本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『伝えるための3つの習慣』(いなますみかこ)

 お薦めの本の紹介です。
 いなますみかこさんの『伝えるための3つの習慣』です。

 いなますみかこ(いなます・みかこ)さんは、ビジネスコンサルタントです。
 研修・セミナー講師などを通じて、延べ7万人以上に対してコミュニケーションスキル強化の支援をされています。

伝わらないのは「はなす」だけの問題ではない

 価値観の多様化が急激に進む現代社会において、自分の意志を正確に相手に伝えること、すなわち、コミュニケーション能力がますます重要になっています。

 いなますさんは、コミュニケーション上達のポイントは、「自分が伝える」ではなく、「相手に伝わる」に意識を変えて、それに集中することだと指摘します。

 相手との意思の疎通を図るには、理解度の違いである「あたまのギャップ」と価値観や気持ちの違いである「こころのギャップ」を乗り越えなければなりません。

 いなますさんは、そのために必要な条件について、以下のように述べています。

 まずは「伝えたい!」というパッションがあるかないか。「伝えたい」という意欲もないのに、なぜ伝わらないのかなんて論外。「こんな大切なことなんだから、伝えたい!」という気持ちになるくらい、伝える対象を大事に見つめてください。
 伝えたい気持ちがあるという前提のもと、次に必要なのは発信する「はなす習慣」。「はなす」だけでキチンと伝わればOKです。でも、伝わらない場合がありますよね。
 そんなとき、次に必要なのが相手の話を「きく習慣」。
 一方的な発信だけでは、相手に伝わらない場合、相手に発信を促し、相手からの発信を受け止める必要があります。このように「きく」という双方向の対話を通して、メッセージが伝わればOK。
 でもまだ伝わらない場合があります。「はなす」「きく」といった対話を通しても、まだ伝わらない。
 この場合に必要なのが「みる習慣」。
 互いの思い込みや先入観が、「伝わる」邪魔をしていることがあります。こうなると、あたまとこころのギャップどころではなく、バリア(=障壁)です。かなり重症です。この関係の場合、何を言っても訊いても伝わらない。さらに悪化するという可能性が大です。「みる」ことを通して、見方と見え方を変える必要があります。

  『伝えるための3つの習慣』  プロローグ より  いなますみかこ:著  かんき出版:刊 

 伝えたいという気持ちを強くもつことをベースに、「はなす」「きく」「みる」。
 この3つに集中する習慣をつけて、相手との間にあるギャップやバリアを乗り越えていく。

 それがコミュニケーション上達の近道です。

 本書は、「はなす」「きく」「みる」の3つ習慣をさらに、「話し方」「語り方」「訊き方」「聴き方」「見方」「見え方」の6つのスキルに分け、それぞれのスキルを上達させるための方法やアイデアを解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「ロジカルな話し方」と「ナラティブな話し方」

 最初に「話し方」についてです。
 まず求められるのは、論理的に筋道の通っていて話の構成が組み立てられている、いわゆる「ロジカルな話し方」です。

 ロジカルな話し方は、「あたまのギャップ」を埋めることができます。
しかし、オールマイティではありません。

さらに「こころのギャップ」を埋めなければならない場合があります。
 そこで必要とされるのが、「ナラティブな話し方」です。

 ナラティブというのは、日本語の訳語を当てると、「物語」ということになります。
 内容をストーリー仕立てにして聴き手の興味を引き、情感を揺さぶり、共感や共鳴を得る話し方のことです。
 人間は正直に生きなければいけないということを子供に教えるには、それをそのまま口にするより、「舌切り雀」の話を語ってあげたほうが、はるかに子供の心に残りますよね。ナラティブというのは、この童話やおとぎ話のような話法だと思えばいいでしょう。
 ビジネスでいえば、
「この掃除機の軽さは業界一です」
 というのがロジカルなら、
「『最近の掃除機はみな重い。重いと部屋のあいだを移動させるのもたいへんです。私のような年寄りにも使いやすいものをつくってくれませんか』こんな内容のハガキが、本社のお客様相談室に届きました。いまから3年前のことです。そのハガキを目にした当時の社長が・・・・」
 というように、商品開発の経緯から話し始めるのがナラティブです。

  『伝えるための3つの習慣』  第1章 より  いなますみかこ:著  かんき出版:刊 

 ロジカルとナラティブは、どちらかだけあればいい、というものではありません。

 この2つは、「はなす」という伝わる習慣を支える両輪です。
 どちらが欠けても上手くいかないと考えましょう。

「あ~」「え~」「その~」の“ひげ”をとる

 話し方で気をつけなければならないことの一つが、“ひげ”をとることです。
 “ひげ”とは、単語と単語の間に入る「あ~」「え~」「その~」というような意味のない言葉です。

