【書評】『図解 すごい集中力』(児玉光雄)
お薦めの本の紹介です。
児玉光雄先生の『図解 すごい集中力』です。
児玉光雄(こだま・みつお)先生は、臨床スポーツ心理学と体育方法学がご専門の心理学者です。
長年に渡り、国内・海外の一流アスリートのコメントを解析し、スポーツ選手のパフォーマンス向上の研究を続けられています。
スキルを学ぶ前に身につけるべきもの
児玉先生は、仕事や勉強などで必要なスキルを学ぶ前にまずすべきことがある
と述べています。
それは、「ここぞというときに自分の力をすべて出し切ること」です。
人は極限まで集中すると、ときに実力以上の力を発揮し、奇跡を起こします。
それが顕著なのが、スポーツの世界です。
児玉先生が、25年以上の経験から導きだした結論。
それは、集中力は誰にでも身につけられ、それが人生を変えるきっかけになる
ということです。
本書は、仕事や勉強での集中力を活用方法を実践的に説明し、大舞台で最高の結論を出すための提言する一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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集中力には4段階のレベルがある
集中力とは、一体何なのでしょうか?
児玉先生は、脳の機能を集中状態にして、ひとつの物事に取り組む力
だと述べています。
集中力には、以下のような4つの段階があります。
集中力の入り口は、「単純な注意集中」。 これは視覚情報を単純に認識する集中レベルであり、たとえば人とすれ違う時にぶつからないように避けるといった程度です。 次のレベルは、「興味をともなった注意集中」。 たとえば昼休みに会社でネットサーフィンをしているときなどは、このレベルの集中力といえます。多数あるネットのサイトから興味あるところを見つけ、読んでいくわけですが、周囲の情報をまったく遮断しているわけではなく、上司に呼ばれたらすぐに立ち上がって駆け付けることができるような状態にあります。 第3のレベルは、「心を奪われる注意集中」。 大好きな小説やテレビゲームなどに没頭しているときがこの状態で、周囲の状況や雑音がほとんどきにならず、集中している状態です。 そして最高レベルとの集中力は「無我夢中」。 これがまさにゾーンの状態といえます。レベル3の没頭状態にありつつも、適度な落ち着きと冷静さも備わった完璧な心理状態で、あらゆることが見通せるような感覚を得られます。
『図解 すごい集中力』 1章 より 児玉光雄:著 成美堂出版:刊
最高レベルの集中、ゾーン状態。
それは、一流のプロ野球選手が「ボールが止まって見えた」と言う時のような、特別な感覚です。
トップアスリートでもコントロールすることができず、条件がそろわなければ入れません。
仕事や勉強などでは、ここぞというときに、第3レベルの集中状態にすっと入れるようになれば十分です。
集中とリラックスは表裏一体
集中力をずっと発揮しつづけられる人間はいません。
児玉先生は、トップアスリートの共通点として、特定の瞬間に高次元の集中力を発揮するが、それ以外の場面ではリラックスできる能力を身につけている
ことを挙げています。
脳科学的にみても、集中とリラックスの関係は深いです。
集中力にまつわる脳内の神経活動には、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンという神経伝達物質が必要であることがわかっています。これらを総称して、「カテコールアミン」といい、カテコールアミンは睡眠時に合成、蓄積され、活動時に使われます。 そして脳が集中状態になるほどに、カテコールアミンはどんどん消費されていくのです。 カテコールアミンは、スポーツ心理学ではメンタルエネルギーと呼ばれ、これが底をつくと、いわゆる集中力が切れた状態になります。 仕事でも、高いレベルの集中力は必要な場面のみで発揮されればいいわけです。ここぞというときに集中するためには、それまでいかにリラックスし、メンタルエネルギーを蓄えられるかが重要だといえます。
『図解 すごい集中力』 1章 より 児玉光雄:著 成美堂出版:刊
集中力というと、集中するべき場面でどうするかということにばかり、関心が向きます。
それ以外の場面で、どれだけリラックスできているか。
それもとても重要です。
無駄なエネルギーの消費は、普段から抑えるようにしたいですね。
プレッシャーとの正しい向かい合い方
集中力を発揮するうえで、乗り越えるべきものが、「プレッシャー」です。
プレッシャーは、外部からかけられるものではなく、内部からかけられるもの。
