間行動学」という新しい研究領域を開拓され、その研究成果をもとに、現代人に潜む深層心理をユーモラスに解説した著書が多数あります。

「相手に好かれるスキル」を磨け!

 渋谷先生は、ビジネスパーソンにとって鍛えるべきは、英語やITなどのスキルより、まず「人付き合いのスキル」だと述べています。

 基本になるのは、「相手に好かれるスキル」です。

 人間はロボットではありません。
「感情」がある以上、好きな人の言葉や行動に影響されます。

 同じ仕事をするなら、嫌いな人よりも好きな人と数多く仕事をしたい。
 そう思うのが人間の心理です。

 本書は、「相手に好かれるスキル」を磨き、相手に動いてもらうことで相手も自分も幸せになる関係を築くためのヒントをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

「聞く力」が相手の満足を引き出す

 なぜか周りから好かれる人というのは、「周りの人を気持ちよくするコツ」をわきまえた人です。

「聞き上手」といわれる人が好かれる理由も、そこにあります。
 聞き上手は、周りの人に以下のような三つの幸せを与えることができます。

 一つ目は、「スッキリの幸せ」です。
 心がモヤモヤしているときや悩みや問題を抱えているとき、話を聞いてもらって気持ちがラクになった。
 誰もがそんな経験を、一度はしているのではないでしょうか。心のなかにあるものを吐き出すことで、すっきりするわけです。「浄化」と呼ばれる現象ですが、聞くことは相手の心に浄化を起こしてくれるわけです。
 二つ目は「ハッキリの幸せ」です。
 話しているうちにだんだん問題が整理されてきて、
「そうか。悩むほどのことでもなかったのか」
「いままで気づかなかったけれど、このやり方をすれば解決するかもしれない」
 と、霧が晴れるように視界が開けることがあります。「洞察」といいますが、先をハッキリと見通せるようになることが、相手に与えるもう一つの幸せです。
 そして、三つ目が、「ヤッタ!の幸せ」です。
 もともと人は「自分だって価値のある存在だ」という自尊感情を持っています。
 自尊感情は自信の源です。人間関係をうまく進めるにも、人の心を動かすにも大きなエネルギーとなります。つまり、話を聞いてあげるということで、相手の自尊心を満たして心に喜びを与えることができるのです。

  『人を動かす心理学』  CHAPTER1 より  渋谷昌三:著  ダイヤモンド社:刊

「話を聞く」ということは、単純なことのように思えますが、なかなか難しいです。
 逆にいうと、なかなかできないからこそ、できる人の好感度は上がるということです。

 そこで築かれた好感度は、信頼感へとつながり、説得や交渉のしやすさもつながります。

瞳の動きで相手の心は読める

「目は口ほどに物を言う」

 そういう言葉があるほど、人は目で心を表現します。
 相手の本音は、目の表情を観察することで見えてきます。

 なかでも、視線は相手の感情や興味、意思を読み取るための重要な手がかりです。
 視線には、以下のような3つの意味があります。

 まず視線は好意を表します。
 しばしば視線が合う人は、あなたに関心や好意をもっている可能性が高い人です。穏やかな表情や笑顔が加わっているとすれば、その確率はさらに高くなります。
 ただ、ずっと視線を外さない人は、逆の意味であなたに関心を持っています。人は好感を持つ相手に対しては、適度にそらせながら視線を合わせてきます。そうではないということは、相手は何らかの理由であなたに警戒心を持っているか、挑戦心を持っているのです。相手と会話する際には、それを心において進めたほうがいいでしょう。

 視線は「コミュニケーションを取りたい」という意思のあらわれでもあります。
 道で知らない人と目が合って、何かなと思っていると「アンケートに答えていただきたいんですが」と切り出された経験はないでしょうか。
 向こうから視線を合わせてくる人には、何かしら言いたいことがあるのです。会議などで意見を求められないように目を伏せている人がいるのも同じ真理です。
 また、視線は「その話に興味があります」という意味も示します。
 いままであまり視線を合わせなかった人が、急にこちらを見つめてきたとしたら、もっと話を聞きたいという証拠です。話を続けて、相手と自分の距離を縮めていきましょう。
 逆に、自分がまだ話しているのに視線を合わせなくなったら、話の終わりどきです。相手に話を振るか、話題を変えること。会話はキャッチボールという話をしましたが、投げるタイミングは視線でわかると考えていいでしょう。視線は会話のやりとりの調整役です。

  『人を動かす心理学』  CHAPTER2 より  渋谷昌三:著  ダイヤモンド社:刊

「話すときは相手の目を見て話せ」とよく言われます。
 その理由の一つに、相手の感情の動きをはっきり読み取れるというメリットがあります。

 その場、その場が真剣勝負のビジネスの場。
 だからこそ、相手の視線に対して、余計に注意したいですね。

分かち合うたび、人間関係は深くなる

 交渉や説得の目的は、自分の望む答えや利益を得ることです。
 渋谷先生は、自分の利得を高めるためには「幸せは相手とシェアするもの」という考え方を身に付けた方がいいと述べています。