 ひげには、聞いている人を不安にさせるマイナスの効果があります。
 いなますさんは、ひげのない話し方をするために心がけることを、以下のようにまとめています。

 まず、いきなり「え~」と話を切り出さず、ひと呼吸おく。
 そして、何を話すかを決めたら鼻から息を吸って「私は動物のなかで犬が一番好きです」とゆっくり話し始めるのです。
 さらに、ひとつのセンテンスをなるべく短くし、一文が終わったら、そこで呼吸を整えながら話すようにします。
 座禅の腹式呼吸と同じように、ゆったりと肚(丹田と呼ばれるおへその下)を使って息をするように心がけてください。実は、ひげをとるトレーニングは、平常心を維持する自己コントロールのトレーニングでもあるのです。
 焦らない、焦らない。落ち着いて、いつも通り。他者の目を気にしないで、あるがままの自分でいること。

 また、姿勢とアイコンタクトも重要です。
 背筋を伸ばし相手の目を見ながら話すと、ひげは出にくくなります。逆に、伏し目がちだったり目が泳いでいたりすると、言葉の歯切れも悪くなって「~と思うんですが、ええと、あのですね~」とひげの多い話し方に、どうしてもなってしまうのです。

  『伝えるための3つの習慣』  第1章 より  いなますみかこ:著  かんき出版:刊 

 ひげは、とろうと意識して話す習慣が身につけば、必ずとれます。

 ひげがとれると、話の伝わり方も、確実に2割増しになるとのこと。
 普段の会話から気をつけたいところですね。

ふんばって相手の解釈を尊重してみる

「聴き方」についてです。

 ちゃんと分かりやすく話したつもりなのに、こちらの意図がまるで理解されていなかった。
 そんな経験は誰にもあるでしょう。

 それは、話し方の問題というよりも聴き方の問題です。
 つまり、相手の話を訊くということができていないから起こることです。

 聴くというのは、相手の言ったことを、心を開いていったん全部受け止めるということです。感情のままに態度や言葉に反応しないで、相手の気持ちを感じ取ろうとする。これこそが聴くの本当の意味なのです。
 ところがほとんどの人は、相手の言葉が自分にとって都合が悪いと感じると、すぐにそれを否定したり、相手の間違いを正そうとしたりしてしまいます。
(中略)
 相手には相手の解釈があるということを、まず理解し尊重してふんばる。自分の知らない情報や事情もあるかも知れないのです。

 コツとしては、単純に自分が感情を害したと感じたときこそ、自分を高める、または試すチャンスととらえて、自分のマイナス感情をまず「消す」。ギリシャの友人から教わった方法は、小さく“Delete it”と声に出して神さまにお願いするそうです(くれぐれも、相手に聞こえないように)。
 または、人差し指と中指をクロスする、お腹をたたくなど、相手にわからないように自分なりのシグナルをもって感情をスイッチすることです。

  『伝えるための3つの習慣』  第2章 より  いなますみかこ:著  かんき出版:刊

 相手の言ったことを、心を開いて全部受け止めること。
 できそうで、なかなかできないことです。

 自分なりのシグナルをもって感情をスイッチする。
 その習慣はぜひ身に付けたいスキルです。

「でも」「だって」「だから」は禁句

 最後に「見え方」についてです。

 内容が同じであっても、それを言う人によって相手への伝わり方が具合がかなり違ってきます。
 それは、人はあらかじめ持っている色々なイメージや印象から生じる「フィルター」を通して相手を見ているからです。

 フィルターを作り上げる印象や評判は、話しているときだけではなく、日常の小さな行いの積み重ねがベースとなっています。

 何気ない普段の口癖なども、自分のイメージをつくるうえで、とても大切です。

 たとえばネガティブ・フィルターにつながるような口癖がある人は、それを直すだけで、見え方をポジティブに変えることができます。
 あなたのイメージを悪くし、信用を失わせる代表的な口癖が「でも」「だって」「だから」。自分は使っていないと思っていても、反論の意見を述べるときに意外と無意識にこれらの言葉を使っていたりするものです。
「でも」「だって」というのは、相手の言っていることの否定です。そして、否定するのは自分を守りたいからにほかなりません。
「でも、どうしても間に合わなかったのです」
「だって、突然翌日まで資料を用意しろと言われたって、そんなの無理ですよ」
 これらは要するに、自分は悪くない、うまくいかなかったのは状況のせいだと言っているのです。
 普段から、「でも」や「だって」が頻繁に会話に出てくる人は、「私は自分中心の人間です」と周囲に宣伝して回っているのと同じだと思ってください。もちろん、そういう人の言うことを、誰も信用しようとは思わないので、話は当然伝わりにくくなります。

  『伝えるための3つの習慣』  第3章 より  いなますみかこ:著  かんき出版:刊 

 自分と相手の間にあるフィルターが、ポジティブなものか、ネガティブなものか。
 それは、コミュニケーションに直接響いてくる大事な要素となります。

 普段から客観的に自分を見つめる習慣を身につけたいですね。

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 今の世の中は、インターネットが発達してパソコン一つで何でもできるようになり、周囲の人との関わりが希薄になったと言われています。

 一方、社会が複雑になったことで、自分一人ではどうにもならず、周囲の人に動いてもらわないとならない場面も増えていることも事実です。

 相手に自分の考えをしっかり伝え、相手の意見をしっかり受け止める。
 そのためのコミュニケーションスキルは、これからますます必要とされることは間違いありません。

「伝えるための習慣」をしっかり身に付けて、自分の武器にしていきたいですね。

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