【書評】『伸びる30代は、20代の頃より叱られる』(千田琢哉)
お薦めの本の紹介です。
千田琢哉さんの『伸びる30代は、20代の頃より叱られる』です。
千田琢哉(せんだ・たくや)さんは、文筆家です。
大学卒業後、大手損保会社に入社。
その後、大手経営コンサルティングを経て、独立されています。
現在は、大型プロジェクトのリーダーとして陣頭指揮を執った体験をもとに、イノベーション・クリエーターとして、執筆活動や研修講師としてご活躍中です。
30代が人生の“分かれ道”
30代は、仕事に限らず、あらゆる意味で非常に重要な時期です。
人生の節目やターニングポイントとなる出来事や大きな挫折を多く経験する年代です。
千田さんは、人生の貴重な時期の30代だからこそ、致命的とも思える挫折を経験して、何としてもそこから這い上がっておかなければならない
と強調します。
30代でどんな挫折を経験して、いかに立ち直るか。
それが、まさに“人生の分かれ道”となります。
本書は、30代でさらに伸びる人と沈んでいく人の考え方や意識の違いについて70の項目を列記し、それぞれ比較しながら分かりやすく解説した一冊です。
ここでいくつかピックアップしてご紹介します。
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伸びる30代は、いつでもクビになる覚悟がある。
まず、日々の仕事に向かうにあたっての「心構え」についてです。
千田さんは、世のなかには「会社のために働くビジネスパーソン」と「自分のために働くビジネスパーソン」の2通りのビジネスパーソンしかいない
と述べています。
会社のために働くビジネスパーソンは、すべてにおいて他人事であり、妥協癖があります。
いまの会社にしがみついていなければ、この先は絶対に生きていけないということが、自分自身でもよくわかっている人たちのことです。
会社のために働いているビジネスパーソンが、世のなかで一番恐れていることは「クビ」であり、彼ら彼女らにとっては死刑宣告に匹敵するといっていい。 いっぽう、自分のためにはたらくビジネスパーソンには妥協がない。何よりも自分自身を磨いていくことに結び付けるから、仕事に対してのスタンスは、強烈な当事者意識をもっており、雑用に至るまで、とにかく厳しい。「こんなに仕事を通して自分を高めさせていただいている」といつも感謝の気持ちでいっぱいだ。結果として、仕事もよくできて会社に多大な貢献をしており、人間的魅力にもあふれている。 別に、今の会社にしがみついていなくとも、好不況に関係なく転職先は引く手あまただし、いざとなったらいつでも独立できる。理不尽な対応をされてまで会社に残る必要性はどこにもない。 自分のために働いているビジネスパーソンには、いつでもクビになる覚悟がある。それがまた、周囲にとって魅力的に映る理由なのだ。会社のためなどと綺麗ごとを言って他人事で働いてはならない。 あくまでも自分自身のために、当事者意識をもって働くのだ。
『伸びる30代は、20代の頃より叱られる』 第1章 より 千田琢哉:著 きこ書房:刊
「仕事は、自分自身を磨き上げ、高めていくためのもの」
そのような高い意識と感謝を、忘れないようにしないといけませんね。
どんな仕事でも、妥協を許さずに、しっかりこなす。
それが自分の実力をつけることにつながります。
すべては自分のため。
何ごとも自発的な意識で取り組むことで、やる気も出るし、自信もつきます。
伸びる30代は、20代の頃より叱られる。
社会人になりたての20代の頃は、だれもがよく叱られます。
社会人として、ビジネスパーソンとしての基本的なことができていないから、ということもあります。
それに加えて、前途有望な将来に期待してのことでもあります。
ところが、30代になると、叱られる人と叱られない人に、きれいに分かれてしまいます。
叱られるのは、伸びる30代の方です。
伸びる30代は、つねに自分を向上させようとしているから、あえて厳しい環境に身を置こうとする。厳しい環境でつねにチャレンジし続けているから、当然失敗も多い。動けば動くほど失敗の連続である。
沈む30代が10チャレンジして1成し遂げようとするところを、伸びる30代は100チャレンジして10成し遂げようとする。上からの期待も大きいから、周囲がより大きく成長させようとするために厳しく指導される。