つまり、自分自身が掛けているものです。
一流のアスリートたちは、例外なく、プレッシャーが掛かる状況を自ら求め、プレッシャー自体を楽しんでいます。
プレッシャーという言葉をスポーツ心理学的に考えると、「ある状況に対する本人の心理的なとらえ方」ということになります。プレッシャーはある意味で自分が勝手に作りだすもの。それをプラスに変えるのも自分の考えひとつです。(中略) プレッシャーのかからない状態でいくら仕事をしても、スキルアップにはつながりません。逆に、大舞台のプレッシャーを1回乗り越えることは、小さな舞台の仕事100回分のスキルアップにつながります。本当の自信も、プレッシャーの中でしか育ちません。 プレッシャーを抱え込んで仕事をすることに醍醐味を感じられるようになれば、それはメンタルが強くなった証です。 大リーグのロジャー・クレメンス選手も、プレッシャーについて過去にこのように述べています。「成功のプレッシャーがかかっているほうが、プレッシャーのかからない無名人でいるよりずっといい」 あなたも、「プレッシャーのかかる舞台こそ人生を変えるチャンスなんだ」という気持ちで、プレッシャーを感じている自分を楽しもうとしてみてください。
『図解 すごい集中力』 2章 より 児玉光雄:著 成美堂出版:刊
プレッシャーがかかる場面から、逃げないこと。
そして、プレッシャーを感じている自分を、楽しもうとすること。
そのような体験を多くすることで、集中力も磨かれていきます。
何事も、場数を踏むことが大事だということです。
否定的な言葉を意図的に使わない
児玉先生は、否定的な思考や言動も、集中力を妨げるもの
だと述べています。
脳は、イメージしたものを現実にしようとする性質があります。軽い気持ちで発した愚痴や、本心と違うのに勢いで言ってしまった言葉に関しても、言葉自体の意味に引きずられ、現実化しようと試みてしまうのです。 超一流のアスリートは、否定的なコメントはほとんど残しません。それが精神に影響し、肝心なところでの集中力をそいでしまう要因になることを知っているからです。 否定語は、意識的に使わないようにしなければいけません。
『図解 すごい集中力』 3章 より 児玉光雄:著 成美堂出版:刊
世の中は、否定的な物事であふれています。
メディアが取り上げる記事は、肯定的な内容と否定的な内容の比率が、約1:6だと言われています。
漠然と情報を取り入れ、思ったことを口にすれば、否定的なことを考えるのは、無理のない環境です。
意識して、取り入れる情報を選択する。
自分の口から発する言葉から、否定的なものを排除しようとする。
だからこそ、そんな姿勢が大事になります。
本番だけでなく、準備段階から集中する
高い集中力をもつ一流のスポーツ選手には、興味深い心理的な類似点があります。
それは、「本番自体にあまり興味を示さない」とのことです。
つまり、本番の舞台に上がるまでの準備に、全力を尽くしているということです。
本番で高い集中力を発揮するためには、準備にも高い集中力をもって臨まなければいけません。 テニスの往年の名プレーヤー、マルチナ・ナブラチロワさんは、こんな言葉を残しています。「集中力は練習中にコートの中で生まれるもの」 本番というのは、ある意味で自分がそれまでに行ってきたことの確認作業にすぎません。そう考えればすっきりした気持ちで臨めませんか? 準備に全力を尽くすことが、本番でのプレッシャーを心地よく感じ、集中するための秘訣です。
『図解 すごい集中力』 3章 より 児玉光雄:著 成美堂出版:刊
「やることはすべてやった。これで絶対大丈夫!」
最高の準備をすることで、そう自分に100%の自信を持って本番に臨むことができます。
そのような意識があれば、本番だということをあまり意識せずに、普段に近い精神状態を維持できます。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
これからの時代、個人の能力が問われる、実力主義の傾向がますます強くなります。
その中で成功をおさめるためには、ビジネスに関するスキルを磨いたり、資格を取ったりといった、個人の努力が必要になります。
より短時間で、より質の高いパフォーマンスを出せる。
集中力は、勉強をする際にも、実際のビジネスの現場でも役に立ちます。
どんな場面でも、自分の実力を100%発揮できる。
そのためには、何はともあれ集中力。
是非とも、身につけておきたいですね。
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