 交渉というと、「すべて勝たなくてはいけない」と考える人もいます。
 しかし、そう考えるとチャンスはどんどん減っていきます。

 むしろ、相手と話し合うなかで、お互いの落としどころを見つけて幸せをシェアする。
 そう考えたほうが物事はうまく進みやすくなります。

 相手とシェアするという考えが初めから頭にあると、相手のメリットにも気づきやすくなります。目の前に雑然と広がる情報のなかに「相手と幸せをシェアする」というフィルターをかけることで、答えが見つかりやすくなるのです。
 つまり、心理学でいう選択的注意が働くので、必要な情報をどうでもよい情報の弁別がしやすくなるのです。たとえば私たちは、騒々しい居酒屋で話をしていても、お互いの声を聞きわけて、重要な話を確実に聞き取ることができます。これは選択的注意の一つでカクテルパーティー現象と呼ばれますが、必要な情報だけに注目する状況とよく似ています。
 人は心のフィルターを掛け替えることで、目の前の現実から必要な知恵をつかみとることができるのです。
 幸せをシェアすることを前提にすると、お互いにとって利益の生まれやすい交渉にもなりやすくなります。いきおい「また今度もお願いします」ということにもなりやすく、当然ながら、それは双方にとって大きなメリットとなります。
 人間関係は長く続けば続くほど、相手に対する信頼性も高まっていくので、手に入れることでできる幸せも、さらに増えていくということです。

  『人を動かす心理学』  CHAPTER3 より  渋谷昌三:著  ダイヤモンド社:刊

 相手から奪おう、自分だけ得しよう。
 そういう考え方で行動すると、その関係は長続きしません。

 その時はよくても、長い目で見ると、結局は損をします。

 まずは自分から分かち合う。
 それが結局は、人を動かす力にもつながってきます。

「輪ゴム一つ」で、プレッシャーははねのけられる

 交渉や打ち合わせ最中に、プレッシャーに押しつぶされそうになった。
 そんなときには、まず、その気持ちを散らすことが大事です。

 渋谷先生は、企業やスポーツなど、さまざまな分野で利用されている「STOP!法」を紹介しています。

 用意するものは輪ゴム一つ。それをあらかじめ手首にはめておきます。そして、プレッシャーを感じたときや、「どうしたらいいんだ」とパニックになりそうなときに、パチンと輪ゴムをはじくのです。するとその衝撃で気持ちが散って、冷静になることができるというわけです。
 輪ゴムが恥ずかしければ、バン!と机を叩くのでもかまいません。いきなり立ち上がるのでもいいし、コーヒーを飲むのでかまいません。体をつねってみたり、アクションを起こして流れを変える。そうやって習慣づけてみましょう。
 つまり、気持ちをそのままにするのではなく、行動することで、気持ちを変えてしまうのです。そうすると、頭が真っ白な状況から素早く立ち直ることができます。

  『人を動かす心理学』  CHAPTER4 より  渋谷昌三:著  ダイヤモンド社:刊

 いざという時のため、自分なりの気持ちのリセット方法を決めておきたいですね。

約束したことは、どんな小さな約束でも守る

 何回も一緒に仕事ができる関係をどれだけつくっていけるか。
 ビジネスをするうえで、とても大事なことです。

 長い付き合いを続けるには、好感度だけでは難しいです。
 渋谷先生は、初対面の好印象を長い付き合いに変えるためのコツを、以下のように述べています。

 月並みかもしれませんが、どんな小さな約束でも守る。それが相手への信頼にもつながり、長いつき合いを支えてきたように思います。
 別の言い方をすると、約束を守る人は、その人の行動が予想できます。
「あの人にお願いすると、少なくともこんな結果が返ってくるはずだ」とわかっていれば、とても付き合いやすくなります。
 そうした意味で言うと、行動が予測できる人も関係としては長続きします。
 飲み会なんかで「あいつを呼び出すと、パッと盛り上がりそうだから呼び出すか」とか、直接仕事とは関係がなくても、そうしたイメージを持てる人とは誰しも長く付き合いたいと思うものです。
 極端に言うと「その場が楽しい人」、それだけでもいいでしょう。
 つまり、相手のことを思い浮かべたときにプラスの予想ができる人。こんな人の周りには、人が集まってきやすくなります。
 逆に面白くない人というのは、次に会っても「どんな話になるのかな」「また愚痴になるのかな」とプラスの期待が持てない人です。
 つまりは会っても得を感じることができない人です。これらの点を押さえておくことで、長続きする人間関係は生まれていくのです。

  『人を動かす心理学』  CHAPTER5 より  渋谷昌三:著  ダイヤモンド社:刊

「どんな小さな約束でも守る」

 それが何より大切です。
 約束を守らない人に、信頼関係は生まれません。

 相手の期待を裏切らないことが大事であることは、ビジネスに限らずですね。

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「人を動かす」

 そういうと、相手を自分の意のままに操って利用する、ネガティブなイメージがあります。

 しかし、そのような考えでは、本当のいい関係は築くことができません。
 ましてや、長く続く友好的な人間関係など望めませんね。

 渋谷先生もおっしゃっていますが、「好感度+期待値」つまり、相手に好かれて気に入ってもらえること、そして、その相手の期待に応えて信頼されることが長続きする付き合いをつくります。

 自分も相手も得する「幸せな関係」をたくさん築いていきたいですね。

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