自分を叱ってくれる人がいる環境には、お金を払ってでも積極的に身を置くというスタンスが伸びる30代なのである。 いっぽう、沈む30代は、20代の頃と比較してすっかり叱られなくなる。20代の頃と比べれば仕事もできるようになっているし、力の抜き方もかなりマスターしてきているからだ。 沈む30代は、「ようやく叱られなくなってひと安心」とばかりに、そのままそつなく仕事をこなしていくことを目指すようになる。ところが、それでは成長していることにはならない。人間は、やはり叱られなくなったらおしまいだ。『伸びる30代は、20代の頃より叱られる』 第3章 より 千田琢哉:著 きこ書房:刊
叱られないということは、ただソツなく仕事をこなしている、ということに過ぎません。
以前より叱られなくなったのなら、それはその分だけ期待されなくなったというだけの話です。
いくつになっても、叱ってくれる人には感謝をする。
変な勘違いはしないように、気をつけたいですね。
伸びる30代は、部下に「ごめん」とすぐ言える。
歳をとると、謝ることが苦手になる人が急増します。
とくに自分より下と見なした相手には、率先して謝らなくなります。
千田さんは、これは「老化現象」だとしています。
歳をとるから老化するのではなくて、謝罪できなくなることが老化現象なのだ
とのこと。
伸びる30代は、部下に対して「ごめん」とすぐに謝罪できる。どんなことでも自分に非があったとわかった瞬間に謝る。換言すれば、自分に自身がなければ、部下に対してすぐに謝罪ができないということだ。部下に「ごめん」と言うことができる回数と、その人の実力と人望は見事に比例すると言っていいだろう。 部下は上司が自分に謝ってくれた瞬間に、自分にも非があったのではないかと100パーセント自分自身を省みる。と同時に上司を深く尊敬し、上司のために猛烈なやる気を出し始める。これについて例外はない。
『伸びる30代は、20代の頃より叱られる』 第4章 より 千田琢哉:著 きこ書房:刊
誰を相手にしても、謝るべきは、素直に謝る。
それができる人は、フェアな人間だと認められて、周囲から信頼されます。
部下ができたからといって、先輩風を吹かせないこと。
変なプライドは、持たないようにしたいですね。
伸びる30代は、20代以上に自己投資する。
最後に、「自己投資」についてです。
千田さんは、30代は、20代以上にますます自己投資をする時期だ
と述べています。
伸びる30代は、20代の頃よりも遥かに自己投資をして自分に磨きをかけていく
とのこと。
1年で1テーマずつ何か習いごとをしてもいいし、本を読むのもいい。あるいは、30代になって何か新しいスポーツに取り組むというのも、立派な自己投資になる。 20代はどんどんチャレンジする時期だったが、30代はそれ以上にチャレンジしていく時期だと考えるのが、伸びる30代の考え方である。 いっぽう、沈む30代はこれからいよいよ回収の時期だと、一気に守りの姿勢に入ってしまう。結婚もしたことだし、子供の教育費もかかるし、なけなしのお小遣いだし、自己投資をしている場合ではないと考えて、すべて貯蓄に回してしまう。 せっかく20代で自己投資し続けてきた人も、30代のうちに使い果たしてしまったら、40代以降は悲惨な人生が待っているだけだ。一度自己投資を使い果たすと、次に花を咲かせるまで最低10年はかかる。 人生において大半のトラブルというものは、収入を増やすことによって解決できるものだ。つまり、収入を増やし続けていけば幸せになれるかどうかは別として、余計な心配をしなくても済む人生が歩める。 その収入を確実に増やす方法が、唯一自己投資である。自己投資で得た能力は、幸いなことにだれからも盗まれることがない。
『伸びる30代は、20代の頃より叱られる』 第7章 より 千田琢哉:著 きこ書房:刊
「自己投資」とは、もちろん自分の将来に投資するという意味です。
今やっている自己投資は、10年後に花を開かせるためのもの。
投資というのは、それくらい回収するのに、時間も手間も掛かるものです。
面倒くさいから、と止めてしまうのは簡単です。
しかし、それを取り戻すのは、想像以上に難しいものです。
自分自身が、自分の将来の成長に、期待し続ける。
そういう意味でも、「自己投資」は続けていきたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
今後の人生を左右する挫折は、いつ自分の身に降り掛かってくるかは誰にもわかりません。
自然の災害と一緒で、日頃の備えや鍛錬が大事だということです。
惰性で日々過ごしていると、もしものときに、慌てふためくのは必至です。
何が起こるか分からない、不安定な時代です。
どんな状況でも耐えられる、強い精神力と体力。
それに、いざという時のための「サバイバルツール」。
日頃からしっかり磨いて、手元に置いておきたいですね。
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